深いアイスピック型ニキビ跡へTCA CROSSを行う考え方
TCA CROSSは高濃度トリクロロ酢酸を深く小さい凹みへ点状に作用させ、創傷治癒を利用して瘢痕を浅くする治療です。瘢痕型と保護期間を一つずつ設計します。アイスピック型と小型ボックスカー型を主な対象にします。
Medical Information
この記事について
- 執筆・監修
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 公開日
- 2026年7月16日
- 確認日
- 2026年08月13日
アイスピック型・小型ボックスカー型を選ぶ
入口が狭く深いアイスピック型、境界が明瞭な小型ボックスカー型はTCA CROSSの候補です。広いローリング型や癒着が強い凹みは、サブシジョンやRFマイクロニードリングなど別の治療を比較します。
瘢痕型からTCA CROSSの対象を選ぶ判断を補う資料として、良好な臨床反応は65%群27/33人(82%)、100%群30/32人(94%)。 100%群で5-6コース受けた患者は全員excellent resultと評価された(参考文献1)。


医師がTCA塗布とニードリングを凹みごとに組み合わせる
当院のTCA CROSSは薬剤を置くだけではありません。医師が一つずつ凹みの入口と深さを確認し、必要な瘢痕には細かなニードリングを併用してから、高濃度TCAを周囲の正常皮膚へ広げないよう限定して塗布します。

フロスティング・痂皮・赤みを1〜3か月追う
治療直後の白色変化から痂皮となり、その後は赤みや色素沈着が続くことがあります。当院ではエアウォールで保護し、紫外線、メイクの入り込み、摩擦を減らします。表面が安定してから同じ凹みへの追加を決めます。
TCA濃度と炎症後色素沈着を追う判断を補う資料として、瘢痕重症度スコアはPCI群で平均68.3%、100% TCA CROSS群で平均75.3%改善(各群内p<0.001)。 群間の改善度差は統計学的に有意ではなかった(p=0.47)(参考文献2)。

額・眉間の症例|深い入口へ限定して処置
額から眉間にあるアイスピック型瘢痕を近接して示した症例です。面全体へ薬剤を広げず、深い入口が残る凹みを選んでTCAとニードリングを行います。

鼻寄りの頬の症例|点状瘢痕を一つずつ処置
鼻寄りの頬にある深い点状瘢痕の症例です。鼻周囲の形に沿って皮膚を伸ばし、凹みの入口を確認して処置範囲を限定します。

外側頬・こめかみの症例|瘢痕型を混在させない
外側頬からこめかみの小型ボックスカー型瘢痕を示しています。広い癒着や浅い面状変化が混じる部位では、TCA CROSSだけでなく別の瘢痕治療へ役割を分けます。

反対側の頬の症例|複数の点状瘢痕へ個別処置
反対側の頬に複数ある点状瘢痕の症例です。個数が多い場合も正常皮膚を避け、選んだ凹みだけへ処置します。

こめかみから頬の症例|深さに合わせて追加を判断
こめかみから頬にかけた深い瘢痕の症例です。痂皮と赤みが落ち着いた後に入口の深さを診察し、残った凹みだけ次回の対象にします。

鼻・鼻周囲の症例|狭い範囲へ精密に処置
鼻から鼻周囲にある点状瘢痕の症例です。曲面と皮膚の厚みを考慮し、TCAとニードリングを狭い範囲へ精密に行います。

残った瘢痕型で次の治療を選ぶ
深い入口が残ればTCA CROSS、癒着したローリング型ならサブシジョン、浅い面状変化ならRFマイクロニードリングというように、残った瘢痕型へ次の治療を割り当てます。
当院での診療の考え方
- 新しいニキビの炎症を先に落ち着かせたうえで、入口が狭く深いアイスピック型と小型ボックスカー型の凹みをTCA CROSSの対象として選びます。
- 高濃度TCAは医師が一つの凹みへ限定して置き、広いローリング型や癒着が強い凹みにはサブシジョンやRFマイクロニードリングなどを組み合わせます。
- 痂皮が取れた後も赤みと色素沈着をみながら保護を続け、表面が安定してから同じ凹みへの追加治療を決めます。
治療の比較
| TCA CROSS | 深いアイスピック・小型ボックスカー型瘢痕 | 活動性ニキビ・広いローリング型 | 赤みが落ち着いてから次回を判断 | 痂皮、赤み、炎症後色素沈着、瘢痕 | TCA CROSS 20か所まで22,000円 |
費用・リスク・承認状況
費用
- TCA CROSS 20か所まで22,000円
主なリスク
- 施術直後の刺激痛、フロスティング、赤み、腫れ、痂皮が生じます。痂皮を剥がすと治癒遅延や瘢痕の原因になるため、自然に取れるまでこすらないでください。
- 炎症後色素沈着、色素脱失、赤みの長期化、感染、化学熱傷、凹みの拡大・瘢痕悪化が生じる可能性があります。
- 赤み・滲出・痛みが強まる、膿が出る、周囲へただれが広がる場合は、次回予約を待たず受診してください。
TCAクロスで用いるトリクロロ酢酸は、ニキビ跡治療を使用目的として国内承認された医薬品ではありません。自由診療であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
よくある質問
どのニキビ跡に向きますか?
入口が狭く深いアイスピック型と、境界が明瞭な小型ボックスカー型が主な候補です。
施術後はどのように変化しますか?
白いフロスティングから痂皮となり、その後は赤みや色素沈着を経過で確認します。
次の治療はいつ行いますか?
痂皮と赤みが落ち着き、同じ凹みの深さを再評価できる時期に決めます。
ほかの瘢痕治療との違いは?
癒着したローリング型にはサブシジョン、浅い面状変化にはRFなど、瘢痕型ごとに役割を分けます。
参考文献
参考文献1:Focal treatment of acne scars with trichloroacetic acid: chemical reconstruction of skin scars method
- 研究デザイン
- 単施設群のオープンラベル比較解析。1996年7月から2001年7月までの治療患者を65% TCA群と100% TCA群で比較。
- 対象
- 萎縮性ニキビ瘢痕65人。65% TCA群33人、100% TCA群32人。全員Fitzpatrick skin type IV-V。
- 主な結果
- 良好な臨床反応は65%群27/33人(82%)、100%群30/32人(94%)。 100%群で5-6コース受けた患者は全員excellent resultと評価された。
- 限界
- 無作為化・盲検・無治療対照ではない。 施術回数が効果と関連しており、濃度差だけの因果比較はできない。 Fitzpatrick IV-Vに限定され、評価尺度と長期再発・瘢痕拡大の評価が限定的。
- COI・資金
- 公開抄録では資金提供の記載を確認できず。 著者はcommercial supportersとのsignificant interestなしと申告。
参考文献2:Percutaneous collagen induction versus full-concentration trichloroacetic acid in the treatment of atrophic acne scars
- 研究デザイン
- 無作為化比較試験。PCI(マイクロニードリング)と100% TCA CROSSを各4回、4週間隔で比較。
- 対象
- 萎縮性ニキビ瘢痕30人を15人ずつ2群に無作為割付。
- 主な結果
- 瘢痕重症度スコアはPCI群で平均68.3%、100% TCA CROSS群で平均75.3%改善(各群内p<0.001)。 群間の改善度差は統計学的に有意ではなかった(p=0.47)。
- 限界
- 総数30人の小規模試験。 盲検化、瘢痕型別の割付・結果、長期追跡、色素沈着等の詳細はPubMed抄録から確認できない。 両群とも能動治療であり、自然経過・無治療との比較ではない。
- COI・資金
- PubMedレコードおよび公開抄録に資金情報なし。 PubMedレコードおよび公開抄録にCOI記載なし。
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