肝斑を色素・血管・真皮の3方向から診る理由
肝斑や赤みは表面の色だけでなく、毛細血管、炎症、紫外線による真皮変化が重なることがあります。色素・血管・真皮を分けて観察すると治療の順番が明確になります。ADVATxの2波長も、この3方向の所見から役割を決めます。
Medical Information
この記事について
- 執筆・監修
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 公開日
- 2026年7月19日
- 確認日
- 2026年08月13日
赤みを真皮の光老化サインとして観察
紫外線は表皮の色素変化だけでなく、真皮のコラーゲン分解や血管反応にも関わります。


肝斑では血管成分と炎症も確認
肝斑部の血管径・密度を色素と別に観察する判断を補う資料として、肝斑病変部は周囲正常皮膚よりa*値(赤み)が有意に高かった。 病変部では真皮血管の数と大きさが有意に増加(参考文献1)。


ADVATxの589nmと1319nmを所見で使い分ける
589nmはヘモグロビンを含む赤みや拡張血管を標的にし、1319nmは水分を介して真皮へ熱を届けます。赤みと色素が重なる場合も、両波長を必ず同じ比率で使うのではなく、所見から目的を決めます。
589nm・1319nmを所見で使い分ける判断を補う資料として、589nm・1319nmを最大3回照射した女性17人で、最終照射4週後と12週後に医師評価の色素沈着と肌質が治療前より改善し、有害事象は一過性紅斑でした(参考文献2)。


酒さ・肝斑・光老化で治療の優先順位を変える
ほてりや刺激反応が強い酒さではバリアと炎症管理、肝斑では遮光と外用、限局した血管では血管標的治療を優先します。ひとつの診断名や機器ですべてを説明しません。
診察では、洗顔・保湿後にほてる時間、紫外線や温度差で赤くなる範囲、化粧品で刺激が出る部位を聞きます。症状の時間経過から、炎症を先に落ち着かせる時期を決めます。
茶色い色調が残れば遮光・外用、面状の赤みや線状の血管が残れば血管標的治療というように、残る所見から次の役割を決めます。

当院での診療の考え方
- 肝斑に赤みや炎症が重なる場合は、589nmで毛細血管・赤み・炎症へ、1319nmで真皮と肌質へ熱を届け、色素治療だけに偏らないように組み立てます。
- 全顔の589nm・1319nm照射に加え、目立つ毛細血管や限局した病変にはスポット照射を追加料金なしで組み合わせます。
- 遮光と摩擦対策を続けながら、赤み・炎症を落ち着かせた後に残る色素へ、ルビーや導入治療などの順番を決めます。
治療の比較
| ADVATx | 赤み・血管・炎症・真皮の所見 | 強い日焼け・皮膚炎・光過敏 | 症例ごとに回数を設定 | 赤み、熱感、乾燥、水疱、熱傷 | ADVATx 全顔+スポット1回 30,000円(税込)/ADVATx 全顔+スポット5回 139,000円(税込) |
費用・リスク・承認状況
費用
- ADVATx 全顔+スポット1回 30,000円(税込)
- ADVATx 全顔+スポット5回 139,000円(税込)
主なリスク
- ルビーフラクショナルトーニング:痛み、赤み、腫れ、かゆみ、乾燥、点状痂皮、炎症後色素沈着、色素脱失、熱傷、瘢痕
- ADVATx:赤み、腫れ、熱感、乾燥、刺激、色素変化、水疱、熱傷
- 外用・化粧品:ヒリつき、赤み、乾燥、かゆみ、かぶれ
当院が使用する販売名ナノスターアール(NanoStar R)は、色素性皮膚疾患の治療を使用目的とする国内承認Qスイッチルビーレーザーです(承認番号22900BZX00055000)。全顔のフラクショナルトーニングは承認された個別の照射方法ではなく、自由診療として行います。ADVATxは日本国内未承認医療機器で、医師の判断により適法な個人輸入手続で導入しています。承認範囲外の照射方法や未承認機器による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度等の対象外となる場合があります。
よくある質問
赤みを真皮の所見として見るのはなぜですか?
慢性的な紫外線や炎症に伴う血管の目立ちとバリアの変化を、表皮の色素とは別に追うためです。
肝斑では血管も確認しますか?
左右対称の色素に重なる面状の赤みや毛細血管を記録し、色素と血管を別々に評価します。
ADVATxの589nmと1319nmはどう分けますか?
589nmは赤み・血管、1319nmは水分を介した真皮加熱を目的に、部位の所見から設定します。
酒さの赤みでは何を確認しますか?
ほてり、ヒリつき、丘疹・膿疱と、摩擦・飲酒・辛い物・温度差などの増悪因子を整理します。
参考文献
参考文献1:The vascular characteristics of melasma
- 研究デザイン
- 同一患者内の病変部と病変周囲正常皮膚を比較する観察的病理・免疫組織化学研究。色差計a*、factor VIIIa-related antigen、VEGFを評価。
- 対象
- 肝斑のある韓国人女性50人から、顔面病変部と非病変部の皮膚検体を採取。
- 主な結果
- 肝斑病変部は周囲正常皮膚よりa*値(赤み)が有意に高かった。 病変部では真皮血管の数と大きさが有意に増加。
- 限界
- 横断的な病変内比較であり、血管増加が肝斑を生じさせる因果関係は証明しない。 韓国人女性のみで、男性・他民族・多様な皮膚型への一般化に限界。 病変部と周囲皮膚は日光曝露などを完全には独立して比較できない。
- COI・資金
- PubMedではResearch Support, Non-U.S. Gov'tとして索引されるが、公開レコードに機関名・助成番号なし。 PubMedレコードおよび公開抄録にCOI記載なし。
参考文献2:A Single-Center, Open-Label, Prospective Study of a 589/1319 nm Dual Wavelength Laser for the Treatment of Facial Hyperpigmentation
- 研究デザイン
- 単施設・非盲検・前向き単群研究。3〜5週間隔で最大3回照射し12週後まで評価。
- 対象
- Fitzpatrick II〜IVで顔面色素沈着のある女性17人。
- 主な結果
- 589nm・1319nmを最大3回照射した女性17人で、最終照射4週後と12週後に医師評価の色素沈着と肌質が治療前より改善し、有害事象は一過性紅斑でした。
- 限界
- 小規模、単施設、対照群なしで、肝斑・血管腫の治療効果や4〜5回の併用治療を評価していません。
- COI・資金
- PubMed抄録の範囲で資金・利益相反の詳細を詳細記載なし。
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