医師解説シミルビーフラクショナル

なぜシミ治療にルビー694nmを使うのか

ルビー694nmは、シミのメラニンへ反応しやすく、赤みのヘモグロビンへの反応が比較的少ない波長です。532nmより深く、1064nmよりメラニン選択性を保ちやすいため、色と深さを見てスポット、フラクショナル、トーニングを使い分けます。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2026年4月25日
実質更新日
2026年8月9日
532nm、694nm、1064nmの違いとメラニン反応を比較する図

Contents

目次

  1. ルビー694nmはメラニン選択性と深達度のバランスがよい
  2. 694nmの対象を色・境界・分布で分ける
  3. スポット・フラクショナル・トーニングの役割
  4. 顔全体の色むらと病変単位のシミを順に治療する
  5. 肝斑・炎症後色素沈着は反応を見て治療間隔を決める
  6. 診療で確認するポイント
  7. 治療選択の比較
  8. 費用の目安
  9. リスク・副作用・注意点
  10. 関連記事
  11. 関連施術・関連症状のご案内
  12. 執筆・監修
  13. 参考にした一次情報・ガイドライン
  14. よくあるご質問

ルビー694nmはメラニン選択性と深達度のバランスがよい

図の吸収曲線は、532nm、694nm、1064nmで、メラニンと酸化ヘモグロビンへの反応がどう変わるかを示しています。532nmはメラニンと赤みに反応しやすく、694nmはメラニンへの反応を保ちながら赤みへの反応が比較的少なく、1064nmはさらに深く届きやすい一方でメラニンへの反応が弱くなる、という位置関係です。

深達度の図では、532nmは表皮側、694nmは表皮から基底層直下・真皮浅層、1064nmはより深い真皮へ向かう一般的な傾向を描いています。ルビー694nmは、シミの主な原因となる表皮メラニンに加え、基底層のすぐ下や真皮浅層にある色素までを狙うときに、メラニン選択性と届く深さを両立しやすい波長です。

この特性を、シミ、そばかす、細かな色むら、顔全体のくすみ感の治療設計に生かします。実際に熱が届く範囲は、波長だけでなく照射径、出力、パルス幅、照射密度によっても変わるため、次に病変の種類と分布を分けます。

694nmの対象を色・境界・分布で分ける

輪郭が明瞭な褐色斑は日光黒子、鼻から頬に細かく散る斑点は雀卵斑、青灰色を帯びて頬骨部に並ぶ色素は後天性真皮メラノサイトーシスを考えます。色、境界、左右差、分布をそろえて見ることで、少数の病変を狙うのか、顔全体の細かな色むらを扱うのかを決めます。

左右対称に広がる淡褐色斑や、刺激後に濃くなった色素は、肝斑・炎症後色素沈着として治療順を分けます。これらは外用と遮光で炎症・色素産生を整え、経過写真で反応を見ながら照射範囲と強さを段階的に決めます。

輪郭が明瞭な日光黒子へQスイッチ694nmを選ぶ根拠として、1回後に59.34%で75%を超える改善が得られ、2回後には全例で病変消失に至ったとの報告がありました(参考文献1)。

スポット・フラクショナル・トーニングの役割

同じ694nmでも、光を一つの病変へ集中させるスポット照射と、点状に分けて届けるフラクショナル照射では、治療する面積と皮膚反応が異なります。当院で使用するQスイッチルビーレーザーは、短いパルスでメラニンを狙う機器です。

スポット照射は、境界が明瞭な日光黒子など、限られた病変を一つずつ治療するときに用います。照射部は白く反応した後に痂皮となり、炎症後色素沈着の経過までを一つの治療として追います。

ルビーフラクショナルトーニングは、低出力の光を点状に分けて顔全体へ届け、そばかすや細かな色むらを面で扱います。初回コースは2〜3週間隔で5回を目安とし、1回ごとの赤みと色調変化を見ながら積み重ねます。

医師による高出力フラクショナルは、病変の濃さと深さを確認しながら照射密度を分ける方法です。スポットほど一面を覆わず、低出力トーニングより病変単位の反応を強く求める場面に配置します。

当院採用機器の仕様について、製造販売元はナノスターアールを、波長694nm、Qスイッチ、最大出力時のパルス幅30ns±20%、公称4・5・6mmの正方形チップを備える国内承認機器(承認番号22900BZX00055000)と記載しています(参考文献3)。

顔全体の色むらと病変単位のシミを順に治療する

最初に同じ照明の写真で、顔全体の色むらと、境界明瞭な病変の位置を分けて記録します。細かな色むらや雀卵斑が広い場合はルビーフラクショナルトーニングで面を整え、残る濃い病変には医師による高出力フラクショナルまたはスポットを病変単位で追加します。

スポットは痂皮が取れた後も、炎症後色素沈着が現れる時期まで元の病変と周囲皮膚を比較します。トーニングは5回のコース後に顔全体の色調を同じ条件で再撮影し、追加コース、局所照射、外用のどれを次に置くかを決めます。

肝斑・炎症後色素沈着は反応を見て治療間隔を決める

左右対称の淡い色素、摩擦や紫外線で濃淡が変わる斑、既往の照射後に広がった色素は、肝斑・炎症後色素沈着として扱います。遮光と外用を基盤に置き、694nmを用いる場合はフラクショナルの照射範囲と皮膚反応を抑えて経過を追います。

照射後は赤み、乾燥、痂皮が落ち着いた後に、元の色素の減少と新しい色素沈着を別々に比較します。肝斑部で濃さが戻る、色素沈着が広がる、炎症が続く場合は、外用と遮光を優先して皮膚反応が落ち着くまで照射間隔を延ばします。

肝斑へ694nmフラクショナルを用いる場合に照射後の色素変化まで追う理由として、MASIは平均72.3%低下した一方、3か月後に炎症後色素沈着28%、再発44%を認めたとの報告がありました(参考文献2)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 初診では、色、境界、左右差、分布の順に見て、日光黒子、雀卵斑、後天性真皮メラノサイトーシス、肝斑・炎症後色素沈着を顔写真上で分けます。
  • 少数の境界明瞭な病変にはスポット、細かな色むらが広がる顔には低出力のルビーフラクショナルトーニング、濃さや深さを病変単位で調整する場面には医師による高出力フラクショナルを配置します。
  • 経過写真では、元の褐色斑、痂皮後の赤み、炎症後色素沈着を別々に比較し、面の治療を続けるか、残った病変だけを局所照射するかを決めます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
532nm 表在性で境界明瞭な色素を狙う 深い色素、PIHリスクが高い状態 病変と照射法により1回または複数回 赤み・痂皮・色素沈着など照射法により異なる 使用機器・範囲により異なる 販売名・波長・使用目的ごとに国内承認範囲を確認
694nmルビー メラニン選択性と深さのバランスを見たい色素病変 肝斑活動性、悪性を疑う病変 通常1回後に色調とPIHを再評価 痂皮・赤み・炎症後色素沈着 1cm×1cmまで6,600円、超過は1cm²ごと4,400円 使用機器・目的の国内承認範囲と未承認表示を確認
1064nm より深い到達や低フルエンス設計を検討する 波長だけで診断を置き換える状態 病変と照射法により1回または複数回 赤み・痂皮・色素沈着など照射法により異なる 使用機器・範囲により異なる 販売名・波長・使用目的ごとに国内承認範囲を確認

費用の目安

  • Qスイッチルビーレーザー スポット照射 1cm×1cmまで ¥6,600 / 1cm×1cm以上は1㎠ごとに ¥4,400
  • ルビーフラクショナルトーニング 全顔 1回 ¥16,500 / 1クール目5回 ¥66,000 / 2クール目以降5回 ¥55,000 / 医師施術 1回 ¥27,500

スポット照射とフラクショナルでは適応やダウンタイムが異なります。どの照射法が向くかは診察でご案内します。

リスク・副作用・注意点

  • スポット照射後は、かさぶた、一時的な赤み、炎症後色素沈着がみられることがあります。
  • フラクショナルトーニング後は、数時間程度の赤みが出ることがあります。
  • 国内承認・適応: 製品・機器と使用目的により異なるため、販売名・承認番号・承認範囲をPMDAで照合

照射後は紫外線対策、摩擦予防、保湿が大切です。実際の注意点は診察時の説明をご確認ください。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Mardani G, Nasiri MJ, Namazi N, Farshchian M, Abdollahimajd F. J Cosmet Dermatol. 2025;24(4):e70133. doi:10.1111/jocd.70133.

    Treatment of Solar Lentigines: A Systematic Review of Clinical Trials

    研究デザイン: 日光黒子治療41臨床試験のシステマティックレビュー / 対象: 計3,234人、24〜92歳。694nm Qスイッチルビーの具体結果は、Fitzpatrick II〜IV型91人を1〜2回治療した非比較試験による。 / 結果: 収載された91人の694nm Qスイッチルビー研究では、1回後に59.34%で75%を超える改善、2回後に全例で病変消失が報告された。 / 限界: 研究間で対象、照射条件、評価尺度、追跡期間が異なり、メタ解析は行われていない。694nmの91人研究は対照群のない非比較試験で、追跡は4週・24週。出版バイアスの可能性があり、本レビューに特定の研究資金・利益相反はない。

  2. Hilton S, Heise H, Buhren BA, Schrumpf H, Bölke E, Gerber PA. Eur J Med Res. 2013;18:43. doi:10.1186/2047-783X-18-43.

    Treatment of melasma in Caucasian patients using a novel 694-nm Q-switched ruby fractional laser

    研究デザイン: 後ろ向き症例集積 / 対象: Fitzpatrick I〜III型の白人女性25人。694nmフラクショナルQスイッチルビーを1〜3回、平均1.4回、4週間隔で治療。 / 結果: 最終治療4〜6週後にMASIが6.54から1.98へ72.3%低下した。3か月後は炎症後色素沈着7人(28%)、再発11人(44%)だった。 / 限界: 無作為化・対照群のない単施設25人の研究で、追跡は3か月。4〜8J/cm2という研究設定を当院の照射条件へ転用できない。1著者は使用機器メーカーAsclepion Laser Technologiesから講演謝金を受領している。

  3. グンゼメディカル株式会社. NanoStar R 製品情報.

    NanoStar R|製品仕様

    研究デザイン: 製造販売元による機器仕様 / 対象: 患者を対象とした臨床研究ではない / 結果: 販売名ナノスターアール、波長694nm、Qスイッチ、最大出力時のパルス幅30ns±20%、公称4・5・6mmの正方形チップ、承認番号22900BZX00055000と記載されている。 / 限界: 製造販売元資料であり、スポット、フラクショナル、トーニングの患者効果を比較した臨床研究ではない。個別の出力、照射密度、回数を規定する資料ではない。

  4. 厚生労働省

    医療広告ガイドライン

    自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。

よくあるご質問

Q. 694nmは532nm、1064nmと何が違いますか?

532nmより深く届きやすく、1064nmよりメラニンへの反応を保ちやすい位置にあります。赤みのヘモグロビンへの反応が比較的少ないため、褐色の色素を狙う設計に使います。

Q. どのようなシミにルビー694nmを使いますか?

境界明瞭な日光黒子、鼻から頬に散る雀卵斑、細かな色むらが主な対象です。青灰色を帯びる真皮性の色素は深さを確認し、肝斑・炎症後色素沈着は外用と遮光を含めて治療順を分けます。

Q. スポット、フラクショナル、トーニングはどう選びますか?

限られた境界明瞭な病変はスポット、顔全体に散る細かな色むらは低出力のルビーフラクショナルトーニング、濃い病変を点状に調整して照射する場合は医師による高出力フラクショナルを用います。

Q. 治療回数・間隔・費用はどのくらいですか?

ルビーフラクショナルトーニングは2〜3週間隔で5回を初回コースの目安とします。現在の料金は全顔1回16,500円、初回5回66,000円、2クール目以降5回55,000円、医師施術1回27,500円です。スポットは1cm×1cmまで6,600円、超過分は1cm2ごと4,400円です。

Q. 当院のルビーレーザーは国内承認機器ですか?主な副作用は何ですか?

当院が使用するナノスターアールは、承認番号22900BZX00055000の国内承認ルビーレーザーです。照射後は痛み、赤み、腫れ、乾燥、痂皮、炎症後色素沈着、色素脱失、熱傷、まれに瘢痕が起こることがあります。

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