医師解説

肝斑が疑われる肌へレーザーを行う前に確認すること

肝斑を疑う色むらでは、左右対称の広がりと赤み・炎症を見分け、照射歴、外用、遮光を確認してから範囲と出力を決めます。今回は、全顔へ低出力のルビーフラクショナルトーニングを5回行い、肝斑を悪化させず色調とハリ・小じわが改善した経過を紹介します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2026年2月3日
実質更新日
2026年8月9日
肝斑を疑う両頬の色むらへ低出力ルビーフラクショナルトーニング5回を行った正面・右頬の治療前後

Contents

目次

  1. 低出力のルビーフラクショナルを5回行った症例
  2. 色素の分布と赤み・炎症を照射前に記録します
  3. 照射歴、外用の刺激、遮光を一つの時系列で見ます
  4. 面状の色むらは低出力で分散照射し、毎回の反応で進めます
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

低出力のルビーフラクショナルを5回行った症例

肝斑を疑う頬の色むらに対し、ルビーフラクショナルトーニングを全体的に低出力で5回行った症例です。正面と右頬の治療前後では、頬に広がる褐色調が薄くなり、色むらがなめらかになっています。

この経過ではルビー以外の治療を組み合わせていません。肝斑の濃い戻りを認めず、色調の変化に加えて、頬のハリ感、輪郭の引き上がり、小じわの見え方にも改善が記録されました。

色素の分布と赤み・炎症を照射前に記録します

最初に、頬骨部から頬へ左右対称に広がる淡褐色の面と、輪郭の分かる濃い斑点を正面・左右斜位で記録します。面状の色調は肝斑、点在する斑点は日光黒子、青灰色の点状色素は後天性真皮メラノサイトーシスを考える手がかりになり、照射範囲を分ける基準になります。

次に、同じ範囲の面状の赤み、線状の毛細血管、熱感、かゆみ、乾燥、皮むけを確認します。赤みと刺激感が続く部位は色素だけを追わず、保湿と刺激の調整で炎症を落ち着かせてからレーザーの範囲を決めます。

面状の色素、点在する濃い斑点、赤みを別々に記録しておくと、照射後にどの所見が薄くなり、どの所見が残ったかを同じ写真で比べられます。赤みだけが強くなった場合は次の照射を急がず、保湿と刺激の調整へ戻します。

照射歴、外用の刺激、遮光を一つの時系列で見ます

過去のレーザー、光治療、ピーリングは、施術日、照射部位、その後の赤み・かさぶた、色が濃くなった時期、元の肌状態へ戻った時期まで確認します。洗顔、クレンジング、マスク、マッサージによる摩擦も、色が濃い場所と重ねて見ます。

使用中のハイドロキノン、レチノール、酸を含む化粧品、トラネキサム酸・ビタミンC系の外用は、製品名と使用頻度、赤みや皮むけが出る塗り方を記録します。刺激が残るときはレチノールや酸などを減らし、保湿を続けて、色調と赤みが安定した時点を照射前の基準にします。

遮光と外用をレーザーより先に整える理由として、紫外線と可視光を遮る日焼け止め、ハイドロキノン、三剤配合外用が推奨度Aとされ、三剤配合外用の色素改善は約6週で底値に達したとの報告がありました(参考文献1)。

面状の色むらは低出力で分散照射し、毎回の反応で進めます

694nmのQスイッチルビーレーザーはメラニンへ反応します。肝斑を疑う面状の色調には、濃い斑点を狙うスポット照射ではなく、細かな点状の照射を全顔へ低出力で届けます。当院では2〜3週間ごと、5回を1クールの目安とし、色調、赤み、乾燥が落ち着いてから次の照射へ進みます。

レーザーの種類と照射条件を選び、毎回の反応を追う理由として、肝斑に対するレーザー全体の統合差は0.70で有意差に至らず、低出力1064nm QスイッチNd:YAGでは1.47のMASI低下、フラクショナルレーザーでは0.94で対照との有意差なしとの報告がありました(参考文献2)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 正面・左右斜位を同じ照明で撮影し、左右対称の面状色素、点在する濃い斑点、赤み・毛細血管を別々に記録します。
  • 照射歴と外用を時系列に並べ、赤み、皮むけ、色が濃くなった時期を確認して、摩擦を減らすケア、保湿、遮光を先に整えます。
  • 炎症が落ち着いた後、肝斑を疑う面には低出力の全顔照射、輪郭の分かる斑点には別の照射方法を選び、同じ日に強い刺激が重ならない順序を作ります。
  • 再診では色調、赤み、乾燥を前回写真と比べ、前回反応が落ち着いた範囲だけ次の照射へ進めます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
遮光・摩擦を減らすケア 左右対称の面状色素、光曝露や摩擦で濃くなる色むら 急に増大・出血する病変を遮光だけで経過観察する場合 毎日。屋外活動に応じて塗り直し 製品による刺激・接触皮膚炎 ゼオスキン各種サンスクリーン8,800〜12,320円 製品ごとに化粧品・医薬部外品の表示を確認
ハイドロキノン・レチノール等の外用 肝斑・表皮性色素を段階的に薄くし、照射前の色調を整えたい 赤み、びらん、強い皮むけ、成分による接触皮膚炎がある状態 製品別に少量・低頻度から継続 乾燥、赤み、ひりつき、皮むけ、かぶれ ミラミン/ミラミックス各14,300円、レチノール製品14,300〜25,300円 掲載製品は化粧品。肝斑治療薬としての承認品ではない
低出力ルビーフラクショナルトーニング 肝斑を疑う面状の色むらと、全顔の細かなシミ・色むら 活動性皮膚炎、強い日焼け、赤み・刺激感が続く部位 2〜3週間ごと、5回を1クールの目安 赤み、ほてり、乾燥、薄いかさぶた 看護師施術1回16,500円/1クール目5回66,000円 ナノスターアールは承認機器。肝斑への低出力フラクショナル照射は自由診療
ルビースポット照射 輪郭が分かる限局した濃いシミを病変ごとに治療したい 肝斑を疑う面状の色調、診断が定まらない病変 病変ごとに医師が計画 かさぶた、保護テープ、炎症後色素沈着 1cm×1cmまで6,600円/超過分は1cm2ごと4,400円 承認機器を使用。対象疾患と照射方法により保険・自費を区分

費用の目安

  • ルビーフラクショナル全顔・看護師施術:1回16,500円/1クール目5回66,000円/2クール目以降5回55,000円
  • ルビーフラクショナル全顔・医師施術:1回27,500円
  • ルビースポット照射・医師施術:1cm×1cmまで6,600円/1cm×1cmを超える場合は1cm²ごと4,400円
  • 外用・遮光の例:ミラミン/ミラミックス各14,300円/レチノール製品14,300〜25,300円/各種サンスクリーン8,800〜12,320円

表示価格は税込です。CICAパックなどのオプションを追加する場合は別料金です。

リスク・副作用・注意点

  • ルビーレーザーでは痛み、赤み、熱感、腫れ、かゆみ、乾燥、かさぶた、水疱、炎症後色素沈着、色素脱失、熱傷、瘢痕が起こることがあります。
  • 肝斑では照射刺激をきっかけに色調が濃くなる、改善後に再燃することがあります。
  • ハイドロキノンでは刺激性・アレルギー性接触皮膚炎、赤み、かぶれ、長期使用による色調変化が起こることがあります。
  • レチノールでは乾燥、赤み、ひりつき、皮むけが起こることがあります。妊娠中・妊娠予定では高濃度ビタミンA製品を使用しません。
  • 国内承認・適応: 当院で使用する販売名ナノスターアールは、色素性皮膚疾患の治療を使用目的として国内承認されたQスイッチルビーレーザーです(承認番号22900BZX00055000)。肝斑を疑う肌への低出力フラクショナルトーニングは承認された個別の照射方法ではなく、自由診療として行います。ミラミン、ミラミックス、レチノール製品は化粧品で、肝斑治療薬として承認された医薬品ではありません。承認範囲外の照射方法で生じた健康被害は、医薬品副作用被害救済制度等の対象外となる場合があります。

レーザー照射時は専用の眼球保護を行います。強い日焼け、活動性の皮膚炎・感染、金の糸の施術部位、金製剤の服用歴など、電子添文上の禁忌・注意事項を照射前に確認します。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Sarkar R, Handog EB, Das A, et al. Topical and Systemic Therapies in Melasma: A Systematic Review. Indian Dermatol Online J. 2023;14(6):769-781. doi:10.4103/idoj.idoj_490_22. PMID:38099013; PMCID:PMC10718129.

    Topical and systemic therapies in melasma: a systematic review

    研究デザイン: 2001年以降に発表された外用・内服治療の比較研究を、PRISMAに沿って検索したシステマティックレビュー / 対象: 対象10人以上、対照群があり、MASI、mMASI、PGA、メラニン・紅斑指数などで反応を評価した174研究。病型、肌色、重症度、追跡期間は研究ごとに異なる / 結果: 紫外線と可視光を遮るSPF30以上の日焼け止め、ハイドロキノン、三剤配合外用などが推奨度Aとされ、三剤配合外用の色素改善は約6週で底値に達したとの報告がありました。 / 限界: 病型、肌色、既治療、評価尺度、追跡期間、再発評価が不均一で、個別製品の使用順やルビーレーザー前の休薬期間を決める研究ではない。当院症例は外用を併用しておらず、症例5回の結果を説明する文献ではない。資金提供なし、著者は利益相反なしと申告。原著全文を2026年8月8日に確認した。

  2. Aljoaib NN, Baltoyour A, Al-Sharif M, et al. Efficacy and Safety of Laser-Based Therapies for Melasma: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus. 2026;18(3):e106154. doi:10.7759/cureus.106154. PMID:42064496; PMCID:PMC13128289.

    Efficacy and safety of laser-based therapies for melasma: a systematic review and meta-analysis

    研究デザイン: 無作為化比較試験と左右顔比較試験を統合し、レーザー全体と機種別のMASI・色素指標を比較したシステマティックレビュー・メタ解析 / 対象: 52研究、計1,058人。QスイッチNd:YAG、ピコ秒、フラクショナルなどを、プラセボ、外用、他の機器治療と比較。肌色、併用治療、設定、追跡期間は研究ごとに異なる / 結果: レーザー全体の統合差は0.70で有意差に至らず、低出力1064nm QスイッチNd:YAGでは1.47のMASI低下、フラクショナルレーザーでは0.94で対照との有意差なしとの報告がありました。 / 限界: 異質性はI2 96.2%、主要評価の確実性はvery lowで、追跡は主に12〜24週。694nmルビーフラクショナルを独立解析しておらず、当院症例の5回法・設定・ハリや小じわへの効果を直接評価していない。全著者は研究資金なし、関連する金銭関係・その他の利益相反なしと申告。原著全文を2026年8月8日に確認した。

  3. PMDA

    医療機器の承認審査に関する情報

    販売名、承認番号、承認範囲を確認する公的情報です。

  4. 厚生労働省

    医療広告ガイドライン

    自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。

よくあるご質問

Q. 肝斑を疑う色むらでは、レーザー前に何を確認しますか?

左右対称に広がる面状の色素、輪郭の分かる斑点、赤み・毛細血管、乾燥・皮むけを写真で記録します。さらに、過去のレーザー後に濃くなった時期、使用中のハイドロキノン・レチノール・酸を含む製品、摩擦と遮光習慣を時系列で確認します。

Q. 肝斑が疑われてもルビーフラクショナルを受けられますか?

赤みと刺激感が落ち着き、色素の範囲を定められる場合は、面状の色むらへ低出力のフラクショナルトーニングを行います。本症例は全体を低出力で5回照射し、肝斑を悪化させず改善した経過です。

Q. ハイドロキノンやレチノールはレーザー前に休止しますか?

赤み、皮むけ、ひりつきがある場合は刺激になっている製品を減量・休止し、保湿を続けます。休止期間は製品の濃度と皮膚反応で決めるため、使用中の販売名、濃度、頻度を診察時にお知らせください。

Q. ルビーフラクショナルの回数と費用を教えてください。

当院では2〜3週間ごと、5回を1クールの目安にしています。全顔の看護師施術は1回16,500円、1クール目5回66,000円、2クール目以降5回55,000円、医師施術は1回27,500円です。いずれも税込です。

Q. 使用するルビーレーザーは国内承認機器ですか?

当院のナノスターアールは、色素性皮膚疾患の治療を使用目的として国内承認されたQスイッチルビーレーザーです(承認番号22900BZX00055000)。肝斑を疑う肌への低出力フラクショナルトーニングは承認された個別の照射方法ではなく、自由診療として行います。

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