医師解説眼瞼下垂

眼瞼下垂の症状・原因・保険診療の考え方

眼瞼下垂症は、上まぶたを十分に上げられず、瞳孔の一部が隠れる状態です。視野の狭さやまぶたの重さに加え、眉を上げる癖、額のしわ、頭痛や肩こりを伴うことがあります。原因と機能障害を診察し、手術法と保険診療の対象を決めます。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2026年1月26日
実質更新日
2026年8月9日
眼瞼下垂症手術の術前と術後1か月を比較した正面症例写真

Contents

目次

  1. 術前と術後1か月で、まぶたの開きと眉の代償を見ます
  2. 視野の狭さと、額・首肩へ広がる症状を確認します
  3. 原因を、挙筋腱膜・皮膚・先天性・神経筋に分けます
  4. 原因と挙筋機能に合わせて手術法を選びます
  5. 機能障害の診断があれば、保険診療で手術を行います
  6. 診療で確認するポイント
  7. 治療選択の比較
  8. 費用の目安
  9. リスク・副作用・注意点
  10. 関連記事
  11. 関連施術・関連症状のご案内
  12. 執筆・監修
  13. 参考にした一次情報・ガイドライン
  14. よくあるご質問

術前と術後1か月で、まぶたの開きと眉の代償を見ます

症例写真は上段が術前、下段が術後1か月です。術前は上まぶたが瞳孔へかかり、下段では瞼縁の位置が上がって黒目の見える範囲が広がっています。正面から左右の開き、上眼瞼の輪郭、眉の高さ、額を使ってまぶたを持ち上げる代償を比べます。

術後1か月は、開きが増えたかだけでなく、左右差、瞼縁の曲線、目を閉じられるか、乾燥や異物感がないかを確認する時期です。腫れが残る時期でもあるため、経過とともに開きと輪郭がどう変わるかを追います。

開きと輪郭を同時に評価する根拠として、挙筋腱膜前転では、MRD1が2〜4mm、左右差0.5mm以内、良好な瞼縁形状をすべて満たした割合は、2点固定79.4%、3点固定73.1%で有意差がなかったとの報告がありました(参考文献1)。

視野の狭さと、額・首肩へ広がる症状を確認します

眼瞼下垂症では、上まぶたが十分に開かず瞳孔の一部が隠れ、上方の視野が狭くなったり、まぶたを重く感じたりします。目のくぼみ、眉の挙上、額のしわは、見え方を保とうとして眉や額の筋肉を使うと目立ちやすくなります。

額の筋肉を長時間使うことで、頭痛、肩こり、倦怠感を伴うこともあります。診察では、見えにくさがどの場面で困るか、夕方に重くなるか、眉を押さえると開きがどう変わるかを聞き、まぶたの所見と日常生活への影響を対応させます。

原因を、挙筋腱膜・皮膚・先天性・神経筋に分けます

加齢などで挙筋腱膜の付着が緩むタイプ、上まぶたの皮膚のたるみが重なるタイプ、生まれつき挙筋の力が弱いタイプ、神経や筋肉の病気によるタイプがあります。原因によって手術部位と治療の優先順位が変わります。

額の力を抜いた状態で、眼裂の高さ、瞳孔中心から上の瞼縁までの距離、上眼瞼溝、挙筋機能を測ります。さらに、いつ発症したか、一日の中で変動するか、複視や瞳孔不同を伴うかを確認します。突然片側が下がった、物が二重に見える、瞳孔の左右差や手足の力の入りにくさがある場合は、原因疾患の評価を先に行います。

原因を絞る診察順序として、眼裂高、MRD、上眼瞼溝、挙筋機能の4項目を測り、後天性を機械性、筋原性、神経筋接合部、神経原性、中枢性に分けるとの報告がありました(参考文献3)。

原因と挙筋機能に合わせて手術法を選びます

挙筋の力が保たれ、腱膜の緩みが主な場合は、挙筋腱膜を前方へ進めて瞼板へ固定する方法を選びます。皮膚の余りが視野を遮る場合は余剰皮膚切除を組み合わせ、挙筋機能が著しく弱い先天性眼瞼下垂などでは、筋膜移植や前頭筋を利用してまぶたを上げる方法を検討します。

手術の目標は、瞳孔にかかる上まぶたを上げ、必要な視野を確保しながら、目を閉じる機能と左右の瞼縁形状を保つことです。術後は低矯正、過矯正、左右差、閉じにくさ、乾燥を確認し、必要な場合は時期を見て調整します。

重度の退行性腱膜性眼瞼下垂では、手術成功率は80.3%で、不成功24件のうち18件は低矯正、4件は過矯正、2件は1mmを超える左右差だったとの報告がありました(参考文献2)。

機能障害の診断があれば、保険診療で手術を行います

まぶたが瞳孔へかかって視野を妨げるなど、眼瞼下垂症として機能障害の診断がつく場合は、保険診療で手術を行えます。見た目の希望だけを目的とする手術は自費診療となるため、診察では視野、挙筋機能、皮膚のかぶさり、日常生活での困り方を確認します。

70歳代、80歳代でも、年齢だけを理由に手術の対象外にはしません。心臓・肺の状態、抗血栓薬、糖尿病、ドライアイ、術後の通院や点眼を続けられるかを確認し、局所麻酔での手術が安全に行えるかを判断します。

令和8年度診療報酬点数表では、眼瞼下垂症手術K219として、眼瞼挙筋前転法7,200点、筋膜移植法18,530点、その他のもの6,070点が掲載されています(参考文献4)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • まず額の力を抜いた状態で、眼裂高、瞳孔中心から上の瞼縁までの距離、挙筋機能、皮膚のかぶさり、眉の代償を測り、視野の狭さと対応させます。
  • 次に発症時期、日内変動、複視、瞳孔不同、全身の筋力低下を確認し、神経・筋疾患の評価を先に行う症状がないかを見ます。
  • 原因と挙筋機能から術式を選び、術後1か月とその後の経過で、開き、左右差、瞼縁形状、閉瞼、角膜・ドライアイ症状を確認します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
挙筋腱膜前転法 挙筋機能が保たれ、腱膜の緩みで瞼縁が下がる眼瞼下垂 挙筋機能が著しく弱い先天性眼瞼下垂、急に発症して原因疾患の評価が先となる状態 通常1回。低矯正・過矯正・左右差が残る場合は再調整を検討 腫れ、内出血、痛み、左右差、低矯正・過矯正、閉じにくさ、ドライアイ 保険診療K219 7,200点。窓口負担は負担割合、診察、麻酔、薬剤などで変わります 要確認
筋膜移植法・前頭筋吊り上げ 挙筋機能が著しく弱い先天性などの眼瞼下垂 挙筋機能が保たれ、腱膜前転で開きの改善を見込める状態 通常1回。開き・閉じ方により再調整を検討 腫れ、内出血、左右差、閉瞼不全、ドライアイ、角膜障害、再発 保険診療K219筋膜移植法 18,530点。窓口負担は負担割合、診察、麻酔、薬剤などで変わります 要確認
余剰皮膚切除法 上まぶたの皮膚のかぶさりが視野を妨げ、挙筋機能が保たれている状態 腱膜性・先天性・神経筋性の下垂が主で、皮膚切除だけでは瞼縁の位置を改善できない状態 通常1回。皮膚の残り方と眉の位置を経過で評価 腫れ、内出血、傷あと、左右差、閉じにくさ、ドライアイ 保険算定区分は診断と術式によります。自費の眼瞼下垂手術料金は現行総合料金表に掲載していません 要確認

費用の目安

  • 眼瞼挙筋前転法 7,200点
  • 筋膜移植法 18,530点
  • その他のもの 6,070点

令和8年度診療報酬点数表のK219を確認した。実際の窓口負担額は負担割合、片側・両側、診察、検査、麻酔、薬剤などで変わる。自費の眼瞼下垂手術料金は現行総合料金表に掲載されていない。

リスク・副作用・注意点

  • 腫れ、内出血、痛み、出血、感染、傷あと
  • 左右差、瞼縁不整、低矯正、過矯正、再発、再調整
  • 閉瞼不全、ドライアイ、角膜障害、異物感、流涙、まれな視覚への影響
  • 国内承認・適応: 眼瞼挙筋前転法、筋膜移植法、余剰皮膚切除法は手術手技であり、医薬品・医療機器の承認制度における承認対象ではありません。吊り上げ材料などを使用する場合は、材料名と国内承認範囲を個別に説明します。

手術固有のリスクとして、左右差、低矯正・過矯正、閉瞼不全、再発、角膜障害などを集約しています。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Kim YS, Yoon JS, Jang SY. Comparison of two- and three-point sutures for advancing the levator aponeurosis in Asian eyelids. Eye (Lond). 2015;29(9):1181-1185. doi:10.1038/eye.2015.107.

    Comparison of two- and three-point sutures for advancing the levator aponeurosis in Asian eyelids

    研究デザイン: 挙筋腱膜前転の2点固定と3点固定を比較した単一術者・後ろ向き研究。術後3か月以上を追跡 / 対象: アジア人60人。2点固定34人46眼、3点固定26人41眼 / 結果: MRD1 2〜4mm、左右差0.5mm以内、良好な瞼縁形状をすべて満たした割合は2点固定79.4%、3点固定73.1%で、群間に有意差はなかった。 / 限界: 後ろ向き、単一術者・単一施設で、追跡は3〜17か月。視野や生活の質を評価せず、この症例の術式が2点固定または3点固定であることを示す資料ではない。PMC全文を確認した。

  2. Antus Z, Salam A, Horvath E, Malhotra R. Outcomes for severe aponeurotic ptosis using posterior approach white-line advancement ptosis surgery. Eye (Lond). 2018;32(1):81-86. doi:10.1038/eye.2017.128.

    Outcomes for severe aponeurotic ptosis using posterior approach white-line advancement ptosis surgery

    研究デザイン: 後方アプローチ白線前転術の単一施設・後ろ向き症例集積。術後3か月以上を追跡 / 対象: 重度の退行性腱膜性眼瞼下垂76人、122手術。術前MRD1は1mm以下、平均追跡28週 / 結果: 成功率80.3%。不成功24件の内訳は低矯正18件、過矯正4件、1mmを超える左右差2件で、角膜擦過傷が2件あった。 / 限界: 単一施設の後ろ向き研究で、前方アプローチとの同時比較はない。重度の退行性腱膜性眼瞼下垂に限られ、上眼瞼形成術の併施が多く、この症例の術式を示す資料ではない。PMC全文を確認した。

  3. Yadegari S. Approach to a patient with blepharoptosis. Neurol Sci. 2016;37(10):1589-1596. doi:10.1007/s10072-016-2633-7.

    Approach to a patient with blepharoptosis

    研究デザイン: 眼瞼下垂の診察と鑑別を解説したナラティブレビュー / 対象: 単一の患者集団を対象とした試験ではなく、先天性・後天性・偽性眼瞼下垂の診断論点を扱う / 結果: 眼裂高、MRD、上眼瞼溝、挙筋機能の4項目を測り、後天性眼瞼下垂を機械性、筋原性、神経筋接合部、神経原性、中枢性に分類して鑑別する手順が示された。 / 限界: 系統的検索や効果推定を行う研究ではなく、手術成績、保険適用、この症例の原因を示さない。PubMed抄録を確認した。

  4. 厚生労働省. 令和8年度診療報酬点数表 第10部手術 K219 眼瞼下垂症手術. 令和8年6月1日適用.

    令和8年度診療報酬点数表 K219 眼瞼下垂症手術

    研究デザイン: 厚生労働省が公開する現行の診療報酬点数表 / 対象: 研究対象を設定した臨床研究ではなく、日本の保険診療における手術料の公定点数 / 結果: K219は眼瞼挙筋前転法7,200点、筋膜移植法18,530点、その他のもの6,070点。 / 限界: 点数表は個々の患者の保険適用可否や窓口負担総額を示さない。負担割合、片側・両側、診察、検査、麻酔、薬剤などで実際の費用は変わる。厚生労働省の現行ページを確認した。

よくあるご質問

Q. 眼瞼下垂症ではどのような症状が出ますか?

上まぶたが瞳孔へかかることで、上方の視野が狭い、まぶたが重い、見えにくいと感じます。眉を上げる癖、額のしわ、目のくぼみのほか、頭痛、肩こり、倦怠感を伴うこともあります。

Q. 眼瞼下垂症の原因は何ですか?

加齢などによる挙筋腱膜の緩み、上まぶたの皮膚のたるみ、先天的な挙筋機能の弱さ、神経・筋疾患、外傷などがあります。原因を分けるため、まぶたの位置と挙筋機能に加えて、発症時期や症状の変動を確認します。

Q. 早めに受診した方がよい眼瞼下垂の症状はありますか?

急に片側のまぶたが下がった、物が二重に見える、瞳孔の大きさが左右で違う、強い頭痛、手足の力が入りにくい、飲み込みにくいなどを伴う場合は、原因疾患の評価が必要です。早めに医療機関を受診してください。

Q. 眼瞼下垂の手術は保険診療になりますか?

まぶたが瞳孔へかかって視野を妨げるなど、機能障害を伴う眼瞼下垂症と診断された場合は保険診療の対象になります。見た目の希望だけを目的とする手術は自費診療です。

Q. 70歳代・80歳代でも手術を受けられますか?

年齢だけで手術の可否は決まりません。持病、服薬、ドライアイ、局所麻酔への耐容性、術後の通院や点眼ができるかを確認して判断します。

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