医師解説ヒアルロン酸

ヒアルロン酸注入とは|部位・量・全顔バランスの考え方

頬こけ、口元のたるみ、下顎骨の凹み、全顔、男性顔、HIFU後では、同じヒアルロン酸でも整える順序が異なります。6症例を通して、ボリューマ4.5cc、4本、9本とボルベラ1本の配分を解説します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2025年8月21日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. 全顔を整えても、やった感を出さない変化を目指します
  2. Part 1:頬こけは、骨の凹凸をボリューマ4.5ccでなだらかにします
  3. Part 2:頬と顎へボリューマ4本を配分し、口元を上向きに整えます
  4. Part 3:口横のポニョは、前後の下顎骨の凹みから整えます
  5. Part 4:ボリューマ9本とボルベラ1本を、全顔で役割分担します
  6. Part 5:男性症例では、凹凸を消し切らず凛々しい輪郭を残します
  7. Part 6:HIFU・RFで減らしてから、足りない場所へヒアルロン酸を足します
  8. 全顔注入は、部位ごとの血管地図と緊急対応を先に決めます
  9. 診療で確認するポイント
  10. 治療選択の比較
  11. 費用の目安
  12. リスク・副作用・注意点
  13. 関連記事
  14. 関連施術・関連症状のご案内
  15. 執筆・監修
  16. 参考にした一次情報・ガイドライン
  17. よくあるご質問

全顔を整えても、やった感を出さない変化を目指します

『やった感のない自然な若返り』を目標にした症例で、左が治療前、右が治療後です。治療後は、目の下から頬へ続く影と口元の凹凸が軽くなり、正面の輪郭がなだらかに見えます。

ヒアルロン酸は一つのしわへ集めるのではなく、頬の支持、下顎の輪郭、額やこめかみの丸み、口唇など、顔全体で足りない部位へ役割を分けて使います。続く6枚は、その判断を症例ごとに示した図解です。

Part 1:頬こけは、骨の凹凸をボリューマ4.5ccでなだらかにします

症例は、たるみではなく、皮下脂肪が少ないために頬骨から下顎へ続く骨格の線が強く見え、頬こけと疲れた印象が出ていました。正面と斜位で、頬外側のくぼみとフェイスラインの段差を確認しています。

頬とフェイスラインへジュビダームビスタ ボリューマXCを合計4.5cc注入しました。治療後は、頬のくぼみ、目の下のクマ感、下顎縁のゴツゴツした陰影がなだらかになり、輪郭を大きく膨らませずに健康的で柔らかい印象へ変化しています。

Part 2:頬と顎へボリューマ4本を配分し、口元を上向きに整えます

口元のたるみを気にして他院で数回HIFUを受けていた症例です。正面と斜位では、頬の高い位置の支持と顎先の前方投影が不足し、口元へ向かう輪郭が下向きに見えていました。

トータルフェイシャルトリートメントとして、頬と顎の足りない部分へボリューマ4本を注入しました。頬の高い位置を作ってから顎先を整える順序により、口元のたるみだけでなく、画像の矢印方向へ輪郭が上がって見えています。

HIFUは輪郭を明瞭にする一方、脂肪が少ない顔では頬こけを強めることがあります。この症例では、さらに減らすより、頬と顎の支持を足す方を優先しました。

Part 3:口横のポニョは、前後の下顎骨の凹みから整えます

画像4では、口横の膨らみを脂肪だけの問題として扱わず、前後で膨らみを挟む下顎骨の凹みを黒い点線で示しています。この凹みが深いと、中央の脂肪が相対的に突出して見えます。

最初に赤い矢印で示した下顎縁の凹みへヒアルロン酸を入れて段差をなだらかにし、次に前方と後方の赤丸へ支持を足します。前後から輪郭を張ることで、脂肪を直接減らさなくてもフェイスラインの連続性が出ます。

下顎縁では、咬筋前縁の近くで顔面動脈が下顎骨を越える位置を触診し、拍動する経路と注入点を重ねません。凹みを一度に埋め切らず、正面と斜位を見直しながら少量ずつ前後へ配分します。

Part 4:ボリューマ9本とボルベラ1本を、全顔で役割分担します

『10本入れるとパンパンになるのでは』という質問に対する全顔症例です。正面と斜位で、額・こめかみの平坦さ、頬の支持、顎とフェイスライン、唇の輪郭を別々に見ています。

額・頬・顎へボリューマ9本、唇へボルベラ1本を使いました。深い支持と輪郭にはボリューマ、動きの大きい唇にはボルベラと製剤を分け、額・頬・顎を先に整えた後、最後に唇の輪郭を合わせます。

治療後は額とこめかみの丸みがつながり、頬が上向きに見え、顎から下顎縁の線が明瞭になっています。10本を一か所へ集めず全顔へ分けたことで、正面の余白が減って小顔に見えながら、局所だけが膨らんだ印象を避けています。

前額は、眼動脈系へつながる滑車上動脈・眼窩上動脈を意識する部位です。こめかみでは浅側頭動脈と眼窩周囲への連絡、頬では眼窩下動脈と顔面・角動脈の経路を想定し、部位ごとに注入層と刺入方向を変えます。

10本を全顔へ配分するときに製剤・部位・手技を一組で記録する理由として、製剤と注入手技が有害事象の発生に影響し、多くは短期間の注入部位反応だった一方、重篤な事象は数か月続き治療を要したとの報告がありました(参考文献1)。

前額で注入量を小さく分け、眼動脈系への連絡を避ける理由として、ヒアルロン酸後の視力障害はほぼすべて片側かつ直後に発症し、鼻・眉間・前額が多く、0.2mLでも永久的な完全視力喪失が生じたとの報告がありました(参考文献2)。

ボリューマを頬・下顎・こめかみの支持へ用いる根拠として、国内添付文書では、成人の中顔面・下顎部・こめかみで減少したボリュームを増大する目的で、皮下または骨膜上深部へ注入する製剤と記載されています(参考文献5)。前額への使用は、この国内承認部位には含まれません。

Part 5:男性症例では、凹凸を消し切らず凛々しい輪郭を残します

画像6の男性症例は、『10歳若い印象』を目標にしながら、男性らしい骨格の凹凸を残す設計です。全てを丸くせず、頬骨、顎、下顎縁の直線を保つことを優先しています。

目の下のクマ感とほうれい線を薄くし、顔全体を上向きに整えました。治療後も頬骨と下顎の陰影は残り、疲れた影だけが軽く見えます。頬骨の高さ、下顎の輪郭、目の下から頬へ続く段差を治療記録として残します。

Part 6:HIFU・RFで減らしてから、足りない場所へヒアルロン酸を足します

顔の形を変える治療は、脂肪やゆるみを減らすHIFU・RFと、支持や輪郭を足すヒアルロン酸に分けて考えます。両方を行う場合は先に減らす治療を行うと、後から足すヒアルロン酸量を抑えやすくなります。

この症例ではドクターHIFUを先に行い、その後に残った不足部位へヒアルロン酸を注入しました。輪郭を下へ重く見せる部分を先に減らし、頬や顎など必要な支持だけを後から足したことで、正面と斜位の輪郭が上向きかつ小さく見えています。

ただし、Part 2のように既に頬こけがある場合は、さらに減らす治療を先行しません。正面・斜位で脂肪量と骨格を見て、『減らす→足す』と『足すだけ』を症例ごとに選びます。

全顔注入は、部位ごとの血管地図と緊急対応を先に決めます

全顔では、前額の滑車上・眼窩上動脈、こめかみの浅側頭動脈、頬の眼窩下動脈、鼻翼横の顔面・角動脈、下顎縁で咬筋前方を越える顔面動脈を部位ごとに想定します。注入前に拍動、過去の注入部位、瘢痕と硬結を確認し、製剤・注入層・刺入方向を決めます。

血管内注入を避けるため、必要最小量を低い圧でゆっくり入れ、針先を一か所に固定したまま大量注入しません。前額、鼻、眉間など眼動脈系につながる部位では、少量でも視覚障害が起こり得ることを前提にします。

注入中の異常な痛み、皮膚の青白化・網目状変色、毛細血管再充満の遅れ、視覚異常があれば直ちに注入を止めます。皮膚虚血にはヒアルロニダーゼを開始し、視覚症状は院内処置だけで待たず眼科・救急へ同時連携します。

血管閉塞を疑った直後から処置と外部連携を始める理由として、ヒアルロニダーゼ後の改善率は皮膚壊死78.4%、視覚障害45.2%で、6時間以内の介入が良い転帰と関連したとの報告がありました(参考文献3)。

部位ごとの血管地図と緊急手順を注入前に決める理由として、架橋ヒアルロン酸による血管閉塞では虚血の病態と臨床徴候を段階別に評価し、臨床診断後すぐ標的治療を始める必要があるとの報告がありました(参考文献4)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • まず正面・左右斜位・側面で、頬こけ、頬の高い位置、下顎縁の凹み、顎先、額・こめかみ、口唇を見て、HIFU・RFで減らす部位とヒアルロン酸で足す部位を決めます。
  • 両方が必要ならHIFU・RFを先に行い、ヒアルロン酸は頬・下顎・顎先の深い支持から始め、額・こめかみの輪郭、最後に口唇など動く部位を整えます。
  • 部位ごとに血管走行を確認して少量ずつ注入し、各段階で正面と斜位を撮り直します。異常な痛み、皮膚色変化、視覚症状があれば直ちに中止し、ヒアルロニダーゼと眼科・救急連携へ移ります。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
輪郭・支持へのHA 骨格・深部支持・局所ボリューム不足 過去注入が多い、むくみ、皮膚余剰が主体 1回後に段階評価 腫れ、内出血、凹凸、血管閉塞、視覚障害 1cc77,000円+必要時カテラン針11,000円 製剤・使用目的ごとに国内承認確認
浅い溝・口唇・目周りへのHA 薄い皮膚へ適した製剤を少量使う場合 眼窩脂肪突出、強いむくみ、浅層過量 少量ずつ1回後に評価 青色調、むくみ、硬さ、凹凸、血管閉塞 1cc77,000円+涙袋・唇施術料11,000円等 製剤・部位・目的ごとに承認確認
RF・HIFU・手術/経過観察 ゆるみ・皮膚余剰が主因、または注入不要 凹みだけを即時補正したい場合 治療ごと 熱傷・神経症状・瘢痕等治療固有 治療ごとに異なる 機器・術式ごとに承認・適応確認

費用の目安

  • ヒアルロン酸1本1cc 77,000円/残注入1回3,800円(6か月で破棄)。
  • カテラン針11,000円/前額施術料22,000円/涙袋・唇施術料11,000円。ヒレネックス100単位44,000円。

本数、部位別施術料、残注入、修正・溶解で総額が変わります。

リスク・副作用・注意点

  • 腫れ、内出血、痛み、凹凸、硬さ、左右差、むくみが生じます。
  • 感染、結節、遅発性炎症、アレルギーが起こることがあります。
  • まれに血管閉塞、皮膚壊死、脳梗塞、失明を含む視覚障害が起こり得ます。

視覚症状は院内処置だけで完結させず、眼科等との緊急連携が必要です。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Kyriazidis I, et al. Adverse Events Associated with Hyaluronic Acid Filler Injection for Non-surgical Facial Aesthetics: A Systematic Review of High Level of Evidence Studies. Aesthetic Plast Surg. 2024;48(4):719-741.

    顔面ヒアルロン酸フィラーの高水準試験レビュー

    研究デザイン: Cochrane基準に沿った高水準エビデンスの系統的レビュー / 対象: 顔面の美容目的ヒアルロン酸注入と合併症を扱った無作為化比較試験など48研究 / 結果: 製剤と注入手技が有害事象の発生に影響した。多くは自然軽快する短期間の注入部位反応だったが、まれな重篤事象は数か月持続し、積極的治療を要した。 / 限界: 症例報告・症例集積・観察研究を除外しているため、血管閉塞、視覚障害、遅発性結節など稀な事象を過小評価する。製剤と部位が混在し、10本の全顔注入や個々の部位別リスクを算出できない。

  2. Kapoor KM, Kapoor P, Heydenrych I, Bertossi D. Vision Loss Associated with Hyaluronic Acid Fillers: A Systematic Review of Literature. Aesthetic Plast Surg. 2020;44(3):929-944.

    ヒアルロン酸フィラー後の視力障害

    研究デザイン: 症例報告・症例集積のPRISMA系統的レビュー / 対象: 29論文60例を同定し、詳細が得られた26論文44例のヒアルロン酸フィラー後視力障害を解析 / 結果: ほぼ全例が片側かつ直後発症で、鼻、眉間、前額が最も多かった。0.2mLでも永久的な完全視力喪失例があり、眼動脈閉塞と中心網膜動脈閉塞は予後不良だった。 / 限界: 症例報告主体で発生率を求められず、出版バイアスがある。特定の注入層・針・カニューレ・一回量の安全性を比較しておらず、下顔面に視覚障害リスクがないことを証明しない。

  3. Alhusain AM, et al. Hyaluronidase Protocol in Management of Hyaluronic Acid Filler-Related Vascular Complications: A Systematic Review and Meta-Analysis. Aesthetic Plast Surg. 2026;50(6):2300-2317.

    血管合併症に対するヒアルロニダーゼ

    研究デザイン: 2000年から2025年2月までを検索した系統的レビュー・メタ解析 / 対象: 21研究231人。平均30.1歳、女性90.9%。皮膚壊死60.6%、視覚障害52.8% / 結果: ヒアルロニダーゼ後の改善率は皮膚壊死78.4%、視覚障害45.2%で、6時間以内の介入と高用量は皮膚壊死の良好な転帰に関連した。 / 限界: 症例集積主体で重症度、投与量、併用治療が不均一である。視覚障害が院内ヒアルロニダーゼのみで回復することや、記事に示す各部位の安全量を保証しない。

  4. Murray G, Convery C, Walker L, Davies E. Guideline for the Management of Hyaluronic Acid Filler-induced Vascular Occlusion. J Clin Aesthet Dermatol. 2021;14(5):E61-E69.

    Guideline for HA filler vascular occlusion

    研究デザイン: Complications in Medical Aesthetics Collaborativeによる臨床ガイドライン / 対象: 架橋ヒアルロン酸フィラーによる血管閉塞が疑われる患者 / 結果: 組織虚血の病態と臨床徴候を段階別に示し、血管閉塞を臨床診断した後は速やかに標的治療を開始するよう提案している。 / 限界: まれな合併症のため、推奨の多くは病態生理、症例経験、専門家合意に基づく。各部位の最も安全な注入層、器具、量を比較した無作為化試験ではない。

  5. アラガン・ジャパン株式会社. ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書. 2023年8月(第1版). 医療機器承認番号22800BZX00338000.

    ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器添付文書 / 対象: 中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを増大する治療を受ける成人 / 結果: 中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを増大する目的で、皮下または骨膜上深部へ注入する。血管内注入を禁じ、異常な痛み、皮膚青白化、視力異常などがあれば直ちに注入を止めるよう警告している。 / 限界: 添付文書は前額・口唇への使用、全顔10本の最適配分、症例ごとの注入順序を評価した比較研究ではない。

よくあるご質問

Q. ヒアルロン酸は何本が標準ですか?

頬・フェイスラインへ4.5cc、頬・顎へボリューマ4本、全顔へボリューマ9本とボルベラ1本を使用した症例があります。本数ではなく、足りない支持と輪郭へ部位別に配分します。

Q. ボリューマとボルベラはどう使い分けますか?

全顔症例では、額・頬・顎へボリューマ、唇へボルベラを使用しています。構造を支える部位を先に整え、最後に動きの大きい唇の輪郭を合わせます。

Q. HIFU・RFとヒアルロン酸は、どちらが先ですか?

減らす治療と足す治療の両方が必要なら、HIFU・RFを先に行い、その後に残る不足へヒアルロン酸を使います。既に頬こけがある場合は、減らす治療を先行せずヒアルロン酸を優先することがあります。

Q. 口横のポニョは脂肪を減らせばよいですか?

下顎骨の凹みが膨らみの前後にあると、中央の脂肪が相対的に目立ちます。画像4の症例では、前後の凹みと支持点へヒアルロン酸を配分し、下顎縁をなだらかにしています。

Q. 注入後にすぐ連絡が必要な症状は何ですか?

通常と異なる強い痛み、皮膚の青白化や網目状変色、冷感、視覚異常、激しい頭痛は直ちに連絡が必要です。注入を止め、皮膚虚血への処置と眼科・救急連携を同時に進めます。

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