医師解説

ヒアルロン酸治療で重視している診察とデザイン

ヒアルロン酸治療では、気になる線へそのまま注入せず、正面・斜位の写真で顔全体の凹凸と支持を確認します。院長が希望する仕上がりを聞き、額・目周り・フェイスラインごとに製剤、量、注入位置をデザインします。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2025年2月24日
実質更新日
2026年8月9日
ヒアルロン酸治療で診察とデザインをどう考えるかを示したイメージ

Contents

目次

  1. 院長が悩みと希望を聞き、写真で治療目標を共有します
  2. 顔全体の支えを見て、一か所へ量を集めすぎません
  3. 額・目周り・フェイスラインで製剤と置く場所を変えます
  4. 施術の途中で鏡を見て、残りの量と仕上がりを調整します
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

院長が悩みと希望を聞き、写真で治療目標を共有します

ヒアルロン酸治療の前に院長が直接お話を伺い、どの角度や表情が気になるか、どこまで変えたいかを確認します。正面と斜位の写真を撮り、鏡だけでは気づきにくい左右差、たるみの位置、影のつながりを一緒に見ます。

「ほうれい線を浅くしたい」「フェイスラインを整えたい」という希望でも、原因がその線の直下だけにあるとは限りません。頬骨周囲の支持、こめかみや前額の凹み、下顎の後退、脂肪の位置を写真上で示し、本人が目指す仕上がりと治療する場所を一致させます。

治療前に変えたい点と残したい個性を言葉と写真で共有しておくと、注入量を増やすこと自体が目的になりません。顔の丸み、幅、前方への立体感をどこに加えるかを決め、必要な部位へ量を配分します。

顔全体の支えを見て、一か所へ量を集めすぎません

正面では顔幅、左右差、口角と下顎の位置を、斜位では額から鼻・頬・顎へ続く曲線と影を見ます。気になる場所だけを埋めるのではなく、少ない量で顔全体のつながりが整う支持点からデザインします。

例えば、ほうれい線の上にある頬の支持が低い場合は、線へ量を集中させるより頬側の立体感を先に整えます。フェイスラインのもたつきでも、顎の投影不足、下顎の凹み、脂肪の下垂を分け、ヒアルロン酸で支える範囲だけを選びます。

額・目周り・フェイスラインで製剤と置く場所を変えます

当院で相談の多い部位は、額、目周り、フェイスラインです。額は中央と外側の丸み、眉上の凹み、こめかみへのつながりを見ます。目周りは、眼窩縁の支持不足、涙溝、脂肪の膨らみ、皮膚の薄さを分け、フェイスラインは顎先から下顎角までの骨格と軟部組織を見ます。

柔らかい製剤は動きの多い部位や薄い組織になじませやすい一方、投影と支えを作る部位では形を保つ製剤が必要です。当院では、額の丸みや骨格の支持を作る選択肢として硬さのあるボリューマXCを扱い、狭い場所へ量を集めずに輪郭へなじませます。中顔面・下顎部・こめかみで用いる場合、持続の目安は1年半以上として案内しています。

額のボリューム不足に対して製剤の投影力まで考える理由として、眉下垂を伴わない額のボリューム不足にはヒアルロン酸を用い、前方への投影を作れる製剤を選ぶことが推奨されたとの報告がありました(参考文献1)。

施術の途中で鏡を見て、残りの量と仕上がりを調整します

デザインした部位へ少量ずつ注入し、途中で鏡を見ながら、希望した立体感に近づいているか、左右の高さと輪郭がそろっているかを確認します。医師だけで完成を決めず、本人が気になる角度をその場で再確認して残りの量を配分します。

施術直後は腫れを含めて形を確認し、なじんだ後の写真でも再評価します。強い痛み、皮膚が白くなる・紫色になる変化、視力や見え方の異常があれば、血流障害の可能性があるため直ちに連絡してください。

額、目周り、頬、口元では皮膚の厚さ、動き、むくみやすさが異なるため、同じ製剤・量・深さを一律に使いません。腫れの報告割合は鼻唇溝17.1%に対し中顔面・口周囲・口唇73.4%、しこり・凹凸は2.9%に対し32.1%だったとの報告がありました(参考文献2)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 院長が正面・左右斜位を撮影し、本人が気になる角度と表情、過去の注入部位、希望する変化量を写真上で確認します。
  • 額では中央・外側・眉上・こめかみの曲線、目周りでは眼窩縁の支持と涙溝・脂肪突出、フェイスラインでは顎先から下顎角までの骨格と脂肪の位置を分けます。
  • 投影を作る部位には形を保つ製剤、薄く動く部位にはなじみを優先する製剤を選び、一か所へ量を集めず、全顔の支持点へ必要量を配分します。
  • 施術の途中で本人にも鏡を見てもらい、左右の高さ、正面の幅、斜位の曲線を確認してから残りの量を決め、なじんだ後も同じ角度の写真で評価します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
額・こめかみのヒアルロン酸 額の平坦さ、眉上・こめかみの凹み、前方への投影不足が主な状態 眉間・眼窩周囲への注入、活動性の炎症・感染、容量追加で額が重く見える状態 通常1回。少量ずつ注入し、腫れが引いた後に再評価 腫れ、内出血、圧痛、左右差、しこり。まれに血管閉塞、皮膚壊死、視力障害 ヒアルロン酸 1本1cc 77,000円 ボリューマXCはこめかみへの使用が国内承認。額への使用は承認範囲外
目周りのヒアルロン酸 眼窩縁の支持不足や涙溝の凹みが主で、脂肪突出・色・浮腫と分けられる状態 脂肪突出、持続する浮腫、色素・血管が主なクマ。ボリューマXCは眼窩周囲へ注入しない 通常1回。少量で左右差とむくみを再評価 腫れ、内出血、むくみ、凹凸、チンダル現象。血管障害では視力障害の危険 ヒアルロン酸 1本1cc 77,000円 製剤ごとに承認部位が異なる。ボリューマXCの電子添文では眼窩周囲へ注入しないよう警告
フェイスラインのヒアルロン酸 顎先・下顎部の投影不足、骨格的な凹み、輪郭の連続性不足が主な状態 脂肪・皮膚余剰だけが主なもたつき、感染・炎症がある部位 通常1回。正面と左右斜位で注入後の輪郭を再評価 腫れ、内出血、圧痛、左右差、しこり。まれに血管閉塞、皮膚壊死 ヒアルロン酸 1本1cc 77,000円 ボリューマXCは成人の減少した下顎部ボリュームの増大を目的に国内承認

費用の目安

  • ヒアルロン酸注入 1本1cc 77,000円
  • 複数本を使用する場合は、使用本数×77,000円

この記事で扱うヒアルロン酸注入は自由診療です。

リスク・副作用・注意点

  • 注入部には痛み、発赤、腫脹、内出血、硬結、凹凸、感染、遅発性小結節が生じることがあります。
  • 血管内への誤注入または組織圧迫により、皮膚壊死、視力障害・失明、脳卒中などの重篤な合併症が起こる可能性があります。
  • ボリューマXCの電子添文では、側副血行路が乏しい眉間・眼窩周囲へ注入しないよう警告されています。
  • 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは、成人の中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを増大する目的で国内承認された医療機器です(承認番号22800BZX00338000)。額への使用は承認範囲外で、眉間・眼窩周囲には注入しません。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Chao YY, Chhabra C, Corduff N, et al. PAN-ASIAN CONSENSUS-Key Recommendations for Adapting the World Congress of Dermatology Consensus on Combination Treatment with Injectable Fillers, Toxins, and Ultrasound Devices in Asian Patients. J Clin Aesthet Dermatol. 2017;10(8):16-27.

    Pan-Asian consensus recommendations for facial aesthetic treatment

    研究デザイン: アジア人の顔面美容治療について11人の専門医が行ったコンセンサス / 対象: アジア各地域の専門医11人。70〜90%の賛同を中等度、90%以上を強い合意、全員一致を絶対的合意と定義 / 結果: 元の顔型に応じて額、頬、顎、輪郭へ異なる治療を組み合わせる方針が示され、眉下垂を伴わない額のボリューム不足へのヒアルロン酸使用は全員一致でした。 / 限界: 患者を対象にした比較試験ではなく、注入製剤、層、量、持続期間の効果量は示していません。複数の著者が注入製剤・機器メーカーとの講演、助言、研究関係を開示しています。

  2. Colon J, Mirkin S, Hardigan P, Elias MJ, Jacobs RJ. Adverse Events Reported From Hyaluronic Acid Dermal Filler Injections to the Facial Region: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus. 2023;15(4):e38286. doi:10.7759/cureus.38286.

    Adverse events reported from hyaluronic acid dermal filler injections to the facial region: a systematic review and meta-analysis

    研究デザイン: ヒアルロン酸フィラーの顔面注入を扱った無作為化試験・臨床試験19件のシステマティックレビューとメタ解析 / 対象: 2000〜2022年に米国またはカナダで実施された、18歳以上の健康な男女を対象とする19試験。14種類のヒアルロン酸製剤を含む / 結果: 腫れの報告割合は鼻唇溝17.1%に対し、中顔面・口周囲・口唇73.4%でした。しこり・凹凸は2.9%対32.1%、硬さは0.01%対29.6%で、いずれも部位間に有意差がありました。 / 限界: 製剤、注入量、注射針・カニューレ、部位、追跡期間が異なり、腫れの解析はI2=98.0%、しこり・凹凸はI2=96.3%と異質性が高い結果です。臨床試験中心のため、まれな血管閉塞、失明、壊死の発生率を評価できません。額・眼窩周囲だけを比較した解析ではありません。

  3. PMDA

    医療機器の承認審査に関する情報

    販売名、承認番号、承認範囲を確認する公的情報です。

  4. 厚生労働省

    医療広告ガイドライン

    自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。

よくあるご質問

Q. ヒアルロン酸の診察では何を確認しますか?

院長が希望する変化と気になる角度を聞き、正面・左右斜位の写真で額、こめかみ、頬、目周り、顎、フェイスラインの凹凸と支持を確認します。過去の注入歴も重ね、治療する部位と残したい個性を写真上で共有します。

Q. 顔がパンパンになるのを避けるため、どのようにデザインしますか?

気になる線へ量を集中させず、正面の幅と斜位の曲線を見て、少ない量で全体が整う支持点へ分けます。施術の途中にも鏡で確認し、左右の高さと立体感を見て残りの量を決めます。

Q. 額・目周り・フェイスラインで同じヒアルロン酸を使いますか?

一律ではありません。額では丸みと投影、目周りでは皮膚の薄さ・涙溝・脂肪突出、フェイスラインでは顎と下顎の骨格支持を見て製剤と量を変えます。ボリューマXCは眼窩周囲へは注入しません。

Q. ボリューマXCはどのくらい持続しますか?

当院では中顔面・下顎部・こめかみの支持に用いる場合、持続の目安を1年半以上として案内しています。実際の持続は注入部位、組織の動き、注入量で変わり、必要な時期に写真で再評価します。

Q. 料金とボリューマXCの承認範囲を教えてください。

ヒアルロン酸は1本1cc 77,000円で、複数本なら使用本数×77,000円です。ボリューマXCは中顔面・下顎部・こめかみへの使用が国内承認されています。額は承認範囲外で、電子添文で警告される眉間・眼窩周囲へは注入しません。

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