医師解説ヒアルロン酸

ヒアルロン酸5ccとボトックスで輪郭と表情を一緒に整える考え方

こめかみ・頬・目の下・顎のボリュームと、エラ・顎・ガミー・口角・バニー・目尻・額・眉間の筋活動を一緒に整えた症例です。ボリューマ5ccとボトックス8部位の注入から2週間後、安静時・笑顔・斜位で輪郭と表情の変化を確認しました。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2024年9月20日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. 2週間後の正面では、こめかみ・頬・目の下・顎を一続きで見ます
  2. 笑顔では、8部位が口元と上顔面の動きにどう関わるかを確認します
  3. 斜位では、こめかみから顎先までの曲線とエラの張りを見ます
  4. 目の下への使用と8部位のボトックスは、承認範囲と緊急症状を分けて説明します
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

2週間後の正面では、こめかみ・頬・目の下・顎を一続きで見ます

使用したヒアルロン酸はジュビダームビスタ ボリューマXC計5ccです。こめかみ、頬、目の下、顎へ注入し、ボツリヌストキシンはエラ、顎、ガミー、口角、バニー、目尻、額、眉間の8部位へ使用しました。写真は注入から2週間後です。

安静時の正面では、こめかみのくぼみに丸みが加わり、頬の高点から外側へ続く曲面がなだらかに見えます。目の下の影が浅くなり、やや後退して見えた顎先には長さと前方への投影が加わっています。上顔面から中顔面、顎先へ続く外輪郭が滑らかになり、輪郭の凹凸が少ない逆卵型へ近づいています。

全顔治療では、安静時のボリューム不足と表情時の筋活動に別々の役割を割り当て、最後に同じ正面で合わせます。こめかみや頬だけを拡大して評価するのではなく、目の下の影、顎先、下顔面幅まで含めて自然なつながりを確認します。

複数部位を組み合わせた後は、一か所の変化だけでなく全顔の満足度を再評価します。フィラーとボツリヌストキシンなどを1回の来院で組み合わせた治療では、顔貌満足度の平均が治療前71.4から1か月時80.1、3か月時77.9へ上がったとの報告がありました(参考文献1)。

笑顔では、8部位が口元と上顔面の動きにどう関わるかを確認します

笑顔の2週間後は、ガミースマイルが穏やかになり、口角が上がって見えます。顎先の緊張が和らいだことで下唇から顎へ続く線が滑らかになり、目尻と鼻根横の細かな表情じわ、額・眉間のしわも目立ちにくくなっています。

診察では、噛みしめたときのエラの張り、唇を閉じたときの顎、笑ったときの歯肉の見え方と口角、鼻根横、目尻、眉を上げたときの額、しかめたときの眉間を順に動かしてもらいます。弱めたい動きと残したい表情を分けることで、8部位を同じ強さで止めずに全顔の表情を整えます。

ボツリヌストキシンは製剤ごとに力価単位が定められているため、製剤名と部位別の単位を一組で記録します。ボトックスビスタを用いる場合、国内承認は65歳未満の眉間・目尻の表情じわで、ほかの部位は承認された使用目的と分けて説明します。

ボトックスビスタは65歳未満の眉間・目尻の表情じわが国内承認範囲で、本剤の力価単位は製剤特有であることが電子添文に記載されています(参考文献4)。

斜位では、こめかみから顎先までの曲線とエラの張りを見ます

斜位の2週間後は、こめかみから頬へ移るくぼみが浅くなり、頬の前方投影から顎先へ続く曲線が滑らかに見えます。顎先の長さが加わり、下顎角周囲の張りが穏やかになったことで、下顔面の輪郭がすっきりしています。

エラは、安静時と噛みしめ時の咬筋の厚みを触診し、骨格、耳下腺、皮下脂肪、皮膚のゆるみを重ねて見ます。咬筋の張りが外輪郭を広げている範囲へボツリヌストキシンを使い、こめかみ・頬・顎の支持はヒアルロン酸で補うと、減らす部分と支える部分を分けられます。

咬筋を治療した後は、輪郭幅だけでなく噛みにくさ、笑顔の左右差、局所的な膨らみがないかも確認します。咬筋突出への治療では、90日後に2段階以上改善した割合が51.2%、下顔面幅の平均変化が−5.24mmで、偽治療群は2.2%、−0.04mmだったとの報告がありました(参考文献2)。

目の下への使用と8部位のボトックスは、承認範囲と緊急症状を分けて説明します

ボリューマXCは、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみで減少したボリュームを増大する国内承認製剤です。今回の頬・顎・こめかみは承認目的に含まれますが、目の下へ直接注入する使用は承認範囲外で、電子添文では眼窩周囲への注入を行わないよう記載されています。

ボトックスビスタの国内承認は65歳未満の眉間・目尻の表情じわです。本症例資料ではボツリヌストキシンの製剤名と単位を確定できないため、診療では使用製剤、各部位の単位、前回投与日を記録し、異なる製剤の単位をそのまま換算しません。

注入後に通常と異なる強い痛み、皮膚の白色化・紫色または網目状の変化、視力・視野の異常がある場合は直ちに連絡してください。

ボリューマXCは、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみで減少したボリュームを増大する国内承認製剤で、電子添文では眼窩周囲へ注入しないよう記載されています(参考文献3)。

血流障害では、急な痛み、蒼白、その後の網目状の暗紫色変化を認めた段階で評価と治療を始めるとの報告がありました(参考文献5)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 安静時の正面と斜位で、こめかみのくぼみ、頬の高点、目の下の影、顎先の投影、エラを含む下顔面幅を記録します。
  • 噛みしめ、笑顔、口を閉じた状態、鼻根横、目尻、眉上げ、しかめる動きを確認し、残したい表情と弱めたい筋活動を8部位ごとに決めます。
  • ボリューマ5ccは4領域を支える全量、ボツリヌストキシンは8部位の動きを調整する治療として役割を分け、部位別配分と単位は顔の左右差・筋力に合わせます。
  • 2週間後に同じ安静時・笑顔・斜位を撮影し、輪郭のつながり、口元の動き、噛みやすさ、眉・まぶたの重さを一緒に再評価します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
ボリューマXCでこめかみ・頬・顎を支える こめかみ・中顔面・下顎部のボリューム低下が外輪郭の凹凸や顎先の後退感に関わる状態 眼窩周囲への使用、活動性の感染・炎症、残る製剤で既に十分なボリュームがある状態 通常1回後、腫れが落ち着く時点で正面・斜位を再評価。本症例は全4領域で計5cc 腫れ、痛み、内出血、左右差、凹凸・しこり。まれに血管閉塞、壊死、視覚障害、脳卒中 1本1cc 77,000円。本症例の5本は385,000円 中顔面・下顎部・こめかみは国内承認。承認番号22800BZX00338000
目の下へのヒアルロン酸注入 目の下の影にボリューム不足が関わり、皮膚・脂肪・眼瞼位置を確認した状態 眼袋・浮腫・色素・血管色が主、炎症・感染、既存製剤や硬結がある状態 1回後、腫れが落ち着いてから正面・斜位と触診で再評価 腫れ、内出血、むくみ、青み、凹凸・しこり。血管閉塞、壊死、視覚障害 ヒアルロン酸1本1cc 77,000円。涙袋・唇施術料は11,000円 ボリューマXCの眼窩周囲への直接注入は国内承認範囲外
ボツリヌストキシンでエラを整える 噛みしめ時の咬筋突出が下顔面幅に関わる状態 骨格、耳下腺、皮下脂肪、皮膚のゆるみが輪郭幅の主因、咀嚼筋力低下がある状態 通常1回後、2週間で筋力、約3か月で輪郭幅を再評価 内出血、噛む疲れ、笑顔の左右差、局所的な膨らみ、頬こけ、筋力低下 ボトックスビスタ エラ55,000円 ボトックスビスタのエラへの美容目的使用は国内承認範囲外
ボツリヌストキシンで表情を整える 笑顔、口を閉じる、鼻根横、目尻、眉上げ、しかめる動きで表情じわや口元の緊張が強まる状態 眉挙上で開瞼を補っている、閉瞼・口唇閉鎖・嚥下の機能低下、神経筋接合部疾患がある状態 通常1回後、約2週間で安静時・表情時を再評価 内出血、眉・まぶたの重さ、左右差、口元の動かしにくさ、複視、乾燥感、筋力低下 ボトックスビスタ 表情じわ1部位33,000円、2部位55,000円、3部位75,000円、4部位88,000円 ボトックスビスタは65歳未満の眉間・目尻の表情じわのみ国内承認

費用の目安

  • ヒアルロン酸 1本1cc:77,000円(税込)
  • 本症例と同じ5本の製剤費:385,000円(税込)
  • 涙袋・唇施術料:11,000円(税込)
  • ボトックスビスタ 表情じわ:1部位33,000円 / 2部位55,000円 / 3部位75,000円 / 4部位88,000円(税込)
  • ボトックスビスタ エラ:55,000円(税込)

ヒアルロン酸5本の製剤費は385,000円です。ボツリヌストキシン8部位は、使用製剤と表情じわ・エラの内訳により合算します。現行料金表に8部位一括の総額はないため、推定額を掲載していません。

リスク・副作用・注意点

  • ヒアルロン酸では、発赤、腫れ、痛み、圧痛、内出血、硬さ、しこり、凹凸、左右差、感染、アレルギー、遅発性結節が生じることがあります。目の下ではむくみ、青み、長引く腫れが目立つことがあります。
  • ヒアルロン酸の血管内誤注入または血管・神経の圧迫により、血管閉塞、皮膚壊死、視力・視野障害、失明、脳卒中が起こる可能性があります。
  • ボツリヌストキシンでは、内出血、頭痛、眉・まぶたの重さ、閉瞼不全、複視、口元の左右差・動かしにくさ、噛む疲れ、局所的な膨らみ、頬こけが生じることがあります。
  • 強い痛み、皮膚の白色化・紫色または網目状変化、見え方の異常、全身の強い筋力低下、飲み込みにくさ、息苦しさがある場合は直ちに連絡してください。
  • 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみで減少したボリュームを増大する国内承認品です(承認番号22800BZX00338000)。目の下への直接注入は承認範囲外で、電子添文は眼窩周囲へ注入しないよう警告しています。本症例資料ではボツリヌストキシンの製剤名・単位を確定できません。ボトックスビスタは65歳未満の眉間・目尻の表情じわが国内承認範囲で、エラ、顎、ガミー、口角、バニー、額への美容目的使用は承認範囲外です。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Lu JT, Lee KC. Int J Womens Dermatol. 2023;9(4):e124. doi:10.1097/JW9.0000000000000124. PMID:38028021; PMCID:PMC10664851.

    Global facial rejuvenation with one treatment of incobotulinumtoxinA, hyaluronic acid, and calcium hydroxyapatite results in long-term patient-reported satisfaction

    研究デザイン: 1施設で全顔・頸部の注入治療を1回行い、追加治療なしで1か月・3か月のFACE-Qと医師評価を追跡した前向き単群研究 / 対象: Glogau 2以上の顔面光老化がある女性22人、平均52.2歳、Fitzpatrick I〜III。1人が追跡不能。 / 結果: FACE-Q顔貌満足度は治療前平均71.4から1か月80.1、3か月77.9へ上昇した。医師GAISは1か月2.1、3か月2.2で、1〜3か月の差は有意ではなかった。 / 限界: 少人数、単施設、対照群なし、追跡3か月。カルシウムハイドロキシアパタイト、別のヒアルロン酸製剤、incobotulinumtoxinAを組み合わせており、本症例のボリューマ5cc、8部位、2週間後の結果を検証していない。

  2. Sun J, Wang L, Wu Y, et al. Aesthet Surg J. 2026;46(5):486-494. doi:10.1093/asj/sjaf204. PMID:41092464; PMCID:PMC13064654.

    OnabotulinumtoxinA Treatment for Masseter Muscle Prominence: 6-Month Safety and Efficacy Results, Including Patient-Reported Outcomes, From a Phase 3, Randomized, Placebo-Controlled, Multiregional Trial

    研究デザイン: 多地域・多施設で180日まで行った第III相無作為化二重盲検偽治療対照試験 / 対象: 咬筋突出が評価者・参加者とも4または5段階の成人376人。onabotulinumtoxinA 72単位283人、偽治療93人。82.4%が中国人、88.1%が女性、平均31.4歳。 / 結果: 90日後の評価者判定で2段階以上改善した割合は51.2%対2.2%、標準写真での下顔面幅の平均変化は−5.24mm対−0.04mmだった。治療関連有害事象は12.0%対3.2%で、咀嚼障害3.5%、注射部位痛2.8%などだった。 / 限界: 両側の咬筋突出が明らかな成人を対象に固定量72単位のonabotulinumtoxinAを検証した。対象の大半が中国人女性で、本症例の製剤・単位、2週間時点、ヒアルロン酸併用や他の7部位の効果を示していない。

  3. アッヴィ合同会社. ジュビダームビスタ ボリューマXC 電子添文. 2023年8月(第1版). 医療機器承認番号22800BZX00338000.

    ジュビダームビスタ ボリューマXC 電子添文

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器電子添文。使用目的、警告、臨床成績、有害事象を収載 / 対象: 承認目的は21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大。 / 結果: 皮下または骨膜上深部への注入が承認され、血管内注入は禁止されている。側副血行路が乏しい眉間・眼窩周囲へは注入しないよう警告している。 / 限界: 電子添文は個別症例の治療計画を示さず、今回の5ccの部位別配分、目の下への注入位置・層・器具・結果を確認できない。

  4. アッヴィ合同会社. ボトックスビスタ注用50単位 電子添文. 2025年3月改訂(第3版). 承認番号22100AMX00398000.

    ボトックスビスタ注用50単位 電子添文

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療用医薬品電子添文。効能・効果、用法・用量、警告、副作用を収載 / 対象: 国内承認の効能・効果は65歳未満の成人の眉間または目尻の表情じわ。 / 結果: 眉間は合計10〜20単位、目尻は合計12〜24単位、同時治療は最大44単位と記載されている。本剤の力価単位はA型ボツリヌス毒素製剤特有で、B型製剤と換算できない。 / 限界: 本症例資料にはボツリヌストキシンの販売名・各部位の単位がなく、ボトックスビスタを使用したことは確定できない。電子添文はエラ、顎、ガミー、口角、バニー、額への美容目的使用を承認していない。

  5. Murray G, Convery C, Walker L, Davies E. J Clin Aesthet Dermatol. 2021;14(5):E61-E69. PMID:34188752; PMCID:PMC8211329.

    Guideline for the Management of Hyaluronic Acid Filler-induced Vascular Occlusion

    研究デザイン: Complications in Medical Aesthetics Collaborativeの創設理事4人が作成した、ヒアルロン酸フィラーによる血流障害の認識・段階評価・初期対応に関する診療指針 / 対象: 患者集団を登録した比較研究ではなく、ヒアルロン酸注入後に血管閉塞を疑う臨床所見と対応を対象とする。 / 結果: 急に増す痛み、蒼白、暗紫色・網目状変化、毛細血管再充満時間の遅延を評価し、蒼白または網目状変化があれば対象領域へ直ちに治療するよう推奨した。 / 限界: まれな合併症のため根拠の多くは理論、症例経験、専門家合意に基づく。特定製品、5cc、4領域、ボツリヌストキシン併用を比較した研究ではない。

よくあるご質問

Q. この症例では、どこへ何を注入しましたか?

ジュビダームビスタ ボリューマXC計5ccをこめかみ・頬・目の下・顎へ、ボツリヌストキシンをエラ・顎・ガミー・口角・バニー・目尻・額・眉間の8部位へ使用し、2週間後に評価しました。

Q. ヒアルロン酸とボツリヌストキシンを組み合わせる理由は何ですか?

ヒアルロン酸はこめかみ・頬・目の下・顎のボリュームと支持を補い、ボツリヌストキシンはエラの張りと表情時の筋活動を調整します。安静時の輪郭と笑顔の動きを同時に評価できることが組み合わせる利点です。

Q. ボトックス8部位では、全員が同じ単位になりますか?

同じにはなりません。噛みしめ、笑顔、口を閉じる動き、眉上げ、しかめる動きを確認し、部位ごとの筋力と左右差に合わせます。製剤ごとに力価単位が異なるため、別製剤の単位を単純には換算しません。

Q. この症例と同じ治療の料金はいくらですか?

ヒアルロン酸は1本1cc 77,000円で、5本の製剤費は385,000円(税込)です。現行料金表ではボトックスビスタの表情じわは1部位33,000円、2部位55,000円、3部位75,000円、4部位88,000円、エラは55,000円です。8部位の総額は使用製剤と内訳で変わるため、現在の料金表に沿って合算します。

Q. 承認範囲と、すぐに連絡したい症状を教えてください。

ボリューマXCの頬・下顎部・こめかみは国内承認範囲ですが、目の下への直接注入は承認範囲外です。ボトックスビスタは65歳未満の眉間・目尻の表情じわが国内承認範囲です。強い痛み、皮膚の白色化・紫色や網目状変化、見え方の異常、強い筋力低下、飲み込みにくさ、息苦しさがある場合は直ちに連絡してください。

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