医師解説ニキビ・ニキビ瘢痕

アイスピック型ニキビ跡でTCAクロスをどう使うか

TCAクロスは、入口が狭く深いアイスピック型や境界が明瞭な小型ボックスカー型へ、50〜80%のトリクロロ酢酸を点状に置く治療です。約1か月間隔で3〜5回を目安に、フロスティング、痂皮、赤みが落ち着く過程を確認しながら凹みを評価します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2023年12月18日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. TCAを凹みの内側へ点状に置き、皮膚の再構築を促します
  2. アイスピック型・小型ボックスカー型・毛穴を見分けます
  3. 約1か月ごとに、3〜5回を目安として深さを見直します
  4. フロスティング、痂皮、赤みの順に回復を追います
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

TCAを凹みの内側へ点状に置き、皮膚の再構築を促します

TCAクロスは、ニキビ跡の凹みへ高濃度のトリクロロ酢酸(TCA)をピンポイントで塗布し、局所の創傷治癒を利用して凹みを目立ちにくくする治療です。瘢痕の形に合わせて50〜80%を用い、コラーゲンやエラスチンが作られる過程を利用します。

薬剤は凹みの底と内壁へ少量ずつ置き、白く変化するフロスティングを確認します。顔全体へ広く塗るピーリングではなく、周囲の正常皮膚へ酸を広げず、選んだ瘢痕を一点ずつ処置する方法です。

TCAを凹みへ点状に置く治療では、100% TCA CROSSを4回受けた群の瘢痕重症度が平均75.3%改善し、マイクロニードリング群との改善差はなかった一方、TCA側で回復期間と炎症後色素沈着が長かったとの報告がありました(参考文献1)。

アイスピック型・小型ボックスカー型・毛穴を見分けます

小さな逆三角錐のように入口が狭く、奥へ深いアイスピック型はTCAクロスの主な対象です。直径がやや広くても、縁がくっきりして底が深い小型ボックスカー型では、薬剤を凹みの内側へ限局できる場合に候補になります。

毛穴は皮脂や角栓を伴う毛包の開口として点在し、斜光で見たときに深い底や垂直な縁が固定して見える瘢痕とは形が異なります。皮膚を伸ばすと浅くなる波状のローリング型では、皮下の癒着を触診し、サブシジョンなど別の治療へ分けます。

面状治療を瘢痕型で分ける理由として、マイクロニードリングとRFマイクロニードリングではボックスカー型とローリング型の改善が大きく、アイスピック型は反応しにくかったとの報告がありました(参考文献2)。

入口が狭いアイスピック型へTCAを点状に置くと、4回後に50%と80%の双方で瘢痕スコアが改善し、改善幅は同等でしたが、80%では有害事象が強かったとの報告がありました(参考文献3)。

約1か月ごとに、3〜5回を目安として深さを見直します

治療間隔の目安は約1か月です。赤みや痂皮が残る間は次の処置へ進まず、表面が落ち着いた後に同じ照明と角度で、入口の幅、底の影、縁の高さを見直します。

1回で変化を感じる場合もありますが、3〜5回が治療の目安です。毎回同じ深さや本数を前提にせず、浅くなった瘢痕は処置から外し、残る深い凹みだけを次回の対象にします。

回復後の凹みを見ながら複数回を重ねた経過では、良好な臨床反応が65% TCAで82%、100% TCAで94%にみられ、100% TCAを5〜6回受けた症例は全員が著明改善と評価されたとの報告がありました(参考文献4)。

フロスティング、痂皮、赤みの順に回復を追います

直後は数時間ヒリヒリすることがあり、塗布部は白いフロスティングを経て痂皮になります。痂皮は約1週間で自然に取れ、その後は赤〜ピンク色に見えます。赤みは徐々に戻りますが、数か月残る場合があります。

洗顔は当日から、メイクは翌日から可能です。痂皮をこすったり剥がしたりせず、保湿と遮光を続けます。炎症後色素沈着が生じた場合は、色調と皮膚表面が落ち着いてから次回の治療時期を決めます。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 斜光で入口の幅と底の影を確認し、皮膚を伸ばしたときの変化と触診を合わせて、アイスピック型、小型ボックスカー型、毛穴、癒着性のローリング型を分けます。
  • TCAクロスは、酸を凹みの底と内壁へ限定できる瘢痕に一本ずつ割り当て、広いローリング型はサブシジョン、面状の浅い凹凸はRFマイクロニードリングへ役割を分けます。
  • 治療後はフロスティング、痂皮、赤み、色素沈着を記録し、約1か月後に回復した凹みの深さを再評価して、次に処置する本数を決めます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
TCAクロス 入口が狭く深いアイスピック型、境界が明瞭で小型のボックスカー型 毛穴、広く浅い凹凸、皮下癒着を伴うローリング型、活動性の感染・皮膚炎がある部位 約1か月間隔で3〜5回が目安。赤みが残る場合は回復後に実施 数時間の刺激感、フロスティング、約1週間の痂皮、その後の赤み・色素沈着 20か所まで22,000円 ニキビ跡へのTCA局所使用は国内未承認の自由診療
サブシジョン/トライフィルプロ瘢痕モード 伸展で浅くなり、触診で皮下癒着を確認できるローリング型・一部のボックスカー型 癒着のないアイスピック型、活動性の感染、出血リスクが高い状態 凹みと癒着の反応を見て1回または複数回 腫れ、内出血、痛み、血腫、感染、色素沈着 サブシジョン2×2cm 33,000円/トライフィルプロ瘢痕1か所18,000円 手技・使用機器・併用薬剤ごとに承認状況が異なる自由診療
RFマイクロニードリング(POTENZA) 面状に広がる浅いボックスカー型、毛穴、肌理を同じ範囲で治療したい状態 孤立した細く深いアイスピック型だけが主な状態、活動性の感染・皮膚炎がある状態 1回または3回コースを基準に反応を評価 痛み、赤み、腫れ、点状出血、痂皮、乾燥、色素沈着 瘢痕治療・薬剤導入 全顔1回66,000円/3回188,100円 POTENZAは国内未承認医療機器を用いる自由診療

費用の目安

  • TCAクロス 20か所まで:22,000円

料金は1回分です。瘢痕の型と個数により、別日に他のニキビ跡治療を組み合わせる場合があります。

リスク・副作用・注意点

  • 施術直後の刺激痛、フロスティング、赤み、腫れ、痂皮が生じます。痂皮を剥がすと治癒遅延や瘢痕の原因になるため、自然に取れるまでこすらないでください。
  • 炎症後色素沈着、色素脱失、赤みの長期化、感染、化学熱傷、凹みの拡大・瘢痕悪化が生じる可能性があります。
  • 赤み・滲出・痛みが強まる、膿が出る、周囲へただれが広がる場合は、次回予約を待たず受診してください。
  • 国内承認・適応: TCAクロスで用いるトリクロロ酢酸は、ニキビ跡治療を使用目的として国内承認された医薬品ではありません。自由診療であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

洗顔は当日、メイクは翌日から可能です。痂皮をこすらず、保湿と遮光を続けてください。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Sitohang IBS, Sirait SAP, Suryanegara J. Int Wound J. 2021;18(5):577-585. doi:10.1111/iwj.13559. PMID:33538106; PMCID:PMC8450803.

    Microneedling in the treatment of atrophic scars: A systematic review of randomised controlled trials

    研究デザイン: 萎縮性瘢痕に対するマイクロニードリングの無作為化比較試験9件を対象とした系統的レビュー。TCA CROSSとの比較試験1件を含む。 / 対象: 計341人で22人が脱落。各試験は20〜60人。TCA CROSSとの比較試験は30人を2群へ割り付け、4週間隔で4回治療した。 / 結果: 収載試験では100% TCA CROSS群の瘢痕重症度が平均75.3%改善し、マイクロニードリング群の68.3%との差は有意でなかった。レビューではTCA CROSS側の回復期間と炎症後色素沈着が長かったとの報告がありました。 / 限界: レビューの主目的はマイクロニードリングで、TCA CROSSの比較は1試験のみ。各試験の治療回数・評価法・追跡期間が異なり、最大60人で統合効果量は示されていない。インドネシア共和国の公的研究費による支援を受け、著者は利益相反なしと申告。原著全文を2026年8月8日に再確認した。

  2. Juhasz MLW, Cohen JL. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2020;13:997-1003. doi:10.2147/CCID.S267192. PMID:33376377; PMCID:PMC7764156.

    Microneedling for the Treatment of Scars: An Update for Clinicians

    研究デザイン: 2020年8月までのマイクロニードリング・RFマイクロニードリングによる瘢痕治療58研究の系統的レビュー。 / 対象: 治療と追跡を完了した計1,845人。ニキビ瘢痕43研究のほか、肥厚性・ケロイド、手術・外傷、感染後瘢痕を含む。 / 結果: ニキビ瘢痕ではボックスカー型とローリング型の改善が大きく、アイスピック型は反応しにくかった。マイクロニードリング・RFマイクロニードリングの単独または併用で瘢痕外観の改善が報告されたとの報告がありました。 / 限界: 瘢痕の種類、機器、針深度、回数、間隔、評価法が大きく異なり、メタ解析は行われていない。著者は研究費なしと申告。著者1人はRF機器メーカーLutronicのコンサルタントおよび臨床研究参加歴を申告し、その他の利益相反はない。原著全文を2026年8月8日に再確認した。

  3. Thuy LND, et al. Dermatol Surg. 2024;50(9):847-850. doi:10.1097/DSS.0000000000004228. PMID:38722745.

    Comparing the Use of 80% Trichloroacetic Acid and 50% Trichloroacetic Acid for the Treatment of Ice Pick Acne Scars

    研究デザイン: 非無作為化・単盲検・同一患者内比較試験。左顔面へ50%、右顔面へ80%のTCA CROSSを4回実施。 / 対象: アイスピック型ニキビ跡の31人。 / 結果: 4回後、両側でECCAスコアが有意に低下した。治療前後の改善幅は50%側と80%側で有意差がなく、80%側で有害事象が強かったとの報告がありました。 / 限界: 非無作為化で左右の割付が固定され、31人、短期評価である。原著全文は購読制限のため確認できず、PubMed抄録を2026年8月8日に確認した。抄録には資金源・利益相反の記載がない。

  4. Lee JB, Chung WG, Kwahck H, Lee KH. Dermatol Surg. 2002;28(11):1017-1021. doi:10.1046/j.1524-4725.2002.02095.x. PMID:12460296.

    Focal treatment of acne scars with trichloroacetic acid: chemical reconstruction of skin scars method

    研究デザイン: 1996〜2001年に治療した症例の評価研究。65%群と100%群を解析。 / 対象: 萎縮性ニキビ跡の65人。全員Fitzpatrick skin type IV〜Vで、65%群33人、100%群32人。 / 結果: 良好な臨床反応は65%群27/33人(82%)、100%群30/32人(94%)にみられ、100%を5〜6回受けた症例は全員が著明改善と評価されたとの報告がありました。 / 限界: 無作為化比較ではなく、濃度ごとの治療回数も一定ではない。アジア人のskin type IV〜Vを対象とする一施設群の古い報告で、50〜80%の濃度範囲を直接比較する研究ではない。原著全文は購読制限のため確認できず、PubMed抄録を2026年8月8日に確認した。抄録には資金源・利益相反の記載がない。

よくあるご質問

Q. アイスピック型ニキビ跡と毛穴は、どう見分けますか?

アイスピック型は入口が狭く、奥へ深い逆三角錐状の凹みで、斜光でも深い影が残ります。毛穴は毛包の開口として点在し、皮脂や角栓、周囲の肌理も合わせて確認します。

Q. TCAクロスは何回受けますか?

目安は約1か月間隔で3〜5回です。赤みや痂皮が残る場合は回復を待ち、毎回、残っている凹みの深さと本数を確認して次回の範囲を決めます。

Q. フロスティングや痂皮が出た後は、どう過ごしますか?

痂皮はこすらず自然に取れるまで待ち、保湿と日焼け対策を続けます。洗顔は当日、メイクは翌日から可能ですが、赤み・痛み・滲出が強まる場合は早めにご連絡ください。

Q. ローリング型や広いボックスカー型もTCAクロスで治療しますか?

皮膚を伸ばすと浅くなるローリング型は癒着を解除するサブシジョン、広い面状の凹凸はRFマイクロニードリングなどを候補にします。小型ボックスカー型は縁と底へ薬剤を限定できる場合にTCAクロスを検討します。

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