医師解説

ローリングスカーとボックスカーで考えるにきび跡治療

頬のローリングスカーと混在するボックスカーへ、サブシジョン2回とジュベルック手打ち1回を行った症例です。斜光・皮膚伸展・触診で癒着と深さを分け、瘢痕型ごとに剥離、注入、RF、TCAを組み合わせる順序を解説します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2023年8月26日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. サブシジョン2回とジュベルック手打ち1回後の症例です
  2. ローリングスカーは皮下の癒着、ボックスカーは真皮内の陥凹を治療しました
  3. 正面、斜光、伸展、触診の順で瘢痕型を地図にします
  4. 伸展で浅くなり、触診で癒着を感じるローリングスカーはサブシジョンを先に行います
  5. ボックスカーは縁・底・深さで局所注入とニードルRFを分けます
  6. 入口が狭く深いアイスピックスカーはTCA CROSSなどの局所治療を選びます
  7. 癒着解除、局所治療、面治療の順に組み、3か月後の影で再評価します
  8. 診療で確認するポイント
  9. 治療選択の比較
  10. 費用の目安
  11. リスク・副作用・注意点
  12. 関連記事
  13. 関連施術・関連症状のご案内
  14. 執筆・監修
  15. 参考にした一次情報・ガイドライン
  16. よくあるご質問

サブシジョン2回とジュベルック手打ち1回後の症例です

正面の治療前後を比べた症例です。サブシジョン2回、ジュベルック手打ち1回を行い、頬の広く浅いうねりを作っていたローリングスカーと、そこに混在する大きめの陥凹を治療しました。

治療後は、頬のローリングスカーによる陰影が浅くなり、大きめの陥凹も目立ちにくくなっています。写真では、正面で頬全体の陰影、斜位で皮膚表面のうねりと個々の陥凹を同じ照明条件で比べます。

ローリングスカーは皮下の癒着、ボックスカーは真皮内の陥凹を治療しました

画像2の症例では、ローリングスカーに対して真皮と皮下組織の間の瘢痕線維をサブシジョンで切り離し、架橋ヒアルロン酸で陥凹を持ち上げて、剥離した面の再癒着を防ぐ組み合わせを用いました。

混在するボックスカーには、鋭針で薄くなった真皮内を剥離して瘢痕の中に空間を作り、ジュベルックと非架橋ヒアルロン酸を注入しました。投稿では、この真皮内の剥離と注入を『真皮のサブシジョン』として説明し、ヒアルロン酸で空間を保ちながら、PDLLAによるコラーゲン再構築を数か月から約1年の時間軸で狙っています。

サブシジョンを組み合わせる理由として、混合型の萎縮性にきび跡では、ニードルRF単独より、先にサブシジョンを行ってからニードルRFを3回行う方が、盲検医師評価と患者満足度が有意に高かったとの報告がありました(参考文献2)。

正面、斜光、伸展、触診の順で瘢痕型を地図にします

最初に正面光で赤みと色素を分け、次に左右から斜光を当てて凹凸の影を見ます。皮膚を横方向へ伸ばして浅くなる広い陥凹はローリングスカー、縁が比較的明瞭で伸展しても底が残る陥凹はボックスカー、入口が狭く深く落ちる孔状の陥凹はアイスピックスカーとして記録します。

触診では、指でずらしたときの皮膚の動き、陥凹底の硬さ、真皮と皮下の引き込みを確認します。一つの頬に複数型が混在するため、ローリング、浅いボックスカー、深いボックスカー、アイスピックを写真上に分けて治療範囲を決めます。

伸展で浅くなり、触診で癒着を感じるローリングスカーはサブシジョンを先に行います

ローリングスカーは、真皮から皮下へ走る瘢痕線維が皮膚を引き込み、広い波状の陰影を作ります。皮膚を伸ばすと浅くなり、触診で底が引かれている場合は、表面へRFを当てる前にサブシジョンで癒着を解除します。

癒着を切り離した後は、陥凹の戻りと内出血が落ち着いてから再度斜光と伸展で評価します。広い引き込みが残れば剥離範囲を見直し、癒着が外れた後に残る細かな質感はニードルRFなどの再構築治療へ分けます。

ボックスカーは縁・底・深さで局所注入とニードルRFを分けます

浅く広いボックスカーは、陥凹底と周囲真皮の厚みをそろえる目的でニードルRFを面で使います。縁が硬く深いボックスカーは、針で真皮内の線維を剥離して空間を作り、非架橋ヒアルロン酸やPDLLA製剤を局所注入する方法を組み合わせます。

この症例では、広いローリングスカーを皮下サブシジョンで先に解除し、大きめのボックスカーへジュベルック手打ちを追加しました。面のうねりと点在する陥凹を同じ治療で一括りにせず、治療層を分けたことが組み合わせの理由です。

浅いボックスカーと広い質感へニードルRFを選ぶ背景として、ニードルRF単独後に萎縮性にきび跡が改善したとの報告がありました(参考文献1)。

入口が狭く深いアイスピックスカーはTCA CROSSなどの局所治療を選びます

アイスピックスカーは、表面の入口が狭く、真皮へ深く延びる孔状の陥凹です。面で行うニードルRFだけでは底まで均一に届きにくいため、瘢痕内部へTCAを点状に置くTCA CROSSや、形に応じたパンチ法を局所治療として選びます。

TCA CROSSは酸を正常皮膚へ広げず、孔の内側だけに反応させる手技です。かさぶたが取れ、赤みと色素沈着が落ち着いた後に、入口の幅と深さを同じ斜光で再評価し、次回の局所治療または周囲のRFを決めます。

面治療とTCA CROSSを瘢痕型で分ける根拠として、4回治療後の瘢痕重症度はマイクロニードリングで平均68.3%、100%TCA CROSSで平均75.3%改善し、両治療に有意差はなかったとの報告がありました(参考文献2)。

癒着解除、局所治療、面治療の順に組み、3か月後の影で再評価します

混合型では、活動性ニキビを安定させた後、ローリングスカーの癒着解除を先に行います。次に、残った深いボックスカー・アイスピックへ局所注入やTCA CROSSを行い、最後に浅いボックスカーと全体の質感へニードルRFを面で加えます。

各治療直後は腫れや赤みで陥凹が浅く見えるため、その時点を完成評価にしません。最終治療から約3か月後に正面・左右斜光・伸展写真と触診を再度そろえ、癒着の残り、陥凹底の深さ、赤みを分けて次の一手を決めます。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 正面光で赤みと色素を分け、左右からの斜光、皮膚伸展、触診の順に、ローリング、浅い・深いボックスカー、アイスピックを写真上へ記録します。
  • 皮下へ引かれるローリングスカーはサブシジョンを先に行い、深いボックスカーは真皮内剥離と局所注入、アイスピックはTCA CROSS、浅い面状の凹凸はニードルRFへ分けます。
  • 最終治療から約3か月後に同じ斜光・伸展写真と触診をそろえ、癒着が残るのか、癒着解除後の質感が残るのかを見て次の治療を選びます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
サブシジョン 診察で主因と治療層が一致し、期待できる変化と限界を理解できる状態 活動性炎症・感染、強い日焼け、妊娠等で安全条件を満たさない場合 施術内容と反応により1回または複数回 施術により赤み・腫れ・内出血・痂皮など サブシジョン 2×2cm ¥33,000 製品・機器と使用目的により異なるため、販売名・承認番号・承認範囲をPMDAで照合
標準的な外用・内服/炎症治療 活動性ニキビが残る状態 陥凹瘢痕だけが残り炎症がない状態 数週〜数か月 刺激・乾燥など 保険診療は処方内容により異なる 国内承認薬でも適応・用法を確認
治療を急がず経過観察 診断が未確定、症状が軽い、生活要因の調整を先に評価できる状態 急速な悪化、出血・潰瘍、感染、視機能障害など早期評価が必要な状態 必要時に再診 なし 診察料・検査料は診療区分により異なる 医薬品・医療機器を使用しない場合は該当なし

費用の目安

  • サブシジョン 2×2cm ¥33,000
  • ジュベルック注射 ニキビ跡・瘢痕 1か所 ¥11,000
  • 薬剤(ジュベルック) 1cc ¥33,000 / 3cc ¥55,000
  • ポテンツァ 瘢痕治療・薬剤導入 全顔 1回 ¥66,000 / 3回 ¥188,100

必要な組み合わせは、瘢痕の型、範囲、薬剤量、活動性ニキビの有無で変わります。実際の提案内容は診察時にご確認ください。

リスク・副作用・注意点

  • サブシジョンや局所注入では、赤み、腫れ、内出血、圧痛、色素沈着、感染などが起こることがあります。
  • ポテンツァでは、痛み、点状出血、一時的な赤みや腫れ、乾燥、かさぶたがみられることがあります。
  • 複数治療を組み合わせる場合は、施術間隔や前後のスキンケア調整も大切です。
  • 国内承認・適応: 製品・機器と使用目的により異なるため、販売名・承認番号・承認範囲をPMDAで照合

瘢痕の型や治療範囲でダウンタイムは変わります。実際の適応や注意点は診察時の説明もご確認ください。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Niaz G, et al. Fractional Radiofrequency Microneedling as a Monotherapy in Acne Scar Management: A Systematic Review of Current Evidence. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2025;18:19-30. PMC11706011.

    Fractional Radiofrequency Microneedling as a Monotherapy in Acne Scar Management: A Systematic Review of Current Evidence

    研究デザイン: RFマイクロニードリング単独治療を評価した16研究の系統的レビュー / 対象: 前向き研究6件、無作為化比較試験6件、後ろ向き研究3件、比較研究1件の計481人 / 結果: 収載された全研究でRFマイクロニードリング単独治療後の萎縮性にきび跡改善が報告された。 / 限界: 評価尺度と照射条件が不均一でメタ解析はなく、Fitzpatrick VI型を含まず、追跡は最長6か月。本症例のサブシジョン・ジュベルック併用や瘢痕型別の最適設定を評価していない。Europe PMC原著全文を2026年8月8日に確認した。

  2. Sardana K, et al. Microneedling for atrophic acne scars: systematic review of randomized controlled trials. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2021;14:1215-1232. PMC8450803.

    Microneedling for atrophic acne scars: systematic review of randomized controlled trials

    研究デザイン: マイクロニードリング単独6研究、RF併用3研究を含む9件の無作為化比較試験の系統的レビュー。本文中の個別試験結果を原著PubMed抄録でも再確認 / 対象: 9試験341人、22人脱落。個別のサブシジョン併用試験は25人、100%TCA CROSSとマイクロニードリングの比較試験は30人 / 結果: 25人の左右比較試験では、サブシジョン後にニードルRFを3回行った側がRF単独側より盲検医師評価(p=0.009)と患者満足度(p=0.001)で優れた。別の30人試験では4回後の瘢痕重症度がマイクロニードリング68.3%、100%TCA CROSS 75.3%改善し、群間差はなかった。 / 限界: 研究ごとに針深度、回数、評価法、瘢痕型、追跡期間が異なる。TCA試験はアイスピックだけを対象にせず、100%TCAの結果を他濃度、自己施術、正常皮膚への塗布へ転用できない。レビュー全文と個別試験のPubMed抄録を2026年8月8日に確認した。

  3. PMDA

    医療機器の承認審査に関する情報

    販売名、承認番号、承認範囲を確認する公的情報です。

  4. 厚生労働省

    医療広告ガイドライン

    自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。

よくあるご質問

Q. この症例では何を何回行いましたか?

頬のローリングスカーと混在するボックスカーに、サブシジョン2回とジュベルック手打ち1回を行いました。写真では正面と斜位で、広い陰影と大きめの陥凹の変化を比較しています。

Q. ローリング、ボックスカー、アイスピックはどう見分けますか?

斜光で影を出し、皮膚を横へ伸ばして浅くなる広い陥凹はローリング、縁が明瞭で底が残る陥凹はボックスカー、入口が狭く深い孔状の陥凹はアイスピックとして記録します。触診で皮下の引き込みも確認します。

Q. 治療効果はいつ評価しますか?

直後は腫れで凹みが浅く見えるため、内出血・赤みが落ち着いた経過も確認します。組み合わせ治療の最終評価は約3か月後に同じ斜光・伸展写真と触診で行い、必要な追加治療を決めます。

Q. 主な副作用とダウンタイムは何ですか?

サブシジョンと局所注入では赤み、腫れ、内出血、圧痛、しこり、感染、色素沈着が、ニードルRFでは痛み、点状出血、赤み、腫れ、乾燥、かさぶたが起こることがあります。TCA CROSSでは痂皮、赤み、色素沈着、薬液が周囲へ付着した場合の瘢痕拡大などに注意します。

Q. 当院の料金と承認状況はどう確認しますか?

現在の料金表では、サブシジョン2×2cmは33,000円、ジュベルック注射はニキビ跡・瘢痕1か所11,000円、薬剤は1cc 33,000円・3cc 55,000円、ポテンツァ瘢痕治療・薬剤導入全顔は1回66,000円・3回188,100円です。製剤・機器の承認状況は販売名、承認番号、承認範囲をPMDA情報と現物表示で確認します。

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