医師解説ヒアルロン酸注入

ヒアルロン酸10ccでTFTを行うとき、全顔のバランスを考える

TFTは全顔のバランスを考えて治療するTotal Face Treatmentの略です。この症例ではボリューマXC 9ccとボルベラXC 1cc、合計10ccを使用し、正面と両斜位でチークラインとフェイスラインを含む全顔のつながりを確認しました。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2023年7月1日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. TFTは、パーツを顔全体の線でつなぐ治療設計です
  2. 正面では、目元・頬・口元と外側輪郭を同時に見ます
  3. 一方の斜位では、チークラインから顎までの投影を見ます
  4. 反対側の斜位で、左右の終了点をそろえます
  5. 10ccの内訳は、ボリューマXC 9ccとボルベラXC 1ccです
  6. 全顔治療では、部位ごとに血管の深さと進入方向を変えます
  7. 2製剤の承認範囲と10本分の現在の料金
  8. 診療で確認するポイント
  9. 治療選択の比較
  10. 費用の目安
  11. リスク・副作用・注意点
  12. 関連記事
  13. 関連施術・関連症状のご案内
  14. 執筆・監修
  15. 参考にした一次情報・ガイドライン
  16. よくあるご質問

TFTは、パーツを顔全体の線でつなぐ治療設計です

TFTはTotal Face Treatmentの略で、全顔のバランスを考えて施術するという意味です。おでこ、唇、涙袋、顎、ほうれい線、クマは一つずつ見ることができますが、顔の中ではチークラインとフェイスラインで連続しています。

一つのパーツだけを大きく変えるのではなく、正面で上下顔面の重心、斜位で額から頬、顎へ続く投影、外側輪郭でこめかみから下顎までのつながりを確認します。治療の終了点は、各部位が目立つことではなく、3方向で一つの顔としてまとまる位置です。

全顔治療でも部位ごとに容量の残り方が異なるため、正面と両斜位で各部位と全体を同時に追います。注入後12週の体積維持は全顔65.5%、頬・中顔面79.2%、上口周囲62.7%、唇37.2%で、顔貌満足度と心理・社会機能も改善したとの報告がありました(参考文献1)。

正面では、目元・頬・口元と外側輪郭を同時に見ます

正面写真は左がBefore、右がAfterです。額からこめかみ、目の下から頬、口元から顎を縦に追い、さらに左右のチークラインとフェイスラインがどこで途切れて見えるかを確認します。

Afterでは、上顔面から中顔面、下顔面へ移る輪郭の段差がやわらぎ、顔の中央だけでなく外側の線も一続きに見えます。個々の変化を別々に数えるのではなく、正面で顔幅、縦の重心、左右差をまとめて評価します。

一方の斜位では、チークラインから顎までの投影を見ます

一方の斜位も、左がBefore、右がAfterです。額の前方投影、目の下から頬の高点、口横から顎先へ続く下顔面を同じ角度で確認します。

斜位では、頬だけを前へ出していないか、顎だけが尖っていないかを見ます。チークラインとフェイスラインの高低差がなだらかにつながると、各パーツを強調しなくても顔全体の立体感が整って見えます。

反対側の斜位で、左右の終了点をそろえます

反対側の斜位でも、額から頬、顎へ続く曲面と、こめかみから下顎までの外側輪郭を見直します。片側の写真だけで終了せず、両側から見た高点と影の位置を比べます。

正面で整って見えても、斜位では一部の膨らみや凹みが目立つことがあります。両斜位で外側輪郭のつながりを確認し、左右どちらから見ても一つのパーツだけが浮かない位置を終了点にします。

10ccの内訳は、ボリューマXC 9ccとボルベラXC 1ccです

この症例で使用した製剤別総量は、ジュビダームビスタ ボリューマXC 9ccとボルベラXC 1ccです。総量10ccを顔全体へ均等に配るのではなく、正面と両斜位で支えが不足する位置と、動きに合わせて形を整える位置を分けます。

製剤ごとの部位別配分と施術順は固定せず、診療記録と治療中の変化に沿って説明します。治療後は同じ3方向を見比べ、形が保たれている部分を残し、左右差や不足が続く部分だけを再評価します。

全顔治療では、部位ごとに血管の深さと進入方向を変えます

額、こめかみ、目周り、頬、口元、顎では、主要血管の走る深さと周囲組織が異なります。全顔へ同じ深さ・同じ方向で注入せず、各部位の解剖と既往注入を確認して治療経路を組み替えます。

治療中と治療後は、通常と異なる強い痛み、皮膚の白色化、暗紫色または網目状の変化、冷たさ、視力・視野の異常を確認します。これらがある場合は、予定の再診日を待たず直ちにご連絡ください。

全顔へ同じ深さで注入せず、部位ごとに経路を組み替える理由として、必要な到達深度は上顔面から中顔面・下顔面・こめかみへ向かって深くなり、血管は多層に分布し、眉間・鼻背・こめかみで吻合が多かったとの報告がありました(参考文献2)。

2製剤の承認範囲と10本分の現在の料金

ボリューマXCとボルベラXCはいずれも国内承認製品ですが、承認目的は異なります。販売名と実際の注入部位を対応させ、承認範囲内か適応外使用かを部位ごとに説明します。

現在のヒアルロン酸料金は1本1cc 77,000円で、10本10ccの製剤費は770,000円です。前額施術料22,000円、唇施術料11,000円、カテラン針11,000円は、該当する部位・器具を使用する場合に加算されます。

ボリューマXCは、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大を目的とする国内承認製剤です(参考文献3)。

ボルベラXCは、成人の顔面のしわ・溝・陥凹の修正と口唇増大を目的とする国内承認製剤です(参考文献4)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 正面で、額・こめかみ、目の下・頬、口元・顎を縦に追い、上下顔面の重心と左右差を確認します。
  • 両斜位で、額から頬へ続くチークラインと、こめかみから顎へ続くフェイスラインの高点・影・段差を比べます。
  • ボリューマXC 9ccとボルベラXC 1ccは製剤別総量として扱い、部位別配分は診療記録と各部位の動き・支持不足に沿って確認します。
  • 治療後は同じ正面・両斜位を再撮影し、一部位だけが目立たず、全顔の線が左右でつながる位置を終了点とします。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
ボリューマXC 9cc+ボルベラXC 1ccのTFT(掲載症例) 複数の部位とチークライン・フェイスラインを正面・両斜位で同時に整える状態 一部位だけの軽い凹み、既注入製剤が不明、感染・炎症・血流障害が疑われる状態 通常1回後に正面・両斜位を再評価。必要時のみ段階的に追加 腫れ、痛み、内出血、左右差、凹凸、硬さ・結節など。まれに血管閉塞、壊死、視覚障害 10本10ccの製剤費770,000円。部位別施術料・器具代は該当時に加算 2製剤とも国内承認品。承認範囲は販売名と実際の注入部位ごとに確認
少ない本数で主な輪郭だけを整える治療 頬・フェイスラインなど主な支持不足が限局し、全顔10ccを必要としない状態 上顔面・中顔面・下顔面へ複数の支持不足が連続する状態 通常1回後に同じ角度で再評価 治療部位ごとに腫れ、内出血、痛み、凹凸、硬さ・結節など 使用本数×1本1cc 77,000円。部位別施術料・器具代は該当時に加算 使用製剤と部位の組み合わせごとに確認
部位を分けた段階的治療 全顔の優先順位を決め、初回の変化を見て次の部位を調整したい状態 一度の治療量だけで全顔の完成を決めたい状態 複数回。各回後に正面・両斜位を再評価 各回の治療部位に腫れ、内出血、痛み、凹凸など 各回の使用本数と部位別施術料で算定 各回の販売名・注入部位ごとに確認

費用の目安

  • ヒアルロン酸:1本1cc 77,000円(税込)
  • 本症例と同じ10本10ccの製剤費:770,000円(税込)
  • 前額へ治療する場合の施術料:22,000円(税込)
  • 唇へ治療する場合の施術料:11,000円(税込)
  • カテラン針を使用する場合:11,000円(税込)追加

すべて税込・自由診療です。前額・唇の施術料とカテラン針は、実際に該当する部位・器具を使用する場合だけ加算します。

リスク・副作用・注意点

  • 注入部位の腫れ、赤み、痛み、圧痛、内出血、左右差、凹凸、硬さ・結節など
  • アレルギー、感染、遅発性の炎症・結節、過修正、製剤の移動など
  • まれに血管閉塞、皮膚の虚血・壊死、視力・視野障害、失明、脳卒中など
  • 複数部位を同日に治療するため、各部位の皮膚色・痛み・視覚症状を分けて確認する必要がある
  • 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは国内承認医療機器(承認番号22800BZX00338000)で、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大が承認目的です。ボルベラXCは国内承認医療機器(承認番号23000BZX00331000)で、成人の顔面のしわ・溝・陥凹の修正と口唇増大が承認目的です。公開情報では2製剤の部位別配分が示されていないため、実際の注入部位ごとに承認範囲内か適応外使用かを診療記録と照合します。

血管安全は患者本文の安全節とFAQへ集約し、各画像説明では反復していません。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Davis HD, Mazzaferro D, Habarth-Morales TE, et al. A Large Prospective Volumetric and Patient-Reported Outcome Analysis of Hyaluronic Acid Facial Fillers. Plast Reconstr Surg. 2025;156(4):550-559. doi:10.1097/PRS.0000000000012135. PMID:40178806.

    A Large Prospective Volumetric and Patient-Reported Outcome Analysis of Hyaluronic Acid Facial Fillers

    研究デザイン: 部位別の三次元体積測定とFACE-Qを行った前向き臨床研究。 / 対象: 40〜65歳の女性101人。ほうれい線・マリオネットライン、頬、中顔面、口唇周囲、顎周り、口唇を対象に、注入直後、2週、4週、12週を追跡した。 / 結果: 12週の体積維持は全顔65.5%、頬・拡張中顔面79.2%、上口周囲62.7%、唇37.2%で、顔貌、治療部位、心理・社会機能の患者報告アウトカムが改善した。 / 限界: 使用製剤はRestylane-L、Restylane-L Lyft、Restylane Silkで、ボリューマXC 9cc・ボルベラXC 1ccの同日使用や、額・こめかみ・涙袋を含むTFTを直接評価していない。追跡は12週で、部位別の長期持続を示さない。PubMed抄録と書誌を2026年8月9日に再確認し、原著全文は取得していない。

  2. Zhang L, Zhao Y, Gu Q, et al. A roadmap for safety during facial filler injections: A fresh frozen cadaver study. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2023;86:155-164. doi:10.1016/j.bjps.2023.06.029. PMID:37717300.

    A roadmap for safety during facial filler injections: A fresh frozen cadaver study

    研究デザイン: 新鮮凍結献体の全顔7領域14注入点を解剖した原著研究。 / 対象: 新鮮凍結頭部30顔面。刺入深度を測定し、骨膜上へHAを注入後に解剖して製剤位置と血管・周囲構造の関係を確認した。 / 結果: 刺入深度は上顔面から中顔面、下顔面、こめかみへ向かって増し、HAはSMASと骨膜・深部筋膜間の疎性結合組織へ逆行性に広がった。血管の多層分布と吻合は眉間、鼻背、こめかみで目立った。 / 限界: 献体解剖であり、生体の拍動・血流、個人別の安全な注入量、血管閉塞率、10cc全顔注入、各製剤の臨床成績を示さない。PubMed抄録と書誌を2026年8月9日に再確認し、原著全文は取得していない。

  3. アッヴィ合同会社. ジュビダームビスタ ボリューマXC 電子添文. 2023年8月(第1版). 医療機器承認番号22800BZX00338000.

    ジュビダームビスタ ボリューマXC 電子添文

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器電子添文。 / 対象: 適用対象は21歳以上の成人。使用目的は中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大。 / 結果: 皮下または骨膜上深部への注入として承認され、血管内注入を禁止し、視力異常・失明、脳卒中、皮膚壊死等への注意を求めている。 / 限界: 電子添文は症例の9ccの部位別配分、治療順、全顔バランスの変化を示さない。実際の使用部位が承認目的に含まれない場合は適応外使用となる。PDF全6頁を2026年8月9日に再確認した。

  4. アッヴィ合同会社. ジュビダームビスタ ボルベラXC 電子添文. 2023年8月(第1版). 医療機器承認番号23000BZX00331000.

    ジュビダームビスタ ボルベラXC 電子添文

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器電子添文。使用目的、警告、臨床成績、有害事象を収載。 / 対象: 承認目的は成人の顔面のしわ・溝・陥凹の修正と口唇増大。 / 結果: 口唇への注入を承認目的に含み、血管内注入は禁止されている。眼瞼は適用部位に含まれない。 / 限界: 電子添文は症例の1ccの使用部位、注入範囲、治療順、全顔バランスの変化を示さない。実際の使用部位が承認目的に含まれない場合は適応外使用となる。PDF全6頁を2026年8月9日に再確認した。

よくあるご質問

Q. TFTとは何ですか?

Total Face Treatmentの略で、おでこ、目元、頬、口元、顎などを別々に終わらせず、チークラインとフェイスラインを含む顔全体のつながりで治療する考え方です。

Q. この症例では、どの製剤を何cc使いましたか?

ジュビダームビスタ ボリューマXCを9cc、ボルベラXCを1cc、合計10cc使用しました。10ccはこの症例の製剤別総量で、全員に同じ量を用いるわけではありません。

Q. ボリューマXC 9ccとボルベラXC 1ccは、どこへ使いましたか?

製剤別総量だけから部位別配分を決めることはできません。診療記録と正面・両斜位の所見を対応させ、各部位に使用した販売名、量、承認範囲を個別に説明します。

Q. 10ccの現在の料金はいくらですか?

ヒアルロン酸は1本1cc 77,000円で、10本の製剤費は770,000円です。前額施術料22,000円、唇施術料11,000円、カテラン針11,000円は、該当する部位・器具を使用する場合に加算されます。すべて税込・自由診療です。

Q. ボリューマXCとボルベラXCは国内承認製品ですか?

はい。ボリューマXCは21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリューム増大、ボルベラXCは成人の顔面のしわ・溝・陥凹の修正と口唇増大が承認目的です。実際の注入部位が承認目的に含まれない場合は適応外使用として説明します。

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