症例紹介瘢痕・ケロイド

ピアス後の耳輪ケロイドを切除した術後1週間の症例

ピアス後に耳輪へ生じたケロイドを切除し、2方向の写真で術前と術後1週間を比較した症例です。ピアス孔が閉じた後の増大と痛み・痒み、耳輪の立体形状、早期の創部所見、切除後の再発予防を順に解説します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2023年6月7日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. ピアス孔が閉じた後に大きくなった耳輪ケロイドを切除した症例です
  2. ピアス歴、増大の仕方、痛み・痒みから診断を組み立てます
  3. 耳輪の輪郭を残せる切除範囲を決めます
  4. 術後1週間は内出血、創縁、耳輪の血流を確認します
  5. 再発予防は硬さ・痛み・痒みの戻り方で追加します
  6. 症状を伴うケロイド治療と見た目を整える治療で費用区分が変わります
  7. 診療で確認するポイント
  8. 治療選択の比較
  9. 費用の目安
  10. リスク・副作用・注意点
  11. 関連記事
  12. 関連施術・関連症状のご案内
  13. 執筆・監修
  14. 参考にした一次情報・ガイドライン
  15. よくあるご質問

ピアス孔が閉じた後に大きくなった耳輪ケロイドを切除した症例です

本症例は耳たぶではなく、軟骨のある耳輪上部にできたピアス後ケロイドです。ピアス孔が閉じた後に隆起が大きくなり、痛みや痒みが出るようになった経過から切除を選びました。2枚は異なる角度から見た同じ耳で、いずれも術前と術後1週間を並べています。

術後1週間では、耳輪縁の隆起が取り除かれ、切除部に軽い内出血が残っています。耳輪の連続した輪郭を確認できる早期経過で、この後は傷の硬さと再び盛り上がる変化を追います。

ピアス歴、増大の仕方、痛み・痒みから診断を組み立てます

診察では、ピアスを開けた位置、孔が閉じた時期、隆起が大きくなった速さ、元の孔との位置関係、痛み・痒みの有無を時系列で確認します。耳輪の前面と後面から病変の広がりを見て、耳輪の縁に沿う長さ、突出の高さ、皮膚の余裕、軟骨との関係を触診します。

ケロイドらしい経過に加えて、急速な増大、出血・潰瘍、感染、典型的でない色や硬さがあれば、良性・悪性腫瘍との鑑別のため生検または切除標本の病理検査を検討します。

ピアス後の隆起をケロイドとして評価する理由として、ケロイドは一般に元の傷を越えて外側へ広がり、耳介軟骨部では病変の強さに応じてステロイド治療または手術を選ぶとの報告がありました(参考文献1)。

耳輪の輪郭を残せる切除範囲を決めます

耳輪は軟骨で立体形状が作られ、皮下組織と被覆皮膚に余裕が少ない部位です。病変だけでなく、切除後に残る皮膚、耳輪縁の連続性、閉鎖時の張力を一緒に確認し、突出を減らしながら耳の形を保つ方法を選びます。

この症例で行った治療はケロイド切除です。術後1週間には耳輪縁の創部を確認できます。切除幅、軟骨・軟骨膜の処理、縫合法は病変の位置・大きさと残せる皮膚に合わせて決めます。

耳輪の形を保つ術式を選ぶ理由として、耳介ケロイドは形態分類によって手術法を選び分けることができ、治療後には20%で再発したとの報告がありました(参考文献2)。

術後1週間は内出血、創縁、耳輪の血流を確認します

術後1週間の軽い内出血を含め、腫れ、赤み、熱感、痛み、排液、創縁の離開、皮膚の色、耳輪の形を確認します。耳輪の前後から見て、局所の圧迫や腫れで血流が妨げられていないかも確認します。

この時期に耳輪の形が整っていても、傷はまだ治癒途中です。内出血と腫れが引く経過、創部が安定するまでの保護、その後に出てくる硬さ・赤みを分けて記録します。

再発予防は硬さ・痛み・痒みの戻り方で追加します

切除後は、耳輪縁に再び硬さや隆起が出る、赤みが強まる、痛み・痒みが戻る変化を追います。病変の強さと部位に応じて、テープ固定、圧迫、ステロイドテープ・注射、対応医療機関での術後放射線治療を組み合わせます。

圧迫は強ければよいのではなく、耳輪の皮膚色、痛み、圧迫痕を見ながら血流を保てる条件にします。ステロイドは皮膚萎縮や色調変化、放射線は皮膚反応と長期影響を含め、それぞれの負担と再発歴を比べて選びます。

術後補助療法を一律に決めない理由として、再発耳介ケロイドの再発率は切除と圧迫で14%、外照射で17%、ステロイド注射で18%、小線源治療で9%でしたが、方法間に統計学的な差はなかったとの報告がありました(参考文献3)。

症状を伴うケロイド治療と見た目を整える治療で費用区分が変わります

赤み、盛り上がり、痛み、痒み、ひきつれがあり、治療が必要と判断されるケロイドでは、貼り薬、注射、手術などが保険診療となる場合があります。自己負担額は診断、検査・病理、術式、術後治療、保険負担割合で変わります。

平らで白く成熟した傷あとを見た目の目的でさらに整える治療や、自由診療のレーザーなどは自費となる場合があります。初診時に保険診療と自費診療を分け、実施する治療の費用を先に確認します。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • ピアス孔が閉じた時期と、その後に耳輪の隆起が大きくなった速さ、痛み・痒みの出方を時系列で確認します。
  • 耳輪を前後から観察し、病変の基部、突出、残せる皮膚、軟骨との関係、閉鎖後の張力を確認して切除範囲を決めます。
  • 術後1週間は内出血だけでなく、創縁、排液、皮膚色、耳輪の輪郭を確認し、早期合併症を見分けます。
  • その後は硬さ、赤み、再隆起、痛み・痒みを長期に追い、テープ・圧迫・ステロイド・放射線の追加時期を決めます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
ステロイドテープ・病変内注射 小さく、赤み・硬さ・盛り上がり・痛み・痒みが活動的な病変、術後の早い再発兆候 大きく突出し耳輪の形を変える病変、皮膚萎縮・創傷・感染などで継続が難しい状態 貼付または間隔をあけた注射。反応と副作用を診察ごとに確認 注射時の痛み・内出血、皮膚萎縮、陥凹、毛細血管拡張、色調変化など 治療が必要なケロイドでは保険診療となる場合があり、自己負担割合・薬剤・処置で異なる 使用薬剤、剤形、投与方法ごとに承認範囲と用法を確認
ケロイド切除と術後固定 大きい・多発・突出が強い病変、耳輪の形を変える病変、保存療法だけで改善しにくい状態 活動性感染、創部血流・全身状態の問題があり安全な切除・閉鎖が難しい状態 手術1回と術後診察。創部が安定した後も再発を長期観察 出血、内出血、腫れ、痛み、感染、創離開、皮膚壊死、耳の変形、傷あと、再発など 保険診療となる場合は検査・病理・術式・術後処置と自己負担割合で異なる 手術。使用する薬剤・材料は個別に確認
圧迫・テープ・シリコーン固定 切除後の耳介ケロイドで、皮膚血流を保ちながら装着・固定を継続できる状態 圧迫で強い痛み、白色化・紫色化、びらん、かぶれ、創部障害が起こる状態 装着時間と期間を決め、皮膚状態と隆起を定期確認 圧迫痕、痛み、かぶれ、皮膚障害、血流障害など 保険適用と装具・材料費は使用内容により異なる 使用材料・装具ごとに医療材料区分と使用法を確認
切除後の放射線治療 再発リスクが高く、年齢・部位・病変範囲から術後照射の利益が見込まれる状態 年齢、妊娠、照射部位、既往照射などから長期リスクが利益を上回る状態 切除後に対応医療機関で照射法・線量・日程を決定 皮膚炎、赤み、色素変化、創傷治癒への影響、長期的な放射線リスクなど 対応医療機関の保険区分、照射内容、自己負担割合で異なる 放射線治療。放射線科で適応、照射条件、長期リスクを確認

費用の目安

  • 赤み・盛り上がり・痛み・痒み等があり治療が必要なケロイド:保険診療となる場合があり、自己負担割合に応じる
  • 検査、病理、手術、薬剤、術後処置・補助療法:診断と実施内容により異なる
  • 見た目をさらに整える自由診療:選択する施術と公開中の料金表により異なる

本症例の個別の保険区分・自己負担額は掲載素材に示されていません。公開中の瘢痕・ケロイドページでは、症状があり治療が必要な場合は保険診療となることがあり、見た目をさらに整える治療は自費となることがあると案内しています。

リスク・副作用・注意点

  • 切除:出血、内出血、腫れ、痛み、感染、創離開、皮膚壊死、耳輪の変形、傷あと、左右差、ケロイドの再発・増大
  • ステロイド:注射時痛、内出血、皮膚萎縮・陥凹、毛細血管拡張、色調変化
  • 圧迫・固定:痛み、かぶれ、びらん、圧迫痕、皮膚血流障害
  • 放射線治療:皮膚炎、赤み、色素変化、創傷治癒への影響、長期的な放射線リスク
  • 国内承認・適応: ケロイド切除は手術であり、単独の販売名・承認番号を表示する医薬品・医療機器ではありません。ステロイド薬、固定材料、放射線治療などを組み合わせる場合は、使用する製品・方法ごとに承認範囲、保険区分、主なリスクを確認します。

強い痛み、増える赤み・腫れ、熱感、膿、創が開く、耳輪皮膚が白色・紫色になる場合は予定日を待たずご連絡ください。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Ogawa R, Akita S, Akaishi S, et al. Burns Trauma. 2019;7:39. doi:10.1186/s41038-019-0175-y. PMID:31890718; PMCID:PMC6933735.

    Diagnosis and Treatment of Keloids and Hypertrophic Scars—Japan Scar Workshop Consensus Document 2018

    研究デザイン: 日本瘢痕・ケロイド治療研究会が、診断、JSS 2015重症度評価、保存療法、手術、術後療法、部位別治療をまとめたコンセンサス文書。 / 対象: ケロイド、肥厚性瘢痕、成熟瘢痕。耳介軟骨部と耳垂を分け、ピアス後病変、重症度、再発兆候を含む診療方針を示した。 / 結果: ケロイドは一般に元の創を越えて広がり、耳介軟骨部では小さく肥厚性瘢痕傾向の強い病変にステロイド、大きい・多発またはケロイド傾向の強い病変に手術を検討し、手術後は放射線またはステロイド等を組み合わせる方針を示した。典型的でない病変では良性・悪性腫瘍との鑑別と生検を検討するとした。 / 限界: 専門家コンセンサスであり、各治療を同じ条件で直接比較した試験ではない。固定用テープ、縫合法、放射線条件などの具体的推奨を、この症例で実際に行った内容として扱うことはできない。 / 利益相反: 著者らは競合する利益がないと申告している。

  2. Park SY, Lee GH, Park JM, Jin SG, Oh JH. Korean J Audiol. 2012;16(3):134-137. doi:10.7874/kja.2012.16.3.134. PMID:24653888; PMCID:PMC3936665.

    Clinical Characteristics of Auricular Keloids Treated with Surgical Excision

    研究デザイン: 耳介ケロイドを形態分類し、術式、再発、再発までの期間を調べた単施設後ろ向き症例集積。 / 対象: 耳介ケロイド15人。耳垂9人、耳輪6人で、平均追跡期間35.5か月。小病変は全切除・一次閉鎖とトリアムシノロン注射、大病変は部位と形態に合わせた再建を行った。 / 結果: 施設で治療した15人中3人が再発した。耳介は複雑な立体構造と少ない皮下組織を持つため、病変の位置・大きさ・形態に合わせた術式選択が必要とした。 / 限界: 少数の後ろ向き研究で、耳垂と耳輪、形態、術式が混在し、切除単独または補助療法同士の比較ではない。この症例の切除法や再発率を示すものではない。 / 利益相反: 原著全文に明確な利益相反・資金提供の記載を確認できなかった。

  3. Zawadiuk LRR, Van Slyke AC, Bone J, et al. Plast Surg (Oakv). 2022;30(1):49-58. doi:10.1177/2292550321995746. PMID:35096693; PMCID:PMC8793758.

    What Do We Know About Treating Recalcitrant Auricular Keloids? A Systematic Review and Meta-Analysis

    研究デザイン: 再発耳介ケロイドに対する切除後の小線源治療、圧迫、外照射、ステロイド注射を調べた系統的レビュー・メタ解析。 / 対象: 検索で得た887報から13研究を採用。11研究はエビデンスレベルIII、2研究はIVで、再発耳介ケロイドを治療法別に集計した。 / 結果: 再発率は切除+小線源治療9%、圧迫14%、外照射17%、ステロイド注射18%で、治療法間に統計学的有意差はなかった。 / 限界: 再発例だけを対象にし、研究の質は低く、治療条件と追跡期間の異質性が大きい。初回治療の本症例、国内の放射線適応、個別患者の最適な補助療法を直接示さない。 / 利益相反: 著者らは利益相反なし、研究・執筆・出版に対する資金提供なしと申告している。

  4. 厚生労働省

    医療広告ガイドライン

    自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。

よくあるご質問

Q. この症例は耳たぶのケロイドですか?

耳たぶではなく、軟骨のある耳輪上部のケロイドです。耳輪は皮膚と皮下組織に余裕が少ないため、病変を減らすことと耳の輪郭を保つことを一緒に考えます。

Q. 術後1週間の写真は完成した状態ですか?

術後1週間は軽い内出血や腫れを含む早期経過です。創部が安定した後も、赤み、硬さ、痛み・痒み、再び盛り上がる変化を継続して確認します。

Q. ケロイドは切除だけで治りますか?

この症例では切除を行いましたが、耳介ケロイドは切除後も再発することがあります。病変の強さと再発歴に応じ、テープ固定、圧迫、ステロイド、術後放射線治療などを組み合わせます。

Q. 病理検査は必要ですか?

ピアス後の経過、元の傷との位置関係、症状、形から臨床診断します。急速な増大、出血・潰瘍、感染、典型的でない色や硬さがあれば、別の皮膚腫瘍との鑑別のため生検または切除標本の病理検査を検討します。

Q. 耳輪ケロイドの切除は保険診療ですか?

赤み、盛り上がり、痛み、痒みなどがあり治療が必要なケロイドでは、貼り薬・注射・手術などが保険診療となる場合があります。見た目をさらに整える自由診療は自費となる場合があり、診断と治療内容に沿って費用区分を分けます。

ご予約・ご相談はこちら

気になる症状や治療方法について、初診予約・再診予約・お問い合わせからご相談いただけます。