症例紹介傷あと・ケロイド

ピアス後の耳垂ケロイドを切除した術後1週間の症例

ピアス孔が閉じた後に耳垂の前後へ大きくなり、痛みとかゆみを伴った耳垂ケロイドを切除した症例です。術前、術後1週間、反対側の写真を比べ、耳垂の形態と内出血を確認し、切除後の再発予防まで解説します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2022年12月20日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. ピアス孔から耳垂の前後へ広がった病変を確認します
  2. 術後1週は内出血と耳垂の輪郭を確認します
  3. 後斜位で耳垂の裏側と創部を追います
  4. 切除後は病変の活動性に合わせて再発を予防します
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

ピアス孔から耳垂の前後へ広がった病変を確認します

この症例では、閉じたピアス孔を起点に耳垂の前面と後面へ丸い隆起が大きくなり、痛みとかゆみも出ていました。病変が耳垂の輪郭を変える大きさになっていたため、耳垂の形を整えながら病変を取り除く切除を選びました。

診察では、隆起がピアスの傷の範囲を越えているか、硬さ・赤み・痛み・かゆみが続いているかを見ます。感染や別の腫瘤が疑われる所見があれば、切除組織を病理で確認し、ケロイドとの鑑別と切除断端を評価します。

ピアス痕を越えて耳垂の前後へ隆起し、痛みとかゆみを伴う病変では、大きさと活動性を見て治療を選びます。小さな単発ケロイドは、切除と術後補助療法、または複数の保存療法を組み合わせるとの報告がありました(参考文献1)。

耳垂の形態を残して病変を切除するときは、切除組織の増殖部と断端を病理で確認する意味があります。陰性断端だった16病変では再発がなく、再発した18病変はすべて陽性断端だったとの報告がありました(参考文献2)。

術後1週は内出血と耳垂の輪郭を確認します

術前、術後1週間、反対側を側面から比べています。術後1週には軽い内出血が残っていますが、ピアス孔周囲の大きな隆起は取り除かれ、耳垂の下縁から頬へ続く輪郭がなめらかに見えます。

この時期は形態だけでなく、血腫、感染、創の開き、皮膚色と痛みを確認します。反対側の耳垂は、左右を同じ形にするための型ではなく、もともとの耳垂の厚みと付き方を考える比較材料として使います。

術後早期は創傷治癒を確認しながら、再発予防を始める時期も検討します。ステロイド注射を切除直後に行った群の6か月再発は4例、開始を遅らせた群は9例だったとの報告がありました(参考文献3)。

後斜位で耳垂の裏側と創部を追います

後斜位では、術前に耳垂の裏側へ張り出していた隆起と、切除後の耳垂後面を比べます。術後1週間は創部が治る途中なので、耳垂のくびれと下縁の曲線、内出血の広がり、創縁の密着を同じ角度で記録します。

創が落ち着いた後は、ピアス孔周囲に再び硬い盛り上がりが出ていないか、かゆみや痛みが戻っていないかを追います。早い変化を記録しておくと、再発の活動性に合わせてステロイドや圧迫を始める時期を決めやすくなります。

切除後は病変の活動性に合わせて再発を予防します

耳垂の形態を大きく変える病変には切除を中心に考え、術後の赤み・硬さ・かゆみが強いときはステロイド、耳垂を安全に挟める形では圧迫を候補にします。再発歴がある病変や再発リスクが高い病変では、放射線治療を行える施設と連携し、年齢、部位、治療歴を踏まえて適応を検討します。

1週の形が整っていても、その後の創の成熟と再隆起を継続して見ます。耳垂の前面・後面を同じ角度で撮影し、硬さ、赤み、痛み、かゆみの変化を診察ごとに比べ、必要な補助療法を追加します。

耳垂ケロイドを切除した後は、再発リスクに合わせて補助療法を選びます。12か月以上の追跡で、放射線併用は16病変中2病変、ステロイド注射併用は12病変中4病変が再発したとの報告がありました(参考文献4)。

放射線と圧迫を比較するときは、再発率だけでなく治療を継続できるかも確認します。専門的な耳介ケロイド手術後の1年再発は、放射線群13.54%、圧迫群25.58%で、圧迫群では17.97%が補助療法を完遂できなかったとの報告がありました(参考文献5)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 耳垂を前面・側面・後斜位から観察し、ピアス孔、隆起の基部、耳垂前後への広がり、痛みとかゆみを一続きに記録します。
  • ピアス傷を越えて増大する硬い隆起はケロイドを考え、傷の範囲、増大経過、炎症所見を確認します。感染や別の腫瘤が疑われるときは、切除組織の病理診断へつなげます。
  • 耳垂の輪郭を変える大きさでは、病変を取り除くことと、残せる皮膚で自然な耳垂の曲線をつくることを同時に設計します。
  • 術後1週は創傷治癒と形態を確認し、その後は再び硬く盛り上がる初期変化を捉えて、ステロイド・圧迫・放射線の必要性を判断します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
切除+耳垂の形態修復 耳垂の前後へ大きくなり、痛み・かゆみ・変形を伴う病変 活動性の感染がある、または術後の創管理と再発予防を続けられない状態 手術1回後、創傷治癒と再発を長期に確認 腫れ、内出血、痛み、出血、感染、創離開、耳垂変形、再発 保険適用時は負担割合・術式で異なる。自費は施術内容で異なる 外科手術。保険適用は診断・症状・術式で決まる
ステロイド局所治療 術後または小さな病変で、赤み・硬さ・痛み・かゆみが続く状態 感染、皮膚萎縮が強い、薬剤に禁忌・過敏症がある状態 反応を見ながら複数回または一定期間 注射痛、皮膚萎縮、色素変化、毛細血管拡張 保険適用条件と薬剤・回数で異なる 使用薬剤の電子添文と診断に基づく
圧迫療法 術後の耳垂を安全に挟め、継続装着できる状態 創が閉じていない、圧迫で皮膚障害や循環障害を起こす状態 創傷治癒後に継続し、皮膚状態を定期確認 圧迫痛、かぶれ、皮膚びらん、装着負担 材料・装具と通院回数で異なる 使用する装具・材料の表示と使用目的に基づく
術後放射線治療 再発歴がある、または再発リスクが高い耳介ケロイド 年齢・部位・既往照射などから利益より放射線リスクが上回る状態 手術後の所定期間に連携施設で実施 皮膚炎、色素変化、創傷治癒への影響。長期リスクの説明が必要 保険適用条件と照射計画で異なる 放射線治療を行える医療機関で適応と線量を決定

費用の目安

  • 痛み・かゆみ、増大、変形などを伴うケロイド治療は、診断と治療内容により保険診療となる場合があります。自己負担額は保険負担割合と術式で異なります。
  • 成熟して平らになった傷あとを見た目のためにさらに整える治療は、自費診療となる場合があります。費用は治療内容で異なります。

元素材と院内料金正本に本症例の確定した総額はないため、金額は補完していません。

リスク・副作用・注意点

  • 切除後に出血、血腫、内出血、腫れ、痛み、感染、創離開、皮膚壊死、しびれ、左右差、耳垂変形、傷あとが生じることがあります。
  • 切除後もケロイドが再発し、元の範囲を越えて大きくなる可能性があります。
  • ステロイドでは注射痛・皮膚萎縮・色素変化・毛細血管拡張、圧迫では圧迫痛・かぶれ・皮膚びらんが起こることがあります。
  • 術後放射線は適応、照射範囲、線量、皮膚反応と長期リスクを説明し、連携する放射線治療施設で計画します。
  • 国内承認・適応: 本症例で確認できる治療は外科的切除です。ステロイド、圧迫、放射線は再発リスクに応じた別の選択肢であり、本症例で実施したとは記載していません。使用する薬剤・材料は各電子添文・表示、放射線治療は連携施設の治療計画に基づきます。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Ogawa R. Plastic and Reconstructive Surgery. 2022;149(1):79e-94e. doi:10.1097/PRS.0000000000008667. PMID:34813576; PMCID:PMC8687618.

    The Most Current Algorithms for the Treatment and Prevention of Hypertrophic Scars and Keloids: A 2020 Update of the Algorithms Published 10 Years Ago

    研究デザイン: 肥厚性瘢痕とケロイドの診断、予防、部位別治療をまとめた包括的アルゴリズムレビュー / 対象: 耳垂・耳介を含む肥厚性瘢痕とケロイド。2010年以降の無作為化試験、ガイドライン、部位別研究を対象とした。 / 結果: 小さな単発ケロイドでは、切除と術後補助療法による根治的治療、または複数の保存療法を組み合わせる選択肢が示された。耳垂では病変の形態に応じた切除法が論じられた。 / 限界: 単一の比較試験ではなく、根拠となる研究の部位、術式、補助療法、追跡期間が異なる。本症例の切除法と術後経過を検証した研究ではない。

  2. Chong Y, Kim CW, Kim YS, Chang CH, Park TH. Journal of Dermatology. 2018;45(2):139-144. doi:10.1111/1346-8138.14110. PMID:29083048; PMCID:PMC5813184.

    Complete excision of proliferating core in auricular keloids significantly reduces local recurrence: A prospective study

    研究デザイン: 切除した耳介ケロイドの増殖部と病理学的断端を前向きに評価し、局所再発との関係を追った単施設研究 / 対象: 耳介ケロイド71人87病変。平均追跡19.8か月で、0.8cm未満と埋没型・混合型は除外された。 / 結果: 87病変中18病変が再発した。陰性断端16病変では再発0で、再発18病変はすべて陽性断端だった。 / 限界: 無作為化比較ではなく、選択された耳介ケロイドを対象とした単施設研究で、術式と補助療法も本症例と同一ではない。本症例の病理結果は示されていない。

  3. Burusapat C, Wanichjaroen N, Wongprakob N, Sapruangthong R. Plastic and Reconstructive Surgery Global Open. 2021;9(8):e3729. doi:10.1097/GOX.0000000000003729. PMID:34367855; PMCID:PMC8337065.

    The Effectiveness of Immediate Triamcinolone Acetonide Injection after Auricular Keloid Surgery: A Prospective Randomized Controlled Trial

    研究デザイン: 耳介ケロイド切除後のトリアムシノロン注射を、切除直後に行う群と術後に開始する群へ分けた前向き無作為化比較試験 / 対象: 34人。切除直後群18人、開始を遅らせた群16人。平均年齢25.52歳、平均最大径14.49mmだった。 / 結果: 6か月までの再発は切除直後群4人22.2%、開始を遅らせた群9人56.25%で、5か月時点から有意差があった。試験期間中に記録された合併症はなかった。 / 限界: 34人、6か月追跡の耳介ケロイド研究で、長期再発、本症例の耳垂形態、切除法、ステロイドを実際に使用したかを示さない。

  4. Sclafani AP, Gordon L, Chadha M, Romo T 3rd. Dermatologic Surgery. 1996;22(6):569-574. doi:10.1111/j.1524-4725.1996.tb00376.x. PMID:8646474.

    Prevention of earlobe keloid recurrence with postoperative corticosteroid injections versus radiation therapy: a randomized, prospective study and review of the literature

    研究デザイン: 耳垂ケロイド切除後のステロイド注射と放射線治療を比較した前向き無作為化試験 / 対象: 耳垂ケロイド31病変を12か月以上追跡した。再発率の記載は放射線群16病変、ステロイド群12病変に基づく。 / 結果: 再発は放射線群2/16病変12.5%、ステロイド群4/12病変33%だったが、統計学的有意差は認められなかった。 / 限界: 1996年の小規模研究で、3病変は再発率の分母に含まれず、現行の線量設計やステロイド方法と異なる可能性がある。本症例の補助療法を示す研究ではない。全文にはアクセスできずPubMed抄録を確認した。

  5. Li Q, Chen Z, Zou X, et al. Radiotherapy and Oncology. 2024;199:110425. doi:10.1016/j.radonc.2024.110425. PMID:39002572.

    Effectiveness of postoperative superficial radiotherapy following the keloid-cross-flap surgery for auricular keloid: A prospective cohort study

    研究デザイン: 耳介ケロイドのkeloid-cross-flap surgery後に、表在放射線治療と圧迫療法を比較した前向きコホート研究 / 対象: 放射線群123人、圧迫群128人。主要評価項目は1年再発で、傾向スコアマッチング後は各群59人を比較した。 / 結果: 全体の再発は放射線群13.54%、圧迫群25.58%で、圧迫群の17.97%が補助療法を完遂しなかった。マッチング後の放射線群再発は13.56%だった。 / 限界: 無作為化試験ではなく、特定のkeloid-cross-flap術式後の研究で、単純な耳垂切除や本症例へそのまま適用できない。全文にはアクセスできずPubMed抄録を確認した。

よくあるご質問

Q. この症例では、どのような治療を行いましたか?

ピアス孔が閉じた後に耳垂の前後へ大きくなり、痛みとかゆみを伴った耳垂ケロイドを切除しました。術後1週間は軽い内出血が残るものの、耳垂の輪郭は整って見えます。

Q. ケロイドと肥厚性瘢痕は、どのように見分けますか?

隆起が元のピアス傷を越えて広がるか、増大が続くか、痛み・かゆみがあるかを確認します。傷の範囲にとどまって成熟とともに平らになる経過は肥厚性瘢痕を考えます。感染や別の腫瘤が疑われるときは病理診断へ進みます。

Q. 耳垂ケロイドは切除だけで治療しますか?

耳垂の輪郭を変える大きさでは切除が中心になります。再発リスクに合わせて、術後のステロイド、圧迫、放射線治療を組み合わせることがあります。実際の組み合わせは病変の大きさ、活動性、既往治療で決めます。

Q. 耳垂ケロイドの治療は保険診療ですか?

痛み・かゆみ、増大、変形などがあり、ケロイドとして医学的な治療が必要な場合は保険診療になることがあります。成熟して平らになった傷あとを見た目のためにさらに整える治療は、自費診療となる場合があります。

Q. 術後に早めの連絡が必要な症状はありますか?

増えていく出血や腫れ、強くなる痛み、発熱、膿、創の開き、耳垂の皮膚が白色または暗紫色に変化したときは早めにご連絡ください。創が落ち着いた後に硬い隆起や痛み・かゆみが戻った場合も診察します。

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