二重切開1か月後の経過と眼瞼下垂手術との違い
他院で埋没法を3回受けても二重線が外れた症例に、埋没糸抜去と瞼板前組織の処理を伴う二重切開を行った1か月後の経過です。開眼・閉瞼の変化を追いながら、美容目的の切開法と機能改善を目的とする眼瞼下垂手術の違いを解説します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2022年9月5日
- 実質更新日
- 2026年8月9日



Contents
目次
術後1か月は、左右の二重線と目の開けやすさを見ます
もともとは一重で、他院の埋没法で作った二重線が3回とも外れた症例です。切開法で残っていた埋没糸を抜去し、瞼板前組織を処理しました。正面の比較では、術後1ヶ月に左右の二重線がそろい、上まぶたの細かいしわが目立ちにくくなっています。
少量の余剰皮膚も切除しているため、皮膚のかぶさりが減り、目を開けやすくなっています。二重線の高さだけでなく、まつ毛の向き、黒目の見え方、眉を上げずに開けられるかを左右で比べます。
開眼の経過は、術前・1週間後・1か月後を同じ向きで比べます
開眼正面を術前、術後1週間、術後1か月の順に並べると、1週間後に残っていた広い腫れが1か月後にはさらに減り、二重線とまぶたの輪郭を比べやすくなっています。
本症例では、術後2、3日目の腫れを100%とした臨床上の目安で、1週間後は30%、1か月後は10%まで落ち着いたと記録しています。この割合を一律の回復表にはせず、左右の腫れ方、二重線、まつ毛の向き、開閉眼を同じ条件で追います。
閉瞼では、切開線とまぶたが閉じる状態を追います
閉瞼正面も術前、術後1週間、術後1か月の順に比べます。1週間後に見えていた切開線の赤みと腫れは1か月後に薄くなり、閉じたときの左右差も小さくなっています。
切開線の色と硬さ、創縁の連続、まぶたが最後まで閉じるかに加え、乾燥感、異物感、角膜の痛みを確認します。二重線が落ち着いていても、眼表面を守る閉瞼機能は別に評価します。
1か月後に閉瞼と乾燥を同時に確認する理由として、上眼瞼手術後はドライアイ症状と眼表面染色が増え、涙液層破壊時間が1か月・6か月時点で低下したとの報告がありました(参考文献1)。
開閉眼の動きで、二重線と閉じ方を続けて確認します
開眼・瞬き・閉瞼を連続して見ると、静止画では分かりにくい二重線の折れ込み、まつ毛の向き、左右の開く速さ、閉じ切る位置を比較できます。
術後1か月は完成時点ではなく、腫れと傷あとがさらに変化する途中です。静止画と動きを同じ角度で残し、二重線の乱れや閉じにくさが減っているかを次の診察へつなげます。
二重切開と眼瞼下垂手術は、診察の目標が異なります
二重切開は、一重を二重にする、外れた二重線を作り直す、皮膚や瞼板前組織の厚みを整えるなど、見た目の改善が主な目的です。本症例では埋没糸抜去、瞼板前組織の処理、少量の余剰皮膚切除によって二重線と上まぶたのかぶさりを整えました。
眼瞼下垂手術は、上まぶたが瞳へ重なり、開けづらさや視野の狭さが生じている状態の機能改善が主な目的です。額の力を抜いて瞼縁の位置を測り、挙筋機能、眉を上げる前頭筋代償、視野と日常生活への影響を確認して術式を選びます。
眼瞼下垂手術で二重幅とは別に瞼縁を測る理由として、挙筋腱膜前転後にMRD1が2〜4mm、左右差0.5mm以内、良好な瞼縁形状をすべて満たした割合は79.4%と73.1%だったとの報告がありました(参考文献2)。
令和8年度診療報酬点数表では、眼瞼下垂症手術K219として、眼瞼挙筋前転法7,200点、筋膜移植法18,530点、その他のもの6,070点が掲載されています(参考文献3)。
1か月後でも、急な痛みと視機能変化はすぐに評価します
1か月後に残る軽いむくみや切開線の赤みは経過で確認します。一方、片側だけ急に増える腫れ、強い眼窩痛、眼球突出、視力・視野の変化、複視、止まりにくい出血は、予定の再診を待たずに評価します。
視機能に関わる症状を緊急対応へ分ける理由として、眼瞼手術後の眼窩内出血は約0.055%、永久的な視力喪失を伴うものは訂正後約0.0045%で、多くは術後3時間以内でしたが数日後にも起こり得るとの報告がありました(参考文献4)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 術後1か月は、開眼正面で二重線、まつ毛の向き、黒目の見え方、眉の位置を比べ、閉瞼正面で切開線、創縁、閉じ切る位置を確認します。
- 開けづらさが残る場合は、額の力を抜いてMRD1と挙筋機能を測り、皮膚のかぶさりと前頭筋代償を分けます。
- 見た目の二重線を整える切開法と、瞼縁を上げて視野を改善する眼瞼下垂手術を目的から分け、術後は二重線・瞼縁・閉瞼・眼表面を順に再評価します。
- 急な片側腫脹、強い眼窩痛、眼球突出、視力・視野変化、複視は、経過観察にせず緊急評価へ切り替えます。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 二重切開法 | 一重を二重にする、外れた二重線を作り直す、皮膚・瞼板前組織の厚みを直接整える状態 | 瞼縁の低下と視野障害が主で眼瞼下垂手術が必要な状態、希望する二重線が定まらない状態 | 通常1回。術直後、抜糸時、1か月後以降へ経過を追跡 | 腫れ、内出血、赤み、傷あと、左右差、二重線の乱れ、閉じにくさ | 切開法(両目)275,000円(税込) | 美容目的の自由診療手術 |
| 眼瞼挙筋前転法 | 挙筋機能が保たれ、腱膜の緩みで瞼縁が下がり、開けづらさや視野障害がある眼瞼下垂 | 二重幅など見た目の希望だけが主な状態、原因疾患の評価を先に行う必要がある状態 | 通常1回。開き、左右差、瞼縁形状、閉瞼を経過で評価 | 腫れ、内出血、左右差、低矯正・過矯正、閉瞼不全、ドライアイ | 保険診療K219 7,200点。窓口負担は負担割合、診察、麻酔、薬剤などで異なる | 機能障害を伴う眼瞼下垂症と診断された場合の保険診療手術 |
| 筋膜移植法・その他の眼瞼下垂手術 | 挙筋機能が著しく弱いなど、眼瞼挙筋前転法とは異なる方法が必要な眼瞼下垂 | 挙筋機能が保たれ、腱膜前転で機能改善を見込める状態、見た目だけが主な状態 | 通常1回。開き、閉じ方、角膜、左右差を経過で評価 | 腫れ、内出血、左右差、閉瞼不全、ドライアイ、角膜障害、再発 | 保険診療K219:筋膜移植法18,530点、その他6,070点 | 診断と挙筋機能に応じて選ぶ保険診療手術 |
費用の目安
- 現行料金:切開法(両目)275,000円(税込・自由診療)
- 眼瞼下垂症手術K219:眼瞼挙筋前転法7,200点、筋膜移植法18,530点、その他6,070点
2026年8月9日に当院現行料金表と令和8年度診療報酬点数表を確認しました。美容目的の二重切開は自由診療です。眼瞼下垂症の保険適用と窓口負担は診断、術式、負担割合、片側・両側、診察、検査、麻酔、薬剤などで異なります。
リスク・副作用・注意点
- 痛み、赤み、腫れ、内出血、出血、血腫、感染、創離開、傷あと、左右差、二重線の移動・消失・多重線
- 低矯正・過矯正、まぶたの開閉しにくさ、閉瞼不全、ドライアイ、異物感、角膜障害
- まれに眼窩内出血、眼球突出、複視、視力・視野障害など、緊急処置を要する合併症
- 国内承認・適応: 二重切開と眼瞼下垂手術は手術手技です。美容目的の二重切開は自由診療で、機能障害を伴う眼瞼下垂症と診断された場合は保険診療の対象です。手術で使用する麻酔薬、止血薬、縫合材料、医療機器は販売名と承認された使用目的を個別に説明します。
片側だけ急に増える腫れ、強い眼窩痛、眼球突出、視力・視野の変化、複視、止まりにくい出血がある場合は直ちにご連絡ください。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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Effect of upper eyelid blepharoplasty on the ocular surface, tear film, and corneal microstructure
研究デザイン: 皮膚と眼輪筋の一部を切除する上眼瞼形成の術前後を比較した単施設前向き研究。 / 対象: 22人22眼を術前、術後1か月、6か月に評価。21人が女性、平均61歳。 / 結果: 術後1か月と6か月でドライアイ症状スコアと角膜フルオレセイン・リサミングリーン染色が増え、涙液層破壊時間が短縮した。シルマー試験と角膜共焦点顕微鏡所見には有意な変化がなかった。 / 限界: 22眼、単一術者、対照群なしの研究で、高年齢層の皮膚・眼輪筋切除を伴う上眼瞼形成が対象。本症例の埋没糸抜去、瞼板前組織処理を伴う二重切開における症状頻度を示さない。2026年8月9日にPMC原著全文とPubMed書誌を確認した。 / 利益相反: 外部資金なし。著者らは開示すべき利益相反なしと申告。
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Comparison of two- and three-point sutures for advancing the levator aponeurosis in Asian eyelids
研究デザイン: 挙筋腱膜前転の2点固定と3点固定を比較した単一術者・後ろ向き研究。術後3か月以上を追跡。 / 対象: アジア人60人87眼。2点固定34人46眼、3点固定26人41眼。 / 結果: MRD1 2〜4mm、左右差0.5mm以内、良好な瞼縁形状をすべて満たした割合は2点固定79.4%、3点固定73.1%で、群間に有意差はなかった。 / 限界: 後ろ向き、単一術者・単一施設で、追跡は3〜17か月。視野や生活の質を評価せず、本症例の二重切開がいずれかの挙筋固定法を伴うことを示す資料ではない。2026年8月9日にPMC原著全文とPubMed書誌を確認した。 / 利益相反: PMC原著全文の利益相反欄では著者に開示事項なしと記載。
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令和8年度診療報酬点数表 K219 眼瞼下垂症手術
研究デザイン: 厚生労働省が公開する現行の診療報酬点数表。 / 対象: 臨床研究ではなく、日本の保険診療における手術料の公定点数。 / 結果: K219は眼瞼挙筋前転法7,200点、筋膜移植法18,530点、その他のもの6,070点。 / 限界: 公定点数のみを示し、実際の窓口負担は負担割合、片側・両側、診察、検査、麻酔、薬剤などで変わる。保険適用は眼瞼下垂症の診断と機能障害を前提とし、美容目的の二重切開には適用されない。2026年8月9日に厚生労働省の現行点数表を確認した。 / 利益相反: 行政公表資料のため該当しない。
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Incidence of Postblepharoplasty Orbital Hemorrhage and Associated Visual Loss
研究デザイン: 米国眼形成再建外科学会会員への質問票による回顧的調査。出血の発症時期、治療、視力喪失を集計した。 / 対象: 237人の回答医師が経験した眼瞼美容手術269,433件。眼窩内出血149件、一時的視力喪失48件、永久的視力喪失12件。 / 結果: 眼窩内出血は約0.055%、永久的視力喪失を伴う出血は訂正後約0.0045%。多くは術後0〜3時間に起き、24時間後にリスクは低下したが数日後にも発症した。 / 限界: 医師の記憶に基づく質問票で想起バイアスがある。上・下眼瞼、術式、併用手技が混在し、本症例の二重切開法だけの発生率ではない。原著全文は取得できず、2026年8月9日にPubMed抄録・XML、訂正文、書誌情報を確認した。 / 利益相反: PubMed抄録・XMLに資金提供・利益相反の記載がなく、原著全文を取得できなかったため不明。
よくあるご質問
Q. この症例で二重切開を選んだ理由は何ですか?
他院の埋没法で作った二重線が3回とも外れ、残った埋没糸の抜去と瞼板前組織の処理が必要だったためです。少量の余剰皮膚も切除し、二重線と皮膚のかぶさりを整えました。
Q. 術後1か月で腫れは完成しますか?
本症例では、術後2、3日目を100%とした目安で1週間後30%、1か月後10%まで腫れが落ち着きました。1か月後も傷あとと二重線は変化するため、開眼・閉瞼・瞬きを同じ向きで追います。
Q. 二重切開と眼瞼下垂手術はどう違いますか?
二重切開は二重線やまぶたの厚みなど見た目を整えることが主目的です。眼瞼下垂手術は、瞼縁が下がって開けづらい、視野が狭いといった機能障害を改善することが主目的で、挙筋機能や視野を測って判断します。
Q. 眼瞼下垂手術は保険診療になりますか?
まぶたが瞳へ重なり、開けづらさや視野の狭さなど機能障害を伴う眼瞼下垂症と診断された場合は保険診療の対象です。二重幅など見た目の希望だけを目的とする手術は自由診療です。
Q. 術後1か月でもすぐ連絡した方がよい症状はありますか?
片側だけ急に増える腫れ、強い眼窩痛、眼球突出、視力・視野の変化、複視、止まりにくい出血がある場合は、予定日を待たず直ちにご連絡ください。
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