医師解説

マリオネットラインでヒアルロン酸とボトックスをどう使い分けるか

マリオネットラインは、口角を下げる筋肉の力と、下顎・口角横の骨格的な凹みや支持低下が重なって深くなります。ヒアルロン酸1ccで支えを補い、口角ボトックスで下向きの動きを弱めた2週間後の症例から使い分けを説明します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2022年4月6日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. ヒアルロン酸1ccと口角ボトックスを併用した2週間後の経過
  2. 右斜位では筋肉の下向きの力と骨格の凹みを分けます
  3. 左斜位でも支えと動きの左右差を2週間後に再評価します
  4. 診療で確認するポイント
  5. 治療選択の比較
  6. 費用の目安
  7. リスク・副作用・注意点
  8. 関連記事
  9. 関連施術・関連症状のご案内
  10. 執筆・監修
  11. 参考にした一次情報・ガイドライン
  12. よくあるご質問

ヒアルロン酸1ccと口角ボトックスを併用した2週間後の経過

この症例では、ジュビダームビスタ ボリューマXCを1cc使用し、口角ボトックスを組み合わせました。正面の術前と施術2週間後を比べると、口角の下から下顎へ伸びる影が浅くなり、口元の印象がすっきりしています。

口の横にできるマリオネットラインには、頬の下垂だけでなく、口角を下へ引く口角下制筋や広頸筋の力、下顎骨の形と口角横の支持低下が関わります。静止時にも残る凹みにはヒアルロン酸、表情に伴って強まる下向きの力にはボトックスを割り当てます。

口周囲の若返り治療では、見えている溝だけを埋めず、頬・口唇・口角・マリオネットラインの形と動きに合わせて治療を組み合わせます。フィラーやボツリヌストキシンなどを部位ごとに使い分けた後は、96.5%が満足または非常に満足し、内出血16.1%、軽い左右差0.5%であったとの報告がありました(参考文献1)。

右斜位では筋肉の下向きの力と骨格の凹みを分けます

右斜位では、口角下の溝だけでなく、口角から下顎縁へ続く影と、口元からフェイスラインへのつながりを比べます。2週間後は口角下の影がやわらぎ、下顔面の輪郭がなだらかになっています。

力を抜いた状態でも残る口角横の凹みや骨格の支持不足には、形を支えるヒアルロン酸を優先します。会話や口角を動かしたときに下向きの力が強まる場合は、支えを補う量を決めた後、口角下制筋の働きを口角ボトックスで弱めます。

筋収縮と支持不足が重なるマリオネットラインでは、早期にはボツリヌストキシンAとヒアルロン酸またはCaHAを組み合わせ、修復治療では中顔面・顎のフィラーとボツリヌストキシンAを用いることが推奨されたとの報告がありました(参考文献2)。

左斜位でも支えと動きの左右差を2週間後に再評価します

左斜位でも、口角下の影、下唇外側からフェイスラインへ続く凹み、左右の口角の高さを術前と2週間後で比べます。マリオネットラインそのものへ量を集めるのではなく、左右それぞれの骨格的な支えと筋肉の動きへ治療を分けると、口元を重くせずに整えられます。

2週間後は、口角ボトックスの作用とヒアルロン酸注入後の初期の腫れが落ち着いた時点です。安静時だけでなく、笑う、話す、唇をすぼめる動作で口角や下唇の左右差がないかを確認し、追加治療の前に支えと動きのどちらが残っているかを再判定します。

ボリューマXCの注入部は1〜2か月ほどしこりのように触れることがあります。強く押し続けずに経過を見ますが、強い痛み、皮膚が白くなる・紫色になる変化、視力の異常があれば、血流障害の可能性があるため直ちに連絡してください。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 正面と左右斜位を同じ条件で撮影し、安静時に残る口角横の凹みと、会話・笑顔で強くなる口角下制筋の動きを分けます。
  • この症例では、骨格的な凹みと支持不足へボリューマXC 1ccを配分し、マリオネットラインそのものへ大量に入れず、口元から下顎へのつながりを支えます。
  • 支えを補う範囲を決めた後、口角を下げる力が強い側へ口角ボトックスを加え、形を作る治療と動きを調整する治療を混同しません。
  • 2週間後に正面・左右斜位と表情時を再撮影し、口角下の影、口角の高さ、笑顔・会話・食事時の動きを確認してから次の調整を決めます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
ジュビダームビスタ ボリューマXC 安静時にも残る口角横・下顎の凹み、骨格的な支持不足が主な状態 筋肉の下向きの力だけが主な状態、感染・炎症がある部位、容量追加で口元が重くなる状態 通常1回。本症例は1ccを注入し、2週間後に再評価 痛み、腫れ、内出血、左右差、しこり。まれに血管閉塞、皮膚壊死、視力障害、脳卒中 1本1cc 77,000円 国内承認医療機器(承認番号22800BZX00338000)。成人の中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリュームを増大する目的で承認
口角ボトックス 表情時に口角を下へ引く力が強く、口角下制筋の動きがマリオネットラインを深くする状態 安静時の凹み・支持不足だけが主な状態、口元の筋力低下や嚥下障害がある状態 通常1回。2週間後に口角と下唇の動きを再評価 赤み、腫れ、内出血、左右差、笑顔・発音・食事時の違和感 ボトックス・ビスタ 表情ジワ 1部位 33,000円 ボトックス・ビスタは国内承認薬ですが、口角下制筋への使用は承認適応外
ヒアルロン酸1cc+口角ボトックス 骨格的な凹み・支持不足と、口角を下げる筋肉の力が同時に関わる状態 ヒアルロン酸またはボトックスの一方だけで原因へ対応できる状態 本症例は両施術を組み合わせ、2週間後に正面・左右斜位を再評価 両施術の痛み、腫れ、内出血、左右差、しこり、口元の動かしにくさ ボリューマXC 1ccとボトックス1部位の組み合わせ例 110,000円 ボリューマXCは国内承認医療機器。口角ボトックスは承認適応外使用

費用の目安

  • ジュビダームビスタ ボリューマXC 1本1cc 77,000円
  • ボトックス・ビスタ 表情ジワ 1部位 33,000円/2部位 55,000円/3部位 75,000円/4部位 88,000円
  • ボリューマXC 1cc+ボトックス1部位として計算する場合 110,000円

ボトックスの費用は治療部位数で計算します。

リスク・副作用・注意点

  • ボリューマXCでは、注入部の痛み、腫れ、内出血、硬結、炎症、感染が生じることがあり、血管内への誤注入では血管閉塞、皮膚壊死、視力障害、脳卒中などの重篤な合併症が報告されています。
  • ボトックス・ビスタでは、注射部位反応、左右差、局所筋力低下が生じることがあり、作用が周囲または遠隔筋へ及ぶと嚥下障害や呼吸障害が起こることがあります。
  • ボトックス・ビスタの口角下制筋への使用は承認適応外で、妊婦または妊娠している可能性がある方には使用しません。
  • 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは、成人の中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを増大する目的で国内承認された医療機器です(承認番号22800BZX00338000)。ボトックス・ビスタは眉間または目尻の表情皺を適応として国内承認されていますが、口角下制筋への注射は承認適応外です。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Wollina U. Perioral rejuvenation: restoration of attractiveness in aging females by minimally invasive procedures. Clin Interv Aging. 2013;8:1149-1155. doi:10.2147/CIA.S48102.

    Perioral rejuvenation: restoration of attractiveness in aging females by minimally invasive procedures

    研究デザイン: 口周囲の加齢変化と低侵襲治療を扱ったナラティブレビューに、著者施設の症例集積を併記 / 対象: 50歳以上の女性57人、平均59.2±7.9歳(50〜84歳)。計199回の治療、平均追跡38±11.5か月 / 結果: 患者の96.5%が満足または非常に満足し、内出血16.1%、軽い左右差0.5%で、ヘルペス再活性化と細菌感染は認めませんでした。 / 限界: 治療法、製剤、注入部位が均一でない単施設症例集積で、対照群がなく、ボリューマXC 1ccと口角ボトックスの併用を直接評価した試験ではありません。著者はAllerganとMerzから講演・講習の謝礼を受けています。

  2. Chao YY, Chhabra C, Corduff N, et al. PAN-ASIAN CONSENSUS-Key Recommendations for Adapting the World Congress of Dermatology Consensus on Combination Treatment with Injectable Fillers, Toxins, and Ultrasound Devices in Asian Patients. J Clin Aesthet Dermatol. 2017;10(8):16-27.

    Pan-Asian consensus recommendations for facial aesthetic treatment

    研究デザイン: アジア人の顔面美容治療について11人の専門医が行ったコンセンサス / 対象: アジア各地域の専門医11人。70〜90%の賛同を中等度、90%以上を強い合意、全員一致を絶対的合意と定義 / 結果: マリオネットラインの早期治療ではボツリヌストキシンAとHAまたはCaHA、修復治療では中顔面・顎のフィラーとボツリヌストキシンAを用いる推奨が全員一致でした。 / 限界: 患者を対象にした比較試験ではなく、注入量、製剤、施術間隔、効果量は示していません。複数の著者が注入製剤・機器メーカーとの講演、助言、研究関係を開示しています。

  3. PMDA

    医療機器の承認審査に関する情報

    販売名、承認番号、承認範囲を確認する公的情報です。

  4. 厚生労働省

    医療広告ガイドライン

    自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。

よくあるご質問

Q. マリオネットラインにヒアルロン酸とボトックスを両方使うのはなぜですか?

ヒアルロン酸は安静時にも残る骨格的な凹みと支持不足を補い、口角ボトックスは口角を下へ引く筋肉の動きを弱めます。凹みと動きの両方が関わる場合は、異なる原因へ一つずつ対応するため両治療を組み合わせます。

Q. この症例でボリューマXCを1cc使った理由は何ですか?

口角横から下顎へ続く骨格的な凹みと支持不足へ量を配分し、線そのものを膨らませずに口元を支えるためです。ボリューマXCは成人の下顎部を含む減少したボリュームの増大に国内承認された医療機器です。

Q. 施術効果はいつ確認しますか?

この症例では2週間後に、正面・左右斜位の口角下の影と、笑顔・会話・食事時の口元の動きを確認しました。そこで静止時の凹みと表情時の下向きの力のどちらが残っているかを分けます。

Q. 注入後のしこりはいつまで続き、どの症状なら連絡が必要ですか?

注入部は1〜2か月ほどしこりのように触れることがあります。強い痛み、皮膚が白い・紫色になる変化、視力低下や見え方の異常は血流障害の可能性があるため、直ちに当院へ連絡してください。呼吸が苦しい、飲み込みにくいなどの症状は救急受診が必要です。

Q. ボリューマXC 1ccと口角ボトックスの費用と承認状況を教えてください。

ボリューマXC 1ccは77,000円、ボトックス・ビスタ1部位は33,000円で、同じ組み合わせ例は合計110,000円です。ボリューマXCは国内承認医療機器ですが、ボトックス・ビスタの口角下制筋への使用は承認適応外です。

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