医師解説しわ・たるみヒアルロン酸

口周りのたるみをヒアルロン酸1ccで整える考え方

口周りのたるみが気になっていた症例に、顎先へジュビダームビスタ ボラックスXCを1cc注入しました。顎を前方・下方へ補うと、下唇から顎、首へ続く輪郭と口元の影が整います。正面・左右斜位・側面から、顎の支持で口周りを整える考え方を解説します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2021年12月20日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. 正面:顎先1ccで下顔面の輪郭を整える
  2. 斜位:下唇から顎へ続く影を浅くする
  3. 側面:顎を下に伸ばすだけでなく、前へ出す
  4. 反対側の斜位:顎先と口元のつながりを左右で確認
  5. 反対側の側面:横顔と注入後の経過を確認
  6. 診療で確認するポイント
  7. 治療選択の比較
  8. 費用の目安
  9. リスク・副作用・注意点
  10. 関連記事
  11. 関連施術・関連症状のご案内
  12. 執筆・監修
  13. 参考にした一次情報・ガイドライン
  14. よくあるご質問

正面:顎先1ccで下顔面の輪郭を整える

正面では、治療前は顎先の幅が広く、口元から顎へ移る輪郭が丸く見えていました。治療後は顎先の中央に高さと前方への支えが加わり、下顔面が縦方向へつながって、口周りのたるみ感が軽く見えます。

この症例でヒアルロン酸を入れた部位は口角やほうれい線ではなく顎先です。ジュビダームビスタ ボラックスXCを総量1cc使用し、正面の中央線と左右の顎輪郭を見ながら顎先の形をつくりました。

顎先の後退へボラックスXCを選ぶ根拠として、24週時点の顎の前方投影角度の変化は注入群2.97度、無治療群0.09度で、医師評価による改善率は92.6%対4.2%、変化は52週まで保たれたとの報告がありました(参考文献5)。

斜位:下唇から顎へ続く影を浅くする

一方の斜位では、治療前は下唇より顎先が後方にあり、下唇の下から顎へ落ちる影が口元のもたつきを強く見せていました。治療後は顎先が前方・下方へ出て、下唇から顎へ続く線とフェイスラインのつながりが明瞭になっています。

口周りのたるみ感が、皮膚の余りや口角の溝ではなく、顎の後退による下顔面の支持不足から強調されている場合は、気になる線へ直接注入する前に顎先を補います。1ccを顎に集中させることで、口元の動きを変えずに横顔の土台を整えました。

この症例のように顎の後退が口元の影を強めている場合は、まず顎先の支持を補います。一方、口周りの動きに伴うしわを直接治療する別の選択肢では、8週時点の改善率が注入群80.7%、無治療群7.8%で、52週でも注入群の66%に改善がみられたとの報告がありました(参考文献1)。

側面:顎を下に伸ばすだけでなく、前へ出す

側面では、治療後に顎先の最前点が前へ移り、鼻・口唇・顎の並びが整っています。顎を細く下へ伸ばすだけでなく、前方への投影を加えたことが、この症例で長年気になっていた横顔の変化につながりました。

使用したボラックスXCは、硬さと形状保持性を利用して顔面のボリュームを補う製剤です。顎先の骨格に沿って前方への支えと下顔面の長さを同じ1ccの中で調整し、正面で細くしすぎず、側面で出しすぎない位置を終点としました。

ボラックスXCの国内添付文書では、顔面のボリューム回復・増大を目的に皮下または骨膜上深部へ使用する製剤で、治療3か月後の顎の前方投影角度は無治療群より平均2.51度大きかったとの報告がありました(参考文献4)。

反対側の斜位:顎先と口元のつながりを左右で確認

反対側の斜位でも、治療後は顎先の前方投影が加わり、下唇から顎、顎から下顎縁へ続く輪郭が滑らかに見えます。片側だけの写真で決めず、左右の斜位で顎先の中心、幅、口角下の影を見比べます。

顎先では、正中近くを上行オトガイ動脈が走り、左右差や舌下動脈との吻合があります。顎先の中央を一つの安全な平面とみなさず、骨・筋肉・皮下の位置関係を把握して、刺入点と注入層を選びます。

顎先の正中近くでも血管走行を確認して注入する理由として、優位な上行オトガイ動脈は正中から平均5.64mm外側、皮膚から平均4.15mmの筋層を通り、舌下動脈と吻合していたとの報告がありました(参考文献3)。

反対側の側面:横顔と注入後の経過を確認

反対側の側面でも、顎先が前へ出て、口唇から顎、首へ続く下顔面の輪郭が整っています。正面、左右斜位、左右側面の5方向を並べることで、1ccによる顎の高さ、前方投影、左右の輪郭を確認できます。

注入後は、顎先に触れたときの硬さやしこり感が約1〜2か月続くことがあります。強く増す痛み、皮膚の白色化や暗紫色のまだら、舌の痛み・色調変化、見えにくさが出た場合は、通常の経過を待たず血管閉塞として直ちに対応します。

顎注入後の経過を一過性の反応と緊急性のある合併症に分ける理由として、多くは短期間の注入部反応でしたが、まれな重い有害事象は数か月持続し、積極的な治療を要したとの報告がありました(参考文献2)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 口周りのたるみ感を、ほうれい線・マリオネットラインだけで見ず、下唇より顎先がどの位置にあるか、オトガイ唇溝の深さ、顎先から下顎縁へのつながりを正面・斜位・側面で見ます。この症例では顎の後退が口元の影を強めていたため、顎先を最初の治療部位としました。
  • ジュビダームビスタ ボラックスXC 1ccを顎先へ使用し、前方投影と下顔面の長さを整えました。注入後は正面で顎先の中心と幅、左右斜位で口角下の影、側面で鼻・口唇・顎の位置を見直します。
  • 上行オトガイ動脈は正中近くの筋層を通り、舌下動脈と交通するため、顎先でも血管閉塞は皮膚だけの問題ではありません。解剖に沿って刺入点と深さを選び、少量ずつ注入しながら痛み、皮膚色、毛細血管再充満、舌の症状を確認します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
口周りへのHA 局所的な影・溝・支持不足を少量補正 皮膚余剰・強い下垂、過量変化を希望 1回後に動きと腫れを再評価 腫れ、内出血、凹凸、左右差、血管閉塞 1cc77,000円+カテラン針11,000円 製剤・目的ごとに国内承認確認
ボツリヌストキシン 筋収縮による口周りじわ・口角下制が主体 口唇閉鎖・発音・飲水への影響が懸念 通常1回、約2週で評価 発音・飲水・笑顔の違和感、左右差等 部位・製剤で異なる 製剤・部位ごとに国内承認確認
RF・HIFU・手術 皮膚・支持組織のゆるみや余剰が主体 局所的なボリューム不足だけを補正したい 機器・術式ごと 熱感、腫れ、神経症状、瘢痕等 治療ごとに異なる 機器・術式ごとに承認・適応確認

費用の目安

  • ヒアルロン酸1本(1cc)77,000円。
  • カテラン針11,000円。症例の注入関連合計は88,000円です。

1ccは症例固有で、追加本数・部位別手技で総額が変わります。

リスク・副作用・注意点

  • 腫れ、内出血、痛み、凹凸、硬さ、左右差、口元の違和感が生じます。
  • 感染、結節、遅発性炎症、アレルギーが起こることがあります。
  • まれに血管閉塞、皮膚壊死、失明を含む視覚障害が起こり得ます。

動く部位の機能評価と血管閉塞の緊急対応を別々に説明します。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Sundaram H, et al. Efficacy and Safety of a New Resilient Hyaluronic Acid Filler in the Correction of Moderate-to-Severe Dynamic Perioral Rhytides: A 52-Week Prospective, Multicenter, Controlled, Randomized, Evaluator-Blinded Study. Dermatol Surg. 2022;48(1):87-93.

    Efficacy and Safety of a New Resilient Hyaluronic Acid Filler in the Correction of Moderate-to-Severe Dynamic Perioral Rhytides: A 52-Week Prospective, Multicenter, Controlled, Randomized, Evaluator-Blinded Study

    研究デザイン: 前向き多施設無作為化・無治療対照・評価者盲検試験 / 対象: 中等度〜重度の動的な口周りのしわがある成人202人(注入150人、無治療52人) / 結果: 8週時点の評価者判定による改善率は注入群80.7%、無治療群7.8%で、52週でも注入群の66%に改善がみられたとの報告がありました。 / 限界: 特定のRHA製剤を口周りのしわへ使用した企業関連試験で、ボラックスXC、顎への1cc注入、顎後退がつくる口元の影を検証した研究ではない。

  2. Kyriazidis I, et al. Adverse Events Associated with Hyaluronic Acid Filler Injection for Non-surgical Facial Aesthetics: A Systematic Review of High Level of Evidence Studies. Aesthetic Plast Surg. 2024;48(4):719-741.

    Adverse Events Associated with Hyaluronic Acid Filler Injection for Non-surgical Facial Aesthetics: A Systematic Review of High Level of Evidence Studies

    研究デザイン: ヒアルロン酸フィラー注入後の有害事象を対象とした高エビデンス研究の系統的レビュー / 対象: 無作為化比較試験、コホート研究など、事前の質評価を満たした48研究 / 結果: 多くは短期間で軽快する注入部反応でしたが、まれな重い有害事象は数か月持続し、積極的な治療を要したとの報告がありました。 / 限界: 製剤、顔面部位、注入手技、追跡期間が異なる研究の統合で、顎へのボラックスXC 1ccに限定した有害事象率や個別の症状頻度は示さない。

  3. Tansatit T, Phumyoo T, Sawatwong W, McCabe H, Jitaree B. Implication of Location of the Ascending Mental Artery at the Chin Injection Point. Plast Reconstr Surg. 2020;145(1):51e-57e.

    Implication of Location of the Ascending Mental Artery at the Chin Injection Point

    研究デザイン: 三次元計測を用いた解剖学的研究 / 対象: 固定標本31顔の顎部を解剖し、上行オトガイ動脈の左右優位、正中からの距離、深さを測定 / 結果: 優位動脈は右19、左12。正中から平均5.64mm外側、皮膚から平均4.15mmの筋層を通り、舌下動脈と吻合していたとの報告がありました。 / 限界: 固定標本の解剖研究で、個々の患者の血管位置、注入層・手技ごとの血管閉塞率、1cc注入の安全性を示す臨床試験ではない。

  4. PMDA. ジュビダームビスタ ボラックスXC 添付文書(医療機器承認番号30200BZX00254000、2023年8月第1版).

    ジュビダームビスタ ボラックスXC 添付文書

    研究デザイン: 国内承認医療機器の添付文書。欧州で実施した前向き多施設単盲検無作為化・遅延治療対照試験を収載 / 対象: 顎先・下顎部のボリューム回復または増大を目的とした120人。119人がボラックス治療を受けた / 結果: 治療3か月後のG-Sn-Pog角度の変化は無治療群より平均2.51度大きく、顎の満足度は1か月95.2%、18か月82.1%で治療前より改善した。 / 限界: 添付文書収載試験の標準総注入量は約3.4mLで、本症例の1ccや口周りのたるみ感を個別に検証していない。口唇、眉間、眼窩周囲は承認範囲に含まれない。

  5. Xie Y, et al. VYC-25L Is Safe and Effective for Enhancing the Chin and Jawline by Correcting Chin Retrusion in Chinese Adults. Aesthet Surg J. 2025;45(7):699-708.

    VYC-25L Is Safe and Effective for Enhancing the Chin and Jawline by Correcting Chin Retrusion in Chinese Adults

    研究デザイン: 前向き第3相多施設無作為化・無治療対照試験 / 対象: 中等度〜重度の顎後退がある中国人成人148人(VYC-25L 97人、無治療51人) / 結果: 24週時点のG-Sn-Pog角度の変化はVYC-25L群2.97度、無治療群0.09度で、GAIS改善率は92.6%対4.2%。改善は52週まで保たれたとの報告がありました。 / 限界: 企業関連試験で、平均年齢31.2歳。初回量と必要時の追加量を用いた試験であり、1cc固定、口周りのたるみ感、個別の注入点は検証していない。

よくあるご質問

Q. 口周りのたるみに、なぜ顎へヒアルロン酸を入れるのですか?

顎が後方にあると、下唇の下の影が深くなり、口元からフェイスラインがもたついて見えます。顎先へ前方・下方の支持を加えると、線へ直接注入しなくても口元の見え方を整えられる症例があります。

Q. 顎は下に長くするだけですか?

この症例では、下方向の長さだけでなく前方への投影を加えました。正面で顎先の幅、斜位と側面で下唇・顎・首のつながりを見て、縦と前後の配分を決めます。

Q. この症例で使用した製剤と量は何ですか?

ジュビダームビスタ ボラックスXCを顎先へ総量1cc使用しました。口角やほうれい線へ分配した症例ではありません。

Q. ボラックスXCは国内承認製剤ですか?

国内承認製剤で、成人の顔面におけるボリューム回復・増大を目的に、皮下または骨膜上深部へ注入します。口唇、眉間、眼窩周囲は承認範囲に含まれません。顎先は承認目的に沿う部位です。

Q. 注入後にすぐ連絡が必要な症状はありますか?

触れたときの硬さ・しこり感は約1〜2か月続くことがあります。一方、強く増す痛み、皮膚の白色化や暗紫色のまだら、舌の痛み・色調変化、見えにくさが出た場合は血管閉塞の可能性があるため、直ちに連絡してください。

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