医師解説

額の瘢痕でトライフィルプロ瘢痕モードをどう使うか

額の水疱痕は、縁と凹みが影を作り、化粧でも隠れにくいことがあります。掲載症例では、ボックス型の凹みへトライフィルプロ瘢痕モードとジュベルックを2回行い、化粧で隠せる程度まで目立ちにくくなりました。額での診察、局所CO2剥離と薬剤導入、再評価の順を解説します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2026年3月21日
実質更新日
2026年8月9日
額斜位で比較した水疱後ボックス型瘢痕へのトライフィルプロ瘢痕モード2回前後

Contents

目次

  1. 額の水疱後ボックス型瘢痕へ、トライフィルプロを2回行った症例です
  2. 線状瘢痕と陥凹瘢痕を分け、表情で凹みがどう動くかを見ます
  3. 局所CO2剥離、ジュベルック注入、薬剤拡散の順に行います
  4. 額では皮膚の厚みと血管・知覚神経の走行に合わせて処置点を絞ります
  5. 2回後は、腫れが引いた額斜位で縁・底面・化粧での見え方を比べます
  6. 診療で確認するポイント
  7. 治療選択の比較
  8. 費用の目安
  9. リスク・副作用・注意点
  10. 関連記事
  11. 関連施術・関連症状のご案内
  12. 執筆・監修
  13. 参考にした一次情報・ガイドライン
  14. よくあるご質問

額の水疱後ボックス型瘢痕へ、トライフィルプロを2回行った症例です

額斜位の治療前では、水疱後に残った瘢痕の縁がはっきりし、中央の凹みが光を遮って影になっています。化粧で色を整えても、縁と底面の段差による影が残りやすい状態でした。

この1か所へ、トライフィルプロのしわ・瘢痕モードとジュベルックを2回行いました。治療後は縁の影と中央の凹みが浅く見え、患者さんからは『化粧で隠せるようになった』と伺いました。

線状瘢痕と陥凹瘢痕を分け、表情で凹みがどう動くかを見ます

線状瘢痕では線の幅、段差、前頭筋の動く方向との関係を見ます。ボックス型の陥凹瘢痕では、縁の角度、底面の深さ、皮膚を横へ伸ばしたときに凹みが持ち上がるかを確認します。この症例は、縁と底面を持つ局所の陥凹が主な所見です。

額は前頭筋の動きが皮膚へ伝わるため、無表情と眉を上げた状態を比べます。表情を変えても同じ位置に底面が引かれて残る場合は局所の癒着を標的にし、表情線に沿って形が変わる線状瘢痕では、線の向きと周囲皮膚の張力を治療計画へ反映します。

額を無表情と眉を上げた状態で比べ、局所の刺入点を絞る理由として、額には前頭筋膜と真皮を結ぶ線維性隔壁と血管・神経を含む支持束があり、表在神経は皮膚表面から平均1.09mmの深さに確認されたとの報告がありました(参考文献3)。

局所CO2剥離、ジュベルック注入、薬剤拡散の順に行います

しわ・瘢痕モードでは、医師が凹みを1か所ずつ見て針先を真皮内に留めます。最初の炭酸ガスで瘢痕の底面を引く線維性組織を水平方向へ緩め、できた空間へジュベルックを注入し、再び炭酸ガスを加えて周囲へ広げます。

この症例では、額全体を均一に治療するのではなく、縁と凹みが目立つ水疱痕だけへ2回重ねました。処置点は縁の高さと底面の硬さに合わせ、周囲の正常な額へ剥離範囲を広げない設計です。

局所の癒着へCO2剥離を選ぶ理由として、サブシジョンには針、カニューレ、ワイヤー、鈍的ブレードが使われ、器具は瘢痕の深さと併用治療に応じて選ばれるとの報告がありました(参考文献1)。

炭酸ガスによる局所剥離とジュベルックを同じ部位へ重ねる理由として、トライフィルプロとジュベルックを1回使用すると、4週後に全例で瘢痕の深さと輪郭が改善し、満足度VASは7〜9だったとの報告がありました(参考文献4)。

額では皮膚の厚みと血管・知覚神経の走行に合わせて処置点を絞ります

額では、皮膚と皮下組織の厚み、前頭筋までの距離、瘢痕の硬さを触診し、必要な深さへ針先を置きます。眉上から額には上滑車・上眼窩の血管と知覚神経が走るため、広く深く剥離するのではなく、瘢痕の縁と底面に必要な刺入点だけを設定します。

処置前には眉の動きと額の知覚を記録し、処置後は出血、腫れ、内出血、感覚の変化を確認します。額の横じわと瘢痕が重なる場所では、前頭筋の収縮方向も見ながらCO2を広げる方向を決めます。

2回後は、腫れが引いた額斜位で縁・底面・化粧での見え方を比べます

掲載症例は2回の治療後に額斜位を撮影し、治療前に目立っていた縁の影と中央の凹みが浅くなったことを確認しました。写真だけでなく、化粧で隠せるようになったという日常での見え方も治療後の変化として記録します。

次回の判断は、赤み、腫れ、針跡、内出血が落ち着いた時点で行います。縁の一部に固定された影が残れば局所を再評価し、線の幅や表面の質感が主に残る場合は、同じCO2剥離を広げず瘢痕修正術や表面治療の役割を比べます。

2回後も縁と底面を分けて再評価する理由として、サブシジョン後の外観改善は10〜100%と幅があり、瘢痕型と併用法で結果が異なるとの報告がありました(参考文献2)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 最初に額斜位の斜光写真を撮り、線状瘢痕なら線の幅と張力方向、陥凹瘢痕なら縁・底面・横へ伸ばしたときの変化を記録します。
  • 次に無表情と眉を上げた状態を比べ、前頭筋と一緒に動く部分と、同じ位置に固定される局所癒着を分けます。
  • 局所癒着には瘢痕の縁へ刺入点を限定してCO2剥離、ジュベルック注入、CO2拡散を行い、額の血管・知覚神経が走る範囲へ不必要に広げません。
  • 赤みと腫れが引いた後に同じ額斜位で縁と底面の影を撮り直し、化粧での隠れ方と合わせて次の1か所を決めます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
トライフィルプロしわ・瘢痕モード+ジュベルック 縁と底面がある小さなボックス型瘢痕、浅い層へ局所的に固定された凹み 広く深い癒着、線の幅・段差・張力が主な線状瘢痕、感染・びらんがある部位 掲載症例は2回後に額斜位で再評価 赤み、腫れ、内出血、針跡、点状出血、皮下気腫、色素沈着、硬結など 1か所・ジュベルック込み18,000円。1か所を2回なら36,000円 トライフィルプロとジュベルックは日本国内未承認
手動サブシジョン 広く深い層へ固定された陥凹、強い癒着を面で剥離する状態 小さく浅い局所瘢痕、表面の線幅や色だけが主な状態 1回後に皮膚伸展と斜光で再評価し、必要な範囲だけ追加 赤み、腫れ、内出血、疼痛、血腫、硬結、感染、血管・神経損傷、色素沈着など 2×2cm 33,000円/5×5cm 66,000円。おでこ110,000円 手術手技。併用薬剤ごとに承認状況を表示
瘢痕修正術・表面治療 幅や段差がある線状瘢痕、表面の質感や縁の形を変える必要がある状態 小さな局所癒着だけが主で、切開による新しい線状瘢痕を作る利点が乏しい状態 術後の抜糸・創部管理・瘢痕ケアを時系列で行う 腫れ、出血、内出血、感染、創離開、肥厚性瘢痕、色素変化など 診断、瘢痕の長さ、術式、保険・自費の区分により異なる 手術手技。表面治療を併用する場合は機器ごとに承認状況を表示

費用の目安

  • トライフィルプロ シワ・瘢痕治療:1か所・ジュベルック込み18,000円
  • 掲載症例と同じく1か所を2回行う場合:36,000円
  • 手動サブシジョン:2×2cm 33,000円/5×5cm 66,000円/おでこ110,000円
  • ジュベルック:1cc 33,000円/3cc 55,000円

すべて税込・自由診療です。瘢痕修正術は診断、瘢痕の長さ、術式、保険・自費の区分で費用が変わります。

リスク・副作用・注意点

  • トライフィルプロ・ジュベルック:赤み、腫れ、内出血、色素沈着、痂皮、熱感、針跡、点状出血、皮下気腫、疼痛、硬結、しこり、感染など
  • 額の局所剥離:出血、血腫、血管・知覚神経損傷に伴う感覚変化など
  • 手動サブシジョン:赤み、腫れ、内出血、疼痛、血腫、硬結、感染、血管・神経損傷、色素沈着など
  • 瘢痕修正術:出血、内出血、感染、創離開、肥厚性瘢痕、色素変化など
  • 国内承認・適応: 症例で用いたトライフィルプロは日本国内未承認の医療機器、ジュベルックは日本国内未承認の製剤です。当院では医師の責任で個人輸入しています。未承認医療機器・製剤による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度等の対象外となる場合があります。

トライフィルプロ後は洗顔は当日から、メイクは翌日から可能です。当日は飲酒、激しい運動、サウナ、入浴を避け、シャワー浴にしてください。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Vempati A, Zhou C, Tam C, et al. Subcision for Atrophic Acne Scarring: A Comprehensive Review of Surgical Instruments and Combinatorial Treatments. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2023;16:125-134. doi:10.2147/CCID.S397888. PMID:36698445; PMCID:PMC9868281.

    Subcision for Atrophic Acne Scarring: A Comprehensive Review of Surgical Instruments and Combinatorial Treatments

    研究デザイン: 萎縮性ニキビ跡に対するサブシジョンの器具と併用治療を調べた包括的レビュー。PubMed検索を3人が盲検で選別 / 対象: 初回検索で47研究を採用し、引用追跡で20研究を追加 / 結果: サブシジョン器具は針、カニューレ、ワイヤー、鈍的ブレードの4群に分けられ、使用器具は瘢痕の深さ、術者の選択、併用治療によって異なった。 / 限界: 標準化された手技がなく、器具や併用法を直接比較する対照研究が少ない。額の水疱後瘢痕、トライフィルプロ、治療回数ごとの成績を直接評価していない。著者は利益相反なしと申告。PMC全文とPubMed書誌を2026年8月8日に確認した。

  2. Kravvas G, Al-Niaimi F. A systematic review of treatments for acne scarring. Part 1: Non-energy-based techniques. Scars Burn Heal. 2017;3:2059513117695312. doi:10.1177/2059513117695312. PMID:29799567; PMCID:PMC5965325.

    A systematic review of treatments for acne scarring. Part 1: Non-energy-based techniques

    研究デザイン: 直近10年間の非エネルギー治療を検索したシステマティックレビュー / 対象: サブシジョン10、削皮1、マイクロニードリング8、充填剤5、ピーリング12の計36研究 / 結果: サブシジョン後の外観改善は10〜100%、マイクロニードリングは31〜62%と幅があり、治療法と瘢痕型で結果が異なった。 / 限界: 研究規模、評価尺度、追跡期間が不均一で、治療間の直接比較と長期再発評価が不足する。対象は主にニキビ跡で、額の水疱後瘢痕やトライフィルプロの成績を直接示さない。著者は利益相反なし、特定研究費なしと申告。PMC全文とPubMed書誌を2026年8月8日に確認した。

  3. Vasil'ev YL, Kytko O, Bakhrushina EO, Smilyk I, Sarygin P, Kalinin D. Proposal for an Expanded Classification of the Superficial Musculoaponeurotic System (SMAS) in the Human Forehead, Based on Anatomical and Microscopic Study. Life (Basel). 2026;16(5):765. doi:10.3390/life16050765. PMID:42195321; PMCID:PMC13209013.

    Proposal for an Expanded Classification of the Superficial Musculoaponeurotic System (SMAS) in the Human Forehead, Based on Anatomical and Microscopic Study

    研究デザイン: 額を含む全層組織を組織染色、S100免疫染色、デジタル形態計測で調べた解剖・組織学研究 / 対象: 25〜70歳の献体30人(男性12人、女性18人)から採取した全層組織標本。額、耳下腺、頬、側頭部、頸部の標準部位を評価 / 結果: 額では血管・神経を含む扇状の支持束と、前頭筋膜から真皮へ向かう線維性隔壁が確認された。表在神経幹の深さは皮膚表面から平均1.09mm、範囲0.57〜1.97mmだった。 / 限界: 静的な献体研究で、生体の表情時の動き、皮膚の伸展性、トライフィルプロの刺入安全性、治療成績、合併症率を直接評価していない。標本数は少なく、主に高齢・欧州系・Fitzpatrick II〜III型で、年齢群ごとの推測統計は行われていない。著者1人はInstitute of Anatomy LLCの従業員で、ほかの著者は商業的・金銭的利益相反なしと申告。PMC全文とPubMed書誌を2026年8月8日に確認した。

  4. Yi KH, Rosellini I, Lee S, Lee HE. Gas Subcision with PDLLA (Juvelook): Evaluating a Hybrid Mechanical-Biologic Approach for Atrophic Acne Scars. JPRAS Open. 2026;51:129-133. doi:10.1016/j.jpra.2026.05.001. PMID:42389218; PMCID:PMC13321042.

    Gas Subcision with PDLLA (Juvelook): Evaluating a Hybrid Mechanical-Biologic Approach for Atrophic Acne Scars

    研究デザイン: トライフィルプロによるCO2ガスサブシジョンとPDLLAを1回使用した単施設・前向き観察症例集積 / 対象: ローリング型・ボックスカー型の萎縮性ニキビ跡がある5人、24〜38歳、Fitzpatrick III〜V型。2週・4週に追跡 / 結果: 4週後に5人全員で瘢痕の深さと輪郭の定性的改善が確認され、患者満足度VASは7〜9だった。重篤な有害事象はなく、軽い一過性の紅斑と浮腫は数時間以内に自然軽快した。 / 限界: 対照群のない5人の症例集積で、追跡は4週、結果は定性的評価。対象は頬の萎縮性ニキビ跡で、額の水疱後瘢痕、2回治療、長期持続、手動サブシジョンとの比較を評価していない。CO2ガスとPDLLAの寄与も分離できない。本文の方法・結果は4週、図説明は24週で不一致のため、4週結果だけを採用した。研究費・利益相反はなしと申告。PMC全文とPubMed書誌を2026年8月8日に確認した。

よくあるご質問

Q. この症例では、どの瘢痕へ何回治療しましたか?

額に残った水疱後のボックス型瘢痕1か所へ、トライフィルプロのしわ・瘢痕モードとジュベルックを2回行いました。治療後は縁と凹みの影が浅く見え、化粧で隠せるようになったと伺いました。

Q. トライフィルプロ瘢痕モードでは何を行いますか?

医師が凹みを1か所ずつ確認し、最初の炭酸ガスで真皮内の癒着を緩めます。できた空間へジュベルックを注入し、再び炭酸ガスを加えて周囲へ広げます。

Q. 額の線状瘢痕にも同じ治療を行いますか?

縁と底面を持つ局所の陥凹には瘢痕モードを考えます。線状瘢痕は線の幅、段差、前頭筋の動く方向、周囲皮膚の張力を見て、局所剥離、表面治療、瘢痕修正術の役割を選びます。

Q. 施術後の回復と過ごし方を教えてください。

赤み、腫れ、内出血、針跡、点状出血、皮下気腫などが生じることがあります。洗顔は当日から、メイクは翌日から可能です。強くこすらず、当日は飲酒、激しい運動、サウナ、入浴を避けてシャワー浴にしてください。

Q. 2回治療した場合の費用と国内承認状況を教えてください。

しわ・瘢痕モードはジュベルック込みで1か所18,000円です。1か所を2回行う場合は合計36,000円です。トライフィルプロとジュベルックはいずれも日本国内未承認で、医師の個人輸入により使用しています。

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