医師解説瘢痕・ケロイド

手術の傷あとが落ち着くまでの一般的な経過

手術の傷あとは、0〜1週間で創を治し、1〜4週間は赤み・つっぱりが出やすく、1〜3か月は赤み・硬さが目立ちます。3〜6か月からゆっくり落ち着き、6〜12か月以降になじむ一般的な流れと、早く受診したい変化を時系列で説明します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2026年3月22日
実質更新日
2026年8月9日
手術後の傷あとが0〜1週間から6〜12か月以降まで赤み・硬さ・感覚を変える一般的経過と受診目安の図解

Contents

目次

  1. 0〜4週間|炎症期から増殖期へ進みます
  2. 1〜6か月|赤み・硬さが目立った後、少しずつ落ち着きます
  3. 6〜12か月以降|成熟期に入り、色と硬さがなじみます
  4. 紫外線・張力を管理し、早く受診したい変化を見分けます
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

0〜4週間|炎症期から増殖期へ進みます

0〜1週間は、まず傷を治す時期です。創の縁がつながる過程では薄い赤みがあり、出血や滲出が落ち着いて閉鎖へ向かっているかを見ます。創が閉じる前は、傷あとを薄くすることより、指示された創部処置を続けることが優先です。

1〜4週間は赤み・つっぱりが出やすく、色は淡い赤から濃いピンクへ変わり、少し硬く感じることがあります。表面が閉じた後も血管や結合組織が増える増殖期が続くため、傷あとが前より目立って見えて不安になりやすい時期です。

炎症期、増殖期、成熟期は日付で完全に切り替わるのではなく重なって進みます。感染を示す赤みと、治癒の途中で生じる赤みを分けるため、色だけでなく、痛み、熱感、腫れ、滲出液、創の開きも同時に記録します。

1〜6か月|赤み・硬さが目立った後、少しずつ落ち着きます

1〜3か月は、赤みが最も目立ち、硬さや盛り上がりも強く見えやすい時期です。『前より赤い』『硬くなった』と感じても、赤み・硬さが一定の範囲で推移し、痛みや熱感が増えていなければ、成熟へ向かう途中のことがあります。

3〜6か月は赤みがゆっくり減り、硬さも少しずつやわらぎ始めます。ただし、この時点ではまだ完成ではありません。同じ照明と角度で撮影し、色、硬さ、盛り上がり、幅を別々に比べると、変化の方向を確認しやすくなります。

赤みだけで治癒の停滞を決めず月単位で比べる理由として、切開創・切除創の赤みは平均7か月で薄れ、創の種類と位置によって消退時期に差があったとの報告がありました(参考文献1)。

6〜12か月以降|成熟期に入り、色と硬さがなじみます

6〜12か月以降は、色がベージュから白へ近づき、硬さがやわらぎ、傷あとが周囲になじんでいく時期です。傷がすぐに閉じても、傷あととして落ち着くまでには数か月から1年以上かかります。

成熟の速さは、手術部位、創の向き、皮膚にかかる張力、体質で変わります。経過を見るときは『何か月たったか』だけでなく、赤みが減っているか、硬さがやわらいでいるか、盛り上がりや幅が増えていないかを一組で確認します。

紫外線・張力を管理し、早く受診したい変化を見分けます

傷あとは紫外線の影響で色が残りやすいため、衣類やテープなどで創部を遮光します。また、創部に強い張力が繰り返しかかると、幅が広がったり盛り上がったりしやすいため、創が閉じた後は手術部位に合わせてサージカルテープやシリコーンを使います。

赤みや盛り上がりが強くなる、かゆみ・痛みが強い、傷が元の線を越えて広がる場合は、予定した月まで待たずに診察します。

熱感、増える赤み・痛み・腫れ、膿、発熱、創の開きは感染や創離開の確認が必要なサインです。

創内にとどまる肥厚性瘢痕と、元の創を越えて広がるケロイドを分け、部位・重症度に応じてステロイドテープ・注射、圧迫、手術などを組み合わせる診療指針が示されています(参考文献3)。

閉鎖した創の張力を支える選択肢として、術後にテープ固定を続けた創は通常管理より6か月後の外観が良く、瘢痕幅の中央値が1mm狭かったとの報告がありました(参考文献2)。

手術創の感染では熱感・赤み・痛み・腫れが局所所見となり、進行すると発熱や創縁の離開を伴うことがあると公的ガイドラインに示されています(参考文献4)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 術後1週間、1か月、3か月、6か月を経過確認の目安にし、同じ照明・距離・角度で色、硬さ、盛り上がり、幅を記録します。
  • 0〜1週間は創の閉鎖と感染徴候、1〜3か月は赤み・硬さの増減、3〜12か月は軟化と色の消退を中心に見ます。
  • 創が閉じた後は、手術部位の動きと張力に合わせてテープ・シリコーンと遮光を組み、かぶれや蒸れがあれば素材や貼り方を調整します。
  • 赤み・盛り上がりが連続して強くなる、元の創線を越えて広がる、強い痛み・かゆみ、熱感、排膿、発熱、創の開きがある場合は早期診察へ切り替えます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
経過観察・写真記録 赤み・硬さが時系列に沿って変わり、痛み・熱感・排膿・急な拡大がない傷あと 増える発赤・腫れ・痛み、発熱、排膿、創離開、元の創を越える盛り上がりがある状態 1週間、1か月、3か月、6か月を目安に術式別に調整 観察自体のダウンタイムなし 術後管理・診察区分で異なる 薬剤・医療機器を用いない経過評価
紫外線・張力管理 創が閉じ、テープ・シリコーンで遮光と張力軽減を続けられる状態 未閉鎖創、滲出・感染、接着剤による皮膚炎がある状態 創が閉じてから手術部位・術式に合わせて継続 かぶれ、蒸れ、痛み、色素変化など 材料・処方内容で異なる 使用製品の表示と創部の状態に従う
肥厚性瘢痕・ケロイド治療 盛り上がり、硬さ、かゆみ・痛みが続く、または元の創を越えて広がる状態 感染や創離開を先に治療する必要がある状態、診断が未確定の病変 ステロイドテープ・注射、圧迫、手術などを反応に合わせて調整 治療により皮膚炎、皮膚萎縮、色素変化、注射痛、手術後の腫れ・再発など 診断・治療内容・保険適用条件で異なる 薬剤・材料・術式ごとに適応と使用条件を確認

費用の目安

  • 術後診察の費用は、当院で行った手術の術後管理か、他院手術後の新規診察か、保険診療か自由診療かで異なります
  • 現行公開料金表には、瘢痕用テープ・シリコーン、ステロイド治療、傷あと修正を一律にまとめた共通定額はありません

病的瘢痕の診察・治療は、診断、使用する材料・薬剤、処置・手術、保険適用条件で費用が決まります。

リスク・副作用・注意点

  • 治癒途中には赤み、腫れ、つっぱり、かゆみ、硬さ、盛り上がりがみられることがあります
  • テープ・シリコーンでは、かぶれ、蒸れ、痛み、色素変化などが生じることがあります
  • 赤み・痛み・腫れ・熱感が増える、膿・発熱・創離開がある場合は、感染や創傷治癒遅延の確認が必要です
  • 元の創線を越えて盛り上がる、かゆみ・痛みが続く場合は、肥厚性瘢痕・ケロイドを含めて診察します
  • 国内承認・適応: 本記事は一般的な術後経過と創が閉じた後の非侵襲的な管理を扱います。薬剤・医療機器を使用する場合は、診断と販売名ごとに国内承認・適応・用法を分けて説明します。

赤みや盛り上がりが急に増える、強い痛み・かゆみ、熱感、排膿、発熱、創の開きがある場合は予定日を待たずに連絡してください。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Bond JS, Duncan JAL, Mason T, Sattar A, Boanas A, O'Kane S, Ferguson MWJ. Scar redness in humans: how long does it persist after incisional and excisional wounding? Plast Reconstr Surg. 2008;121(2):487-496. doi:10.1097/01.prs.0000299183.88334.37. PMID:18300967.

    Scar redness in humans: how long does it persist after incisional and excisional wounding?

    研究デザイン: TGF-β3の臨床試験内で、薬剤を投与しない切開創・切除創を写真判定と組織学的評価で12か月まで追った観察。赤みが消えた月と、創の種類・位置による差を解析した。 / 対象: 健康なボランティア103人の上腕内側に作成した標準化切開創・切除創。 / 結果: 赤みが薄れた時期は平均7か月で、切開創は切除創より早く、上腕の前後位置でも差があった。12か月の組織では全瘢痕に持続炎症を認めなかった。 / 限界: 健康な参加者の上腕内側に作成した研究用創で、実際の手術部位、感染、肥厚性瘢痕、ケロイド、個別の術式を直接評価しない。PubMed抄録に資金提供・利益相反の記載はなく、原著全文にはアクセスできなかった。PubMed書誌・抄録を2026年8月9日に確認した。

  2. Rosengren H, Askew DA, Heal C, Buettner PG, Humphreys WO, Semmens LA. Does taping torso scars following dermatologic surgery improve scar appearance? Dermatol Pract Concept. 2013;3(2):75-83. doi:10.5826/dpc.0302a13. PMID:23785651; PMCID:PMC3663392.

    Does taping torso scars following dermatologic surgery improve scar appearance?

    研究デザイン: 体幹の楕円形皮膚切除創を、深部・真皮内縫合後に12週間テープ固定する群と通常管理群へ割り付けた単盲検無作為化比較試験。独立した盲検評価者が3か月・6か月に外観と幅を評価した。 / 対象: 成人195人を登録し、136人が6か月評価を完了。テープ群63人、通常管理群73人。ケロイド傾向、テープアレルギー、皮弁手術、免疫抑制薬使用者は除外した。 / 結果: 6か月の瘢痕外観はテープ群で良く、瘢痕幅中央値は1mm狭かった。本人の満足度には群間差がなく、テープ群の1人が接着剤アレルギーで中止した。 / 限界: 脱落が多く、体幹の楕円切除創が対象で、約3分の2は上背部だった。12週間という期間は任意設定で、顔・関節部、開放創、感染創、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療効果へ一般化できない。研究用テープ購入と研究看護師費用を参加施設が負担し、筆頭著者に公的研究助成があったが、資金提供者は研究へ影響しなかったと記載。著者は利益相反なし。原著全文を2026年8月9日に再確認した。

  3. Ogawa R, Akita S, Akaishi S, et al. Diagnosis and Treatment of Keloids and Hypertrophic Scars—Japan Scar Workshop Consensus Document 2018. Burns Trauma. 2019;7:39. doi:10.1186/s41038-019-0175-y. PMCID:PMC6933735.

    Diagnosis and Treatment of Keloids and Hypertrophic Scars—Japan Scar Workshop Consensus Document 2018

    研究デザイン: 日本瘢痕・ケロイド治療研究会が、診断、JSS 2015重症度評価、一般治療・部位別治療をまとめた専門家コンセンサス文書。 / 対象: 成熟瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイドを対象に、病変範囲、症状、危険因子、部位を用いて診断・重症度を評価する。 / 結果: 成熟瘢痕・肥厚性瘢痕・ケロイドを分類し、ステロイドテープ・注射、圧迫・シリコーン、内服、手術、放射線などを部位と重症度に応じて選ぶ方針を示した。 / 限界: 個々の治療を直接比較した単一試験ではなく、根拠の強さは治療ごとに異なる。一般的な成熟経過の固定日数や、本記事の特定手術後の治療効果を示す資料ではない。資金提供なし、著者は利益相反なしと記載。原著全文を2026年8月9日に再確認した。

  4. National Institute for Health and Care Excellence. Surgical site infections: prevention and treatment. NICE guideline NG125. Recommendations.

    Surgical site infections: prevention and treatment

    研究デザイン: 英国NICEによる手術部位感染の予防・診断・治療に関する公的ガイドライン。術後創のケア、感染徴候、抗菌薬、専門的創傷管理を含む。 / 対象: 手術を受ける成人・小児と、その術後創を管理する医療者・介護者。 / 結果: 手術創の感染徴候として熱感、赤み、痛み、腫れを挙げ、重症例では発熱を伴い、治癒を妨げて創縁離開や深部膿瘍を生じ得ると定義した。退院後に徴候と連絡先を説明するよう推奨する。 / 限界: 英国の医療提供体制を前提とするガイドラインで、個別の傷あとが感染かどうかを症状だけで確定するものではない。ケロイド・肥厚性瘢痕の長期治療や美容的成熟期間は対象外。NICE公式現行ページを2026年8月9日に確認した。

よくあるご質問

Q. 術後1〜3か月に赤みや硬さが強くなるのは異常ですか?

傷あとが成熟する途中では、1〜3か月に赤み・硬さ・盛り上がりが目立つことがあります。前回より色と硬さがどう変わったかを比べ、痛み・熱感・腫れ・排膿が増えていないか、元の創線を越えていないかを一緒に確認します。

Q. 傷あとが白くやわらかくなるまで、どのくらいかかりますか?

3〜6か月から赤みと硬さが少しずつ落ち着き、6〜12か月以降にベージュから白へ近づきながらやわらぐのが一般的な目安です。部位、創の向き、張力、体質によっては1年以上かけてなじみます。

Q. テープやシリコーンはいつから使いますか?

創が閉じ、滲出や感染がないことを確認してから、手術部位と術式に合わせて使います。開いている創へ自己判断で貼らず、かぶれ・蒸れ・痛みが生じた場合は一度外して相談してください。

Q. 術後の受診はいつが目安ですか?

図解では1週間、1か月、3か月、6か月を経過確認の目安にしています。実際は手術内容と部位で診察日が異なるため、手術時に案内された日程を優先します。

Q. 予約日を待たずに連絡した方がよい症状はありますか?

赤みや盛り上がりが急に強くなる、強いかゆみ・痛み、傷が元の線を越えて広がる、熱感、膿、発熱、出血が止まらない、創が開く場合は早めに連絡してください。

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