手術後のケアで押さえたい創部管理の基本
手術後の創部は、最初の24時間を濡らさず、翌日から泡で洗って軟膏・ガーゼ・テープで保護します。出血時の圧迫、処方薬の飲み方、抜糸後のテープと紫外線対策、感染を疑う症状と連絡の目安を、退院後の順序で解説します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2026年3月22日
- 実質更新日
- 2026年8月9日


Contents
目次
最初の24時間を保護し、翌日からやさしく洗います
手術後24時間は創部を水に濡らさず、24時間後から洗顔やシャワーの際に泡でやさしく洗います。1日1回、こすらずに洗って水気を押さえ、処方された軟膏を塗り、ガーゼとテープで保護します。軟膏の種類は手術と創部で異なるため、処方されたものを使います。
抜糸までは、お風呂やプールで創部を水につけません。出血がないときは軟膏、薄いガーゼ、テープで保護し、術後数日に明らかな出血があれば厚手のガーゼを当てて10分ほど連続して圧迫します。圧迫しても出血が止まらないときは連絡してください。
翌日から創部を洗うときは、創が閉じた低リスクの創か、出血やドレーンがないかを確認します。手術24時間後からシャワーを行った閉鎖創では、30日以内の感染は0.9%、治癒期間の中央値は15日との報告がありました(参考文献1)。
処方薬を指示どおり使い、抜糸後は傷線をテープで支えます
抗生剤と整腸剤を朝・夕食後に飲み切るよう処方された場合は、1日2回を処方どおり続けます。痛み止めは痛いときに使い、前回から4時間以上あけます。薬ごとに用法が異なるため、手元の処方内容を基準にしてください。
抜糸後に創が閉じていることを確認したら、茶色のテープを傷線に対して直角に、傷をまたぐように貼ります。まず1ヶ月を目安とし、赤み・硬さ・張力の経過によって3ヶ月〜半年続けることがあります。かぶれ、かゆみ、水疱が出たときはテープを外して相談してください。
抜糸後に傷線へ張力がかかる部位では、傷をまたぐテープで皮膚の動きを支えます。6か月時に瘢痕外観が良好または非常に良好だった割合はテープ群64.4%、通常ケア群38.4%で、瘢痕幅の中央値は1mm小さかったとの報告がありました(参考文献2)。
創が閉じた後は紫外線と摩擦から傷あとを守ります
抜糸後の傷あとは、テープや衣類で覆い、露出する部位は創が閉じたことを確認してから日焼け止めを使います。紫外線を避けることは、赤みが残る時期の色素沈着を抑えるためのケアです。開いている創や滲出がある創へ日焼け止めを直接塗ることは避けます。
傷線を強くこすることや、同じ方向へ引っ張り続ける動作も控えます。テープは傷線を横切る向きで張力を分散し、衣類やマスクが触れる部位では摩擦と蒸れも確認します。
創が閉じた後も赤みが残る時期は、張力・乾燥・紫外線を一緒に管理します。手術前後の傷あとケアとして、張力の軽減、テープ、保湿、早期の傷あとの紫外線保護を組み合わせるとの報告がありました(参考文献3)。
痛み・赤み・出血が増えるときは予定を待たずに連絡します
術後早期の軽い血のにじみや腫れは経過で見られます。一方、痛みが強くなる、赤みや腫れが広がる、熱を持つ、膿や悪臭が出る、発熱する、創が開く、圧迫しても出血が止まらない場合は、感染・血腫・創離開を確認します。
診療時間内は電話でご連絡いただき、必要に応じて診察します。診療時間外は公式LINEへ創部の写真、症状が始まった時期、体温、出血の有無をお送りください。処置方法が分からないときや抜糸予約を変更したいときもご相談ください。強い出血や全身状態の悪化があり、当院と連絡がつかない場合は救急医療機関を受診してください。
退院後に感染・出血・創離開を早く見つけるには、観察する症状と連絡先を退院前に共有します。患者へ創部の手入れ、手術部位感染の見分け方、心配なときの連絡先を伝えることが推奨されたとの報告がありました(参考文献4)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 退院前に、縫合・皮膚接着剤・テープ・ドレーンの有無を確認し、濡らし始める時期と被覆方法を手術別に説明します。
- 翌日以降は、創縁が合っているか、血のにじみと滲出の量、赤み・腫れ・熱感、ガーゼの汚れ方を見て、洗浄・軟膏・被覆を調整します。
- 抜糸時は創の閉鎖と傷線にかかる張力を確認し、テープを傷線と直角に貼る方法、紫外線と摩擦を避ける方法へ切り替えます。
- 経過中に痛み・赤み・腫れ・排膿が増える、出血が止まらない、創が開くときは、予約日を待たずに創部を確認します。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 抜糸前の洗浄・軟膏・ガーゼ保護 | 術後24時間を過ぎ、創が閉じていて洗浄開始の指示がある状態 | 活動性出血、創離開、ドレーン管理中など、個別に濡らさない指示がある状態 | 1日1回の洗浄と被覆。抜糸まで創部を水につけない | 血のにじみ、腫れ、内出血。テープかぶれ、感染、創離開に注意 | 手術後管理の範囲、処方薬、被覆材、保険・自費の区分で異なる | 処方薬は個別処方の用法、被覆材は製品表示に従う |
| 抜糸後の紙テープ | 創が閉じ、傷線に張力や摩擦がかかる状態 | 創が開いている、滲出がある、テープで皮膚炎・水疱が出る状態 | まず1ヶ月。経過により3ヶ月〜半年を検討 | かゆみ、赤み、かぶれ、水疱、皮膚びらん | 使用するテープと交換量で異なる | 外固定材料として製品表示に従う |
| 創閉鎖後の紫外線・摩擦対策 | 抜糸後に赤みが残り、衣類や日光に触れる傷あと | 開放創、滲出がある創、日焼け止め成分で刺激が出る状態 | 赤みと色調、露出の程度を見ながら継続 | 日焼け止めや被覆材による刺激・かぶれ | テープ、衣類、日焼け止めの製品により異なる | 化粧品・被覆材の製品表示に従う |
費用の目安
- 術後診察、処方薬、ガーゼ・テープなどの創部ケア用品の費用は、手術内容と保険・自費の区分で異なります。
- 追加の処置や診察が必要な場合は、創部の状態と治療内容に応じて費用が変わります。
元素材と院内料金正本に本記事の創部ケア用品・処方薬の一律料金はないため、金額は補完していません。
リスク・副作用・注意点
- 手術後に出血、血腫、腫れ、内出血、痛み、感染、創離開、皮膚壊死、しびれ、傷あとが生じることがあります。
- 軟膏、ガーゼ、テープで赤み、かゆみ、接触皮膚炎、水疱、皮膚びらんが起こることがあります。
- 処方薬にアレルギー、発疹、胃腸症状などの副作用が起こることがあります。処方された名称と用法を確認して使用してください。
- 増える痛み・赤み・腫れ、排膿、発熱、創離開、圧迫しても止まらない出血は、予定を待たずに連絡が必要な症状です。
- 国内承認・適応: 本記事は特定の未承認医薬品・医療機器を扱いません。処方薬の名称・用法は個別処方、ガーゼ・テープ・日焼け止めは各製品の表示に従って使用します。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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Safety of early postoperative showering in level-1 and level-2 surgical wounds: a retrospective study
研究デザイン: 清潔・準清潔の形成外科閉鎖創で、術後24時間から水道水によるシャワーを許可した単施設後ろ向き研究 / 対象: 台湾の形成外科で同一術者が手術した106人。平均年齢48.5歳で、創部は体幹が39%と最多だった。 / 結果: 30日以内の創感染は1人0.9%で、治癒期間の中央値は15日だった。 / 限界: 対照群がなく、複雑創や高リスク創は術者判断で除外された。術式、閉鎖法、ドレーン、出血リスクが異なるすべての手術へ24時間という時点を一律適用できない。
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Does taping torso scars following dermatologic surgery improve scar appearance?
研究デザイン: 体幹の楕円切除創を12週間のテープ固定群と通常管理群へ割り付け、評価者を盲検化した無作為化比較試験 / 対象: 195人を登録し、136人が6か月評価を完了した。テープ群63人、通常管理群73人だった。 / 結果: 良好または非常に良好な外観はテープ群64.4%、通常管理群38.4%だった。テープ群の瘢痕幅中央値は1mm小さかった。 / 限界: 59人が6か月評価を完了せず、体幹の楕円切除創に限られる。顔・耳・関節部、肥厚性瘢痕やケロイド、テープを1〜6か月続ける本稿の個別経過を検証していない。
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Updated scar management practical guidelines: non-invasive and invasive measures
研究デザイン: 24人の国際専門家が作成した、肥厚性瘢痕とケロイドの予防・治療に関する実践的エビデンスベースドガイドライン / 対象: 手術創を含む各種の傷あと、および肥厚性瘢痕・ケロイドの予防と治療を対象とした。 / 結果: 皮膚張力の軽減、テープ、保湿、早期の傷あとの紫外線保護を、手術直後から行う基本的な傷あと対策に含めた。 / 限界: 単一の臨床試験ではなく、2014年時点の複数の研究と専門家合意に基づく。特定の日焼け止め製品、開始日、SPF・PA、本稿の個別手術を比較していない。全文にはアクセスできずPubMed抄録を確認した。
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Surgical site infections: prevention and treatment (NICE guideline NG125) — Recommendations
研究デザイン: NICEが公表する手術部位感染の予防・治療に関するエビデンスベースドガイドライン / 対象: 手術を受ける成人と小児、および退院後に創部管理を行う患者・介護者を対象とする。 / 結果: 退院後の創部ケア、手術部位感染を認識する方法、心配なときの連絡先について情報を提供することを推奨した。 / 限界: 特定の形成外科手術、個別の創閉鎖法、当院の24時間ルール、薬剤の用法、テープ期間を検証した原著研究ではない。
よくあるご質問
Q. 手術後はいつから洗顔やシャワーができますか?
この創部ケアでは、手術後24時間は濡らさず、24時間後から泡でやさしく洗います。創の閉じ方、部位、ドレーン、出血リスクで指示が変わる場合は、退院時にお伝えした方法を優先してください。お風呂やプールで創部を水につけるのは抜糸まで避けます。
Q. 洗った後は、どのように保護しますか?
1日1回、こすらずに洗って水気を押さえ、処方された軟膏を塗り、ガーゼとテープで保護します。出血がなければ薄いガーゼ、明らかな出血があれば厚手のガーゼで10分ほど連続圧迫します。
Q. 抗生剤や痛み止めは、どのように飲みますか?
抗生剤と整腸剤を朝・夕食後に飲み切るよう処方された場合は、その指示に従います。痛み止めは痛いときに使い、前回から4時間以上あけます。薬剤ごとに用法が異なるため、処方内容をご確認ください。
Q. 抜糸後のテープと紫外線対策は、どのくらい続けますか?
創が閉じていることを確認してから、茶色のテープを傷線に対して直角に貼ります。まず1ヶ月を目安とし、経過によって3ヶ月〜半年続けることがあります。露出部はテープや衣類で覆い、創が閉じた後は日焼け止めも使います。
Q. どのような症状があれば、予定を待たずに連絡しますか?
強くなる痛み、広がる赤み・腫れ・熱感、膿・悪臭、発熱、創の開き、10分ほど圧迫しても止まらない出血があるときはご連絡ください。診療時間内は電話、時間外は公式LINEで状況をお知らせください。
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