医師解説

レーザーは波長ごとに得意分野が異なります

レーザーは波長によって、ヘモグロビン、メラニン、水への吸収と届きやすい深さが変わります。赤みには532〜589nm、色素には694nm、脱毛には755〜900nm、真皮や蒸散には1064〜10600nmを使い分けます。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2026年1月20日
実質更新日
2026年8月9日
532nmから10600nmまでのレーザー波長・標的・主な効果・院内機器の比較表

Contents

目次

  1. 波長からヘモグロビン・メラニン・水の標的を選ぶ
  2. 532〜589nmは表在性の赤みと血管を主に狙う
  3. 694〜900nmは色素斑・刺青・毛のメラニンへ使う
  4. 1064〜10600nmは深部の血管・真皮・水を標的にする
  5. 当院では色・形・深さから波長と機器を決める
  6. 診療で確認するポイント
  7. 治療選択の比較
  8. 費用の目安
  9. リスク・副作用・注意点
  10. 関連記事
  11. 関連施術・関連症状のご案内
  12. 執筆・監修
  13. 参考にした一次情報・ガイドライン
  14. よくあるご質問

波長からヘモグロビン・メラニン・水の標的を選ぶ

レーザー光は、波長ごとに吸収されやすい色素が異なります。赤みの血管を構成するヘモグロビン、シミや毛のメラニン、皮膚組織に広く含まれる水のどれを主な標的にするかで、候補となる波長を絞ります。

図は上から、KTP 532nm、ADVATx 589nm、パルスダイ577〜585nm、ルビー694nm、アレキサンドライト755nm、ダイオード800〜900nm、Nd:YAG 1064nm、ADVATx Nd:YAG 1319nm、エルビウム2940nm、CO2 10600nmを並べています。波長に加えて、パルス幅、照射径、出力、冷却を標的の大きさと深さへ合わせます。

532〜589nmは表在性の赤みと血管を主に狙う

KTP 532nmはヘモグロビンとメラニンに吸収され、表在性の赤みと表面のシミへ用いられます。ADVATxの589nmイエローレーザーもヘモグロビンを主な標的とし、当院では赤ら顔、毛細血管拡張、ニキビとニキビ後の赤みに用います。

パルスダイ577〜585nmはヘモグロビンを標的にし、赤み、毛細血管拡張、単純性血管腫などの血管病変を扱う代表的な波長帯です。面状の赤みは範囲と濃さを、線状の血管は太さと走行を記録し、照射範囲を分けます。

ニキビに赤みが重なる場合は、新しくできた丘疹・膿疱と、平らに残った赤みを別々に数えます。ADVATxでは589nmで血管性の赤みを狙い、1319nmで真皮・皮脂が関わる範囲へ熱を届ける組み合わせを検討します。

ニキビ後の赤みに589nmと1319nmを組み合わせると、レーザー側は2週から赤みが減り、最終照射8週後の反応率は72%、対照側は69%で群間差はなく、平均疼痛は1.52/10だったとの報告がありました(参考文献2)。

694〜900nmは色素斑・刺青・毛のメラニンへ使う

ルビー694nmはメラニンと青・黒の刺青色素に吸収されます。当院のQスイッチルビーレーザーは、日光黒子、雀卵斑、扁平母斑、太田母斑、顔全体の細かな色むら、刺青・アートメイク除去に、病変の色と深さに合わせてスポットまたはフラクショナルで用います。

アレキサンドライト755nmとダイオード800〜900nmは、毛のメラニンを標的にする医療脱毛の代表的な波長です。当院のメディオスター モノリスは808nmと940nmを搭載し、毛質、部位、肌色に合わせて蓄熱式と単発式を使い分けます。

褐色斑は、色、境界、左右差、盛り上がり、経時変化を見て日光黒子、雀卵斑、肝斑、母斑を分けます。境界明瞭な病変は局所照射、細かな色むらが広がる場合は面の治療、肝斑は遮光と外用を含む順序で計画します。

肝斑へ694nmフラクショナルを用いた経過では、MASIが平均72.3%低下した一方、3か月後に炎症後色素沈着28%、再発44%を認めたとの報告がありました(参考文献1)。

1064〜10600nmは深部の血管・真皮・水を標的にする

Nd:YAG 1064nmはヘモグロビン、メラニン、水への吸収を利用し、深い血管性の赤みやリジュビネーションに用いられます。ADVATx Nd:YAG 1319nmは真皮の水を介して非蒸散性に加熱し、キメ、ハリ、皮脂、毛穴、ニキビ瘢痕の質感を扱う選択肢です。

エルビウム2940nmとCO2 10600nmは水への吸収が高い波長です。2940nmは肌の質感を整える蒸散治療に、CO2 10600nmは組織を蒸散・切開して、ほくろ、いぼ、瘢痕、手術に用います。

当院のCO2レーザーは厚生労働省承認機器UAL3000DPです。隆起性病変は形、色、硬さ、出血、増大の経過を確認し、病理検査が必要な場合は切除と検体提出を選び、良性と判断できる病変をCO2レーザーの対象にします。

当院では色・形・深さから波長と機器を決める

赤みは面状紅斑と線状血管、色素は褐色と青灰色、隆起性病変は表面と硬さ、脱毛は毛の太さと密度を記録します。標的がヘモグロビンならADVATx 589nm、メラニンならルビー694nmまたはモノリス808・940nm、水ならADVATx 1319nmまたはCO2 10600nmという順に候補を絞ります。

一つの部位に赤み、色素、隆起が重なる場合は、先に診断を確定し、血管、色素、蒸散の順序を分けます。照射後は赤み、痂皮、色素変化、皮疹数、毛の再生、上皮化を治療ごとの指標として追い、次の波長と間隔を決めます。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 赤みは面状か線状か、色素は褐色か青灰色か、病変は平坦か隆起かを、正面・斜位・ダーモスコピーで分けます。
  • ヘモグロビン、メラニン、水の主標的を決め、標的の深さと大きさに波長、パルス幅、照射径、冷却を合わせます。
  • 当院の機器では、血管と真皮にADVATx 589・1319nm、色素にルビー694nm、脱毛にモノリス808・940nm、蒸散・切開にCO2 10600nmを配置します。
  • 経過は、赤みの面積、色素の濃さ、皮疹数、毛の再生、創の上皮化を別々に記録し、治療ごとの次回間隔と照射範囲へ反映します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
ADVATx 589+1319nm 赤ら顔、毛細血管拡張、ニキビとニキビ後の赤み、皮脂・毛穴・肌質が重なる状態 日焼け直後、照射部位の感染・強い皮膚炎、診断未確定の色素・隆起性病変 1回ごとの赤み、皮疹数、皮脂を再評価。5回コースあり 赤み、ほてり、腫れ、乾燥、刺激感。まれに色素沈着、水疱、熱傷 全顔・スポット込み 1回30,000円/5回139,000円 国内未承認医療機器
Qスイッチルビー694nm 日光黒子、雀卵斑、扁平母斑、太田母斑、細かな色むら、刺青・アートメイク除去 血管性紅斑、診断未確定病変、炎症が続く部位 フラクショナルは初回5回を目安。スポット・母斑は病変と経過で調整 痛み、赤み、乾燥、痂皮、炎症後色素沈着、色素脱失。まれに熱傷・瘢痕 全顔1回16,500円/初回5回66,000円。スポット1cm×1cmまで6,600円 NanoStar Rは国内承認医療機器(22900BZX00055000)
メディオスター モノリス808+940nm 全身、顔、ひげ、VIOなどの医療脱毛 強い日焼け、照射部位の炎症・感染、妊娠中など 毛周期に合わせて継続。顔1〜2か月、体1.5〜3か月を目安 赤み、熱感、腫れ、毛嚢炎。まれに水疱、熱傷、色素変化、硬毛化 全身1回75,000円/全顔22,000円/ひげ3部位13,200円 国内承認医療機器
CO2レーザー10600nm 良性と診断したほくろ、いぼ、ミリウム、蒸散・切開が必要な病変 病理診断が必要な病変、血管性紅斑、肝斑 病変単位で通常1回。上皮化と再発を追って再評価 痛み、出血、滲出液、痂皮、色素変化、陥凹、感染、瘢痕、再発 ほくろ・いぼ5mmまで1個5,500円/顔の取り放題55,000円 UAL3000DPは厚生労働省承認医療機器

費用の目安

  • ADVATx 589+1319nm 全顔・スポット照射込み:1回30,000円/5回139,000円
  • ルビーフラクショナル全顔:1回16,500円/初回5回66,000円/2クール目以降5回55,000円。スポット1cm×1cmまで6,600円
  • メディオスター モノリス医療脱毛:全身1回75,000円/全顔22,000円/ひげ3部位13,200円
  • CO2レーザー:ほくろ・いぼ5mmまで1個5,500円/顔の取り放題55,000円/首いぼ・ミリウム10個まで5,500円

自由診療・税込。部位、範囲、照射方法、麻酔、保護材、剃毛の有無で総額が変わります。

リスク・副作用・注意点

  • 血管・真皮レーザー:痛み、赤み、ほてり、腫れ、乾燥、刺激感、色素沈着、水疱、熱傷
  • 色素レーザー:痛み、赤み、乾燥、痂皮、炎症後色素沈着、色素脱失、熱傷、瘢痕、再発
  • 脱毛レーザー:赤み、熱感、腫れ、毛嚢炎、水疱、熱傷、色素沈着・色素脱失、硬毛化・多毛化
  • CO2レーザー:痛み、出血、滲出液、痂皮、感染、色素変化、陥凹、瘢痕、再発
  • 国内承認・適応: 当院のADVATxは国内未承認医療機器で、医師の責任のもと適法な輸入手続きにより入手しています。NanoStar R(694nm、承認番号22900BZX00055000)、メディオスター モノリス(808・940nm)、UAL3000DP(CO2)は国内承認医療機器です。未承認機器による健康被害は医薬品副作用被害救済制度等の対象外となる場合があります。

波長だけでなく、パルス幅、照射径、出力、冷却、皮膚型、日焼け、病変の診断によって皮膚反応が変わります。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Hilton S, Heise H, Buhren BA, Schrumpf H, Bölke E, Gerber PA. Eur J Med Res. 2013;18:43. doi:10.1186/2047-783X-18-43.

    Treatment of melasma in Caucasian patients using a novel 694-nm Q-switched ruby fractional laser

    研究デザイン: 後ろ向き症例集積。694nmフラクショナルQスイッチルビーを1〜3回、平均1.4回照射し、最終照射4〜6週後と3か月後を評価 / 対象: Fitzpatrick I〜III型の白人女性25人。表皮性または混合型肝斑 / 結果: MASIは6.54から1.98へ平均72.3%低下しました。3か月後は炎症後色素沈着7人(28%)、再発11人(44%)でした。 / 限界: 無作為化・対照群のない単施設25人の研究で、追跡は3か月です。4〜8J/cm2という研究設定を当院の設定へ転用できません。1著者は使用機器メーカーAsclepion Laser Technologiesから講演謝金を受領しています。原著全文を2026年8月8日に確認しました。

  2. Boonpethkaew S, Anansiripun P, Maitrisathit W, et al. J Cosmet Dermatol. 2026;25:e70894. doi:10.1111/jocd.70894.

    Efficacy and Safety of a Dual-Wavelength 589/1319 nm Laser for the Treatment of Acne Erythema: A Split-Face Randomized Controlled Trial

    研究デザイン: 単施設・単盲検の左右比較無作為化試験。片側へ589/1319nmレーザーを2週間隔で6回、反対側へアロエベラゲルを1日2回18週間使用し、最終照射8週間後まで追跡 / 対象: 両頬にニキビ関連紅斑がある30人を登録し29人が完遂。女性27人・男性2人、Fitzpatrick III〜IV型、タイの単施設 / 結果: レーザー側は2週、対照側は4週で治療前より赤みが有意に減少しましたが、群間差はありませんでした。最終照射8週後の反応率はレーザー側72%、対照側69%、平均疼痛は1.52/10でした。 / 限界: 小規模・短期・単一施設で、活動性ニキビの変動と、対照のアロエベラゲルの作用が結果へ影響した可能性があります。最適な照射条件・回数と長期効果は未確定です。研究費はRamathibodi Hospitalが負担し、機器はタイの販売会社が短期貸与しましたが、研究設計・解析・論文作成には関与しなかったと記載されています。原著全文を2026年8月8日に確認しました。

  3. PMDA

    医療機器の承認審査に関する情報

    販売名、承認番号、承認範囲を確認する公的情報です。

  4. 厚生労働省

    医療広告ガイドライン

    自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。

よくあるご質問

Q. 波長が違うと何が変わりますか?

ヘモグロビン、メラニン、水への吸収と、組織へ届きやすい深さが変わります。標的の大きさにはパルス幅、治療範囲には照射径、皮膚反応には出力と冷却も合わせます。

Q. 赤みにはどの波長を使いますか?

表在性の赤みには532nmや577〜589nmが代表的です。当院ではADVATx 589nmを、面状の赤み、毛細血管拡張、ニキビ後の赤みに用い、皮脂・真皮の変化が重なる場合は1319nmを組み合わせます。

Q. シミにはどの波長を使いますか?

当院ではメラニンを標的にするQスイッチルビー694nmを用います。病変の色、境界、深さ、分布から、スポット、低出力フラクショナル、医師による高出力フラクショナルを選びます。

Q. 脱毛とCO2レーザーも波長で選ぶのですか?

脱毛は毛のメラニンを狙うモノリス808・940nm、ほくろ・いぼの蒸散や切開は組織の水を狙うCO2 10600nmを用います。隆起性病変は病理検査の必要性を先に判断します。

Q. 各機器の承認状況と主なリスクは?

ADVATxは国内未承認医療機器です。NanoStar R、メディオスター モノリス、UAL3000DPは国内承認医療機器です。赤み、腫れ、痛み、乾燥、痂皮、色素変化、熱傷、感染、瘢痕など、波長と治療方法に固有のリスクがあります。

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