唇とほうれい線をヒアルロン酸2ccで整える考え方
色白で明らかなたるみが少ない方に、若返りではなく口元の華やかさを加えた症例です。ヒアルロン酸製剤のボルベラ1ccとボリューマ1ccの計2ccを、上唇中心と小鼻横のほうれい線へ配分し、正面と左右斜位で変化を確認しました。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2021年11月21日
- 実質更新日
- 2026年8月9日



Contents
目次
正面では、上唇と小鼻横の影を一緒に整えました
この症例は肌が白く、明らかなたるみは少なく、顔全体は素朴で穏やかな印象でした。そこで、目元と並んで顔の華やかさを作る口元に焦点を置き、上唇のボリュームと小鼻横から始まるほうれい線上部の影を同日に治療しました。
画像1の正面写真では、治療後に上唇の中央から口角寄りまで赤唇が見えやすくなり、小鼻横の影もやわらいでいます。症例では、口唇増大に用いるボルベラ1ccと、中顔面の支えに用いるボリューマ1ccの計2ccを使い、上唇と小鼻横で役割を分けました。患者さんはこの変化に大変満足されました。
上唇の中央の高さと赤唇縁を少量ずつ整え、腫れが引いた後に形を再評価する根拠として、口唇へのHA注入後は、口唇充足度の改善60%、外観の改善82%、患者満足68%で、腫れ78%、硬さ48%、内出血34%、圧痛33%だったとの報告がありました(参考文献1)。
左斜位では、小鼻横の支えを先に見ます
画像2の左斜位では、治療前に小鼻の付け根から口角方向へ続く影があり、上唇の前方への厚みは控えめです。治療後は小鼻横の影が浅くなり、上唇の前方投影が増えています。正面だけでなく斜位を加えると、線の濃さと口唇の出方を別々に確認できます。
当院でこの2部位を同日に治療するときは、まず小鼻横の支えとほうれい線上部を少量ずつ整え、左右斜位で影の変化を確認します。その後に上唇へ移り、中央の高さ、赤唇縁、口角までのつながりを作ります。先に小鼻横を整えることで、ほうれい線を線の上だけで埋め続けず、残る口元の変化に必要な量を判断できます。
小鼻横の支えを整えた後も、ほうれい線の変化を時間経過で追う根拠として、4群すべてで12週までしわ尺度が改善し、深層注入では軽度の中顔面リフトもみられた一方、52週にはしわ尺度がほぼ治療前へ戻ったとの報告がありました(参考文献2)。
右斜位では、上唇の投影と左右差を確認します
画像3の右斜位でも、小鼻横から始まるほうれい線の影がやわらぎ、上唇の輪郭と前方への厚みが見えやすくなっています。下唇だけが目立っていた治療前と比べ、治療後は上唇と下唇の比率が近づき、口元全体の存在感が増しています。
最後は正面と左右斜位を並べ、上唇だけが前へ出すぎていないか、小鼻横の左右差が増えていないか、口を閉じた状態が保たれているかを確認します。2ccを一か所へ集中させず、ボルベラとボリューマの役割を分けたのは、口唇の形と中顔面の支えを同時に整えながら、過度な突出を避けるためです。
小鼻横と口唇は、血管の走行を分けて確認します
小鼻横には顔面動脈から続く角動脈、口唇には上・下口唇動脈が走り、実際の走行と深さには個人差があります。過去の注入歴、傷あと、拍動、注入予定層を確認して注入点と方向を決め、同じ針先位置から多量を押し込まず、皮膚色と痛みを見ながら少量ずつ進めます。
注入後は、通常の腫れや圧痛に加え、注入部の硬さやしこり感が1〜2か月続くことがあります。同時に、皮膚の白色変化、網目状の色調変化、通常より強い痛み、毛細血管再充満の遅れを確認します。視界のかすみ、視野欠損、眼痛などの視覚症状は、皮膚所見の有無にかかわらず緊急対応が必要です。
小鼻横と口唇の注入中から血流を確認する理由として、HAによる血管閉塞の診療指針では、急に増す痛み、白色から網目状の紫色へ変わる皮膚色、毛細血管再充満の遅れを虚血の所見として評価し、疑った時点で注入を止め、影響範囲へ速やかにヒアルロニダーゼを投与するとの報告がありました(参考文献3)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- この症例では、明らかなたるみを持ち上げることより、素朴で穏やかな顔立ちに口元の華やかさを加えることを治療目標にしました。
- ボリューマ1ccで小鼻横の支えとほうれい線上部を先に整え、左右斜位で影の残り方を見た後、ボルベラ1ccを上唇中心へ配分して中央の高さと輪郭を作りました。
- 仕上げは正面・左右斜位で、上唇と下唇の比率、小鼻横の影、口唇の前方投影、左右差、口を閉じた状態を順に確認します。
- 腫れが引いた後に形を再評価します。注入部の硬さやしこり感が1〜2か月続く場合も、経過と皮膚色を診察して追加治療の時期を決めます。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 唇へのHA | 輪郭・左右差・ボリュームを少量調整 | 過量変化を希望、感染・活動性炎症 | 1回後に腫れが引いて再評価 | 腫れ、内出血、硬さ、左右差、血管閉塞 | 1cc77,000円+唇施術料11,000円 | 製剤・使用目的ごとに国内承認確認 |
| ほうれい線へのHA | 線の直下に補正余地がある場合 | 主因が中顔面下垂・皮膚余剰で直接注入が過量になる場合 | 1回後に再評価 | 腫れ、内出血、凹凸、血管閉塞、皮膚壊死、視覚障害 | 1cc77,000円。使用本数で変動 | 製剤・使用目的ごとに国内承認確認 |
| 中顔面支持へのHA | 頬の支持不足がほうれい線へ影響 | 皮膚の強いたるみ、注入で重くなる場合 | 段階的に1回ずつ | 腫れ、内出血、左右差、血管閉塞等 | 1cc77,000円。使用本数で変動 | 製剤・使用目的ごとに国内承認確認 |
費用の目安
- ヒアルロン酸2本(2cc)154,000円。
- 唇施術料11,000円。症例の注入関連合計は165,000円です。
ボルベラ1cc+ボリューマ1ccは症例固有で、全員の推奨量ではありません。
リスク・副作用・注意点
- 腫れ、内出血、痛み、圧痛、硬さ、凹凸、左右差が生じます。
- 感染、結節、遅発性炎症、アレルギーが起こることがあります。
- まれに血管閉塞、皮膚壊死、失明を含む視覚障害が起こり得ます。
強い痛み、白色・網目状の皮膚色変化、視覚症状は緊急評価が必要です。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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唇へのヒアルロン酸注入の無作為化試験レビュー
研究デザイン: ヒアルロン酸による口唇増大の無作為化比較試験を対象とした系統的レビュー・メタ解析 / 対象: 文献検索で抽出した2,038報から、適格性とバイアスリスクを評価して採用した16件の無作為化比較試験。総対象人数はPubMed抄録に一括記載されていない。 / 結果: 口唇充足度の改善60%、外観の改善82%、患者満足68%だった。主な有害事象は腫れ78%、硬さ48%、内出血34%、圧痛33%だったとの報告がありました。 / 限界: 製剤、注入量、評価尺度、追跡期間が研究間で異なる。ボルベラ固有の効果、この症例の1ccという量、ボリューマとの同日併用を直接評価した研究ではない。PubMed抄録を2026年8月8日に再確認し、原著全文は取得していない。
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ほうれい線への製剤・注入深度を比較した52週試験
研究デザイン: 2種類のヒアルロン酸製剤と浅層・深層注入を比較した52週の前向き無作為化二重盲検試験 / 対象: 中等度から重度のほうれい線がある中国人100人。2製剤へ無作為に割り付け、さらに浅層注入群と深層注入群に分けた。 / 結果: 4群すべてで12週までWSRSとGAISが改善し、深層注入では軽度の中顔面リフトもみられた。52週には全群のWSRSがほぼ治療前へ戻り、主な有害事象は腫れ、赤み、圧痛だったとの報告がありました。 / 限界: 中国人、RestylaneとYishumeiという特定製剤、特定の注入層を比較した研究である。ボリューマ、小鼻横への1cc配分、唇との同日治療、個人の必要本数を直接評価していない。PubMed抄録を2026年8月8日に再確認し、原著全文は取得していない。
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Guideline for HA filler vascular occlusion
研究デザイン: 架橋ヒアルロン酸注入後の血管閉塞を認識し、虚血の段階と治療手順を示した診療指針 / 対象: 無作為化試験の対象集団ではなく、まれな血管閉塞について病態生理、症例経験、既報を基に作成された臨床指針。 / 結果: 急に増す痛み、白色から網目状の紫色へ変わる皮膚色、毛細血管再充満の遅れを評価し、血管閉塞を疑えば注入を止め、虚血範囲全体へヒアルロニダーゼを速やかに投与するとの報告がありました。 / 限界: 血管閉塞がまれであるため、高水準の比較試験ではなく理論と共有された臨床経験に大きく依存する。顔面各部位の血管モデル、至適投与量、各製剤別の溶解性には追加研究が必要である。PubMed抄録とJCAD公開全文を2026年8月8日に再確認した。
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ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書
承認番号・使用目的・注意事項の確認。
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ジュビダームビスタ ボルベラXC 添付文書
承認番号・使用目的・注意事項の確認。
よくあるご質問
Q. この症例では、どの製剤をどこへ注入しましたか?
ボリューマ1ccを小鼻横の支えとほうれい線上部、ボルベラ1ccを上唇中心へ配分し、合計2ccを使用しました。
Q. なぜ、ほうれい線を整えてから唇へ注入するのですか?
小鼻横の支えを先に整えると、ほうれい線上へ必要以上に注入せずに済み、その後に必要な上唇の高さと前方投影を判断しやすくなるためです。
Q. 唇とほうれい線には、全員2ccが必要ですか?
2ccは掲載症例の量です。上唇と下唇の比率、小鼻横のくぼみ、ほうれい線の深さ、希望する華やかさを正面・左右斜位で確認し、製剤と量を決めます。
Q. 注入後の腫れや硬さは、どのくらい続きますか?
腫れ、内出血、圧痛は治療直後からみられ、唇では一時的に強く出ることがあります。注入部のしこり感が1〜2か月続くことがあります。
Q. 治療後、すぐに連絡が必要な症状は何ですか?
通常より強い痛み、皮膚の白色化や網目状の色調変化、冷たさ、視界のかすみ・視野欠損・眼痛がある場合は、血流障害の可能性があるため直ちに当院へ連絡してください。視覚症状は緊急対応が必要です。
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