医師解説しわ・たるみヒアルロン酸

中顔面の年齢変化とほうれい線をヒアルロン酸3ccで整える考え方

糸リフトによる急な変化ではなく、ヒアルロン酸で加齢変化をゆるやかに整えたい方の症例です。ボリューマXCを中顔面とほうれい線へ合計3cc使い、正面と左右斜位で頬の前方投影、鼻翼横の影、左右差を見ながら自然な変化を目指しました。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2021年12月21日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. 正面では、中顔面の支えとほうれい線を一緒に整えました
  2. 左斜位では、頬の前方投影から鼻翼横へのつながりを見ます
  3. 右斜位で左右差を見直し、残るほうれい線を補正します
  4. 合計3ccの経過を追い、しこりと血流異常を分けて対応します
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

正面では、中顔面の支えとほうれい線を一緒に整えました

症例は、糸リフトで短期間に大きく変えるより、ヒアルロン酸で加齢による中顔面の変化を緩やかに整え、長く経過を見ていく治療を希望されました。今回はジュビダームビスタ ボリューマXCを、中顔面とほうれい線へ合計3cc使用しています。

正面写真では、治療後に内側頬の前方への丸みが戻り、鼻翼横から口角方向へ続くほうれい線の影が浅く見えます。顔幅や口元の形を大きく変えず、頬の支えと線の見え方を同時に整えた経過です。

ほうれい線だけへ量を集めず、まず中顔面のボリューム減少を補うのは、頬の前方投影を戻した段階で線がどこまで薄くなるかを見極めるためです。

正面で内側頬の前方投影とほうれい線の影を一緒に整える理由として、中顔面へのヒアルロン酸注入後は最長24か月まで高い満足度が報告され、主な反応である内出血・腫れ・圧痛は通常2週間以内だったとの報告がありました(参考文献1)。

左斜位では、頬の前方投影から鼻翼横へのつながりを見ます

左斜位写真では、治療後に頬骨前面から鼻翼横へかけての輪郭がなだらかになり、ほうれい線上部の影が軽く見えます。正面だけでなく斜位を加えると、頬が前へ出たか、外側へ広がっていないかを確認できます。

この症例で用いたボリューマXCは、中顔面の減少したボリュームを皮下または骨膜上深部で補う国内承認製剤です。中顔面の支えを先に作り、その後も残る鼻翼横の折れ込みへ必要量を追加する順序にすると、3ccを線だけへ集中させずに済みます。

ほうれい線を直接補正する段階では、鼻翼横から口角方向に走る顔面動脈と、その周囲で連絡する外側鼻動脈・眼窩下動脈を想定し、注入層と針・カニューレの経路を決めます。

中顔面の支えへボリューマXCを選ぶ理由として、国内添付文書では、成人の中顔面・下顎部・こめかみで減少したボリュームを増大する目的で、皮下または骨膜上深部へ注入する製剤と記載されています(参考文献4)。

ほうれい線へ直接注入する前に血管位置を見直す理由として、タイ人15献体30半顔の解剖では、ほうれい線下部の指標で顔面動脈が28%で下内側に位置し、鼻翼下縁の高さでは顔面動脈33.3%、外側鼻動脈33.3%、眼窩下動脈30.0%が近接していたとの報告がありました(参考文献5)。

右斜位で左右差を見直し、残るほうれい線を補正します

右斜位写真でも、治療後は頬の前方投影が保たれ、鼻翼横から始まるほうれい線の影が浅く見えます。左右の斜位を並べることで、一方だけ頬が張って見えないか、口元まで自然につながっているかを確認します。

治療の終点は、ほうれい線を完全に消すことではなく、正面と左右斜位で頬の支えと口元の動きが釣り合うところです。中顔面を補った後も固定した折れが残る部分だけに追加し、経過写真でもう一度必要量を判断します。

中顔面を支えた後に残るほうれい線だけを補正し、経過で追加を判断する理由として、2種類のヒアルロン酸製剤と浅層・深層注入の全群で12週までしわ尺度が改善し、深層注入には軽い中顔面のリフトがみられた一方、52週にはしわ尺度がほぼ治療前へ戻ったとの報告がありました(参考文献2)。

合計3ccの経過を追い、しこりと血流異常を分けて対応します

ボリューマXC 3ccは、この症例で中顔面とほうれい線へ使った合計量です。注入後は腫れや硬さのため、1〜2か月ほど注入部にしこりを感じることがあります。赤み、熱感、痛みを伴う硬結や、時間とともに増える腫れは、通常の触感変化と分けて診察します。

注入中または直後に皮膚が青白くなる、網目状に変色する、通常と異なる痛みや視覚異常が出る場合は、血管閉塞を疑って直ちに注入を止めます。ヒアルロニダーゼをすぐ使用できる体制を整え、皮膚色と毛細血管再充満、視覚症状を時間経過で確認します。

皮膚色、毛細血管再充満、痛みを施術中から追う理由として、架橋ヒアルロン酸による血管閉塞では虚血の徴候を臨床的に見分け、診断後すぐ標的治療を始める必要があるとの報告がありました(参考文献3)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • まず正面と左右斜位で、内側頬の前方投影、鼻翼横から始まるほうれい線の影、左右差を比べ、中顔面で戻す支えの位置を決めます。
  • ボリューマXCで中顔面のボリュームを先に補い、正面と斜位を撮り直してから、なお残るほうれい線へ少量ずつ追加します。この症例では両方を合わせて3ccです。
  • 注入前に既存フィラーの硬さと血管走行を確認し、必要最小量をゆっくり注入します。青白化、網目状変色、異常な痛み、視覚症状があれば直ちに中止し、血管閉塞として緊急対応します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
中顔面支持へのHA 頬の支持不足・ボリューム減少が主体 むくみやすい、過去注入が多い、皮膚余剰が主体 1回後に段階評価 腫れ、内出血、左右差、血管閉塞 1cc77,000円。使用本数で変動 製剤・目的ごとに国内承認確認
ほうれい線へのHA 直接補正の余地が残る線 中顔面支持不足だけが主因、過量で不自然になる場合 1回後に再評価 腫れ、凹凸、内出血、血管閉塞、視覚障害 1cc77,000円+必要時カテラン針11,000円 製剤・目的ごとに国内承認確認
HIFU・RF・手術 皮膚・支持組織のゆるみが主因 ボリューム不足のみを補いたい場合 機器・術式ごと 熱感、腫れ、神経症状、瘢痕等治療固有 治療ごとに異なる 機器・術式ごとに承認・適応確認

費用の目安

  • ヒアルロン酸3本(3cc)231,000円。
  • カテラン針11,000円。症例の注入関連合計は242,000円です。

3ccは症例固有の総量で、部位配分と付帯手技で総額が変わります。

リスク・副作用・注意点

  • 腫れ、内出血、痛み、凹凸、硬さ、左右差、むくみが生じます。
  • 感染、結節、遅発性炎症、アレルギーが起こることがあります。
  • まれに血管閉塞、皮膚壊死、失明を含む視覚障害が起こり得ます。

一度に大きく変えず、支持・線・過量所見を分けて評価します。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Trinh LN, Gupta A. Hyaluronic Acid Fillers for Midface Augmentation: A Systematic Review. Facial Plast Surg. 2021;37(5):576-584.

    中顔面へのヒアルロン酸注入の系統的レビュー

    研究デザイン: PRISMAに沿った系統的レビュー / 対象: 中顔面・頬・頬骨部へのヒアルロン酸注入を扱った18論文、7種類の製剤 / 結果: 幅広い年齢の男女で最長24か月まで高い満足度が報告され、主な有害事象は内出血、腫れ、圧痛で、通常2週間以内だった。 / 限界: 製剤、注入層、術者経験、評価法が研究間で異なり、最適な手技や3ccの部位別配分は確定できない。著者は追加の臨床試験が必要としている。

  2. Hu Y, Feng M, Wu Y, Yan T, Gao X, Zhang Q. Efficacy and safety of two hyaluronic acid fillers with different injection depths for the correction of moderate-to-severe nasolabial folds: A 52-week, prospective, randomized, double-blinded study in a Chinese population. J Cosmet Dermatol. 2022;21(3):940-948.

    ほうれい線への製剤・注入深度を比較した52週試験

    研究デザイン: 52週前向き無作為化二重盲検比較試験 / 対象: 中等度から重度のほうれい線がある中国人100人。RestylaneまたはYishumei、浅層または深層注入へ割り付けた4群 / 結果: 全4群で12週までWSRSとGAISが改善した。深層注入では軽い中顔面リフトと顔貌改善がみられた。52週には全群のWSRSがほぼ治療前へ戻り、主な有害事象は注入部の腫れ、発赤、圧痛だった。 / 限界: 中国人、特定の2製剤、特定の注入深度を比較した試験であり、ボリューマXC 3ccの中顔面とほうれい線への最適配分や個人の持続期間を示すものではない。

  3. Murray G, Convery C, Walker L, Davies E. Guideline for the Management of Hyaluronic Acid Filler-induced Vascular Occlusion. J Clin Aesthet Dermatol. 2021;14(5):E61-E69.

    Guideline for HA filler vascular occlusion

    研究デザイン: Complications in Medical Aesthetics Collaborativeによる臨床ガイドライン / 対象: 架橋ヒアルロン酸フィラーによる血管閉塞が疑われる患者 / 結果: 組織虚血の病態と臨床徴候を段階別に示し、血管閉塞を臨床診断した後は速やかに標的治療を開始するよう提案している。 / 限界: まれな合併症のため、推奨の多くは病態生理、症例経験、専門家合意に基づく。発生率や個々の注入部位で最も安全な手技を比較した無作為化試験ではない。

  4. アラガン・ジャパン株式会社. ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書. 2023年8月(第1版). 医療機器承認番号22800BZX00338000.

    ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器添付文書 / 対象: 中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを増大する治療を受ける成人 / 結果: 使用目的は中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームの増大で、皮下または骨膜上深部へ注入する。血管内注入を禁じ、異常な痛み、皮膚青白化、視力異常などがあれば直ちに注入を止めるよう警告している。 / 限界: 添付文書は症例ごとの最適量、左右配分、ほうれい線への直接注入量を示す比較研究ではない。

  5. Jitaree B, Phumyoo T, Uruwan S, Sawatwong W, McCormick L, Tansatit T. Clinical implications of the arterial supplies and their anastomotic territories in the nasolabial region for avoiding arterial complications during soft tissue filler injection. Clin Anat. 2021;34(4):581-589.

    ジュビダームビスタ ボルベラXC 添付文書

    研究デザイン: 解剖学的献体研究とmodified Sihler染色 / 対象: 固定されたタイ人15献体30半顔の解剖。別の軟固定5献体10半顔で動脈吻合を染色評価 / 結果: 顔面動脈はほうれい線の各指標に最も近く、下部では28%で下内側、鼻翼下縁の高さでは顔面動脈33.3%、外側鼻動脈33.3%、眼窩下動脈30.0%が近接した。鼻唇部の動脈吻合は外頸動脈系同士と内頸・外頸動脈系を連絡していた。 / 限界: タイ人の少数献体による静的な解剖研究であり、生体の血管位置、注入中の移動、特定の針・カニューレや注入層による合併症率を比較していない。

よくあるご質問

Q. ヒアルロン酸3ccは、ほうれい線だけに入れますか?

この症例では、ボリューマXC合計3ccを中顔面の支えとほうれい線の補正に分けて使っています。中顔面を先に整え、残る線へ必要量を追加します。

Q. なぜ中顔面から先に注入するのですか?

頬の前方投影が戻ると、鼻翼横から続くほうれい線の影も軽くなるためです。支えを作った後に線を見直すと、ほうれい線へ入れる量を抑えやすくなります。

Q. この症例でボリューマXCを選んだ理由は何ですか?

ボリューマXCは、成人の中顔面などで減少したボリュームを、皮下または骨膜上深部へ注入して増大する国内承認製剤です。この症例の主目的である中顔面の支持に合わせて選びました。

Q. 注入後のしこりはどのくらい続きますか?

1〜2か月ほど注入部にしこりを感じることがあります。赤み、熱感、痛みを伴う、または硬さが増す場合は診察が必要です。

Q. 注入後にすぐ連絡が必要な症状はありますか?

皮膚の青白化や網目状変色、通常と異なる強い痛み、見えにくさなどの視覚症状は血管閉塞の徴候になり得ます。直ちに施術を中止し、緊急評価と処置を行います。

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