他院ヒアルロン酸後のこめかみと輪郭を整え直す考え方
他院でこめかみにヒアルロン酸2ccを受けた後、凹みが残る一方で注入部の膨らみが目立った症例です。当院ではボリューマXC計3.5ccをこめかみ・頬・顎へ追加し、正面と両斜位で上顔面からフェイスラインのつながりを整えました。追加、溶解、経過観察を選ぶ診察順を解説します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2022年3月14日
- 実質更新日
- 2026年8月9日



Contents
目次
他院のこめかみ注入後を、ボリューマXC計3.5ccで整え直した症例です
他院でこめかみにヒアルロン酸2ccを注入した後も凹みが残り、入っている場所だけが膨らんで輪郭の段差として目立っていました。正面では、局所の膨らみだけでなく、額外側からこめかみ、頬、顎へ続く左右の輪郭を比べます。
この症例では既存ヒアルロン酸を一律に溶かすのではなく、残るこめかみの凹みをつなぎ、頬と顎の支えも補う追加注入を選びました。ボリューマXCを計3.5cc使用し、局所麻酔とカニューレを併用しています。3.5ccはこめかみだけの量ではなく、こめかみ・頬・顎を合わせた総量です。
斜位では、膨らんだ部分と残る凹みを一続きに見ます
一方の斜位では、こめかみのどこが前へ出て、どこに凹みの影が残っているかが正面より分かりやすくなります。指で軽く触れたときの硬さ、押したときの移動、拍動、痛みや熱感も合わせ、単なるボリューム不足と既存製剤の偏りを分けます。
本症例では、膨らんだ一点へさらに重ねるのではなく、その周囲に残る凹みと頬上部のつながりを整えました。局所だけを平らにするのではなく、額外側から頬骨上へ光が連続する輪郭を目標にした修正です。
こめかみの既存製剤へ追加する前に上顔面の血流所見も確認する理由として、報告された合併症では皮膚壊死46件、視力喪失35件が重度または永続性に分類され、最も重い合併症は鼻・眉間・額で多かったとの報告がありました(参考文献1)。
こめかみを片側ずつ確認して刺入点を決める理由として、頬骨眼窩動脈は85.2%で確認され、耳珠と眉弓を結ぶ線から1cm以内を走ったとの報告がありました(参考文献4)。
反対側の斜位では、こめかみ・頬・顎の役割を分けます
反対側の斜位でも、こめかみだけでなく頬の高さと顎先までを同時に比べます。こめかみは上顔面の凹みをつなぎ、頬は中顔面の支え、顎は下顔面とフェイスラインの終点を整える役割があります。
同じ3.5ccでも一か所へ集めず、正面と両斜位を往復して、局所の膨らみを強調しない位置へ配分します。治療後はこめかみの段差だけでなく、頬から顎へ続く輪郭と左右差を同じ角度で確認します。
こめかみと頬へ分けて追加した後、腫れや凹凸を部位別に追う理由として、中顔面・口周囲・口唇では鼻唇溝より腫れ、しこり・凹凸、硬さの報告割合が高く、痛み、赤み、内出血には明確な部位差がなかったとの報告がありました(参考文献2)。
本症例で用いたジュビダームビスタ ボリューマXCは、21歳以上の成人で、中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを増大する目的で、皮下または骨膜上深部へ注入する国内承認製品です(参考文献3)。
追加・溶解・経過観察は、既存製剤の状態で選びます
腫れが落ち着いた後も、既存のヒアルロン酸が軟らかく、炎症所見がなく、周囲の凹みと支持不足が主であれば、今回のように必要な部位へ追加して輪郭をつなぐ方法があります。局所の過剰、明らかな位置ずれ、硬いしこりが主なら、ヒアルロニダーゼで減らしてから再評価します。
注入から日が浅く腫れが変化しているときや、製剤の種類・位置が分からず所見が定まらないときは、先に経過観察や超音波確認を行います。溶解と追加を同日に急いで重ねず、どの変化が残ったかを確認して次の一手を決めます。
施術後は、通常の腫れと早期対応が必要な変化を分けます
局所麻酔とカニューレを用いても、数日間の軽い赤み、腫れ、内出血、圧痛、違和感、頭痛が生じることがあります。左右差と輪郭は腫れが落ち着いてから、正面と両斜位で再評価します。
強い痛み、皮膚が白色・紫色になる変化、網目状の変色、腫れの悪化、見え方の異常、強い頭痛はすぐに連絡が必要です。赤みや頭痛が長く続く場合、硬さや熱感が増す場合も、感染、遅発性炎症、血流障害を分けて追加処置の要否を判断します。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 他院注入後は、前回の製剤名、注入日、こめかみ2ccの範囲、その後の腫れが落ち着いた時期を確認します。
- 正面と両斜位で、局所の膨らみ、前後に残る凹み、頬・顎の支持を記録し、触診で硬さ、移動、拍動、痛み、熱感を分けます。
- 軟らかい既存HAの周囲に凹みが残る場合は追加、過剰・位置ずれ・硬結が主なら溶解、時期や位置が定まらなければ経過観察または超音波確認を選びます。
- 追加する場合も、こめかみだけを最大まで満たさず、額外側、こめかみ、頬、顎を一続きに見て必要な部位へ配分します。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ボリューマXCの追加注入 | 腫れが落ち着き、既存HAの周囲に凹み・支持不足が残る状態 | 活動性の赤み・熱感・感染、硬いしこり、局所過剰が主で追加すると重く見える状態 | 通常1回。腫れが落ち着いた後に正面・両斜位で再評価 | 赤み、腫れ、内出血、圧痛、左右差、凹凸など。まれに血管閉塞、皮膚壊死、視覚障害 | 3.5ccなら4本308,000円。カテラン針使用時は計319,000円 | ボリューマXCは中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリューム増大に国内承認 |
| ヒレネックスによる溶解 | HAの局所過剰、位置ずれ、硬いしこりが主で、減量後の再評価が必要な状態 | HA以外または製剤不明、活動性感染、ヒアルロニダーゼへの重いアレルギー歴 | 反応を見て1回または追加。溶解後の輪郭を再評価 | 腫れ、赤み、痛み、内出血、アレルギー、凹み、左右差など | ヒレネックス100単位44,000円 | 日本国内未承認。美容目的のHA溶解は米国承認用途にも含まれない |
| 経過観察・必要時の超音波確認 | 注入直後で腫れが変化中、製剤の位置・種類や症状の原因が定まらない状態 | 強い痛み、皮膚色変化、視覚異常など緊急対応が必要な状態 | 腫れの変化と症状に合わせて再診 | 治療を行わなければなし | 施術・購入なしの診察を複数回利用する場合3,300円 | 医薬品・医療機器を使用しない経過観察は該当なし |
費用の目安
- ヒアルロン酸注入:1本1cc 77,000円
- 本症例と同じ3.5ccを現在の料金で行う例:4本308,000円
- カテラン針使用料:11,000円。3.5ccの例では製剤代と合わせて319,000円
- 残注入:1回のみ3,800円。残製剤は6か月で破棄
- ヒレネックス:100単位44,000円
- 施術・化粧品購入を伴わない診察を複数回利用する場合:3,300円
すべて税込・自由診療です。掲載症例当時の請求額ではなく、2026年8月8日に照合した現在の料金例です。
リスク・副作用・注意点
- ボリューマXC注入:痛み、赤み、腫れ、圧痛、内出血、左右差、凹凸、違和感、硬さ、アレルギー、感染、しこりなど
- まれな重い合併症:血管閉塞、皮膚障害・壊死、視力障害、失明、脳梗塞など
- ヒレネックス:腫れ、赤み、痛み、内出血、アレルギー、溶かし過ぎによる凹み・左右差など
- 他院注入後の修正:既存製剤との重なり、遅発性炎症、感染、硬結、持続する腫れなど
- 国内承認・適応: 症例で用いたジュビダームビスタ ボリューマXCは、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大を目的とする国内承認医療機器です。医療機器承認番号は22800BZX00338000です。溶解に用いるヒレネックスは日本国内未承認で、ヒアルロン酸フィラーの美容目的の溶解は米国添付文書の承認用途にも含まれません。当院では医師の責任で個人輸入しており、未承認医薬品による健康被害は医薬品副作用被害救済制度等の対象外となる場合があります。
強い痛み、白色・紫色や網目状の皮膚色変化、見え方の異常、強い頭痛はすぐに連絡が必要です。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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Complications of Nonpermanent Facial Fillers: A Systematic Review
研究デザイン: 症例報告37報と後ろ向き研究9報をまとめたシステマティックレビュー / 対象: 46報・164人に生じた非永久性フィラー関連の合併症436件 / 結果: 273件は軽度または一過性、163件は重度または永続性で、皮膚壊死46件、視力喪失35件を含んだ。最重症例は鼻、眉間、額への注入で多かった。 / 限界: 合併症が起きた症例を集めた報告で、全注入患者を分母とする発生率は計算できない。HA以外の非永久性フィラーも含み、こめかみ、カニューレ、ボリューマXC、他院注入後の追加治療に固有の危険率を示さない。著者は本研究内容に関する金銭的利益なしと申告。PMC全文とPubMed書誌を2026年8月8日に再確認した。
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Adverse Events Reported From Hyaluronic Acid Dermal Filler Injections to the Facial Region: A Systematic Review and Meta-Analysis
研究デザイン: 顔面ヒアルロン酸注入を扱った無作為化試験・臨床試験のシステマティックレビューとメタ解析 / 対象: 米国・カナダで行われた成人対象の19研究。鼻唇溝と、中顔面・口周囲・口唇を比較 / 結果: 腫れ、しこり・凹凸、硬さは鼻唇溝より中顔面・口周囲・口唇で報告割合が高く、痛み、赤み、内出血、圧痛、かゆみ、皮膚色変化には明確な部位差がなかった。 / 限界: 研究間で製剤、注入部位、針・カニューレ、量が不均一。こめかみと顎のデータは解析に含まれず、まれな血管閉塞、他院注入後の修正、ボリューマXC 3.5ccの結果を評価していない。著者のMatthew J. EliasはAllerganから個人的謝金を受けたと申告し、本研究結果はAllerganの承認を受けたものではないと記載。PMC全文とPubMed書誌を2026年8月8日に再確認した。
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ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書
研究デザイン: PMDA公開の国内承認医療機器添付文書 / 対象: 適用対象は21歳以上の成人。使用目的は中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームの増大 / 結果: 皮下または骨膜上深部への注入として承認され、血管内注入を禁止し、眼周囲・眉間・額などでの誤注入による視力異常、失明、脳梗塞等に注意を求めている。 / 限界: 添付文書は承認範囲と安全情報を示す資料で、他院で注入された製剤の修正、3.5ccの部位別配分、追加と溶解の比較効果、この症例の経過を検証した研究ではない。PDF全6頁をレンダリングし、本文と書誌を2026年8月8日に確認した。
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The Superficial Temporal Artery and Zygomatico-Orbital Artery: Superficial Arterial Distribution of the Anterior Temple Area
研究デザイン: 固定献体を用いたこめかみ表在動脈の解剖・形態計測研究 / 対象: 韓国人献体43人の54側(右19側、左24側を含む。男性30人、女性13人、平均72.83歳) / 結果: 頬骨眼窩動脈は54側中46側、85.2%に存在し、全例で浅側頭動脈前頭枝から分岐した。存在した動脈は耳珠と眉弓を結ぶ線から1cm以内を走行した。 / 限界: 固定献体の静的解剖で、生体の血流、個人の注入層、カニューレによる血管閉塞率、ボリューマXCの成績を直接評価していない。平均年齢が高い韓国人献体で、他集団への一般化に限界がある。韓国政府NRF助成で、資金提供者は研究設計等へ関与せず、著者は利益相反なしと申告。PMC全文とPubMed書誌を2026年8月8日に確認した。
よくあるご質問
Q. この症例では、何をどこへ注入しましたか?
他院でこめかみに2cc注入した後、凹みと局所の膨らみが並んで見えていました。当院ではボリューマXC計3.5ccを、こめかみ・頬・顎へ追加しています。局所麻酔とカニューレを併用しました。
Q. 他院ヒアルロン酸は、まず溶かした方がよいですか?
この症例は溶解ではなく追加注入で輪郭を整えました。局所の過剰、位置ずれ、硬いしこりが主なら溶解、周囲の凹みと支持不足が主なら追加、注入直後や状態が変化中なら経過観察を選びます。
Q. ボリューマXCは、こめかみ・頬・顎に承認された製剤ですか?
ジュビダームビスタ ボリューマXCは、21歳以上の成人で、中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを増大する目的で、皮下または骨膜上深部へ注入する国内承認製品です。承認番号は22800BZX00338000です。
Q. 現在の料金で3.5ccを使う場合はいくらですか?
現在は1本1cc 77,000円です。3.5ccには4本を用意するため製剤代は308,000円、カテラン針を使用する場合は11,000円を加え319,000円です。残った0.5ccを6か月以内に1回使用する場合の残注入料は3,800円です。
Q. ヒアルロニダーゼで溶解する場合の費用と承認状況を教えてください。
ヒレネックス100単位は44,000円です。ヒレネックスは日本国内未承認で、ヒアルロン酸フィラーの美容目的の溶解は米国添付文書の承認用途にも含まれません。腫れ、赤み、痛み、内出血、アレルギー、溶かし過ぎによる凹みや左右差が生じることがあります。
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