あご・こめかみ・頬のヒアルロン酸とボトックスリフトを組み合わせた症例
体重を変えず、顎・こめかみ・右頬へヒアルロン酸、フェイスラインへボトックスリフトを組み合わせ、下顔面にあった重心を上へ整えた症例です。正面・左右斜位から、容量を補う部位と筋の動きを弱める部位を分けて説明します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2022年7月23日
- 実質更新日
- 2026年8月9日


Contents
目次
正面では、体重ではなく輪郭の重心が変わっています
正面は左が治療前、右が治療後です。治療前はこめかみから頬へ移る輪郭に左右差があり、下顔面へ視線が集まりやすい状態でした。治療後は顎先の投影、こめかみから頬へ続く曲面、フェイスラインが一続きになり、顔の重心が上がって見えます。
行った施術は、1顎のヒアルロン酸、2ボトックスリフト、3こめかみのヒアルロン酸、4右頬のヒアルロン酸です。治療前後で体重は変わっていませんが、容量を補う位置と下向きの筋活動を分けて整えることで、下顔面が細くなった印象につながっています。
左右斜位では、顎・こめかみ・右頬の役割を分けます
左右斜位は上段が治療前、下段が治療後です。顎は横顔の前方投影と下顔面の終点、こめかみは上顔面外側の影、右頬は左右で異なる頬の曲面を整える部位として確認します。治療後は顎先から下顎縁へ続く線が明瞭になり、こめかみから頬へ移る曲面もなだらかです。
顎だけを前へ出す、こめかみだけを埋めるという設計ではなく、正面で顔幅と左右差を見たあと、左右斜位で顎先・頬・こめかみの投影を一つずつ合わせます。右頬だけにヒアルロン酸を使用した点も、左右へ同量を入れるのではなく、残る曲面差へ部位を選んだ治療です。
顎先は、前方投影と下顎縁へのつながりを正面・左右斜位で確認して補います。別のHA製剤による顎治療では、3か月時に1段階以上改善した割合が83.3%、無治療では10.8%で、改善差は12か月まで維持されたとの報告がありました(参考文献1)。
こめかみは、正面の左右幅と斜位の影を見て、頬へ続く曲面がなだらかになる位置を補います。VYC-20Lによるこめかみ治療では、3か月時に両側が1段階以上改善した割合が80.4%、無治療では13.5%で、13か月時にも73.3%が改善を保ったとの報告がありました(参考文献2)。
ボトックスリフトは、フェイスラインを下へ引く動きを整えます
ボトックスリフトでは、安静時の輪郭に加えて、口角を横へ引く、首に力を入れる、発音する動作で広頸筋が下顎縁をどの程度下へ引くかを見ます。ヒアルロン酸が容量と支持を補うのに対し、ボツリヌストキシンは動作時の下向きの張力を弱める役割です。
治療後は、首の縦方向の筋束と下顎縁の見え方だけでなく、笑顔、発音、飲み込み、頸部の力の入り方も再評価します。投与量と位置は活動する筋束ごとに決め、ヒアルロン酸の量からボツリヌストキシンの単位を換算することはありません。
ボトックスリフトは、安静時だけでなく首に力を入れたときの広頸筋と下顎縁を見て設計します。onabotulinumtoxinAによる広頸筋治療では、14日後に1段階以上改善した割合が76.7%、プラセボでは21.2%で、2段階以上改善は41.0%対2.2%だったとの報告がありました(参考文献3)。
むくみの変動には、五苓散とプラセンタ注射を組み合わせています
この症例では、輪郭を整える注入治療とは別に、むくみの改善を目的として五苓散の内服とプラセンタ注射を行いました。朝夕や日ごとに変わるむくみは、顎・頬へ加える容量とは分け、体重、月経周期、塩分摂取、服薬歴とともに確認します。
再評価では、正面の頬幅と下顎縁、左右斜位の頬の厚みを同じ条件で撮影し、形として残る左右差と日内変動するむくみを分けます。むくみが落ち着いた状態を基準にすることで、ヒアルロン酸を追加する部位と、生活・内服を見直す項目を混同せずに判断できます。
こめかみ・頬・顎の血管と、首の筋機能を同時に確認します
ヒアルロン酸を扱うこめかみ・頬・顎には、浅側頭動脈、顔面動脈、オトガイ動脈などが走ります。治療中は強い痛み、皮膚色、毛細血管再充満、視力・視野の変化を確認し、治療後に白色・暗紫色・網目状の皮膚変化や見え方の異常があれば直ちに対応します。
広頸筋へのボツリヌストキシンは、下顎縁の動きと首の筋束に合わせて浅い層で設計します。嚥下・呼吸のしにくさ、声の変化、首の強い脱力、口角や笑顔の左右差が出た場合は、予定の再診日を待たずにご連絡ください。
当院の現在のHA選択肢であるジュビダームビスタ ボリューマXCは、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大を目的とする国内承認製品です。電子添文は血管内注入を禁止し、視力異常・失明、脳卒中、皮膚壊死などへの注意を求めています(参考文献4)。
ボトックスビスタの国内承認は65歳未満の成人における眉間・目尻の表情じわで、広頸筋・首への使用は承認適応外です。また、製品の生物活性単位は他のボツリヌス毒素製剤の単位へ換算できません(参考文献5)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 正面で、こめかみ幅、頬の左右差、顎先の中心、下顎縁へ視線が集まる位置を記録します。
- 左右斜位で、こめかみから頬へ移る曲面と顎先の前方投影を確認し、顎・こめかみ・右頬へ容量を補う順を決めます。
- 安静時と首に力を入れたときの広頸筋、口角、下顎縁を比べ、ボトックスリフトで弱める下向きの動きを選びます。
- むくみの日内変動と体重を別に記録し、形の左右差、筋活動、浮腫を同じ所見として扱わずに再評価します。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 顎・こめかみ・右頬のヒアルロン酸 | 顎先の投影、こめかみの影、右頬の曲面差という容量・支持不足が重なる状態 | 各部位に十分な容量がある、むくみや活動性炎症が主で、追加すると重く見える状態 | 通常1回。腫れが落ち着いてから正面・左右斜位を再評価 | 赤み、腫れ、内出血、痛み、左右差、凹凸など。まれに血管閉塞、皮膚壊死、視覚障害、脳卒中 | 1本1cc 77,000円。カテラン針を使用する場合11,000円 | 販売名・部位ごとに確認。当院のボリューマXCは中顔面・下顎部・こめかみが国内承認範囲 |
| ボトックスリフト | 首に力を入れたときの広頸筋が下顎縁を下へ引き、フェイスラインが不明瞭になる状態 | 骨格・脂肪・皮膚のゆるみが主、嚥下・呼吸機能や神経筋疾患の安全確認が必要な状態 | 通常1回。筋活動が安定した時点で安静時・動作時を再評価 | 赤み、内出血、首の力の入りにくさ、口角・笑顔の左右差など。まれに嚥下・呼吸障害、全身性筋力低下 | エラ・首メニュー 55,000円 | ボトックスビスタを使用する場合、広頸筋・首は国内承認適応外。コアトックスは国内未承認 |
| むくみへの診療 | 朝夕や日によって頬・下顔面の厚みが変わり、体重変化とは別に浮腫がみられる状態 | 固定した輪郭差だけがあり、浮腫の日内変動がない状態。心・腎・肝機能等の全身評価を優先する状態 | 体重・日内変動・服薬を確認し、五苓散やプラセンタ注射後の変化を再評価 | 内服・注射の販売名に応じた副作用、注射部位の痛み・内出血、過敏症など | 使用する販売名・処方日数・注射内容により異なる | 販売名と使用目的ごとに承認範囲を確認。プラセンタ注射のむくみ改善目的は適応外使用 |
費用の目安
- ヒアルロン酸:1本1cc 77,000円(税込)
- カテラン針使用料:11,000円(税込、使用する場合)
- ボトックス・ビスタ/コアトックス エラ・首:55,000円(税込)
- 本症例の合計は、ヒアルロン酸の使用本数、選択製剤、五苓散の処方日数、プラセンタ注射の内容により異なります
すべて税込・自由診療です。元素材にヒアルロン酸の総量・販売名、ボツリヌストキシンの販売名・単位、内服日数が示されていないため、症例合計は算定していません。
リスク・副作用・注意点
- ヒアルロン酸:痛み、赤み、腫れ、内出血、圧痛、左右差、凹凸、硬結、アレルギー、感染、遅発性炎症・結節など
- ヒアルロン酸のまれな重い合併症:血管閉塞、皮膚障害・壊死、視力・視野障害、失明、脳卒中など
- ボツリヌストキシン:赤み、内出血、首の脱力、口角・笑顔・発音の変化、左右差など。まれに嚥下・呼吸障害、全身性筋力低下、過敏症など
- 五苓散とプラセンタ注射:販売名に応じた消化器症状・皮膚症状・過敏症、注射部位の痛み・内出血など。ヒト胎盤由来製剤は未知の感染症伝播リスクを完全には否定できず、投与歴がある方は献血を控える扱いです
- 国内承認・適応: 使用するHA販売名ごとに承認範囲を説明します。当院の現在の選択肢であるジュビダームビスタ ボリューマXCは、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大を目的とする国内承認医療機器です(承認番号22800BZX00338000)。ボトックスビスタは国内承認医薬品ですが、承認適応は65歳未満の成人の眉間・目尻の表情じわで、広頸筋・首への使用は適応外です(承認番号22100AMX00398000)。コアトックスを選ぶ場合は国内未承認医薬品です。プラセンタ注射をむくみ改善目的で使用する場合は、使用製剤の国内承認範囲外です。適応外・未承認使用では医薬品副作用被害救済制度等の対象外となる場合があります。
強い痛み、白色・暗紫色または網目状の皮膚変化、視力・視野の異常は血流障害を疑うため直ちに連絡が必要です。強い嚥下・呼吸のしにくさ、声の変化、首や全身の筋力低下も緊急の確認が必要です。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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Effectiveness and Safety of a New Hyaluronic Acid Injectable for Augmentation and Correction of Chin Retrusion
研究デザイン: 評価者盲検・無治療対照・3対1無作為化試験。初回治療後、必要に応じた追加治療を認め、12か月追跡した。 / 対象: 顎後退が軽度または中等度の18歳以上140人。HASHA(Restylane Shaype)103人、無治療37人。 / 結果: 3か月時の1段階以上の改善率は83.3%対10.8%で、6か月時80%対6%、12か月時66%対3%だった。医師GAISは97%以上、本人GAISは89%以上で推移した。 / 限界: HASHAという別製剤の顎後退治療を評価した研究で、本症例の製剤、注入量・層、こめかみ・右頬・ボトックスリフトとの組み合わせ効果を示さない。Galdermaが研究を主導・資金提供し、複数著者が同社の治験担当または社員である。JDD原著全文とPubMed書誌を2026年8月9日に再確認した。
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Improvement in Temple Hollowing with VYC-20L Hyaluronic Acid Filler: A Multicenter Randomized Controlled Trial of Safety and Effectiveness
研究デザイン: 米国15施設で行われた評価者盲検・無治療対照・2対1無作為化試験。治療群は必要に応じた30日後の追加治療を認め、13か月追跡した。 / 対象: 両側のこめかみの凹みが軽度から重度の22歳以上171人。VYC-20L 113人、無治療58人。 / 結果: 3か月時に両側が1段階以上改善した割合は80.4%対13.5%。VYC-20L群は13か月時にも73.3%が改善を保ち、評価者GAISは3か月時83.8%だった。 / 限界: VYC-20Lを両側こめかみへ使用した研究で、本症例の使用製剤、片側・部位別配分、右頬・顎・ボトックスリフトとの併用効果を示さない。対象の83.6%が女性、83.0%が白人である。多数の著者がAllergan Aesthetics/AbbVieの治験担当・助言者で、2著者は同社社員。PMC原著全文とPubMed書誌を2026年8月9日に再確認した。
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Improving Neck and Jawline Aesthetics With OnabotulinumtoxinA by Minimizing Platysma Muscle Contraction Effects: Efficacy and Safety Results in a Phase 3 Randomized, Placebo-Controlled Study
研究デザイン: 多施設・無作為化・二重盲検・プラセボ対照第III相試験。単回治療後120日まで追跡した。 / 対象: 最大収縮時の広頸筋突出が中等度または重度の成人426人を無作為化し、心理社会的影響を伴うmITT解析は381人(onabotulinumtoxinA 186人、プラセボ195人)。 / 結果: 14日後の評価者判定で1段階以上改善は76.7%対21.2%、2段階以上改善は41.0%対2.2%。本人判定の1段階以上改善は79.9%対21.8%で、反応率は120日までプラセボより高かった。 / 限界: 特定のonabotulinumtoxinA 26・31・36単位と規定注入法による単回治療で、本症例の製剤、単位、注入点、ヒアルロン酸との併用効果を示さない。mITT集団の95.3%が女性、92.1%が白人で、安静時評価は含まれない。Allergan Aesthetics/AbbVieが設計・実施・資金提供・解析・出版承認に関与し、複数著者が同社社員または関係者。原著全文とPubMed書誌を2026年8月9日に再確認した。
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ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書
研究デザイン: PMDA公開の国内承認医療機器添付文書。 / 対象: 適用対象は21歳以上の成人。使用目的は中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大。 / 結果: 皮下または骨膜上深部への注入として承認され、血管内注入を禁止し、誤注入による視力異常・失明、脳卒中、皮膚壊死等への注意を求めている。 / 限界: 添付文書は承認範囲と安全情報を示す資料で、本症例で使用した販売名、総量、部位別配分、治療前後の変化を特定するものではない。PDF全6頁を2026年8月9日に再確認した。
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ボトックスビスタ注用50単位 電子添文
研究デザイン: PMDA公開の国内医療用医薬品電子添文。 / 対象: 国内承認の適用対象は65歳未満の成人における眉間または目尻の表情じわ。 / 結果: 広頸筋・首への美容目的は承認適応に含まれず、製品の生物活性単位は他のボツリヌス毒素製剤へ換算できない。嚥下・呼吸障害、全身性筋力低下等の重大な副作用に注意を求めている。 / 限界: 電子添文はボトックスリフトの有効性、投与単位、注入位置、ヒアルロン酸との組み合わせ効果を示す臨床研究ではない。PDF全文を2026年8月9日に再確認した。
よくあるご質問
Q. この症例では、どの施術を組み合わせましたか?
顎のヒアルロン酸、ボトックスリフト、こめかみのヒアルロン酸、右頬のヒアルロン酸を組み合わせました。むくみには五苓散の内服とプラセンタ注射も行っています。
Q. 体重が変わっていないのに、なぜ痩せたように見えるのですか?
顎先の投影、こめかみ・頬の曲面、フェイスラインを下へ引く筋活動が変わり、顔の重心と輪郭線が整ったためです。脂肪を減らした変化とは分けて評価します。
Q. ヒアルロン酸とボトックスリフトは、どのように使い分けますか?
顎・こめかみ・頬の容量と支持不足にはヒアルロン酸、首に力を入れたときに下顎縁を下へ引く広頸筋の動きにはボツリヌストキシンを使います。正面・左右斜位と動作時を比べて役割を分けます。
Q. 現在の料金はどのように計算しますか?
ヒアルロン酸は1本1cc 77,000円、カテラン針を使用する場合は11,000円、ボトックスのエラ・首メニューは55,000円です。すべて税込・自由診療で、組み合わせ時は使用本数と選択する製剤で合計が変わります。
Q. 施術後にすぐ連絡した方がよい症状はありますか?
強い痛み、白色・暗紫色または網目状の皮膚変化、視力・視野の異常はヒアルロン酸の血流障害を疑うため直ちにご連絡ください。強い嚥下・呼吸のしにくさ、声の変化、首や全身の筋力低下も緊急の確認が必要です。
ご予約・ご相談はこちら
気になる症状や治療方法について、初診予約・再診予約・お問い合わせからご相談いただけます。