エラ・表情筋ボトックスと頬ヒアルロン酸を組み合わせる考え方
エラの張りは咬筋、口角・額・眉間の動きは表情筋、頬コケはボリューム不足が関わります。この症例ではエラボトックスを先に行い、頬へボリューマXC 3ccを追加。口角・額・眉間のボトックスも組み合わせ、正面と斜位で輪郭と表情を整えました。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2025年10月2日
- 実質更新日
- 2026年8月9日


Contents
目次
正面ではエラの横幅と頬コケを別々に整えます
治療前の正面では、下顎角の前方にある咬筋部の横幅と、頬骨下から外側頬へ続く影が同時に目立っていました。噛みしめたときに張るエラはボトックス、安静時にも残る頬コケはヒアルロン酸と、原因に合わせて役割を分けます。
この症例では、まずエラへボトックスを行って咬筋の張りを調整し、その後、頬のコケている部分へジュビダームビスタ ボリューマXCを合計3cc注入しました。治療後はエラ幅が軽くなり、頬の凹凸と影がなだらかになったことで、顔の重心が上がって輪郭が小さく見えています。
咬筋の張りと頬コケを役割別に組み合わせる理由として、咬筋肥大にはBoNT-A、前頬・頬骨下・外側頬の容量不足にはHA等のフィラーを用いるとの報告がありました(参考文献1)。
咬筋の張りが主因の下顔面幅へボツリヌストキシンを選ぶ理由として、onabotulinumtoxinA治療後90日には咬筋突出が2段階以上改善した割合が51.2%、プラセボでは2.2%で、下顔面幅の平均変化は-5.24mm対-0.04mmだったとの報告がありました(参考文献5)。
斜位では頬の曲面からフェイスラインまでをつなげます
左斜位では、頬骨下の影、頬の外側へ続く凹み、耳前から顎先へ向かうフェイスラインを比べます。頬へ容量を足すだけでなく、咬筋による下顔面幅を先に整えることで、頬の丸みと下顎縁の線が自然につながります。
ボリューマXCは1本1CCで、この症例では合計3ccを頬へ使用しました。顔全体の曲面を見ながら配分し、頬骨だけが高く見えたり、外側頬だけが膨らんだりしない位置で止めます。治療後の斜位では頬コケの影が軽くなり、横顔のフェイスラインが明瞭になっています。
本症例で使用したジュビダームビスタ ボリューマXCは、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大を目的とする国内承認製品です(参考文献4)。
口角・額・眉間は表情の動きを部位ごとに見ます
口角は下向きの動き、額は眉を上げたときの横じわ、眉間はしかめたときの縦じわを見ます。この症例ではエラに加え、口角・額・眉間にもボトックスを行い、口元と上顔面の筋活動を調整しました。
額と眉間を整えると、動作時のしわが浅くなり、皮膚表面の光が均一に反射して艶のある印象になります。額でまぶたを持ち上げている方は重さが出ない量にとどめ、口角は自然な笑顔と発音を保てる範囲で左右差を見直します。
額・眉間の治療後に頭痛やまぶたの変化を確認する理由として、上顔面のボツリヌストキシン治療で少なくとも一つの治療関連有害事象を経験した割合は18%で、主な報告は頭痛、疼痛、こわばり、眼症状だったとの報告がありました(参考文献2)。
ボトックスビスタの国内承認は65歳未満の成人における眉間・目尻の表情じわで、エラ・口角・額は承認適応外です。また、製品の単位は他のボツリヌス毒素製剤の単位へ換算できないと電子添文に記載されています(参考文献3)。
咬筋を先に整え、頬と表情を正面・斜位で再評価します
診察では、安静時と噛みしめ時の正面で咬筋の張りを触診し、笑顔、口角を下げる表情、眉上げ、しかめ顔を記録します。そのうえで、頬の影を正面と左右の斜位で確認し、筋肉を弱める部位と容量を補う部位を決めます。
この症例のようにエラボトックスを先行すると、下顔面幅の変化を見ながら頬コケへ必要な支持を補えます。治療後はエラ幅、頬の曲面、フェイスライン、口角・額・眉間の動きを同じ方向から見直し、咬みにくさ、頬コケの強調、まぶたの重さ、笑顔の左右差がないかも確認します。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 安静時と最大噛みしめ時で下顔面幅が変わるかを正面で見て、咬筋の前縁・後縁と左右の張りを触診します。
- 頬骨下から外側頬へ続く影を正面・左右斜位で確認し、咬筋が小さくなった後も残る凹みへボリューマXCを配分します。
- 口角を下げる、眉を上げる、眉間を寄せる動作を別々に記録し、口元の自然な動きと開瞼を保てる範囲で部位ごとにボトックスを調整します。
- 治療後は下顔面幅、頬の曲面、フェイスライン、表情の左右差を同じ正面・斜位で再評価し、必要以上に幅や動きを減らさない位置で止めます。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| エラボトックス | 噛みしめると咬筋が大きく張り、下顔面幅へ影響する状態 | 骨格・脂肪・皮膚のゆるみが主、すでに強い頬コケや咀嚼筋力低下がある状態 | 通常1回。咬筋の変化が安定してから正面・斜位を再評価 | 赤み、内出血、噛みにくさ、咬む疲れ、笑顔の左右差、頬コケの強調など | エラ 55,000円 | ボトックスビスタを使う場合、咬筋の美容目的は国内承認適応外。コアトックスは国内未承認 |
| 口角・額・眉間のボトックス | 口角を下げる動き、額の横じわ、眉間の縦じわが表情時に強い状態 | 額でまぶたを強く持ち上げている、口元の筋力低下や表情の左右差が強い状態 | 通常1回。表情の動きが安定してから再評価 | 赤み、内出血、頭痛、眉・まぶたの重さ、口角や笑顔の左右差など | 3部位 75,000円 | ボトックスビスタは眉間が国内承認、口角・額は適応外。コアトックスは国内未承認 |
| 頬へのボリューマXC | 頬骨下から外側頬へ続く凹み・影と、中顔面のボリューム不足が主な状態 | 活動性感染、強い炎症、むくみや局所過剰が主で、追加すると重く見える状態 | 通常1回。腫れが落ち着いてから正面・左右斜位で再評価 | 赤み、腫れ、内出血、圧痛、左右差、凹凸など。まれに血管閉塞、皮膚壊死、視覚障害 | 本症例は3cc 231,000円 | 中顔面の減少したボリューム増大を目的として国内承認 |
費用の目安
- ジュビダームビスタ ボリューマXC:1本1cc 77,000円。本症例と同じ3ccは231,000円
- エラボトックス:55,000円
- 口角・額・眉間の表情筋ボトックス3部位:75,000円
- 本症例と同じ施術内容の合計例:361,000円。カテラン針を使用する場合は11,000円が加わり372,000円
すべて税込・自由診療です。当院の現行料金表ではボトックスビスタとコアトックスは共通料金です。カテラン針11,000円は使用する場合のみ加算されます。
リスク・副作用・注意点
- ヒアルロン酸:痛み、赤み、腫れ、内出血、圧痛、左右差、凹凸、硬さ、アレルギー、感染、遅発性反応・結節など
- ヒアルロン酸のまれな重い合併症:血管閉塞、皮膚障害・壊死、視力・視野障害、失明、脳梗塞など
- ボツリヌストキシン:赤み、内出血、頭痛、局所痛、左右差、眉・まぶたの重さ、口角・笑顔の変化、咬みにくさ、頬コケの強調など
- ボツリヌストキシンのまれな重い副作用:嚥下・呼吸への影響、全身の筋力低下、過敏症など
- 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは、21歳以上の成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大を目的とする国内承認医療機器です(承認番号22800BZX00338000)。ボトックスビスタは国内承認医薬品ですが、承認適応は65歳未満の成人における眉間・目尻の表情じわです(承認番号22100AMX00398000)。エラ・口角・額への使用は適応外です。コアトックスを選ぶ場合は国内未承認医薬品で、医師の責任のもと適法な輸入手続きにより入手します。
強い痛み、白色・紫色や網目状の皮膚色変化、視力・視野の異常、強い頭痛はヒアルロン酸の血流障害を疑うため直ちに連絡が必要です。強い嚥下・呼吸のしにくさや全身の筋力低下も緊急の確認が必要です。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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PAN-ASIAN CONSENSUS—Key Recommendations for Adapting the World Congress of Dermatology Consensus on Combination Treatment with Injectable Fillers, Toxins, and Ultrasound Devices in Asian Patients
研究デザイン: アジア人の顔面美容治療に関する専門家コンセンサス / 対象: アジア各地域で診療する専門医11人。賛同70〜90%を中等度、90%以上を強い合意と定義 / 結果: 咬筋肥大にはBoNT-Aを推奨し、前頬・頬骨下・外側頬の容量不足にはHAまたはCaHAフィラーを推奨した。咬筋縮小で頬・顎の不足が目立つ場合は併用を勧めた。 / 限界: 患者結果を比較した試験ではなく、特定製剤、投与単位、3ccの部位別配分、治療間隔の効果量を示さない。資金提供はなかったが、複数著者がAllergan、Galderma、Merz等との講演・助言・研究関係を申告。PMC全文を2026年8月9日に再確認した。
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Adverse Events in Nonsurgical Facial Aesthetic Procedures: A Systematic Review and Meta-Analysis
研究デザイン: 非外科的顔面美容治療42研究のシステマティックレビュー・メタ解析 / 対象: 計8,853人。上顔面ボツリヌストキシンは13研究6,254人で、女性89.3%、年齢21〜86歳 / 結果: 上顔面ボツリヌストキシンで少なくとも一つの治療関連有害事象を経験した割合は18%(95%CI 10〜32%)。主な報告は頭痛、疼痛、こわばり、眼症状だった。 / 限界: 研究間異質性はI2=96.9%と高く、有害事象の定義、重症度、発症・回復時期が統一されていない。上顔面の結果でエラ・口角を評価せず、製剤別の単位や本症例の発生率を示さない。著者は利益相反なしと申告し、公的研究助成機関は研究設計等へ関与しなかった。PMC全文を2026年8月9日に再確認した。
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ボトックスビスタ注用50単位 電子添文
研究デザイン: PMDA公開の国内医療用医薬品電子添文 / 対象: 国内承認の適用対象は65歳未満の成人における眉間または目尻の表情じわ / 結果: 眉間・目尻以外の美容目的は承認適応に含まれず、製品の生物活性単位は他のボツリヌス毒素製剤へ換算できない。妊娠・授乳、神経筋接合部疾患等の禁忌・注意が示されている。 / 限界: 電子添文はエラ・口角・額の美容治療に対する有効性、投与単位、注入位置、治療間隔を示す臨床研究ではない。PMDA製品情報と電子添文を2026年8月9日に再確認した。
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ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書
研究デザイン: PMDA公開の国内承認医療機器添付文書 / 対象: 適用対象は21歳以上の成人。使用目的は中顔面、下顎部、こめかみにおける減少したボリュームの増大 / 結果: 皮下または骨膜上深部への注入として承認され、血管内注入を禁止し、誤注入による皮膚壊死、視力異常・失明、脳梗塞等への注意を求めている。 / 限界: 添付文書は承認範囲と安全情報を示す資料で、頬への3cc配分、小顔に見える変化、ボツリヌストキシンとの組み合わせ効果を検証した研究ではない。PDF全6頁を2026年8月9日に再確認した。
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OnabotulinumtoxinA Treatment for Masseter Muscle Prominence: 6-Month Safety and Efficacy Results, Including Patient-Reported Outcomes, From a Phase 3, Randomized, Placebo-Controlled, Multiregional Trial
研究デザイン: 多地域・無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験 / 対象: 咬筋突出評価grade 4または5の成人376人。onabotulinumtoxinA 72単位283人、プラセボ93人 / 結果: 90日後に咬筋突出が2段階以上改善した割合は51.2%対2.2%、下顔面幅の平均変化は-5.24mm対-0.04mmで、改善は180日まで維持された。 / 限界: 明瞭な咬筋突出へ特定製剤72単位を用いた試験で、本症例の製剤・単位、頬コケ、口角・額・眉間との併用、国内承認を直接検証していない。Allergan Aesthetics/AbbVieが資金提供し、設計、研究、解析、データ収集・解釈、出版承認に関与。複数著者が同社の研究者・社員である。PubMed書誌とPMC全文を2026年8月9日に再確認した。
よくあるご質問
Q. この症例で行った治療と量を教えてください。
ジュビダームビスタ ボリューマXCを頬へ合計3cc使用し、エラ、口角、額、眉間へボトックスを行いました。ボトックスは筋量と表情の強さを部位別に見て投与単位を決めます。
Q. なぜエラボトックスを先にしてから頬へヒアルロン酸を入れるのですか?
咬筋の張りによる下顔面幅を先に整えると、その後も正面・斜位で残る頬コケと支持不足を見つけやすくなるためです。幅を減らす治療と頬の影をなだらかにする治療を別々に設計します。
Q. 本症例と同じ治療内容の現在の料金はいくらですか?
ヒアルロン酸3ccは231,000円、エラボトックスは55,000円、口角・額・眉間の表情筋ボトックス3部位は75,000円で、合計361,000円です。カテラン針を使用する場合は11,000円が加わり、合計372,000円です。すべて税込・自由診療です。
Q. 各部位のボトックスとボリューマXCは国内承認されていますか?
ボリューマXCは21歳以上の成人の中顔面における減少したボリュームの増大を目的として国内承認されています。ボトックスビスタの国内承認は65歳未満の成人の眉間・目尻の表情じわで、エラ・口角・額は適応外使用です。コアトックスを選ぶ場合は国内未承認医薬品です。
Q. 施術後にすぐ連絡した方がよい症状はありますか?
ヒアルロン酸後の強い痛み、白色・紫色や網目状の皮膚色変化、視力低下や見え方の異常は直ちにご連絡ください。ボトックス後の強い嚥下・呼吸のしにくさ、急な全身の筋力低下も緊急の確認が必要です。
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