埋没法後に二重切開を検討するときの診察ポイント
他院の埋没法で糸が外れ、再埋没を希望したものの、二重線下の皮膚余剰と左右差を認めたため切開法を選んだ症例です。術前と術直後を比べながら、残存糸・旧線、皮膚・脂肪、挙筋機能をどう分け、再埋没から切開へ切り替えるかを解説します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2022年8月11日
- 実質更新日
- 2026年8月9日

Contents
目次
術前と術直後を同じ正面で比べます
この症例は、他院で生涯補償の埋没法を受けた後に糸が外れ、再埋没を希望したところ、上まぶたのたるみがあるため補償の対象外と説明された方です。ご本人は、二重の左右差と二重線の下にかぶさる皮膚を気にされていました。
上段が術前、下段が二重形成・切開法の術直後です。術前は左右で二重線の高さと明瞭さがそろわず、線の下に皮膚が重なって見えます。術直後は新しい切開線が確認できますが、切開部の赤み、少量の出血、腫れがある時点です。
術直後の二重幅は腫れで広く見え、左右の腫れ方にも差があります。手術当日は切開線の位置、出血、閉瞼、角膜保護を確認し、二重幅と左右差は腫れが引く経過に沿って追います。
埋没糸と旧二重線を先に地図にします
埋没法後の再手術では、過去の術式、回数、左右別の治療歴を聞き、閉眼時と開眼時に旧二重線がどこまで残るかを記録します。皮下で触れる結び目、点状のくぼみ、硬い瘢痕、複数の線を左右別に確認します。
痛み、異物感、充血、角膜刺激がある場合は、皮膚側だけでなくまぶたの裏側も確認します。新しい切開線と残存糸が重なるか、旧線の癒着をどこまで解除するかを先に決め、糸を探すためだけに必要以上に深く剥離しない計画にします。
旧線の癒着を解除して新しい線を作る範囲を先に決める理由として、高い旧線を修正した後も旧線が残った割合は2.0%、皮膚の追加切除が必要だった割合は9.8%だったとの報告がありました(参考文献2)。
残存糸を探す範囲と切開の選択を先に決める理由として、糸関連症状に対する抜糸で糸を完全に回収できなかった割合は、全切開4.8%に対し小切開37.0%だったとの報告がありました(参考文献3)。
皮膚余剰・眼窩脂肪・ROOFを別々に見ます
二重線の下に皮膚がかぶさる場合は、希望する線を糸で上から足すだけでなく、眉を上げない状態で皮膚の余りを見ます。目を閉じたときの皮膚量、まつ毛側の厚み、旧線より上の皮膚がどの位置へ重なるかを左右で比べます。
まぶたの厚みは、皮膚、眼輪筋、眼窩脂肪、ROOFが重なって見えます。眼窩脂肪の突出、外側のROOF、上まぶたのくぼみを分け、脂肪を減らすほどよいか、皮膚だけを調整するかを決めます。この症例で脂肪やROOFを切除したという記録はないため、診察上の選択肢として扱います。
明らかな皮膚余剰を糸や小切開だけで固定しない理由として、小切開法の報告でも明らかな皮膚余剰は対象外とされ、術後の左右差4.6%、多重線1.6%、線の移動1.9%との報告がありました(参考文献1)。
二重線の左右差と開瞼機能の左右差を分けます
左右差は二重幅だけでなく、上まぶたの縁と瞳孔の位置、挙筋機能、眉の高さ、額のしわを測ります。眉を固定して目を開けたときに左右差が残るかを見て、皮膚のかぶさりと目を開ける力の差を分けます。
皮膚と旧線が主な問題なら二重形成で整えます。挙筋機能が弱く、眉を上げないと瞳孔へのかぶさりが増える場合は、二重幅を作る手術だけでなく眼瞼下垂手術の適応を別に検討します。術前写真だけから本症例の眼瞼下垂を診断するのではなく、診察時の機能測定で決めます。
術前の左右差を二重幅だけでなく開瞼機能として記録する理由として、左右のMRD1差が1mmを超える眼瞼下垂手術では再手術率42.7%、差がない場合は28.1%で、再手術のオッズ比は1.90だったとの報告がありました(参考文献4)。
再埋没から切開へ替える条件を整理します
皮膚余剰が少なく、旧線の癒着が弱く、希望線を糸で再現できる場合は再埋没が候補です。一方、二重線の下に皮膚がかぶさる、複数回の埋没で瘢痕と旧線が重なる、脂肪や組織の厚みを直接調整する必要がある場合は切開法を検討します。
この症例では、糸が外れたことだけでなく、左右差と二重線下の皮膚余剰が主訴でした。そのため、同じ位置へ糸を掛け直すのではなく、旧線と皮膚の重なりを直接確認できる切開法へ切り替えました。切開法(両目)は通常1回で、傷あとと腫れを含めて数か月の経過で評価します。
術直後の腫れから完成を判断しません
埋没法後は、残存糸の周囲や旧線に瘢痕・癒着があり、初回手術より剥離時の出血が増えることがあります。この症例も術直後はやや腫れているため、二重幅、食い込み、左右差を当日の完成結果として判定しません。
術後は出血が増えていないか、傷が開いていないか、目を閉じられるか、角膜の痛みや見え方の変化がないかを先に確認します。同じ症例の5日後と1か月後の記事では、腫れが変化する途中と、さらに落ち着いた時点を同じ術前写真と比べられます。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 埋没法の術式・回数を聞き、閉眼・開眼で残存糸、旧線、点状瘢痕、癒着を左右別に記録します。
- 眉を上げない状態で二重線下の皮膚余剰を見て、眼窩脂肪、ROOF、上まぶたのくぼみを別の層として評価します。
- 上眼瞼縁と瞳孔の位置、挙筋機能、眉高、額の代償を測り、二重線の左右差と開瞼機能の左右差を分けます。
- 希望線を皮膚上で再現し、再埋没で足りるか、旧線・皮膚・厚みを直接調整する切開法か、機能を扱う眼瞼下垂手術かを決めます。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 二重埋没法 | 皮膚余剰が少なく、旧線の癒着が弱く、希望線を糸で再現できる状態 | 二重線下の皮膚余剰、複数回の瘢痕・癒着、強い厚み、開瞼機能低下が主な状態 | 通常1回。緩み・線の消失時は再治療を検討 | 腫れ、内出血、左右差、糸の露出・感染、角膜刺激、線の消失・多重化 | 両目 四点止め88,000円、六点止め110,000円 | 手術手技であり、医薬品・医療機器の承認制度とは別。自由診療 |
| 二重切開法 | 皮膚余剰、旧線の癒着、脂肪・組織の厚みを直接調整する必要がある状態 | 希望線が定まらない、数か月の腫れ・傷あと経過を受け入れられない状態 | 通常1回。術直後から数か月かけて評価 | 腫れ、内出血、血腫、左右差、傷あと、閉瞼不全、線の消失・多重化、感染 | 両目275,000円。ROOF切除オプション110,000円 | 手術手技であり、医薬品・医療機器の承認制度とは別。自由診療 |
| 眼瞼下垂手術 | 挙筋機能低下と瞳孔へのかぶさりがあり、視野・開瞼機能を改善する必要がある状態 | 開瞼機能は保たれ、二重線・皮膚余剰だけを整えたい状態 | 通常1回。左右の開瞼機能を数か月かけて再評価 | 腫れ、内出血、左右差、閉瞼不全、低矯正・過矯正、角膜障害、感染 | 機能障害と診断・術式に応じて保険診療で算定 | 手術手技。保険適用は診断、症状、術式により決まり、一律ではない |
費用の目安
- 二重埋没法 両目四点止め:88,000円
- 二重埋没法 両目六点止め:110,000円
- 二重切開法 両目:275,000円
- ROOF切除オプション:110,000円
二重形成は税込・自由診療です。眼瞼下垂手術の保険適用と自己負担額は診断、症状、術式で決まります。
リスク・副作用・注意点
- 二重埋没法:腫れ、内出血、左右差、糸の露出・感染、角膜刺激、線の消失・多重化など
- 二重切開法:腫れ、内出血、血腫、傷あと、左右差、閉瞼不全、線の消失・多重化、感染など
- まれに角膜障害、視力・視野の変化、眼瞼下垂、過矯正・低矯正、再手術が必要となることがあります
- 国内承認・適応: 二重埋没法、二重切開法、眼瞼下垂手術は手術手技であり、医薬品・医療機器の製造販売承認とは別に説明します。二重形成は自由診療です。眼瞼下垂手術の保険適用は診断、機能症状、術式により決まり、すべての二重切開が保険診療になるわけではありません。
強い痛み、急な視力・視野変化、増え続ける出血、急速な腫れ、閉瞼困難、発熱・排膿は直ちに確認が必要です。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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A Modified Mini-incisional Technique for Double-eyelid Blepharoplasty
研究デザイン: 単施設の4か所小切開法による前向きまたは後ろ向きの記載が明確でない症例集積。対照群なし / 対象: 4か所小切開法を受けた16〜34歳の372人。3〜12か月、平均9か月追跡。明らかな皮膚余剰のある患者は適応外と記載 / 結果: 満足342人92.0%。左右差17人4.6%、多重線6人1.6%、線移動7人1.9%で、これらは6か月後に修正された。最初の1週間の腫れは自然軽快した。 / 限界: 初回の小切開法であり、埋没法後の全切開、皮膚切除、ROOF切除、眼瞼下垂手術を扱わない。明らかな皮膚余剰を除外しており、本症例へ効果率を置き換えられない。対照群、盲検評価、標準化された患者報告尺度はない。NCBI公開抄録と既存source_checked情報を2026年8月9日に再確認した。利益相反・資金源はアクセス可能な抄録に記載がなく、全文PDFは取得できなかった。
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High Double Eyelid Fold Correction Using Wide Dual-Plane Dissection
研究デザイン: 高く深い二重線を低く修正した単施設後ろ向き症例集積。対照群なし / 対象: 修正術を受けた256人を平均1.3年追跡。満足度調査には197人が回答 / 結果: 線高は平均13.5mmから7.8mmへ低下。旧線残存5人2.0%、左右差10人3.9%、追加皮膚切除25人9.8%。回答者の83.24%が満足した。 / 限界: 高く深い切開線の修正に特化し、埋没糸が外れた症例や初回の全切開ではない。無作為化比較ではなく、満足度未回答者がいる。術式固有の広い二層剥離を本症例へそのまま適用できない。著者は利益相反・資金源なしと申告。PMC全文を2026年8月9日に再確認した。
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Treatment of Suture-related Complications of Buried-suture Double-eyelid Blepharoplasty in Asians
研究デザイン: 単施設、単一術者の後ろ向き連続症例集積。小切開、全切開、結膜側からの抜糸を比較 / 対象: 他院の埋没法後に糸関連の痛み、異物感、角膜刺激、結節等があり、抜糸を受けた日本人116人・210眼。抜糸のみ12人、二重再形成併用104人 / 結果: 糸を完全に回収できなかった割合は全切開4.8%、小切開37.0%で、全体では20人17.2%だった。 / 限界: 糸関連症状のある症例だけを対象とし、本症例のような二重線消失・皮膚余剰のみの患者を含まない。術式選択は無作為化されず、糸数や患者希望で決定。美容結果や切開後の左右差を比較した研究ではない。著者は関連する金銭的利益なしと申告し、論文掲載料は著者負担。PMC全文を2026年8月9日に再確認した。
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Preoperative Asymmetry is a Risk Factor for Reoperation in Involutional Blepharoptosis
研究デザイン: 両側の退行性眼瞼下垂に対する挙筋腱膜手術を後ろ向き解析し、再手術の危険因子を単変量・多変量解析 / 対象: 両側退行性眼瞼下垂手術を受けた274人。89人32.5%が機能または美容上の理由で再手術 / 結果: 術前MRD1左右差が1mmを超える群の再手術率は42.7%、左右差のない群は28.1%。多変量解析のオッズ比1.90だった。 / 限界: 退行性眼瞼下垂の挙筋腱膜手術を対象とし、埋没法後の二重切開や皮膚余剰だけの患者を扱わない。後ろ向き研究で、再手術基準や左右差の調整法を標準化した比較試験ではない。PubMed抄録を2026年8月9日に再確認し、全文は入手できなかった。利益相反・資金源は抄録に記載がない。
よくあるご質問
Q. 埋没法が外れたら、もう一度埋没法を受けられますか?
皮膚余剰が少なく、旧線の癒着が弱く、希望線を糸で再現できる場合は再埋没が候補です。二重線下の皮膚余剰、複数回の瘢痕、脂肪・組織の厚みを直接調整する必要がある場合は切開法を比較します。
Q. 以前の埋没糸は、切開時にすべて抜きますか?
新しい切開線と重なる糸、露出・炎症・痛み・角膜刺激の原因となる糸は位置を確認して対応します。糸の数や場所は手術歴だけでは確定できないため、皮膚側と必要に応じてまぶたの裏側を確認し、深い剥離で挙筋を傷つけない範囲を決めます。
Q. 術直後の写真で左右差や幅が広く見えるのは問題ですか?
術直後は腫れ、出血、局所麻酔の影響で二重幅が広く、左右差も目立ちます。傷、閉瞼、見え方に問題がないことを先に確認し、二重線は5日後、1か月後、その後の数か月で変化を追います。
Q. 二重切開と眼瞼下垂手術は何が違いますか?
二重切開は主に旧線、皮膚余剰、組織の厚みを調整して二重線を形成します。眼瞼下垂手術は、挙筋機能低下などで目が開きにくい状態を改善する手術です。二重幅だけでなく、瞳孔へのかぶさり、挙筋機能、眉・額の代償から分けます。
Q. 費用と、術後すぐに連絡が必要な症状を教えてください。
切開法(両目)は275,000円、ROOF切除を行う場合のオプションは110,000円です。強い痛み、急な視力・視野の変化、増え続ける出血、急速な腫れ、目が閉じない、発熱や膿がある場合は予定日を待たずにご連絡ください。
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