クマ治療でヒアルロン酸をどう位置づけるか
2年前のヒアルロン酸治療後にクマが目立ちにくくなり、再び気になってきた方へ、ボリューマXCを2cc使用した症例です。正面と左右斜位で涙溝から頬に続く凹みを確認し、頬の支えを補うことで目の下の影をなだらかにしました。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2022年11月9日
- 実質更新日
- 2026年8月9日



Contents
目次
正面では、涙溝の影と頬の凹みを一続きに見ます
症例は、2年前のヒアルロン酸治療でクマが目立ちにくくなり、最近また気になってきたため再治療を受けました。今回使用したのはジュビダームビスタ ボリューマXC 2本、合計2ccです。
正面写真では、治療前に目頭側から頬へ続く涙溝の影と、頬骨内側の平坦さが見られます。治療後は頬の前方への丸みが加わり、下眼瞼と頬の境目がなだらかになって影が軽く見えます。クマが目立ちにくくなり、輪郭も小さく見える変化です。
クマは一つの色名ではなく、1眼窩脂肪のふくらみ、2涙溝と頬の凹みによる影、3皮膚の小じわ・色素・血管の色、4朝夕で変わる浮腫を分けて見ます。この写真で主に変わったのは涙溝から頬にかけての凹凸で、治療後にも見える色素斑はヒアルロン酸で消す対象ではありません。
頬を下から支えた後に目の下の影がどこまで減るかを正面で確認すると、凹みへ必要以上に量を足さずに済みます。脂肪のふくらみ、色、浮腫が残る場合は、それぞれ別の治療へ分けます。
凹みによる影へヒアルロン酸を位置づける根拠として、3か月時点で凹み尺度が1段階以上改善した割合は注入群87.4%、無治療群17.7%で、12か月時点でも63.5%だったとの報告がありました(参考文献1)。
斜位では、目の下へ足す前に頬の支えを確認します
一方の斜位写真では、治療前に下眼瞼から頬へ移る位置に段差があり、頬の前方投影も少なく見えます。治療後は頬の頂点が前へ出て、涙溝から頬へ落ちる影が短くなっています。注入部には軽い赤みと内出血が見られるため、形の変化と施術直後の皮膚反応を分けて経過を見ます。
この症例ではボリューマXC 2ccを頬・中顔面の支持に使い、下眼瞼と頬のつながりを整えています。ボリューマXCは国内では中顔面などの減少したボリュームを皮下または骨膜上深部で補う承認製剤で、眼窩周囲へ直接注入する製剤ではありません。
頬を整えた後も涙溝だけが残る場合は、眼窩脂肪の突出や浮腫がないことをもう一度確認してから、目の下へ直接補正する適否と製剤を別に決めます。薄い下眼瞼では、少量の差でも腫れ、凹凸、青みが見えやすいためです。
頬を支えた後も残る涙溝を少量ずつ補正する理由として、涙溝へのヒアルロン酸注入では、満足率91.0%に対し、腫れ19.2%、内出血18.4%、凹凸5.3%、青色調0.9%だったとの報告がありました(参考文献2)。
頬の支持へボリューマXCを使う理由として、国内添付文書では、成人の中顔面などで減少したボリュームを皮下または骨膜上深部へ注入して増大する製剤と記載され、眼窩周囲のように血行障害時に壊死しやすい部位への注入は禁じられています(参考文献3)。
反対側の斜位で左右差を見て、残る原因の治療順を決めます
反対側の斜位写真でも、治療後は頬の前方への丸みが増し、目頭側から頬へ続く影が軽く見えます。正面だけでなく両側の斜位を比べ、片側だけ頬が張って見えないか、涙溝の残り方に左右差がないかを確認します。
治療の順序は原因で変わります。眼窩脂肪の突出が主なら経結膜脱脂でふくらみを減らし、術後に残る凹みを再評価します。涙溝と頬の凹みが主なら、まず中顔面をヒアルロン酸で支えます。皮膚の小じわや質感にはPRPなどの皮膚治療、茶色・青赤色には色素や血管を対象にした治療を分けます。
浮腫が主な目の下へヒアルロン酸を追加すると、さらに重く見えることがあります。朝の腫れ、アレルギーや鼻症状、既存フィラーの有無を確認し、押して戻るむくみと固定した凹みを分けてから注入量を決めます。
遅れて出る腫れと血流異常は、通常の内出血と分けて対応します
注入直後の腫れや内出血とは別に、数か月から数年後に目の下が腫れる、硬いしこりができる、製剤が移動したように見える遅発性変化があります。以前の注入から2年たっている本症例でも、再注入前に古い製剤による浮腫や硬結がないかを触診と写真で確認します。
目の下と内側頬の周囲には眼窩下動脈と角動脈の枝が走り、眼動脈系へつながる吻合があります。頬を支える注入でも、既往注入、血管走行、注入層を確認し、少量ずつゆっくり入れて皮膚色と痛みを追います。
注入中または直後に皮膚が青白くなる、網目状に変色する、通常と異なる強い痛み、見えにくさや視野異常が出た場合は、血管閉塞を疑って直ちに中止します。ヒアルロニダーゼを使用できる体制を整え、視覚症状があれば眼科と緊急連携します。
再注入前に遅発性浮腫と硬結を確認する理由として、涙溝フィラー後の遅発性合併症を集めた28報52例では、腫れが22例(42.3%)、しこり・結節が13例(25.0%)で、発症までの平均は16.8か月だったとの報告がありました(参考文献4)。
視覚異常を施術中から確認する理由として、ヒアルロン酸注入後の視力障害はほぼすべてが片側かつ直後に発症し、0.2mLでも永久的な完全視力障害を生じた例があったとの報告がありました(参考文献5)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- まず正面と左右斜位で、眼窩脂肪のふくらみ、涙溝から頬へ続く凹み、皮膚の色と小じわ、浮腫を別々に記録します。指で頬を軽く支えたときに影がどこまで減るかも見ます。
- この症例のように頬の支持低下が影へ連続している場合は、ボリューマXCで中顔面を先に支え、撮影し直してから涙溝に残る影を再評価します。2ccを一度に目の下へ集めるのではなく、左右の頬の支えに配分します。
- 眼窩脂肪の突出が残れば脱脂、色や小じわが残れば皮膚治療へ分けます。浮腫や既存フィラーがあれば追加注入を急がず、血流異常に備えた注入経路と緊急対応を決めてから治療します。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 涙溝・中顔面へのHA | 凹み・支持不足が影を作る場合 | 眼窩脂肪突出、強いむくみ、色素・血管だけが主因 | 少量ずつ1回後に評価 | むくみ、青色調、凹凸、血管閉塞、視覚障害 | 1cc77,000円+必要時カテラン針11,000円 | 製剤・使用目的ごとに国内承認確認 |
| 経結膜脱脂等の手術 | 眼窩脂肪突出が主因で注入では重くなる場合 | 凹みだけが主因、手術リスクを許容できない | 通常1回 | 腫れ、内出血、凹み、左右差、外反、複視等 | 経結膜脱脂189,000円 | 術式と適応を個別確認 |
| レーザー・外用・スキンケア | 色素・血管・皮膚質が主因 | 構造的な凹み・脂肪突出の補正を期待 | 複数回・継続 | 赤み、刺激、PIH等治療固有 | 治療・製品で異なる | 機器・薬剤・目的ごとに承認確認 |
費用の目安
- ヒアルロン酸1本1cc 77,000円/カテラン針11,000円。
- 経結膜脱脂術189,000円。
凹み・膨らみ・色素の主因で治療と総額が変わります。
リスク・副作用・注意点
- HAでは腫れ、青色調、凹凸、内出血、感染、結節、遅発性炎症があります。
- まれに血管閉塞、皮膚壊死、失明を含む視覚障害が起こり得ます。
- 手術では腫れ、出血、左右差、凹み、外反、複視等が起こり得ます。
注入と手術の異なる合併症を同じ「クマ治療」としてまとめません。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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眼窩下の凹みへのヒアルロン酸注入試験
研究デザイン: 多施設無作為化・評価者盲検・無治療対照試験 / 対象: 中等度から重度の眼窩下凹みがある333人。Restylane Eyelight注入群と無治療群を比較 / 結果: 3か月時点の両側同時レスポンダー率は注入群87.4%、無治療群17.7%。初回治療後12か月時点でも63.5%がレスポンダーで、40人(12.7%)に主に軽度の有害事象があった。 / 限界: Restylane Eyelight固有の企業支援試験で、ボリューマXCによる頬の支持、眼窩脂肪突出、色素、血管、浮腫に対する効果を示す試験ではない。
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涙溝へのヒアルロン酸注入の有効性・安全性
研究デザイン: 31報の系統的レビュー・ランダム効果メタ解析 / 対象: 涙溝変形へヒアルロン酸注入を行った31報、2,556人 / 結果: 統合満足率91.0%、腫れ・浮腫19.2%、内出血18.4%、発赤7.1%、凹凸・しこり5.3%、青色調・Tyndall現象0.9%。 / 限界: 製剤、注入層、手技、評価法、追跡期間が研究間で異なる。頬へのボリューマXC 2ccの配分や、個人の眼窩脂肪・色・浮腫に対する適応は決められない。
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ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書
研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器添付文書 / 対象: 中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを増大する治療を受ける成人 / 結果: 中顔面などの減少したボリュームを皮下または骨膜上深部へ注入して増大する。血管内注入と、眼窩周囲など血行障害時に壊死しやすい部位への注入を禁じ、異常な痛み、皮膚青白化、視力異常などがあれば直ちに注入を止めるよう警告している。 / 限界: 添付文書は症例ごとの最適量、左右配分、頬を支えた後の涙溝変化、2年間の持続を示す比較研究ではない。
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Delayed complications after tear trough filler
研究デザイン: PRISMAに沿った症例報告・症例集積の系統的レビュー / 対象: 涙溝フィラー後の遅発性合併症28報52例。37例(71.2%)がヒアルロン酸 / 結果: 腫れ22例(42.3%)、しこり・結節13例(25.0%)、黄色腫様反応9例、移動4例、変色3例。遅発性合併症発症までの平均は16.8か月だった。 / 限界: 合併症が起きた症例だけを集めたレビューで、発生率や製剤別リスクを算出できない。報告・出版バイアスがあり、この症例に遅発性合併症があることを示すものではない。
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Vision loss associated with HA fillers
研究デザイン: PRISMAに沿った症例報告・症例集積の系統的レビュー / 対象: ヒアルロン酸フィラー注入後の視力障害44例 / 結果: ほぼすべてが片側かつ直後に発症し、鼻、眉間、額が主な注入部位だった。0.2mLでも永久的な完全視力障害が報告され、眼動脈・網膜中心動脈閉塞は予後不良だった。 / 限界: 公表された症例を集めたレビューで発生率を算出できず、注入部位別の安全性を比較していない。下眼瞼・頬への個別リスクや、特定の針・カニューレによる予防効果も確定できない。
よくあるご質問
Q. 目の下のクマは、ヒアルロン酸だけで治療できますか?
涙溝や頬の凹みによる影には候補になります。眼窩脂肪のふくらみには脱脂、皮膚の小じわや質感にはPRPなどの皮膚治療、色素や血管の色には別の治療を組み合わせます。
Q. この症例のボリューマXC 2ccは、どこに使いましたか?
頬・中顔面の支えを補い、下眼瞼と頬の段差をなだらかにした症例です。2ccは2本分の合計で、左右の凹みと頬の支持を見て配分します。
Q. 脱脂とヒアルロン酸は、どちらを先にしますか?
眼窩脂肪の突出が主なら脱脂を先に行い、術後に残る凹みを再評価します。涙溝と頬の凹みが主なら、中顔面の支えをヒアルロン酸で先に整えます。
Q. 2年前のヒアルロン酸が残っていても再注入できますか?
この症例は2年前の治療後に再びクマが気になって再治療しました。再注入前には、残存製剤、硬結、遅発性浮腫を確認し、追加が必要な場所と量を決めます。
Q. 注入後、すぐ連絡が必要な症状はありますか?
皮膚の青白化や網目状変色、通常と異なる強い痛み、見えにくさや視野異常があれば、血管閉塞の可能性があるため直ちに連絡してください。
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