クマ治療でヒアルロン酸が向くケースと向かないケース
目の下に固定した凹みがあり、脂肪の突出や浮腫が少ないクマは、ヒアルロン酸で段差を支える候補です。ふくらみ、色素・血管、皮膚余剰が主なら別の治療を優先し、混在例は脱脂と注入を段階的に組み合わせます。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2023年6月4日
- 実質更新日
- 2026年8月9日



Contents
目次
脱脂かヒアルロン酸か、両方かを構造で選びます
MD Codes Live Tour 2023 Japanでは、Mauricio de Maio医師による講義の中心テーマが、ヒアルロン酸による目の下のクマ治療でした。会場で示された多数の治療写真を通して、目の下を一つの色として扱わず、ふくらみ、凹み、頬の支えを系統的に見る方法を学びました。
クマの相談では、『ヒアルロン酸で治療できるのか』『脱脂しか方法がないと思っていた』という質問をよく受けます。脱脂は前へ出た眼窩脂肪を減らす治療、ヒアルロン酸は涙溝や頬の凹みを支える治療で、働きは反対です。
正面で脂肪のふくらみを見た後、斜位で眼窩縁から頬へ続く段差を確認します。ふくらみだけなら脱脂、凹みだけならヒアルロン酸、両方があれば突出を整えた後に残る凹みを補う順序で考えます。
固定した凹みと頬の支持低下はヒアルロン酸の候補です
講義後には周囲の医師と、脱脂とヒアルロン酸の境界、少量注入の終点、経過の見方を意見交換しました。クマ治療の選択では、治療名より先に、目頭側の涙溝、眼窩縁、内側頬が作る立体的な段差を見ます。
ヒアルロン酸が向くのは、目の下に固定した溝があり、照明の向きを変えると影が軽くなる一方、上方視でも脂肪のふくらみが強く出ない状態です。皮膚の張りが保たれ、朝のむくみや頬上部の水分貯留が少ないことも重要です。
頬の支持低下が涙溝へ連続している場合は、内側頬を支えたときに目の下の影がどこまで浅くなるかを先に見ます。頬を整えた後に残る溝だけを補うと、薄い下眼瞼へ量を集めずに段差をなだらかにできます。
固定した涙溝の凹みへ少量のヒアルロン酸を選ぶ理由として、カニューレで内側涙溝を治療した報告では、4週までに全員が改善を自覚し、75%が結果に満足したとの報告がありました(参考文献1)。
脂肪突出・浮腫・色が主なら別の治療を先にします
講義後の医師間交流では、脂肪を減らす治療と凹みを補う治療を一律に競わせず、両方を使う場面まで含めて検討しました。クマ治療では、正面、斜位、上方視で変わるふくらみと、照明で変わる影を同じ所見として扱わないことが出発点です。
上方視で眼窩脂肪が前へ張り出す、皮膚が余っている、頬上部に袋状のむくみがある、朝に腫れやすい場合は、ヒアルロン酸を足すと目元が重く見えやすくなります。脂肪突出には経結膜脱脂、皮膚余剰や下眼瞼のゆるみには状態に合う下眼瞼形成を選びます。
茶色い色素、青紫色の血管透見、皮膚炎による赤みが中心なら、ヒアルロン酸で色そのものは変えません。摩擦と炎症を整える外用、色素・血管・皮膚質に合う治療へ分けます。
ふくらみと凹みが混在するときは、突出した脂肪を整え、手術後約1か月の正面・斜位で残る涙溝と頬の支持を見直します。その時点で固定した影が残る部位だけにヒアルロン酸を検討します。
脂肪突出やむくみがある目元へ注入を先行しない理由として、眼周囲ヒアルロン酸注入後に4週を超えて続く浮腫は0〜15%にみられ、皮膚弛緩、既存の頬上部の膨らみ、突出した眼窩脂肪などがリスク因子との報告がありました(参考文献2)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 座位の正面・左右斜位を同じ照明で撮影し、上方視で増える脂肪突出、照明方向で変わる影、照明を変えても残る色を別々に記録します。
- 眼窩縁と内側頬を触れ、頬を軽く支えたときに涙溝が浅くなるか、下眼瞼の皮膚余剰と頬上部の浮腫がないかを確かめます。
- 固定した凹みが主なら頬の支持から整え、脂肪突出が主なら経結膜脱脂、色素・血管・炎症が主なら皮膚治療を選びます。
- ふくらみと凹みの混在例は、脂肪量を整えた後に約1か月で再撮影し、残る影へ必要な支持だけを補います。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 頬・涙溝のヒアルロン酸 | 固定した涙溝・眼窩縁の凹み、内側頬の支持低下が主で、脂肪突出と浮腫が少ない状態 | 強い脂肪突出、フェストゥーン・持続性浮腫、皮膚余剰、色素・血管だけが主なクマ | 通常1回。2〜4週で腫れ、凹凸、左右差を再評価 | 腫れ、内出血、むくみ、左右差、凹凸、青色調。まれに血管閉塞、皮膚壊死、視力障害 | ヒアルロン酸1本1cc 77,000円。カテラン針使用時11,000円 | 製剤ごとに承認範囲が異なる。ボリューマXCは中顔面への使用が国内承認されているが、眼窩周囲へは注入しない |
| 経結膜脱脂 | 上方視・斜位で眼窩脂肪のふくらみが明瞭で、皮膚余剰が少ない状態 | 固定した凹み、色素・血管、皮膚余剰・下眼瞼のゆるみだけが主な状態 | 通常1回。約1か月でふくらみと残る凹みを再評価 | 腫れ・内出血1〜2週、結膜浮腫、出血、左右差、凹凸、取り残し・取りすぎ、感染 | 経結膜脱脂 189,000円 | 自由診療の手術。医薬品・医療機器の承認とは別に術式を説明 |
| 経結膜脱脂後のヒアルロン酸 | 脂肪突出と涙溝・頬の凹みが混在し、脱脂後にも固定した影が残る状態 | 術後早期の腫れが残る状態、脂肪突出・浮腫・色だけで影の凹みがない状態 | 脱脂後約1か月で再評価し、必要時に注入1回 | 手術の腫れ・内出血に加え、注入後の腫れ、凹凸、青色調、血管障害 | 例:経結膜脱脂189,000円+ヒアルロン酸1本77,000円+カテラン針11,000円=277,000円 | 手術は自由診療。眼窩周囲へのヒアルロン酸直接注入は製剤ごとに適応外使用を説明 |
費用の目安
- ヒアルロン酸注入 1本1cc 77,000円
- カテラン針を使用する場合 11,000円
- 経結膜脱脂 189,000円
- 組み合わせ例:経結膜脱脂189,000円+ヒアルロン酸1本77,000円+カテラン針11,000円=277,000円
ヒアルロン酸注入と経結膜脱脂は自由診療です。組み合わせ例はヒアルロン酸1本とカテラン針を使用する場合です。
リスク・副作用・注意点
- ヒアルロン酸注入では腫れ、内出血、凹凸、青色調、感染、持続性・遅発性浮腫、遅発性結節が生じることがあります。
- 血管内への誤注入または組織圧迫により、皮膚壊死、視力障害・失明、脳卒中などの重篤な合併症が起こる可能性があります。
- 経結膜脱脂では腫れ、内出血、結膜浮腫、感染、左右差、脂肪の取り残し・取りすぎ、凹み、下眼瞼位置異常、複視が生じることがあります。
- 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは、成人の中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを増大する目的で国内承認された医療機器です(承認番号22800BZX00338000)。眼窩周囲へは注入しません。目の下へ直接注入する場合は使用製剤と部位に応じて国内適応外使用となり、承認範囲、代替治療、救済制度の対象外となる可能性を説明します。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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A prospective study on safety, complications and satisfaction analysis for tear trough rejuvenation using hyaluronic acid dermal fillers
研究デザイン: カニューレによる内側涙溝ヒアルロン酸注入の前向き多施設症例集積 / 対象: 24人・48涙溝(女性22人、男性2人)。4人の医師がTeosyal Puresense Redensity 2を骨膜上へ注入し、全員を2週、一部を4週まで追跡 / 結果: 4週までに全員が見た目の改善を自覚し、18人(75%)が満足しました。2週時点では軽度腫脹6人、中等度腫脹1人、内出血2人、むくみ4人が報告され、4週時点では2人に軽度腫脹が残りました。 / 限界: 対照群のない24人の小規模研究で追跡は最長4週です。製剤、注入量、施術者が異なり、長期の浮腫、遅発性結節、血管閉塞を評価できません。使用製剤は国内の承認製剤・承認部位と同一ではありません。著者は利益相反なしと報告しています。
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Complications of periorbital cosmetic hyaluronic acid filler injections: a major review
研究デザイン: 眼周囲ヒアルロン酸注入の前向き・後ろ向き研究、症例集積、症例報告を扱った主要レビュー / 対象: 涙溝、上眼瞼溝、眉周囲への注入研究を横断しており、単一の総対象人数は設定されていません / 結果: 4週を超える持続性浮腫は収載研究で0〜15%と報告され、皮膚弛緩、アレルギー・酒さ、既存の頬上部の膨らみ、突出した眼窩脂肪などが患者側のリスク因子として挙げられました。早期の浮腫・内出血・凹凸・青色調のほか、まれな視力障害も記載されています。 / 限界: 製剤、注入層、手技、追跡期間が不均一で、重い合併症は症例報告・症例集積に依存します。治療法別の発生率や、個人における脱脂と注入の優劣は比較できません。著者は利益相反と研究助成なしを報告しています。
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医療機器の承認審査に関する情報
販売名、承認番号、承認範囲を確認する公的情報です。
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医療広告ガイドライン
自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。
よくあるご質問
Q. どのようなクマにヒアルロン酸が向きますか?
涙溝や眼窩縁から頬へ続く固定した凹みが影を作り、脂肪突出、浮腫、皮膚余剰が少ない状態です。頬を軽く支えたときに影が浅くなる場合は、中顔面の支持を補う治療が候補になります。
Q. ヒアルロン酸が向かないクマはありますか?
強い眼窩脂肪のふくらみ、頬上部の袋状のむくみ、朝に変動する浮腫、皮膚余剰、色素や血管が主なクマです。容量を足すと重く見える状態では、脱脂や皮膚治療を先に考えます。
Q. 脱脂とヒアルロン酸は両方できますか?
ふくらみと凹みが混在する場合は組み合わせます。まず突出した脂肪を整え、約1か月後に残る涙溝と頬の支持を見て、必要な部位だけにヒアルロン酸を追加します。
Q. 茶クマや青クマにもヒアルロン酸は効きますか?
凹みによる影が重なっていれば影の部分は軽くできますが、色素や血管の色そのものを消す治療ではありません。色素沈着、血管透見、皮膚炎はそれぞれに合う治療へ分けます。
Q. クマ治療の費用とヒアルロン酸の国内承認はどうなりますか?
ヒアルロン酸は1本1cc 77,000円、カテラン針を使う場合は11,000円、経結膜脱脂は189,000円です。ジュビダームビスタ ボリューマXCは中顔面などへの使用が国内承認されていますが、眼窩周囲へ直接注入する製剤ではありません。目の下へ直接注入する場合は、使用製剤と部位に応じて適応外使用として説明します。
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