医師解説シミ

レーザーとIPLの違いと選び方

レーザーは絞った波長でメラニン・ヘモグロビン・水などの標的を狙い、IPLは幅のある光をフィルターで選び、広い色むらや赤みを整えます。シミ、血管、脱毛では、病変の種類・深さ・分布から選ぶ順序が変わります。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2026年1月22日
実質更新日
2026年8月9日
レーザーとIPLの違いを、ターゲット、照射範囲、ダウンタイムで比較した図

Contents

目次

  1. レーザーは絞った光、IPLは幅のある光を使います
  2. 境界と標的が明確な病変はレーザーで狙います
  3. 薄い色むらと赤みが広く混在するときはIPLで面を整えます
  4. シミは、境界・深さ・分布を見てスポットか面治療かを決めます
  5. 赤みは、線状血管と面状の紅斑を分けます
  6. 脱毛とニキビ・皮脂は、標的が異なるため別に選びます
  7. 診察は、病変を分け、深さを見て、治療範囲を決める順に進めます
  8. 診療で確認するポイント
  9. 治療選択の比較
  10. 費用の目安
  11. リスク・副作用・注意点
  12. 関連記事
  13. 関連施術・関連症状のご案内
  14. 執筆・監修
  15. 参考にした一次情報・ガイドライン
  16. よくあるご質問

レーザーは絞った光、IPLは幅のある光を使います

図では、レーザーを『原因に対して狙い撃ちする治療』、IPLを『広く薄く整える治療』として比較しています。レーザーは機器ごとに波長が絞られた光を使い、メラニン、ヘモグロビン、水など、光を吸収する標的へエネルギーを集めます。標的と波長、照射時間が合えば、周囲への加熱を抑えながら境界の明瞭なシミ、血管、深さのある色素などを治療できます。

IPLは単一波長のレーザーではなく、複数の波長を含む非コヒーレント光です。フィルターで使う波長域を選び、広い照射面で、顔全体に散在する薄い色素と赤みを同じ治療計画へ組み込みます。光の幅が広いことを利用して面で整えるため、レーザーより弱いという意味ではなく、狙う範囲と標的の数が異なります。

境界と標的が明確な病変はレーザーで狙います

一つずつ境界が分かる褐色斑、線状に見える血管、真皮側に深さのある色素、組織中の水を加熱して削る病変では、標的に合うレーザーを選びます。照射径、パルス幅、冷却を病変の大きさと深さに合わせ、正常皮膚へ広げずに必要な範囲へ照射します。

同じ『シミ』でも、表皮性の老人性色素斑、肝斑、炎症後色素沈着、母斑では選ぶ光と強さが異なります。色、境界、左右差、隆起、経過を確認し、診断が定まった病変からレーザーの候補を決めます。

薄い色むらと赤みが広く混在するときはIPLで面を整えます

IPLは、頬全体に散在する薄い褐色斑、くすみ、びまん性の赤みなど、複数の浅い所見を一度に面で扱いたいときに使います。『全体の印象をマイルドに整える』『ダウンタイムを抑えて段階的に底上げする』役割の治療です。

広い変化が整った後に、残った濃い斑や明瞭な血管だけをレーザーで狙う順序もあります。IPLを同じ設定で繰り返して変化が頭打ちになった場合は、残っている所見の深さと標的を見直し、回数を増やすか、レーザーへ切り替えるかを決めます。

IPLを広い光老化所見へ複数回使う背景として、平均4.29回の治療後に毛細血管拡張、紅斑、日光黒子、色素沈着、キメ、毛穴、しわが改善したとの報告がありました(参考文献5)。

色素と血管を分けてIPLの条件を選ぶ根拠として、狭帯域IPL後の平均GAISは血管性病変8.02、色素性病変8.14で、一過性の副反応は2%だったとの報告がありました(参考文献1)。

シミは、境界・深さ・分布を見てスポットか面治療かを決めます

濃く境界が明瞭な孤立性の褐色斑は、病変へスポットでエネルギーを集めるレーザーが向きます。顔全体に薄い斑が散在し、赤みやくすみも重なる場合は、IPLで面を整えた後、残った斑へレーザーを追加します。

頬骨部に左右対称のもやっとした色素がある場合は、肝斑、炎症後色素沈着、光老化の色素斑を分けます。肝斑が活動性であれば、強いスポット照射を先に行わず、遮光・外用と炎症の安定化を優先してから光治療の範囲を決めます。

赤みは、線状血管と面状の紅斑を分けます

小鼻や頬に線として見える毛細血管拡張は、血管径と深さを見て血管を標的にするレーザーを選びます。頬全体のびまん性紅斑や、細かな血管と褐色斑が混在する場合は、フィルターで波長域を選ぶIPLを候補にします。

診察では、圧迫で薄くなるか、熱・飲酒・運動で変化するか、丘疹・膿疱を伴うかを確認します。炎症性の酒さと固定した毛細血管を分け、外用・内服で炎症を整える段階と、光で血管を治療する段階を組みます。

顔面毛細血管拡張へ血管レーザーとIPLのどちらも候補にできる根拠として、1か月間隔で最大2回治療した3か月後の毛細血管拡張改善スコアは両方とも平均3.3で差がなかったとの報告がありました(参考文献2)。

脱毛とニキビ・皮脂は、標的が異なるため別に選びます

脱毛は毛包のメラニンを標的にするため、毛の太さ・色・密度、毛根の深さ、肌色から波長域と照射時間を選びます。狭い波長で毛包へ集中的に照射するレーザーと、広い面を複数波長で照射するIPLのどちらも選択肢ですが、産毛、白髪、日焼け肌では光の吸収条件が変わります。

ニキビや皮脂では、炎症、面皰、赤み、瘢痕のどれを治療するかを先に決めます。血管、色素、水、ポルフィリン、皮脂腺など、標的は機器によって異なるため、『レーザー』または『IPL』という名称だけで一括りにせず、現在の病変に対応する機器を選びます。

診察は、病変を分け、深さを見て、治療範囲を決める順に進めます

最初に、褐色、赤色、隆起、毛、炎症のどれが主所見かを分けます。次に表皮か真皮か、線状か面状か、単発か多発かを記録し、標的を一つに絞れる病変はレーザー、浅い複数所見を広く扱う場合はIPLを候補にします。

治療後は、同じ照明と角度で色素の濃さ、血管の本数、紅斑の面積、毛密度を別々に評価します。面状の変化が残る間はIPLを重ね、病変が点や線として残った段階でレーザーへ切り替えるなど、残った標的に合わせて順序を更新します。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 最初に、褐色斑、線状血管、面状紅斑、毛、炎症を分け、表皮・真皮の深さと単発・多発の分布を同じ条件の写真で記録します。
  • 標的が一つで境界が明瞭ならレーザー、薄い色素と赤みが広く混在するならIPLを選び、面を先に整えて残った点・線をレーザーで仕上げる順序も組みます。
  • 各回で色素の濃さ、血管の本数、紅斑の面積、毛密度を別々に評価し、同じ照射を続けるか、標的に合う別の光へ切り替えるかを決めます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
標的型レーザー(ルビー・ADVATx等) 境界明瞭な色素、特定血管・赤みを波長別に狙う場合 肝斑面、日焼け、診断未確定病変、広い複合色むらへ単一標的だけを照射 1回〜複数回、病変と反応で決定 赤み、かさぶた、紫斑、PIH、色素脱失、熱傷等 ルビースポット6,600円〜/ADVATx全顔30,000円 機器・波長・使用目的ごとに国内承認を確認
IPL 広い範囲の複数の表在性色素・細い血管をフィルター調整して治療 肝斑優位、濃い肌色・日焼け、深い単一病変、診断未確定 通常複数回、毎回反応を評価 赤み、腫れ、かさぶた、PIH、色素脱失、熱傷等 当院料金表にIPL掲載なし。提供状況・料金は要確認 機器・フィルター・目的ごとに承認確認
外用・遮光・経過観察 肝斑、PIH、炎症後の色調管理、治療前の安定化 単独で構造的血管や隆起病変の除去を期待 毎日・数か月ごとに見直し 刺激、乾燥、かぶれ、色素変化等 製品・処方で異なる 薬剤・化粧品区分と適応を確認

費用の目安

  • Qスイッチルビースポット1cm²まで6,600円/ルビーフラクショナル全顔16,500円等。
  • ADVATx全顔1回30,000円/5回139,000円。IPLは当院料金表に掲載なし。

リスク・副作用・注意点

  • 赤み、熱感、腫れ、かさぶた、紫斑、疼痛が生じることがあります。
  • PIH、色素脱失、熱傷、水疱、瘢痕、肝斑悪化が起こり得ます。
  • 眼周囲では適切な眼球保護が必要です。

IPL一般研究をADVATxやQスイッチルビーの製品固有效果へ転用しません。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Arminda A. Intense Pulsed Light (IPL) for the treatment of vascular and pigmented lesions. J Cosmet Dermatol. 2024;23 Suppl 1:1-6.

    狭帯域IPLによる色素・血管病変

    研究デザイン: Advanced Fluorescence Technologyを用いた狭帯域IPLの診療データによる後ろ向き単群解析 / 対象: 色素性病変または血管性病変へ狭帯域IPLを受けた100人 / 結果: 平均GAISは血管性病変8.02±0.84、色素性病変8.14±0.90で、群間差はなかった。2人に一過性の副反応があり、疼痛の報告はなかった。 / 限界: 特定の狭帯域IPLによる単群・後ろ向き研究で、病変別人数、照射回数、フィルター、フルエンスの詳細はPubMed抄録にない。レーザーとの比較や一般的なIPL全体の成績を示さない。PubMed抄録を2026年8月8日に確認した。

  2. Tanghetti EA. Split-face randomized treatment of facial telangiectasia comparing pulsed dye laser and an intense pulsed light handpiece. Lasers Surg Med. 2012;44(2):97-102.

    顔面毛細血管拡張へのPDLとIPL

    研究デザイン: 単施設、左右比較、無作為化試験。独立した盲検評価者が3か月後に評価 / 対象: 顔面毛細血管拡張16人。左右へPDLまたはデュアルバンドIPLを割り付け、1か月間隔で最大2回治療 / 結果: 7段階のTelangiectasia Grading Scaleによる平均改善スコアはIPL 3.3(95%CI 2.8〜3.7)、PDL 3.3(95%CI 2.9〜3.8)で、群間差はなかった。副反応の発生率・重症度にも有意差はなかった。 / 限界: 16人の小規模研究で、PDLは595nm、IPLは500〜670nmおよび870〜1,200nmの特定ハンドピースを使用した。別の血管レーザー、通常のIPL、色素性病変、酒さ全体へ同じ結果を一般化できない。PubMed抄録を2026年8月8日に確認した。

  3. PMDA

    医療機器の承認審査

    機器・波長・目的の承認確認先。

  4. Dermatol Surg. 2014

    IPL for dermatologic disease

    疾患別の系統的レビュー。

  5. Sales AFS, et al. Intense Pulsed Light on skin rejuvenation: a systematic review. Arch Dermatol Res. 2022;314(9):823-838.

    IPL for skin rejuvenation

    研究デザイン: PRISMAに沿い、写真評価または自己評価を用いたIPLによる皮膚若返り研究を対象にした系統的レビュー / 対象: 16研究637人、21〜80歳、Fitzpatrick skin type I〜IV。治療は平均4.29回、範囲3〜7回 / 結果: 多くの研究で毛細血管拡張、しわ、毛穴、紅斑、キメ、日光黒子、色素沈着、光老化スコアの改善を報告した。 / 限界: 9研究は方法論的品質が低く、機器、フィルター、照射条件、併用治療、評価法が不均一。7研究では他治療または併用がIPL単独より優れており、最適設定の合意はない。PubMed抄録を2026年8月8日に確認した。

よくあるご質問

Q. シミにはレーザーとIPLのどちらが向きますか?

濃く境界が明瞭な単発の褐色斑はレーザー、薄い斑が顔全体に散在し、赤みやくすみも重なる場合はIPLが候補です。肝斑、炎症後色素沈着、母斑では順序が異なるため、色・境界・深さを診断してから選びます。

Q. 赤みにはレーザーとIPLのどちらが向きますか?

小鼻や頬に線として見える血管は血管レーザー、頬全体のびまん性紅斑や色素斑との混在はIPLを考えます。丘疹・膿疱を伴う酒さでは、光治療の前に炎症を整える治療を組みます。

Q. 脱毛ではレーザーとIPLに違いがありますか?

どちらも毛包のメラニンを利用しますが、レーザーは絞った波長、IPLは幅のある光をフィルターで選んで照射します。毛の太さ・色・密度、毛根の深さ、肌色に合う波長域と照射時間を選ぶことが重要です。

Q. 主な副作用とダウンタイムは何ですか?

赤み、熱感、腫れ、疼痛、かさぶた、紫斑が起こることがあります。設定や肌状態によっては、水疱、熱傷、炎症後色素沈着、色素脱失、瘢痕、肝斑悪化が生じます。眼周囲の照射では適切な眼球保護が必要です。

Q. 当院の料金と承認状況はどう確認しますか?

現在の料金表では、Qスイッチルビーのスポットは1cm2まで6,600円、ルビーフラクショナル全顔は16,500円、ADVATx全顔は1回30,000円・5回139,000円です。IPLは当院料金表に掲載がありません。承認状況は機器・ハンドピース・使用目的ごとに異なるため、販売名、承認番号、承認範囲をPMDA情報と現物表示で確認します。

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