医師解説

こめかみ・目周り・ほうれい線と唇をヒアルロン酸で整える考え方

たるみが少なくても、顔が小さく脂肪が少ない方では、こめかみ・目周り・ほうれい線の影で全顔がこけて見えます。この症例はボリューマ4ccで上中顔面を整え、後日ボルベラ1ccを唇へ加え、正面写真で口角と全顔の印象を再評価しました。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2025年10月26日
実質更新日
2026年8月9日
ボリューマXC 4ccとボルベラXC 1ccでこめかみ・目周り・ほうれい線・唇を整えた正面の治療前後比較

Contents

目次

  1. 脂肪が少ない顔の影を、上中顔面4ccと唇1ccで整えた症例
  2. 4ccは、こめかみ・目周り・ほうれい線の支えから順に見ます
  3. 上中顔面を整えた後、ボルベラXC 1ccで唇と口角を再設計しました
  4. 目周りと唇では、眼窩下動脈・顔面動脈・上唇動脈を確認します
  5. 製剤の承認部位を分け、正面・斜位・側面で全顔を再評価します
  6. 診療で確認するポイント
  7. 治療選択の比較
  8. 費用の目安
  9. リスク・副作用・注意点
  10. 関連記事
  11. 関連施術・関連症状のご案内
  12. 執筆・監修
  13. 参考にした一次情報・ガイドライン
  14. よくあるご質問

脂肪が少ない顔の影を、上中顔面4ccと唇1ccで整えた症例

この症例は、もともとたるみがほとんどなく、顔が小さく痩せ型で、皮下脂肪が少ない方です。こめかみの凹み、目周りから頬へ続く影、ほうれい線が重なることで、輪郭全体に少しこけた印象が出ていました。

最初にヒアルロン酸製剤のジュビダームビスタ ボリューマXCを合計4cc使用し、ほうれい線、こめかみ、目周りを含む上中顔面を整えました。その後、ジュビダームビスタ ボルベラXC 1CCを唇へ追加し、総量は5ccです。

正面の半顔比較では、治療後にこめかみから頬外側へ続く輪郭がなめらかになり、目周りとほうれい線の影がやわらいでいます。唇は赤唇の厚みが増し、口角が上向きに見える口元へ変化しています。

唇へボルベラXCを追加した後は、赤唇の高さだけでなく口周囲と口角を経過で見ます。ボルベラXCによる口唇充足度の改善は3か月時80.3%で、1年まで60%を超え、口周囲の線も3か月時65.4%、1年時66.2%に改善がみられたとの報告がありました(参考文献1)。

4ccは、こめかみ・目周り・ほうれい線の支えから順に見ます

こめかみでは、側頭部の凹みと頬骨外側へ続く曲面を見ます。脂肪が少ない顔では、側頭部の影が深いと上顔面の幅が細く見えるため、外側輪郭のつながりを先に整えます。

目周りは、下眼瞼そのものだけでなく、下眼瞼境界へ続く前頬の支持を確認します。眼窩脂肪のふくらみ、涙溝、前頬の凹みを正面で見分け、中顔面の支持不足が主な範囲をボリューマXCで補います。

ほうれい線では、小鼻の付け根、前頬の支持、線の深さを分けます。この症例では4ccを一つの凹みへ集中させず、上中顔面全体の曲面を確認しながら、こめかみ・目周り・ほうれい線へ配分しました。

上中顔面を整えた後、ボルベラXC 1ccで唇と口角を再設計しました

上中顔面4ccの変化を確認した後、唇へボルベラXC 1ccを追加しました。口を閉じた状態の赤唇高、上唇と下唇の比率、口角の位置を見て、顔全体の新しい重心になじむ口元を作ります。

口角は、唇のボリューム、口角下の支持、口角を下げる筋肉の動きで見え方が変わります。この症例では唇を補った後に口角が上がり、こけ感を整えた上中顔面と口元が一続きの印象になりました。

目周りと唇では、眼窩下動脈・顔面動脈・上唇動脈を確認します

こめかみでは浅側頭動脈とその枝、目周りから前頬では眼窩下動脈と顔面動脈から続く角動脈、唇では顔面動脈から分かれる上唇動脈が治療範囲に関わります。過去の注入歴と拍動を確認し、部位ごとに血管走行を重ねて治療範囲を決めます。

下眼瞼境界では、眼窩下孔から出る血管の枝が前頬へ広がり、鼻背や目頭側へつながります。目周りの影は、眼窩脂肪・涙溝・前頬の支持を見分け、中顔面から治療範囲を決めます。

唇では、上唇動脈の位置と深さに個人差があります。赤唇縁、上唇中央、口角を動かして左右差を見たうえで、皮膚色と痛みを確認しながら少量ずつ形を整えます。

目周りから前頬へ続く影では、凹みの位置と眼窩下動脈の走行を重ねて治療範囲を決めます。眼窩下動脈は一般的な中顔面注入範囲を走り、滑車上動脈・鼻背動脈・角動脈へつながる枝が確認されたとの報告がありました(参考文献2)。

唇と口角では、上唇動脈の位置を確認しながら治療範囲を決めます。上唇動脈の内径は口角で平均0.85mm、上唇中央で0.56mm、皮膚からの深さは最も浅い測定点で平均4.29mmだったとの報告がありました(参考文献3)。

製剤の承認部位を分け、正面・斜位・側面で全顔を再評価します

ボリューマXCは、中顔面、下顎部、こめかみの減少したボリュームを補う国内承認製剤です。こめかみと前頬の支持へ使い、眼窩周囲へ直接注入せず、鼻唇溝を皮内のしわとして修正する場合は製剤と承認目的を別に確認します。

ボルベラXCは、顔面のしわ・へこみの修正と口唇増大を目的とする国内承認製剤です。唇では赤唇、赤唇縁、口角を動きに合わせて整え、眼瞼は承認範囲に含まれません。

腫れが落ち着いた再診では、正面に加えて左右斜位と側面を同じ照明で比較します。こめかみの曲面、下眼瞼から前頬への境界、鼻唇溝、口唇の投影と閉じやすさを順に見て、追加する範囲を決めます。

こめかみと中顔面の支持にボリューマXCを使い、時間を置いて全顔を再評価する理由として、ボリューム不足が1段階以上改善した割合は6か月時85.6%、24か月時67.1%だったとの報告がありました(参考文献4)。

ボルベラXCは、国内電子添文で顔面のしわ・へこみの修正と口唇増大を目的とする製剤と記載されています(参考文献5)。眼瞼は承認範囲に含まれず、眼窩縁下方・鼻唇溝・眼窩周囲は血流障害の危険へ慎重な使用が求められています。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • たるみが少ない痩せ型の顔では、皮膚を引き上げる量より、こめかみ・前頬・鼻唇溝へ続く支持不足を正面と斜位で確認します。
  • 最初に上中顔面のこけ感をボリューマXC 4ccで整え、その変化を確認してから、ボルベラXC 1ccで唇の高さと口角を顔全体へ合わせます。
  • 目周りは眼窩脂肪、涙溝、前頬の支持を分け、ボリューマXCは承認範囲である中顔面の支持へ用います。
  • 腫れが落ち着いた再診で正面・左右斜位・側面を見比べ、こめかみから唇までの曲面、左右差、口を閉じた状態を全顔で再評価します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
ボリューマXCによる上中顔面の支持 脂肪が少なく、こめかみと中顔面のボリューム不足が全顔のこけ感を作る状態 眼窩周囲への直接注入、活動性の炎症・感染、容量追加で輪郭が重く見える状態 1回後に正面・斜位・側面で再評価し、必要時のみ追加 痛み、赤み、腫れ、内出血、左右差、凹凸・しこり。まれに血管閉塞・視覚障害 1本1cc 77,000円。症例の4ccは308,000円 中顔面・下顎部・こめかみは国内承認。承認番号22800BZX00338000
ボルベラXCによる口唇増大 赤唇の厚み、上唇と下唇の比率、口角周囲のボリューム不足を整えたい状態 眼瞼への使用、活動性の口唇ヘルペス・炎症・感染、腫れが残っている状態 1回後に腫れが落ち着いた時点で口を閉じた状態と笑顔を再評価 腫れ、痛み、硬さ、内出血、左右差、しこり。まれに血管閉塞・組織壊死 1本1cc 77,000円+涙袋・唇施術料11,000円 顔面のしわ・へこみ修正と口唇増大は国内承認。承認番号23000BZX00331000
上中顔面を先行し、唇を後から追加 全顔のこけ感を先に整え、その後の顔の重心に合わせて口元を決めたい状態 各段階の腫れが落ち着く前に最終形を決めたい状態、再診が難しい状態 上中顔面の経過確認後、唇を別段階で追加 各回に腫れ、内出血、左右差、凹凸・しこりなど 症例の製剤5cc 385,000円+唇施術料11,000円 各製剤の承認部位と目的に沿って分ける

費用の目安

  • ヒアルロン酸 1本1cc:77,000円(税込)
  • 症例と同じ5ccの製剤費:385,000円(税込)
  • 涙袋・唇施術料:11,000円(税込)
  • 症例と同じ5cc+唇施術料:396,000円(税込)
  • カテラン針を使用する場合:11,000円(税込)

症例はボリューマXC 4ccとボルベラXC 1ccの計5ccです。カテラン針を使用する場合は別途11,000円が加わります。

リスク・副作用・注意点

  • 痛み、赤み、腫れ、内出血、圧痛、左右差、凹凸、硬結・しこり、感染、遅発性の炎症が起こることがあります。
  • 唇では一時的な強い腫れ、硬さ、左右差、口唇ヘルペス、口を動かしたときの違和感が出ることがあります。
  • 血管内への誤注入または血管・神経の圧迫により、血管閉塞、皮膚・口唇の壊死、視力障害・失明、脳卒中が起こる可能性があります。
  • 通常と異なる強い痛み、皮膚の青白化・紫色または網目状の変化、視覚異常がある場合は、直ちに注入を止めて緊急対応します。
  • 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは、成人の中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリュームを増大する目的で国内承認されています(承認番号22800BZX00338000)。眼窩周囲へは注入しません。鼻唇溝を皮内のしわとして修正する使用は同製剤の承認目的とは異なるため、使用部位・目的に応じて適応外使用を説明します。ジュビダームビスタ ボルベラXCは、顔面のしわ・へこみ修正と口唇増大で国内承認されています(承認番号23000BZX00331000)が、眼瞼は承認範囲に含まれません。承認範囲外で使用する場合、健康被害救済制度等の対象外となる場合があります。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Geronemus RG, Bank DE, Hardas B, Shamban A, Weichman BM, Murphy DK. Safety and Effectiveness of VYC-15L, a Hyaluronic Acid Filler for Lip and Perioral Enhancement: One-Year Results From a Randomized, Controlled Study. Dermatol Surg. 2017;43(3):396-404. doi:10.1097/DSS.0000000000001035. PMID:28157728.

    Safety and Effectiveness of VYC-15L, a Hyaluronic Acid Filler for Lip and Perioral Enhancement: One-Year Results From a Randomized, Controlled Study

    研究デザイン: VYC-15LとNASHAを比較し、任意のタッチアップ後1年まで追跡した前向き多施設無作為化比較試験 / 対象: 口唇のボリューム増大を希望する成人225人。口唇充足度が最小、軽度または中等度の人を対象とした。 / 結果: 3か月時の口唇充足度奏効率はVYC-15L 80.3%、対照70.8%で、VYC-15Lは1年まで60%を超えた。口周囲の線は3か月時65.4%、1年時66.2%に改善がみられた。 / 限界: 特定製剤と対照製剤の比較で、症例のボルベラXC 1cc、先行するボリューマXC 4cc、口角の変化を個別に検証していない。PubMed抄録で確認し、原著全文は取得していない。

  2. Hufschmidt K, Bronsard N, Foissac R, et al. The infraorbital artery: Clinical relevance in esthetic medicine and identification of danger zones of the midface. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2019;72(1):131-136. doi:10.1016/j.bjps.2018.09.010. PMID:30327185.

    The infraorbital artery: Clinical relevance in esthetic medicine and identification of danger zones of the midface

    研究デザイン: 新鮮献体で眼窩下動脈を解剖し、着色したヒアルロン酸の模擬注入で危険範囲を検討した解剖研究 / 対象: 新鮮献体18体の中顔面。生体患者への注入成績を追跡した研究ではない。 / 結果: 眼窩下動脈の枝は一般的な中顔面注入範囲を走り、滑車上動脈、鼻背動脈、角動脈へつながる吻合を確認した。頬中央の浅い層と眼窩下溝の骨膜上を危険範囲として示した。 / 限界: 献体解剖と模擬注入の研究で、実際の患者における閉塞率、最も安全な器具・量、ボリューマXCの治療成績を比較していない。PubMed抄録で確認し、原著全文は取得していない。

  3. Money SM, Wall WB, Davis LS, Edmondson AC. Lumen Diameter and Associated Anatomy of the Superior Labial Artery With a Clinical Application to Dermal Filler Injection. Dermatol Surg. 2020;46(5):678-684. doi:10.1097/DSS.0000000000002074. PMID:31403539.

    Lumen Diameter and Associated Anatomy of the Superior Labial Artery With a Clinical Application to Dermal Filler Injection

    研究デザイン: 上唇動脈の内径、分岐、皮膚からの深さを複数の測定点で調べた献体解剖研究 / 対象: 成人献体18体の上唇動脈。生体へのヒアルロン酸注入を追跡した研究ではない。 / 結果: 上唇動脈の内径は口角で平均0.85±0.34mm、正中で0.56±0.21mmだった。皮膚からの深さは顔面動脈との分岐で平均5.49±1.95mm、口角とCupid弓頂点の中間で4.29±1.54mmだった。 / 限界: 献体解剖で個人の血管位置、器具・注入層別の閉塞率、ボルベラXCの安全性を示す臨床試験ではない。PubMed抄録で確認し、原著全文は取得していない。

  4. アッヴィ合同会社. ジュビダームビスタ ボリューマXC 電子添文. 2023年8月(第1版). 医療機器承認番号22800BZX00338000.

    ジュビダームビスタ ボリューマXC 電子添文

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器電子添文。米国で行われた多施設共同・単盲検・無作為・未処置対照の前向き中顔面試験を収載 / 対象: 中顔面ボリューム不足がある成人。処置群のベースライン235人を24か月まで追跡し、6か月時の評価は処置群208人、未処置対照36人だった。 / 結果: MFVDSで1段階以上改善した割合は6か月時に処置群85.6%、未処置対照38.9%だった。処置群では12か月85.2%、18か月71.5%、24か月67.1%に改善が認められた。 / 限界: 米国の承認試験で、症例の総量4cc、こめかみ・目周り・鼻唇溝への部位別配分、唇への後日追加を検証していない。電子添文では眼窩周囲への注入を禁じている。

  5. アッヴィ合同会社. ジュビダームビスタ ボルベラXC 電子添文. 2023年8月(第1版). 医療機器承認番号23000BZX00331000.

    ジュビダームビスタ ボルベラXC 電子添文

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器電子添文。米国で行われた前向き多施設二重盲検無作為化比較試験を収載 / 対象: 口唇増大・口周囲しわ修正を目的に、本品168人、対照製剤56人へ注入し、最終処置後12か月まで追跡した。 / 結果: 3か月時の口唇充足度奏効率は本品80.3%、対照70.8%だった。本品の奏効率は6か月71.1%、12か月65.3%で、12か月時に81.1%が口唇満足度の向上を報告した。 / 限界: 承認試験は口唇・口周囲を対象とし、先行するボリューマXC 4cc、症例の口角変化、目周り治療を検証していない。眼瞼への使用は承認範囲に含まれない。

よくあるご質問

Q. この症例では、どの製剤を何cc使いましたか?

上中顔面へジュビダームビスタ ボリューマXCを合計4cc、その後に唇へジュビダームビスタ ボルベラXCを1cc追加し、総量は5ccです。

Q. 4ccは、こめかみ・目周り・ほうれい線へ同じ量ずつ入れますか?

同じ量ずつではありません。こめかみの凹み、下眼瞼境界へ続く前頬の支持、小鼻横と鼻唇溝の影を正面・斜位で見て、4ccの中で必要な範囲へ配分します。

Q. なぜ唇の1ccを後から追加したのですか?

上中顔面のこけ感を整えると、顔全体の重心と口元の見え方が変わるためです。その変化を確認してから、上唇と下唇の比率、口角、閉じやすさに必要な量を決めます。

Q. ボリューマXCとボルベラXCの国内承認範囲を教えてください。

ボリューマXCは成人の中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリューム増大、ボルベラXCは顔面のしわ・へこみ修正と口唇増大で国内承認されています。ボリューマXCは眼窩周囲へ直接注入せず、ボルベラXCの眼瞼使用は承認範囲に含まれません。

Q. この症例と同じ5ccの料金と、すぐに連絡が必要な症状を教えてください。

ヒアルロン酸5本の製剤費は385,000円、唇施術料11,000円を合わせて396,000円です。カテラン針を使用する場合は11,000円が加わります。通常と異なる強い痛み、皮膚の白色化・紫色または網目状の変化、視力や見え方の異常がある場合は直ちにご連絡ください。

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