肝斑の特徴と治療の組み立て方
肝斑は、頬・額・フェイスラインへ左右対称に広がり、境界がぼんやりした褐色調として見えます。摩擦・紫外線・ホルモン変化と赤みを確認し、遮光と外用・内服を土台に、残る色素・炎症・血管成分へポテンツァ、メソナJ、ADVATxを役割別に組み合わせます。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2025年10月24日
- 実質更新日
- 2026年8月9日







Contents
目次
面状の肝斑と、点在するシミを写真で分けます
肝斑治療のBefore/Afterです。Beforeでは、両頬へ左右に広がる淡褐色から灰褐色のもやと、その上に点在する輪郭の濃いシミ、面状の赤みが同じ範囲に見えます。
Afterでは、頬全体を覆う面状の色調が薄くなり、点在する濃いシミとの境界が見分けやすくなっています。診察では、このように面で広がる肝斑と、点として残る日光黒子などを写真上で区別し、それぞれの経過を追います。
左右対称の分布、ぼやけた境界、赤みを一続きで確認します
画像2では、頬骨部から頬へ広がる白い点線の範囲を肝斑、黒い点線で囲んだ小さな斑点をシミとして示しています。肝斑は左右の頬、額、フェイスラインへ対称性に広がりやすく、老人性色素斑のような明瞭な輪郭より、もやのような境界を示すのが特徴です。
問診では、毎日の化粧、洗顔、マスクによる摩擦、紫外線、妊娠などの女性ホルモン変化、加齢に伴う変化を確認します。写真では褐色の濃さだけでなく、同じ範囲の面状の赤みと線状の毛細血管も記録し、慢性的な炎症と色素沈着が続く背景を治療計画へ反映します。
青灰色の点状色素が目立つ場合は後天性真皮メラノサイトーシス、輪郭の明瞭な斑点は日光黒子、皮膚炎の後に濃くなった部位は炎症後色素沈着も候補に加えます。分布と色調を分けてから、肝斑として治療する範囲を決めます。
トラネキサム酸とシナール内服で炎症・色素の経路へ働きかけます
画像3では、トラネキサム酸250mg錠とシナール配合錠を示し、1日2回以上という内服例を紹介しています。トラネキサム酸はプラスミンの働きを抑え、炎症からメラノサイトが刺激される経路を抑える目的で用います。シナール配合錠はアスコルビン酸とパントテン酸カルシウムを含み、メラニン生成を抑える内服として組み合わせます。
左右対称の肝斑が遮光と外用だけでは残る場合に、内服を治療の土台へ追加します。既往歴、血栓症リスク、腎機能、妊娠・授乳、併用薬を確認し、錠剤の種類、1回量、回数、期間を決めます。
色素が残る肝斑へトラネキサム酸を追加する理由として、経口・外用・注入でMASIとメラニン指数は低下した一方、紅斑指数には有意差がなかったとの報告がありました(参考文献1)。
ポテンツァS-16は色素を砕く照射とは異なる経路を選びます
画像4のポテンツァ肝斑用S-16チップは、微細な針を皮内へ刺入し、針先からRF(高周波)を届ける構成です。表皮のメラニンを標的にするレーザーとは異なる経路で、基底層周辺から真皮側を含む肝斑の治療設計に用います。
遮光、摩擦対策、外用・内服を続けても面状の色調が残る場合や、過去の色素レーザーで刺激が強かった場合に、S-16によるRFを次の選択肢にします。治療後は色の濃さだけでなく、頬の赤みと再び濃くなる時期も同じ写真で追います。
ポテンツァS-16後に色調の維持まで追う理由として、肝斑の内服・外用2か月後にmMASIが64%低下し、その後6か月RFを続けた側では明るさの改善が保たれ、無治療側は治療前の値へ戻ったとの報告がありました(参考文献3)。
メソナJは導入する成分を選び、肝斑治療を補助します
画像5のメソナJは、電気パルスを利用して細胞間に一時的な通り道をつくり、針を使わずに選んだ成分の経皮導入を補う機器です。画像に示された単純塗布の約300倍、イオン導入の約70倍という数値は、機器の導入性能を表しています。
導入成分として、ヒアルロン酸、トラネキサム酸、ビタミンC、コエンザイム、グルタチオンなど計10種類が紹介されています。乾燥や刺激感を抑えながら外用成分を補いたい段階で用い、使用する成分は肝斑の色調、赤み、保湿状態に合わせて選びます。
赤み・毛細血管が重なる肝斑にはADVATxを役割分担します
画像6のADVATxは589nmと1319nmの2波長を使います。589nmはヘモグロビンに反応し、肝斑部に重なる面状の赤みや微小血管を対象にします。褐色の肝斑に赤みが重なる場合は、色素だけを追わず、血管と炎症の変化を別の指標として記録します。
1319nmは真皮内の水分を標的に熱を届け、肌質改善を目指す波長として組み合わせます。画像で示された皮脂の変化も含め、赤み、毛細血管、乾燥、皮脂を照射後に見直し、589nmと1319nmの役割を分けます。
肝斑部の赤みと血管を治療前後の指標にする理由として、病変部は周囲の正常皮膚より赤みが強く、真皮血管の数と大きさが増え、血管数と色素の強さにも関連があったとの報告がありました(参考文献4)。
外用は成分を重ねすぎず、役割と刺激の強さで選びます
画像7では、トラネキサム酸系にトラネキサム酸ローションとコラージュリペアブライトエッセンスDR、ビタミンC系にゼオスキンのシーセラム、リビジョンのC+コレクティングコンプレックス、ビタミンCローションを挙げています。ハイドロキノン配合製品はミラミン、ハイドロキノンを使用しない選択肢はブライタライブです。
ビタミンA系は、高濃度レチノールとしてスキンブライセラム、刺激を抑えて続ける製品群としてデイリーPD、RC・RNクリーム、D·E·Jナイトフェイスクリームを紹介しています。コラージュリペアバクチセラムDRはビタミンAそのものではなく、バクチオールを用いる選択肢です。
朝はトラネキサム酸やビタミンC系を保湿・遮光へつなぎ、夜に必要な方だけレチノールまたはハイドロキノンを加えます。まず摩擦と紫外線を減らし、外用・内服を整えた後、残る所見が色素主体ならポテンツァ、導入成分を補うならメソナJ、赤み・毛細血管主体ならADVATxという順に、主所見へ一つずつ追加します。
外用・内服を土台に残る色素・赤み・乾燥へ治療を追加する根拠として、併用療法は87%で単独療法より高い効果を示したとの報告がありました(参考文献2)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 初診では正面・左右斜位写真をそろえ、頬・額・フェイスラインへ左右対称に広がる褐色のもや、点在する濃いシミ、面状の赤みと線状血管を別々に記録します。
- 最初に洗顔・化粧・マスクの摩擦と日中の遮光を整え、肝斑の色調と赤みから外用を選びます。必要な方には既往歴と併用薬を確認してトラネキサム酸・シナール内服を加えます。
- 再診では同じ写真で面状の色調、赤み、刺激反応を比べます。色素が残る段階にはポテンツァS-16、成分導入を補う段階にはメソナJ、毛細血管と赤みが残る段階にはADVATxを一つずつ配置します。
- 色調が薄くなった後も遮光と刺激の少ない外用を続け、再燃した場所が色素・赤み・外用刺激のどれに一致するかを確認して次の治療を決めます。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 遮光・摩擦回避+外用 | 肝斑の基礎治療と再燃予防 | 悪性を疑う病変、強い刺激性皮膚炎 | 毎日のケアとして8〜24週を目安に評価 | 乾燥・赤み・皮むけ・刺激感 | 製品・処方内容により異なる | 化粧品と医薬品を分け、医薬品は承認適応・禁忌を確認 |
| トラネキサム酸等の内服 | 禁忌がなく、外用と合わせて色調を整えたい | 血栓症リスク、妊娠・授乳など薬剤上の注意がある | 数週〜数か月。安全性を確認しながら再診 | 薬剤固有の副作用。血栓症等の禁忌確認が必要 | 処方内容により異なる | 薬剤ごとの承認適応・用法・禁忌を確認 |
| 導入・レーザー・ADVATx | 赤みや他の色素斑が混在し、基礎治療後に追加する | 活動性が高く刺激で悪化しやすい肝斑 | 複数回で反応を評価 | 赤み・熱感・腫れ・色調変化 | ADVATx全顔1回30,000円/5回139,000円 | 使用機器・目的の国内承認範囲と未承認表示を確認 |
費用の目安
- アドバテックス 589nm + 1319nm 全顔(スポット照射込み) 1回 ¥30,000 / 5回 ¥139,000 / 顎下(オプション)1回 ¥6,000
- ポテンツァ 肝斑治療コース 全顔 5回 ¥165,000
- メソナJ 全顔+首 1回 ¥20,000 / 5回 ¥90,000
肝斑では、どの治療を単独で行うか、併用するかで費用が変わります。実際の提案内容は診察時にご確認ください。
リスク・副作用・注意点
- アドバテックスでは、一時的な赤み、ほてり、乾燥がみられることがあります。
- ポテンツァでは、赤み、腫れ、点状出血、ひりつきが数日続くことがあります。
- メソナJなどの導入治療でも、一時的な赤みや刺激感が出ることがあり、導入成分によって注意点が異なります。
- 国内承認・適応: 国内未承認。医師の個人輸入等による使用。入手経路・海外承認・救済制度の対象外となる可能性を表示
肝斑では刺激の入れ方が結果に影響しやすいため、施術前後のスキンケアや施術間隔は診察時の説明もご確認ください。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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Tranexamic acid for adults with melasma: a systematic review and meta-analysis
研究デザイン: 21研究を統合したシステマティックレビュー・メタ解析 / 対象: 16件の無作為化比較試験、3件のコホート研究、2件の症例対照研究、計1,563人。各研究の80〜100%が女性 / 結果: 経口・外用・注入のトラネキサム酸でMASIとメラニン指数は低下した一方、紅斑指数には有意差がなかったとの報告がありました。 / 限界: 投与経路、用量、治療期間、併用治療が異なり、研究品質が十分でない試験も含む。経口トラネキサム酸の長期安全性や、画像にある250mg・1日2回という処方を一律に支持する解析ではない。
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Comparison of the efficacy of melasma treatments: a network meta-analysis of randomized controlled trials
研究デザイン: 59件の無作為化比較試験を統合したネットワークメタ解析 / 対象: 14治療を比較した59件の無作為化比較試験、計2,812人。平均年齢39.25歳、男性7.1%。治療期間は多くの研究で5〜30週 / 結果: 併用療法を扱った31研究のうち27研究(87%)で単独療法より高い効果が示されたとの報告がありました。 / 限界: 各治療の直接比較は限られ、対象、機器条件、外用・内服の組み合わせ、追跡期間が異なる。ポテンツァS-16、メソナJ、ADVATxをこの順に組み合わせる効果を直接検証した解析ではない。
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医療機器の承認審査に関する情報
研究デザイン: ランダム化左右顔比較によるマイクロニードルRF維持研究 / 対象: 肝斑15人を登録し11人が8か月の試験を完遂。全例が最初の2か月に経口トラネキサム酸と三剤配合外用を受け、その後片側へ月1回のRFを6か月継続 / 結果: 最初の2か月でmMASIが64%低下し、RF継続側では明るさの改善が6か月保たれた一方、無治療側は従来治療終了後に治療前の値へ戻ったとの報告がありました。 / 限界: 完遂11人の小規模研究で、全例に先行する内服・外用治療がある。使用したRF条件とポテンツァS-16は同一ではなく、S-16固有の効果や他の機器との比較を示さない。
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医療広告ガイドライン
研究デザイン: 病変部と周囲正常皮膚を比較した色彩計測・免疫組織化学研究 / 対象: 顔面肝斑のある韓国人女性50人。病変部と周囲正常皮膚の赤み、真皮血管、VEGF発現を比較 / 結果: 病変部は周囲正常皮膚より赤みが強く、真皮血管の数と大きさが増加し、血管数と色素の強さにも関連があったとの報告がありました。 / 限界: 観察研究で治療介入はなく、血管増加が肝斑の原因か結果かは確定できない。ADVATx 589nm・1319nmの有効性、照射条件、皮脂への効果を評価した研究ではない。
よくあるご質問
Q. 肝斑と普通のシミはどう見分けますか?
肝斑は両頬・額・フェイスラインへ左右対称に広がる、境界のぼんやりした面状の色調が特徴です。日光黒子は輪郭の分かる斑点として見えることが多く、同じ頬に両方が重なる場合は写真上で治療範囲を分けます。
Q. トラネキサム酸250mgを1日2回飲めばよいですか?
画像は250mg錠と1日2回以上という内服例を示していますが、肝斑への内服は国内承認適応外です。トロンビン使用中は併用できず、血栓症の既往・リスク、腎機能、妊娠・授乳、併用薬を確認して処方量と期間を決めます。自己判断で開始・増量はしません。
Q. ポテンツァ、メソナJ、ADVATxはどう使い分けますか?
外用・内服を土台に、面状の色調と真皮の状態へRFを用いる段階はポテンツァS-16、選んだ成分の経皮導入を補う段階はメソナJ、面状の赤み・毛細血管が重なる段階はADVATxを選びます。色素、赤み、乾燥のどれが残るかで順序を決めます。
Q. 肝斑の外用製品は全部一緒に使いますか?
すべてを同時には使いません。朝はトラネキサム酸・ビタミンC系から必要なものを選び、夜は赤みや乾燥を見ながらレチノールまたはハイドロキノンを加えます。刺激が出た場合はレチノール・ハイドロキノンを先に減らし、保湿と遮光を続けます。
Q. 掲載された機器治療の費用と承認状況を教えてください。
掲載料金は、ADVATx全顔1回30,000円・5回139,000円、ポテンツァ肝斑治療全顔5回165,000円、メソナJ全顔+首1回20,000円・5回90,000円です。これらは自由診療で、国内未承認機器を含みます。入手経路、主な副作用、国内の医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性を説明してから行います。
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