医師解説皮膚腫瘍・ほくろCO2レーザー

皮膚腫瘍の見分け方と手術の考え方

当院では年間約300例の皮膚腫瘍を切除し、紹介例の7〜8割が手術・検査目的です。本症例は鼻唇溝近傍の基底細胞癌を全切除し、鼻唇溝皮弁で再建しました。術前から6ヶ月後までの経過をもとに、診断、切除範囲、再建、瘢痕管理の順序を解説します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2024年11月20日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. 基底細胞癌を切除し、鼻唇溝皮弁で再建した6ヶ月の経過
  2. 色・境界・表面・硬さ・増大・出血を見て、ダーモスコピーと病理へ進みます
  3. 切除幅は3mmに固定せず、境界・腫瘍型・部位・病理断端から決めます
  4. 欠損を鼻唇溝皮弁で閉じ、1・3・6ヶ月で傷あとを見ます
  5. CO2レーザー・切除・経過観察は、診断と病理標本の必要性で分けます
  6. 診療で確認するポイント
  7. 治療選択の比較
  8. 費用の目安
  9. リスク・副作用・注意点
  10. 関連記事
  11. 関連施術・関連症状のご案内
  12. 執筆・監修
  13. 参考にした一次情報・ガイドライン
  14. よくあるご質問

基底細胞癌を切除し、鼻唇溝皮弁で再建した6ヶ月の経過

当院では年間約300例の皮膚腫瘍切除を行い、皮膚科からの紹介の7〜8割が手術または検査目的です。そのうち悪性腫瘍は多い年で数例あり、顔のホクロに似た小さな病変も診断を確認してから治療方法を決めています。

この症例は鼻唇溝近傍の基底細胞癌です。全切除後の欠損を鼻唇溝皮弁で再建し、術前、切除と皮弁のマーキング、術直後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後の順に経過を記録しました。創部が閉じた後は6ヶ月間テーピングを続けています。

色・境界・表面・硬さ・増大・出血を見て、ダーモスコピーと病理へ進みます

診察では、色が均一か、境界が滑らかか、表面に鱗屑・痂皮・潰瘍があるかを見ます。触診では硬さ、皮膚内・皮下での深さ、周囲に対する動きを確かめ、いつからあるか、増大したか、繰り返し出血するかを時系列で確認します。

次にダーモスコピーで色素構造と血管を拡大して観察します。基底細胞癌が疑われるときは、部分生検または全切除で組織を残し、病理診断で腫瘍型と深さを確定してから切除範囲と再建法を決めます。

色・境界・表面・硬さを記録したうえで、ダーモスコピーと組織検査を組み合わせます。臨床診断と病理診断の一致率は79.0%で、病理で悪性だった病変のうち16/22が診察時に良性と判断されていたとの報告がありました(参考文献1)。

ホクロに似た病変では、肉眼所見にダーモスコピーを加えて色素構造と血管を見ます。基底細胞癌に対するダーモスコピーの感度は92.2%、特異度は96.0%で、73病変は偽陰性だったとの報告がありました(参考文献2)。

切除幅は3mmに固定せず、境界・腫瘍型・部位・病理断端から決めます

基底細胞癌では完全切除と病理断端の確認を優先します。境界が明瞭な色素性病変では3mmが候補になることがありますが、色が淡い病変、境界が不明瞭な病変、浸潤性・硬化型、再発病変、鼻唇溝・眼周囲などの顔面高リスク部位では、腫瘍型と部位に合わせて切除幅と断端確認法を選びます。

切除標本は病理検査へ提出し、左右と深部の断端を確認します。断端に腫瘍が及ぶ場合は、病理型、部位、残存範囲をもとに追加切除と再建の時期を決め、断端が確保できた後も再発所見を経過観察します。

3mmを候補にできるかは、色素、境界、腫瘍型、部位を確認して決めます。3mm切除後の再発は色素性病変1/105、非色素性病変6/38で、病理断端に腫瘍が及んだ群では6/23だったとの報告がありました(参考文献3)。

欠損を鼻唇溝皮弁で閉じ、1・3・6ヶ月で傷あとを見ます

切除後の欠損が小さく、周囲を寄せても鼻翼や口唇を引かない場合は単純縫縮を選びます。この症例では顔面の形を保ちながら欠損を覆うため、鼻唇溝に沿って皮膚と皮下組織を移動する局所皮弁を設計しました。

術直後は皮弁の色と血流、出血、創離開、感染を確認します。抜糸後は1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月と赤み、硬さ、盛り上がり、鼻翼・口唇の位置を見て、創が閉じた後のテーピングで傷にかかる張力を抑えます。

創が閉じた後にテープで張力を抑え、赤み・硬さ・盛り上がりを経過で見ます。12週間の紙テープ使用で、12週時の肥厚性瘢痕はテープ群0%、非使用群41%との報告がありました(参考文献4)。

CO2レーザー・切除・経過観察は、診断と病理標本の必要性で分けます

色・境界・表面が安定し、ダーモスコピーでも良性所見がそろい、病理標本を必要としない表在性病変はCO2レーザーの対象になります。組織診断が必要な病変は部分生検または全切除を選び、悪性が疑われる病変は美容レーザーで蒸散せず、病理と断端を確認できる手術へ進めます。

良性と診断でき、症状がなく変化もない病変は、同じ照明と大きさで写真を残して経過観察できます。短期間での増大、自然出血、治らない潰瘍・痂皮、色や境界の変化、硬く固定してくる変化があれば、予約日を待たず診察します。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 初診では色・境界・表面を観察し、硬さ、深さ、周囲との可動性を触診して、増大・出血・潰瘍の経過を時系列で記録します。
  • ダーモスコピーで色素構造と血管を確認し、悪性を疑う所見があれば、病理標本を残せる部分生検または全切除を選びます。
  • 基底細胞癌では腫瘍型、境界、顔面の部位から切除範囲を決め、病理断端を確認したうえで単純縫縮・局所皮弁・植皮を選択します。
  • 術後は皮弁の血流と創治癒を確認し、1・3・6ヶ月の同じ条件の写真で再発所見、瘢痕の赤み・硬さ、鼻翼と口唇の位置を追います。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
ダーモスコピー・部分生検 色・境界・血管所見を拡大して見たい病変、全切除前に腫瘍型を確定したい顔面病変 出血が止まらない、感染があるなど先に処置を要する状態 診察・検査後、病理結果をもとに治療を計画 ダーモスコピーはなし。生検は出血、痛み、感染、傷あと、標本誤差 保険診療では診断、病理検査、自己負担割合により異なる 診断・病理検査の手技。病理標本を残す
切除・病理検査・形成外科的再建 悪性を疑う、完全切除と断端確認が必要、深さや再建まで計画する病変 局所麻酔手術を安全に行えない全身状態、感染を先に治療する必要がある状態 通常は切除1回。病理断端により追加切除、再建後は経過観察 出血、腫れ、痛み、感染、創離開、傷あと、変形、皮弁血流障害、追加切除 保険適用時は診断名、大きさ、部位、術式、自己負担割合により異なる 手術・病理検査の標準診療。本症例の治療
CO2レーザー 良性所見がそろった表在性病変で、病理標本を必要としない美容目的の除去 悪性を否定できない、深い、急速に増大する、出血・潰瘍がある、再発性の病変 通常1回。深さや残存で追加治療あり 出血、びらん、痂皮、赤み、色素変化、陥凹、傷あと、残存・再発 自費。ほくろ・イボ5mmまで1個5,500円 本症例の基底細胞癌には使用していない
写真記録による経過観察 良性と診断でき、症状がなく、色・境界・大きさが安定している病変 短期間の増大、自然出血、治らない潰瘍・痂皮、色・境界・硬さの変化がある病変 同じ条件の写真と診察で定期的に再評価 なし 診療区分に応じた診察料 医薬品・医療機器を使用しない

費用の目安

  • 皮膚腫瘍の診察・病理検査・切除・再建:保険適用時は診断名、大きさ、部位、術式、自己負担割合により異なる
  • 自費のCO2レーザー ほくろ・イボ5mmまで1個:5,500円(税込)
  • 自費のCO2レーザー 5mm〜1cmごとの追加1個:1,100円(税込)

本症例の基底細胞癌の切除・病理・鼻唇溝皮弁は病気の治療として保険診療の対象となる場合があります。CO2レーザー料金は、良性診断後に美容目的で除去する場合の自費料金です。

リスク・副作用・注意点

  • 生検・切除では出血、腫れ、痛み、内出血、感染、創離開、傷あと、色素変化、感覚変化が起こることがあります。
  • 局所皮弁では皮弁の血流障害、部分壊死、静脈うっ血、鼻翼・口唇の位置変化、段差や厚み、瘢痕の赤み・硬さが起こることがあります。
  • 病理断端に腫瘍が及ぶ場合は追加切除・再建が必要です。完全切除後も局所再発や別部位の皮膚腫瘍が生じる可能性があります。
  • CO2レーザーでは病理標本を残せず、残存・再発、陥凹、色素沈着・色素脱失、赤み、傷あとが起こることがあります。
  • 国内承認・適応: 本症例は基底細胞癌の切除、病理検査、鼻唇溝皮弁による形成外科的再建で、未承認医薬品・医療機器の使用を前提としません。CO2レーザーは良性診断後の自費選択肢で、本症例には使用していません。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Tozawa A, Mori H, Ao M, et al. Factors for Improving Diagnosis of Skin Tumors. J Plast Reconstr Surg. 2024;3(1):29-33. doi:10.53045/jprs.2021-0037. PMID:40104416; PMCID:PMC11913009.

    Factors for Improving Diagnosis of Skin Tumors

    研究デザイン: 皮膚腫瘍の臨床診断と病理診断の一致を、単施設の後ろ向き解析と4施設の前向き適用で検討した研究 / 対象: 後ろ向き解析は切除された657病変、前向き解析は別の310人。前向き解析では4施設12人の形成外科医が診断テンプレートを使用した。 / 結果: 後ろ向き解析の臨床・病理診断一致率は79.0%だった。前向き解析では、病理で悪性だった22病変中16病変が臨床上は良性と判断されていた。 / 限界: 切除された病変が中心で選択バイアスがあり、病理診断は各施設で行われた。診断テンプレートだけでは一致率を改善できず、本症例の基底細胞癌診断や切除範囲を直接検証していない。

  2. Yuki A, Takatsuka S, Abe R, Takenouchi T. Diagnostic accuracy of dermoscopy for 934 basal cell carcinomas: A single-center retrospective study. J Dermatol. 2023;50(1):64-71. doi:10.1111/1346-8138.16607. PMID:36229917.

    Diagnostic accuracy of dermoscopy for 934 basal cell carcinomas: A single-center retrospective study

    研究デザイン: 日本の単施設で、連続して診断された皮膚病変のダーモスコピー診断精度を検討した後ろ向き研究 / 対象: 1998〜2018年の皮膚病変5,093件。このうち病理で基底細胞癌と診断された934件を含む。 / 結果: 基底細胞癌に対するダーモスコピーの感度は92.2%、特異度96.0%だった。偽陰性は73件で、誤診名は脂漏性角化症18件、色素性母斑15件が多かった。 / 限界: 単施設の後ろ向き研究で、診断者の経験、部位、色素量で感度が異なった。ダーモスコピーだけで病理診断や切除断端を代替できない。PubMed抄録で確認し、原著全文は取得していない。

  3. Lin SH, Cheng YW, Yang YC, Ho JC, Lee CH. Treatment of Pigmented Basal Cell Carcinoma with 3 mm Surgical Margin in Asians. Biomed Res Int. 2016;2016:7682917. doi:10.1155/2016/7682917. PMID:27652267; PMCID:PMC5019928.

    Treatment of Pigmented Basal Cell Carcinoma with 3 mm Surgical Margin in Asians

    研究デザイン: 3mmの標準切除を受けた基底細胞癌の再発を診療録から検討した単施設後ろ向きコホート研究 / 対象: 台湾の病理確定基底細胞癌143人。色素性105人、非色素性38人で、平均追跡期間はそれぞれ5.4年、4.7年。硬化型は除外された。 / 結果: 再発は色素性1/105(1.0%)、非色素性6/38(15.8%)だった。完全切除群0/77、病理断端1mm以内群1/43、断端陽性群6/23に再発した。 / 限界: 台湾の単施設後ろ向き研究で、硬化型を除外し、色素性で境界明瞭な病変が多かった。顔面の高リスク部位、再発例、浸潤型を含む全基底細胞癌へ3mmを一律に適用できない。

  4. Atkinson JA, McKenna KT, Barnett AG, McGrath DJ, Rudd M. A randomized, controlled trial to determine the efficacy of paper tape in preventing hypertrophic scar formation in surgical incisions that traverse Langer's skin tension lines. Plast Reconstr Surg. 2005;116(6):1648-1656. doi:10.1097/01.prs.0000187147.73963.a5. PMID:16267427.

    A randomized, controlled trial to determine the efficacy of paper tape in preventing hypertrophic scar formation in surgical incisions that traverse Langer's skin tension lines

    研究デザイン: 紙テープ12週間と術後介入なしを比較し、6週・12週・6ヶ月で瘢痕を評価した無作為化比較試験 / 対象: 帝王切開後の女性70人を無作為化し、39人が6ヶ月の評価を完了した。顔面手術や局所皮弁の患者ではない。 / 結果: 12週時の肥厚性瘢痕は非使用群41%、紙テープ群0%だった。紙テープ群4人に局所の赤い発疹が生じ、軽度・一過性だった。 / 限界: 帝王切開の腹部瘢痕を対象とし、顔面の鼻唇溝皮弁、6ヶ月の継続使用、基底細胞癌術後の再発や整容結果を検証していない。39人だけが最終評価を完了した。

よくあるご質問

Q. ホクロのように見える皮膚腫瘍は、CO2レーザーで取れますか?

色・境界・表面、硬さ、増大や出血の経過を確認し、ダーモスコピーで良性所見がそろい、病理標本を必要としない表在性病変はCO2レーザーの対象になります。悪性が疑われる病変は蒸散せず、病理診断と断端確認ができる生検・切除を選びます。

Q. 部分生検と全切除は、どのように選びますか?

小さく、全切除しても閉鎖計画を立てやすい病変は全切除で診断と治療を同時に行います。顔面で大きい病変、境界や腫瘍型を先に確認したい病変は、代表部位の部分生検で病理診断を得てから切除範囲と再建法を決めます。

Q. 基底細胞癌は辺縁3mmで切除すれば十分ですか?

境界が明瞭な色素性・低リスク病変では3mmが候補になることがあります。色が淡い、境界が不明瞭、浸潤性、再発、鼻唇溝や眼周囲など高リスク部位では、腫瘍型・部位・病理断端に合わせて切除幅と断端確認法を変えます。

Q. 皮膚腫瘍の診察・病理・手術は保険診療ですか?

病気として診断・治療する皮膚腫瘍の診察、病理検査、切除・再建は保険診療になる場合があり、自己負担額は診断名、大きさ、部位、術式、自己負担割合で変わります。良性病変を美容目的でCO2レーザー除去する場合は自費診療です。

Q. 早めの受診が必要な皮膚腫瘍の変化を教えてください。

短期間で大きくなる、自然に出血する、潰瘍や痂皮が治らない、色や境界が変わる、硬く固定してくる病変は早めに受診してください。手術後の持続する出血、急に強くなる痛み、皮弁の青白化・暗紫色化、発熱や膿も当日中の連絡が必要です。

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