シミと肝斑の違いと治療の考え方
頬の色素は、境界のはっきりしたシミ(日光黒子・老人性色素斑)と、頬骨部や口横へ面状に広がる肝斑が同じ範囲に重なることがあります。この症例では、ルビースポット1回、ルビーレーザートーニング4回の後に肝斑が目立ち、ポテンツァ肝斑7回とZOskinを組み合わせました。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2023年12月9日
- 実質更新日
- 2026年8月9日


Contents
目次
濃いシミを薄くすると、同じ頬の肝斑が見えてきました
治療前は、こめかみ側に大きく濃いシミがあり、頬全体にも細かなシミが点在していました。境界のはっきりした病変へルビースポットを1回、顔全体へルビーレーザートーニングを4回行うと、濃いシミと細かなシミは全体に薄くなりました。
一方、トーニング後の写真では、青い矢印で示した頬の面状の色調が目立つようになりました。点在するシミが薄くなった後に残る分布を経過写真で見直し、同じ頬に重なっていた肝斑として次の治療を組み立てました。
シミへの照射で強い反応だけを目標にしない理由として、日光黒子の除去率に差はない一方、Qスイッチルビー後の炎症後色素沈着は強い照射で33.33%、穏やかな照射で7.47%だったとの報告がありました(参考文献2)。
目尻側のシミと、頬・口横の肝斑は同じ範囲にありました
正面写真では、トーニング後に赤い矢印で示した目尻側のシミがやや薄くなり、その一方で青い矢印の頬と口横の肝斑が目立ちました。点として見える日光黒子と、面として広がる肝斑が同じエリアに共存していた経過です。
肝斑が目立った後は、ポテンツァ肝斑治療を7回行い、ZOskinの高濃度ビタミンAとハイドロキノンを併用しました。治療前、トーニング後、ポテンツァ肝斑治療後を同じ向きで比べると、増悪して見えた頬・口横の色調まで薄くなっています。
境界、左右の分布、誘因、治療後の変化から見分けます
シミ(日光黒子・老人性色素斑)は、日光に当たりやすい部位に輪郭の分かる茶色い斑点として現れます。肝斑は頬骨部、頬、口横などへ左右に面状の色調として広がることが多く、写真では点状の病変と面状の色調を別々に記録します。
診察では、妊娠・ホルモン変化、紫外線や可視光、頬をこする習慣、熱や刺激を受けた後の変化、過去のレーザーで濃くなった部位を時系列で確認します。当院へ相談に来られた方のうち、実際に肝斑と判断した方は院内経験では多くても1割程度でした。名称だけで治療を引き継がず、分布と経過を見直す理由です。
左右対称に見えない色調や、輪郭が明瞭な斑点、青灰色の点状色素、炎症後に残った色素は、日光黒子、後天性真皮メラノサイトーシス、炎症後色素沈着なども候補に入れます。まず病変ごとの位置を分けてから、どこをシミとして治療し、どこを肝斑として追跡するかを決めます。
シミを薄くし、肝斑が浮き出た段階で治療を切り替えます
この症例では、初診時に明らかな肝斑が目立たなかったため、まずルビースポットとトーニングで点在するシミを薄くしました。毎回同じ条件の写真で、目尻側のシミ、頬の面状色素、口横の色調を別々に比べ、頬・口横の肝斑が目立った時点でシミ中心の照射から肝斑治療へ切り替えました。
肝斑の段階では、遮光と摩擦を避けるケアを続け、ZOskinの高濃度ビタミンA・ハイドロキノンとポテンツァ肝斑治療7回を組み合わせました。レーザー後の赤み、乾燥、かさぶた、炎症後色素沈着を確認しながら、点在するシミと面状の肝斑で治療の役割を分けます。
頬・口横の面状色素が目立った段階で外用を治療の土台に置く理由として、ハイドロキノン単剤とハイドロキノン・トレチノイン・ステロイドの三剤配合は有効性を支持する報告が多く、レーザー・光治療の結果は混在していたとの報告がありました(参考文献1)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- まず同じ照明・向きの写真で、境界のはっきりしたシミ、目尻側の細かな斑点、頬と口横へ面状に広がる色調を別々に記録します。
- 明らかな肝斑が前面に出ていない場合は、境界明瞭なシミへのルビースポットと、顔全体のトーニングを行い、シミが薄くなった後に残る分布を写真で見直します。
- 頬・口横の肝斑が目立った段階では照射の目的を切り替え、高濃度ビタミンA・ハイドロキノンの外用、遮光、ポテンツァ肝斑治療を組み合わせ、シミと肝斑を別々の指標で追跡します。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 遮光・ハイドロキノン等外用 | 肝斑・PIH・維持治療 | 刺激性皮膚炎、診断未確定病変 | 毎日、数か月ごとに見直し | 赤み、乾燥、かぶれ、色調変化 | 製品・処方により異なる | 薬剤・濃度・目的ごとに承認確認 |
| Qスイッチルビースポット | 境界明瞭な日光黒子など | 活動性肝斑面、診断未確定病変 | 通常1回後に評価 | かさぶた、PIH、色素脱失 | 1cm²まで6,600円/以後1cm²ごと4,400円 | 機器・使用目的ごとに承認確認 |
| フラクショナル/低出力機器治療 | 多発色素や安定した肝斑への補助 | 炎症・赤みが強い肝斑、低色素斑 | 複数回 | 赤み、乾燥、PIH、低色素斑 | ルビー全顔1回16,500円/5回66,000円等 | 機器・照射法・使用目的ごとに承認確認 |
費用の目安
- ルビーフラクショナル全顔 1回16,500円/初回5回66,000円/医師施術1回27,500円。
- ポテンツァ肝斑治療コース全顔5回165,000円。
- 外用・内服は製品・処方内容により異なります。
病変診断と治療順序で総額が変わります。
リスク・副作用・注意点
- 外用では刺激、乾燥、かぶれ、色調変化が起こることがあります。
- レーザーでは赤み、乾燥、かさぶた、PIH、低色素斑が起こることがあります。
- 活動性肝斑へ強い刺激を加えると悪化する場合があります。
治療名より病変診断と活動性を優先します。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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肝斑治療のエビデンスレビュー
研究デザイン: 2018年10月までの無作為化比較試験・対照臨床試験とCochraneレビューを対象にしたエビデンスレビュー / 対象: 113研究、6,897人 / 結果: ハイドロキノン単剤と三剤配合外用は最も有効で研究数が多く、ピーリング、レーザー、光治療の結果は混在していた。 / 限界: 研究デザインと評価法が不均一で、小規模研究が多く長期追跡が不足している。ポテンツァ肝斑治療7回という本症例の機器・回数を直接検証した研究ではない。
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アジア人の日光黒子に対する照射強度とPIHの比較
研究デザイン: 日光黒子を4群に無作為化した単回照射の比較試験 / 対象: Fitzpatrick皮膚型III〜Vのアジア人193例、日光黒子355病変 / 結果: 4群間の除去率に有意差はなかった。炎症後色素沈着は、Qスイッチルビーの強い照射33.33%、穏やかな照射7.47%、Qスイッチ周波数倍加Nd:YAGの強い照射23.18%、穏やかな照射8.47%だった。 / 限界: 日光黒子への単回照射を4週後に評価した研究で、肝斑、顔全体のトーニング、複数回治療の効果を直接比較していない。
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医薬品・医療機器情報検索
外用・内服の承認適応と添付文書確認先。
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Clinical features of common hyperpigmentation disorders
色素の深さと臨床的鑑別。
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Biological processes in solar lentigo
日光黒子の病態レビュー。
よくあるご質問
Q. シミと肝斑は見た目でどう違いますか?
シミ(日光黒子・老人性色素斑)は輪郭の分かる斑点、肝斑は頬骨部・頬・口横へ面状に広がる色調として見えることが多いです。分布と治療後の変化も合わせて判断します。
Q. シミと肝斑が同じ頬に重なることはありますか?
あります。この症例では、目尻側のシミと頬・口横の肝斑が同じ範囲にあり、シミが薄くなった後に肝斑の分布が目立ちました。
Q. トーニング後に肝斑が目立ったのはなぜですか?
点在するシミが薄くなり、同じ場所に重なっていた面状の肝斑との色の差が見えやすくなったためです。経過写真で部位ごとの変化を比べます。
Q. この症例ではどの治療を行いましたか?
ルビースポット1回、ルビーレーザートーニング4回、ポテンツァ肝斑治療7回を行い、ZOskinの高濃度ビタミンA・ハイドロキノンを併用しました。
Q. 他院のシミ治療で濃くなった場合は何を確認しますか?
濃くなった位置と時期、照射した病変、レーザー後の赤みやかさぶた、摩擦・紫外線、頬や口横の面状色素を確認し、肝斑と炎症後色素沈着を分けます。
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