レーザー治療の学会・医師間交流を診療へどう生かすか
レーザー治療の教科書を執筆した葛西先生の講演に参加し、柳川先生をはじめとする医師と症例・治療条件について意見交換しました。得た知識は機器名だけで採用せず、病変の診断、波長と設定、照射中の反応、治療後の経過という順に当院の診療へ反映します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2023年11月29日
- 実質更新日
- 2026年8月9日

Contents
目次
葛西先生・柳川先生とレーザー治療について交流
写真は、講演後の会食で撮影した4人の記録です。レーザー治療の教科書を執筆した葛西先生と、学会やInstagramで継続的に発信する柳川先生に会い、ほかの医師とも意見交換しました。
交流の価値は、著名な医師と会った事実だけではなく、教科書で学んだ原理、講演で示された新しい知見、各施設の症例経験を照合できる点にあります。当院へ持ち帰るときは、誰の方法かではなく、どの病変へ、どの機器と条件で、どの結果が得られたかに分けます。
教科書の原理を、照射する標的の診断へつなげる
葛西先生の教科書で得た知識は、当院のレーザー治療の基礎になっています。診察では、赤みなら線状の拡張血管、面状の紅斑、炎症性ニキビを分け、茶色なら表皮の色素、真皮の色素、炎症後色素沈着を分けます。
診断の後に、標的へ吸収される波長、熱を加える時間、照射径、冷却を組み合わせます。レーザー名を先に決めるのではなく、ヘモグロビン、メラニン、水のどれを主な標的にするかを決めてから機器とハンドピースを選びます。
講演の設定値は、皮膚型と照射中の反応まで確認する
葛西先生による最新知見の講演と、その後に聞いた意見を診療へ移すときは、波長と出力だけを抜き出しません。対象とした病変、皮膚型、スポット径、パルス幅、冷却、照射回数・間隔、照射直後の臨床的終点を一組で確認します。
たとえばニキビ後の赤みでは、面状の紅斑と活動性ニキビを同じ写真で記録し、血管を狙う照射と真皮へ熱を加える照射の役割を分けます。最初の設定では、持続する強い赤みや水疱ではなく、予定した一過性の紅斑や温感で止め、次回来院時の回復日数から調整します。
照射条件と治療後評価を一組で記録する根拠として、ニキビ後紅斑への589/1319nmレーザーは2週から治療前より改善し、8週時点の反応率は72%、対照は69%で差はなく、平均疼痛1.52/10、重篤な有害事象なしとの報告がありました(参考文献1)。
症例経験の違いを、合併症を避ける条件へ変える
柳川先生の学会発表やInstagramの症例発信、ほかの医師との意見交換からは、同じ診断名でも皮膚型、日焼け、炎症の強さ、過去の照射歴によって反応が異なることを学べます。当院では、他施設の設定値をそのまま再現せず、写真と診療記録で条件をそろえて比較します。
特に色素を含む皮膚へ光を照射するときは、病変だけでなく周囲のメラニンも熱を受けます。日焼けの有無、皮膚色、使用する波長、フルエンス、冷却を照射前に確認し、色素沈着や水疱のリスクが高い条件では照射範囲と設定を見直します。
皮膚色とフルエンスを合併症対策へ組み込む根拠として、IPL照射後は紅斑87%、水疱20%、色素沈着60%が生じ、皮膚色が濃いこととフルエンス上昇が副反応の決定因子だったとの報告がありました(参考文献3)。
レーザー・IPL・RFマイクロニードリングの根拠を分ける
医師間で症例を比較するときは、レーザー、IPL、RFマイクロニードリングを同じ『機器治療』としてまとめません。レーザーは波長に応じた光吸収、IPLは幅のある波長帯、RFマイクロニードリングは針先から入る高周波熱が中心で、治療する深さと臨床的終点が異なります。
たとえば萎縮性ニキビ跡の凹凸ではRFマイクロニードリングの研究を参照できますが、その結果を赤みへの血管レーザーやシミへの色素レーザーの効果としては使いません。学会で聞いた症例も、機器の分類と対象疾患が一致する文献へ戻して確認します。
機器ごとに根拠を分ける例として、RFマイクロニードリング単独後に萎縮性にきび跡が改善し、主な副反応は一過性の紅斑・浮腫・痛みだったとの報告がありました(参考文献2)。
照射後の記録を次の設定へ戻す
講演や意見交換で得た仮説は、当院の治療記録へ戻して検証します。照射前と同じ照明・距離・角度の写真、機器名、波長、ハンドピース、スポット径、パルス幅、フルエンス、パス数、冷却、照射直後の反応を一緒に残します。
次回は、赤みや腫れが引いた日、痂皮・水疱・色素変化の有無、患者が実感した変化を写真と照合します。効果が不足した場合も複数の条件を一度に上げず、診断が合っていたかを再確認してから一項目ずつ変更します。
Clinical View
診療で確認するポイント
- まず赤み、色素、凹凸、瘢痕のうち写真で追う所見を決め、同じ悩みの中でもレーザーが狙う標的を一つに絞ります。
- 照射時は、機器名だけでなく波長、ハンドピース、スポット径、パルス幅、フルエンス、パス数、冷却、臨床的終点まで一続きの記録にします。
- 次回診察で標準化写真と回復日数を比較し、診断、設定、間隔のどこを変えるかを一項目ずつ決めます。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| レーザー治療の学会・医師間交流を診療へどう生かすか | 診察で主因と治療層が一致し、期待できる変化と限界を理解できる状態 | 活動性炎症・感染、強い日焼け、妊娠等で安全条件を満たさない場合 | 施術内容と反応により1回または複数回 | 施術により赤み・腫れ・内出血・痂皮など | この記事は医師の学習・診療更新に関する内容で、特定施術の費用案内ではありません | 製品・機器と使用目的により異なるため、販売名・承認番号・承認範囲をPMDAで照合 |
| 経過観察・標準診療 | 緊急性がなく、まず診断や生活調整が必要 | 進行性病変や機能障害がある場合 | 状態により継続 | 原則なし。治療内容により異なる | 診療区分・処方内容により異なる | 使用する薬剤・機器・適応ごとに確認 |
| 治療を急がず経過観察 | 診断が未確定、症状が軽い、生活要因の調整を先に評価できる状態 | 急速な悪化、出血・潰瘍、感染、視機能障害など早期評価が必要な状態 | 必要時に再診 | なし | 診察料・検査料は診療区分により異なる | 医薬品・医療機器を使用しない場合は該当なし |
費用の目安
- この記事は医師の学習・診療更新に関する内容で、特定施術の費用案内ではありません
施術費用は各治療ページをご確認ください。
リスク・副作用・注意点
- 一時的な赤み、ほてり、乾燥、軽い腫れが出ることがあります。
- 症状や照射内容により経過は異なるため、反応を見ながら設定や間隔を調整します。
- 国内承認・適応: 製品・機器と使用目的により異なるため、販売名・承認番号・承認範囲をPMDAで照合
肌状態によっては別治療を先に提案することがあります。実際の注意点は診察時の説明もご確認ください。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
-
Efficacy and Safety of a Dual-Wavelength 589/1319 nm Laser for the Treatment of Acne Erythema: A Split-Face Randomized Controlled Trial
研究デザイン: 単盲検・無作為化・顔左右比較試験。片側へ589/1319nmレーザーを2週間隔で6回、反対側へアロエベラゲルを18週間1日2回使用し、最終照射後8週まで追跡 / 対象: 両側性のニキビ後紅斑がある30人を登録し29人が完了。女性27人、男性2人、年齢中央値29歳、Fitzpatrick III型19人・IV型10人 / 結果: レーザー側は2週から治療前より有意に改善し、アロエベラ側は4週から改善したが、群間差はなかった。最終照射8週後の1段階以上改善はレーザー側72.4%、アロエベラ側69.0%。平均疼痛は1.52/10で、重篤な有害事象はなかった。 / 限界: 小規模・単一民族で長期追跡がなく、追跡中の新しいニキビを完全に統制できず、検出力は約74%。研究設定はFitzpatrick III〜IV型に合わせて調整され、当院の全患者・全病変・他機器へそのまま転用できない。研究費は所属施設から支給され、使用機器はタイの販売会社から短期貸与されたが、同社は研究設計・解析・原稿作成へ関与していないと開示されている。
-
Fractional Radiofrequency Microneedling as a Monotherapy in Acne Scar Management: A Systematic Review of Current Evidence
研究デザイン: 萎縮性ニキビ跡へのRFマイクロニードリング単独療法を扱った16研究のシステマティックレビュー / 対象: 前向き研究6件、無作為化比較試験6件、後ろ向き研究3件、比較研究1件の計481人 / 結果: 収載された全研究でRFマイクロニードリング単独治療後の萎縮性ニキビ跡改善が報告された。主な副反応は一過性の紅斑、浮腫、痛みで、追跡期間内に重篤な有害事象は報告されなかった。 / 限界: 評価尺度と治療条件が不均一でメタ解析は行われず、Fitzpatrick VI型は含まれず、追跡期間は最長6か月。RFマイクロニードリングの研究であり、血管レーザー、色素レーザー、IPLの効果を示さない。
-
Side effects from intense pulsed light: Importance of skin pigmentation, fluence level and ultraviolet radiation-A randomized controlled trial
研究デザイン: IPL照射部位をフルエンスと紫外線曝露条件へ無作為に割り付け、4週間追跡した実験的無作為化比較試験 / 対象: Fitzpatrick II〜IV型の健康成人15人。各人に対照を含む15の試験部位を設定 / 結果: IPL後に紅斑87%、紫斑27%、水疱20%、浮腫13%、痂皮13%、色素沈着60%、色素脱失20%を認めた。皮膚色が濃いこととフルエンス上昇は副反応と関連した(p≤0.002)。単回の模擬太陽紫外線曝露による上乗せは確認されなかった。 / 限界: 治療を必要とする患者ではなく、健康成人の正常皮膚へ複数条件でIPLを実験的に照射した小規模試験。副反応率は通常の臨床治療の発生率ではなく、レーザー機器や特定疾患へ直接一般化できない。原著全文へアクセスできず、PubMed抄録と書誌情報の範囲で再確認した。
-
医療広告ガイドライン
自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。
よくあるご質問
Q. 講演した医師の設定を、そのまま当院でも使いますか?
そのままは使いません。講演で示された対象病変、機器、波長、照射径、パルス幅、フルエンス、冷却、臨床的終点を確認し、当院で診察した皮膚型と炎症の状態に合わせて組み直します。
Q. 同じレーザー機器なら、どの医療機関でも同じ結果になりますか?
機器名が同じでも、診断、ハンドピース、設定、照射の重ね方、冷却、治療間隔で組織へ入る熱が変わります。当院では設定だけでなく、照射直後の反応と次回来院時の回復を記録します。
Q. 医師間の症例情報は、どのように治療へ生かしますか?
症例の診断、皮膚型、機器と設定、回数、評価時期、合併症を分けて、自院の症例記録と比較します。経験談だけで治療を変更せず、原著・添付文書・公的情報も確認します。
Q. レーザー治療後は何を確認しますか?
標準化写真に加え、赤み・腫れが戻った日、痂皮、水疱、色素沈着や色抜けの有無、目的とした所見の変化を確認します。その結果を次の出力、照射範囲、間隔に反映します。
Q. 講演で知った新しい設定や方法は、すぐ診療へ導入しますか?
症例の診断、皮膚型、機器、設定、評価時期を原著・添付文書・公的情報まで戻って確認します。当院の機器と患者条件で再現できる範囲を決め、照射直後の反応と次回来院時の回復を記録しながら段階的に取り入れます。
ご予約・ご相談はこちら
気になる症状や治療方法について、初診予約・再診予約・お問い合わせからご相談いただけます。