イソトレチノイン内服とは|難治性ニキビでの適応と注意点
イソトレチノインは、外用薬や抗菌薬で十分な改善が得られない重症・瘢痕化しやすいニキビで検討する内服薬です。20mgの服用方法、4〜6か月の治療期間、採血、妊娠回避、副作用、国内未承認薬としての扱いを順に説明します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2023年11月23日
- 実質更新日
- 2026年8月9日






Contents
目次
皮脂・毛包・炎症へ働く内服薬です
アクネトレントは、ビタミンA誘導体であるイソトレチノインを含む経口レチノイド製剤です。皮脂腺の活動と皮脂分泌を抑え、毛包の角化と炎症へ働くため、強い炎症やしこりが続くニキビで用いられます。
外用薬、過酸化ベンゾイル、抗菌薬内服などで十分な反応が得られず、瘢痕化や心理的負担が進む場合に、治療歴と禁忌を確認して選択します。高い改善率が期待できる一方、治療後の再発は用量、治療期間、再発の定義によって変わるため、内服終了後も外用を含む維持治療を組み立てます。
重症、瘢痕化、心理的負担、標準的な外用・内服治療で改善しないニキビでは、経口イソトレチノインを強く推奨するとの報告がありました(参考文献1)。
中等症〜重症、しこり、瘢痕化、標準治療不応を確認します
片側の顔に赤い炎症性皮疹が6〜20個ある状態を中等症の一つの目安とし、反対側、顎、背中・胸も含めて総数を確認します。強いしこり、急に増える凹凸、色素沈着や瘢痕が重なる場合は、個数だけでなく病変の深さと進行速度を優先します。
これまで使ったスキンケア、外用薬、抗菌薬の種類と期間、服薬状況、改善後の再発時期を時系列で確認します。慢性的な中等症でも標準治療を適切な期間続けて改善しない場合、または重症・瘢痕化・心理的負担が大きい場合に内服候補へ進みます。
20mgの服用から始め、反応と総投与量を追います
当院の20mg処方では1日1回1錠を食後に服用します。飲み忘れに気づいた時点で次回まで6時間以上ある場合は処方時の指示に沿って1回分を服用し、6時間未満なら次回まで待ちます。2回分を同時に服用しません。
開始後1か月は一過性にニキビが増えることがあり、約3割を目安に炎症の増え方を確認します。効果は16〜24週間で評価し、通常は6か月を1クール、最短でも4か月を目安とします。一般的な用量域は0.5〜1.0mg/kg/日、重症例では最大2mg/kg/日、累積120〜150mg/kgが一つの目安ですが、乾燥、検査値、改善速度に合わせて1日量と終了時期を決めます。
治療後の再発を見込んで総投与量と維持治療を決める理由として、内服終了後に22.5%が再発治療を受け、8.2%がイソトレチノインを再内服し、総投与量が多いほど再発・再内服が少なかったとの報告がありました(参考文献2)。
開始前・1か月・3か月・終了時に検査します
採血は開始前、開始1か月後、3か月後、終了時の4〜6か月を基本に、血算、肝機能、クレアチンキナーゼ、中性脂肪・コレステロールを確認します。既往、併用薬、運動量、初期の検査値によって追加時期を決めます。
妊娠する可能性がある方は開始前と毎月の妊娠反応検査が必要です。検査方法と提出時期は処方時に案内します。費用はイソトレチノイン20mg・30日分22,000円、採血1回5,500円です。
開始1〜3か月に採血する理由として、重度の高トリグリセリド血症は0.4%、重度のAST上昇は0.2%で、検査異常が最も多く確認された時期は開始1〜3か月だったとの報告がありました(参考文献3)。
乾燥への対処と、併用薬の確認を同時に行います
口唇・皮膚の乾燥と皮むけは頻度が高いため、開始時から保湿と紫外線対策を行います。ドライアイ、喉や鼻の乾燥、鼻出血、頭痛、筋肉痛も確認し、強い腹痛、持続する頭痛と視覚症状、黄疸、急な視力低下、気分や行動の変化、アレルギー症状があれば内服を止めて連絡します。
併用確認の中心は、ビタミンA製剤・サプリメントとテトラサイクリン系抗菌薬です。トラネキサム酸や経口避妊薬は製剤名、血栓リスク、他の併用薬を個別に確認し、妊娠回避の方法を決めます。ピーリングやレーザー脱毛は内服中と終了後1か月休止し、眼の乾燥が影響するレーシックは手術前後6か月の予定を眼科と調整します。
妊娠回避と国内未承認薬としての説明が治療の前提です
妊娠中、妊娠を希望している方、授乳中、イソトレチノイン製剤にアレルギーがある方には使用しません。妊娠する可能性がある方は開始1か月前から内服中、終了後1か月まで妊娠を回避し、内服中と終了後1か月は献血を行いません。当院では15歳以下を治療対象外としています。
重い肝機能障害、炎症性腸疾患、うつ病・統合失調症などの既往は、現在の状態と専門診療の内容を確認します。定期採血、妊娠反応検査、毎月の診察を継続できることも開始条件です。
イソトレチノインは日本でニキビ治療薬として承認されていません。当院では医師の責任で輸入手続きを行った製剤を自由診療で使用します。輸入された未承認薬による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度の対象になりません。
妊娠回避を治療の前提にする理由として、米国添付文書は妊娠中を禁忌とし、開始1か月前から終了後1か月までの妊娠回避、開始前・毎月・終了時・終了1か月後の妊娠検査、内服中と終了後1か月の献血禁止を記載しています(参考文献4)。
国内未承認薬の扱いを説明する根拠として、厚生労働省は個人輸入薬の品質・有効性・安全性は日本の薬機法に基づく確認を受けておらず、その健康被害は医薬品副作用被害救済制度の対象にならないと示しています(参考文献5)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 炎症性皮疹の個数、しこりの深さ、瘢痕化、顔以外の病変、心理的負担を確認し、これまでの外用・内服治療を時系列で整理します。
- 標準治療で十分に改善しない中等症、重症、瘢痕化が進む状態で、妊娠、授乳、既往歴、併用薬、年齢、検査継続の可否を確認して候補を絞ります。
- 開始前に妊娠反応、肝機能、脂質などを確認し、20mgの服用方法、乾燥対策、献血・施術の休止期間、緊急連絡が必要な症状を共有します。
- 毎月、炎症性皮疹数、しこり、新しい瘢痕、初期増悪、乾燥、頭痛・視覚症状、気分変化、検査値を確認し、1日量、総投与量、終了時期を調整します。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 過酸化ベンゾイル・外用レチノイド等 | 面皰から中等症の炎症性ニキビ、内服後の維持治療 | 急速な瘢痕化、深い結節が多数、外用を適切に続けても進行する状態 | 毎日使用し、8〜12週を目安に再評価 | 乾燥、赤み、刺激、皮むけ。過酸化ベンゾイルは衣類等の脱色 | 保険診療の処方内容で異なる | 国内承認薬を承認用法で使用 |
| 抗菌薬内服+外用治療 | 中等症以上の炎症性ニキビで、短期間に炎症を抑える必要がある状態 | 長期連用、耐性リスクが高い状態、深い結節・瘢痕化が続く状態 | 期間を限定し、非抗菌性の外用を併用して再評価 | 胃腸症状、光線過敏、薬剤ごとのアレルギーなど | 保険診療の処方内容で異なる | 国内承認薬。薬剤ごとの適応・禁忌を確認 |
| イソトレチノイン20mg内服 | 標準治療不応の中等症、重症、しこり・瘢痕化、強い心理的負担 | 妊娠中・妊娠希望・授乳中、検査と妊娠回避を継続できない状態、製剤アレルギー | 毎月診察し、通常4〜6か月。反応・総投与量・副作用で調整 | 口唇・皮膚・眼の乾燥、鼻出血、頭痛、筋肉痛、脂質・肝機能異常など | 20mg 30日分22,000円/採血1回5,500円 | 国内未承認。医師の責任で輸入した製剤を自由診療で使用 |
費用の目安
- イソトレチノイン20mg・30日分:22,000円(税込)
- 採血:1回5,500円(税込)
20mg・30日分22,000円は現行院内料金表と照合しました。採血1回5,500円は院内説明資料の表示を保持しています。妊娠反応検査の方法と追加検査は処方時に案内します。
リスク・副作用・注意点
- 胎児に重大な影響を及ぼすため妊娠中は使用できず、開始前から終了後1か月まで妊娠回避と定期的な妊娠反応検査が必要
- 口唇炎、皮膚・眼・鼻・喉の乾燥、皮むけ、鼻出血、光線過敏、頭痛、筋肉痛・関節痛など
- 中性脂肪・コレステロール、肝機能、クレアチンキナーゼ等の検査値異常、まれに膵炎・肝炎・横紋筋融解症など
- 気分・行動の変化、持続する強い頭痛と視覚症状、急な視力低下、重い皮膚症状、アナフィラキシーなどは中止して速やかに連絡
- ビタミンA製剤・サプリメントとテトラサイクリン系抗菌薬は併用を避け、他の薬剤・サプリメントも処方前に確認
- 内服中と終了後1か月は献血、ピーリング、レーザー脱毛を避け、レーシック前後6か月は眼科と治療時期を調整
- 国内承認・適応: イソトレチノインは日本でニキビ治療薬として承認されていません。当院では医師の責任で輸入手続きを行った製剤を自由診療で使用します。米国FDAでは一部のイソトレチノイン製剤が12歳以上の重症難治性結節性ニキビに承認されていますが、院内で扱う輸入製剤の日本承認を意味しません。個人輸入薬は日本の薬機法に基づく品質・有効性・安全性の確認を受けておらず、その健康被害は医薬品副作用被害救済制度の対象になりません。
妊娠、検査、併用薬、緊急連絡が必要な症状を本文とFAQに集約しました。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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Guidelines of care for the management of acne vulgaris
研究デザイン: 系統的レビューを行い、GRADEでエビデンス確実性と推奨強度を評価した米国皮膚科学会ガイドライン。18の推奨と5つのgood practice statementを作成した。 / 対象: 9歳以上の小児、思春期、成人の尋常性ざ瘡を対象としたエビデンス。 / 結果: 重症、心理的負担または瘢痕を伴う、もしくは標準的な内服・外用治療で改善しないニキビに経口イソトレチノインを強く推奨した。 / 限界: 系統的レビュー時点の最良のエビデンスに基づく米国の推奨で、日本の承認状況、院内製剤、個々の禁忌・用量・妊娠管理を定めるものではない。PubMed抄録・書誌を2026年8月9日に再確認し、ガイドライン全文は取得していない。 / 利益相反: PubMed抄録には個別の利益相反記載がなく、ガイドライン全著者の開示詳細は今回の確認範囲外。
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Acne Relapse and Isotretinoin Retrial in Patients With Acne
研究デザイン: 2017〜2020年のMarketScan商業保険請求データを用いた後ろ向きコホート研究。内服終了後少なくとも1年を追跡し、再発治療と再内服を解析した。 / 対象: イソトレチノインを4か月以上服用した12歳以上19,907人。平均20.6歳、女性52.8%。 / 結果: 4,482人(22.5%)が再発治療を受け、1,639人(8.2%)がイソトレチノインを再内服した。総投与量は再発・再内服率低下と関連し、総量120mg/kg以上では最大1日量は再発低下と関連しなかった。 / 限界: 保険請求データのため、病変数、重症度、実際の服薬、処方理由を直接確認できない。再発を全身治療処方で定義し、民間保険加入者以外へ一般化できない可能性がある。PMC原著全文を2026年8月9日に再確認した。 / 利益相反: Barbieri医師は研究外でDexcel PharmaとHoneydew Careからconsulting feeを受けたと開示し、他の開示はない。
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Risk and timing of isotretinoin-related laboratory disturbances: a population-based study
研究デザイン: グローバル電子診療録ネットワークを用い、イソトレチノイン群と経口抗菌薬群を傾向スコアでマッチした後ろ向きコホート研究。検査異常の頻度と時期を比較した。 / 対象: イソトレチノイン開始者79,012人と経口抗菌薬開始者79,012人。イソトレチノイン群の平均年齢22.0歳、女性50.6%。 / 結果: 重度高トリグリセリド血症の絶対リスクは0.4%、重度AST上昇は0.2%で、抗菌薬群より1,000人当たり各3件、1件多かった。多くの検査異常は開始1〜3か月に確認された。 / 限界: 電子診療録による後ろ向き研究で、診断・検査の欠測、医療アクセスによる選択、残余交絡があり、イソトレチノインの用量を考慮していない。PMC原著全文を2026年8月9日に再確認した。 / 利益相反: 著者は利益相反なしと記載。ドイツ研究振興協会の研究連携およびSchleswig-Holstein Excellence-Chair Programの助成を受けた。
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ABSORICA / ABSORICA LD Highlights and Full Prescribing Information
研究デザイン: 米国FDA承認製剤の適応、用法、禁忌、警告、検査、相互作用、妊娠回避要件を記載した公的添付文書。 / 対象: 米国で重症難治性結節性ニキビに使用する12歳以上の非妊娠患者。妊娠する可能性がある患者にはiPLEDGE要件が適用される。 / 結果: 妊娠中は禁忌。開始前・毎月・終了時・終了1か月後の妊娠検査、開始1か月前から終了後1か月までの妊娠回避、内服中と終了後1か月の献血禁止を記載する。ビタミンAとテトラサイクリン系薬剤の併用に注意を求める。 / 限界: 米国のABSORICA/ABSORICA LDの添付文書であり、院内で輸入するアクネトレントの日本承認、同一の生物学的利用能、1日1回投与を裏づけるものではない。PDF全22頁を2026年8月9日に再確認した。 / 利益相反: 製造販売者の申請資料をFDAが審査し承認した公的添付文書で、臨床研究の利益相反評価を目的とする資料ではない。
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医薬品等を海外から購入しようとされる方へ
研究デザイン: 個人輸入医薬品の品質・有効性・安全性、診察・経過観察、健康被害、公的救済制度を説明する行政情報。 / 対象: 海外から医薬品等を個人輸入する一般利用者および医療関係者。 / 結果: 個人輸入薬は日本の薬機法に基づく品質・有効性・安全性の確認を受けず、個人輸入薬による健康被害は医薬品副作用被害救済制度の対象にならないと説明している。 / 限界: イソトレチノインの有効性・用量・個別副作用を検証する臨床研究ではない。厚生労働省ページを2026年8月9日に再確認した。 / 利益相反: 厚生労働省が公開する行政情報であり、商業的利益相反の対象ではない。
よくあるご質問
Q. どのようなニキビでイソトレチノインを検討しますか?
外用薬や抗菌薬を適切に続けても改善しない中等症、強いしこりを伴う重症、瘢痕化が進む状態、心理的負担が大きい状態で検討します。炎症性皮疹の個数だけでなく、深さ、再発、治療歴を確認します。
Q. 20mgはどのくらいの期間服用しますか?
1日1回1錠を食後に服用し、16〜24週間で反応を評価します。通常は6か月、最短でも4か月が目安です。体重、改善速度、乾燥、検査値、累積投与量に合わせて調整します。
Q. 飲み忘れた場合はどうしますか?
次回の服用まで6時間以上ある場合は処方時の指示に沿って1回分を服用し、6時間未満なら次回まで待ちます。2回分を同時に服用しません。
Q. 妊娠中や妊娠を考えている場合は服用できますか?
服用できません。妊娠する可能性がある方は開始1か月前から内服中、終了後1か月まで妊娠を回避し、開始前と毎月の妊娠反応検査が必要です。妊娠が判明した場合は直ちに中止して連絡してください。
Q. 料金と採血の時期を教えてください。
20mg・30日分は22,000円、採血は1回5,500円です。開始前、1か月後、3か月後、終了時の4〜6か月を基本とし、妊娠する可能性がある方は毎月の妊娠反応検査も行います。
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