ヒアルロン酸1ccで鼻とあご先を整えて、横顔の骨格感を考える
ホリを深くしたいという希望に対し、ジュビダームビスタ ボラックスXC 1ccを鼻とあご先へ使用した症例です。斜位では鼻背とあご先の投影、正面では鼻の中心線とあごの左右差を確認し、両部位を一組として顔立ちの骨格感を整える考え方を解説します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2023年7月29日
- 実質更新日
- 2026年8月9日



Contents
目次
一方の斜位では、鼻背とあご先の投影を一組で見ます
一方の斜位は左がBefore、右がAfterです。Afterには鼻背とあご先が示され、鼻根から鼻背へ続く高さと、口元の下で顔の輪郭を終えるあご先の投影が分かりやすくなっています。鼻とあご先の二つの支点が加わることで、希望されたホリの深い顔立ちに見えます。
この症例で使用した製剤はジュビダームビスタ ボラックスXC、鼻とあご先を合わせた総量は1ccです。斜位では鼻だけ、あごだけを拡大して見るのではなく、眉間の下から鼻背、口元、あご先へ続く前後関係を確認します。
鼻背は高さを加えた位置が顔の中央から外れて見えないこと、あご先は口元に対して前へ出し過ぎず下へ長く見えないことを終了点にします。少量を二部位で使う場合ほど、それぞれの変化量より両者の比率を先に決めます。
あご先の投影を横顔と斜位で確認する理由として、ボラックスXCであご後退を整えた報告では、24週時の顔面角変化が2.97度、無処置群0.09度で、医師評価による改善は92.6%対4.2%、変化は52週まで保たれたとの報告がありました(参考文献1)。
正面では、鼻の中心線とあご先の左右差を確認します
正面も左がBefore、右がAfterです。Afterでは鼻背から人中、あご先へ続く顔の中心が分かりやすくなり、あご先と左右の下顎輪郭の差が小さく見えます。『顎の歪みが目立ちにくくなった』という変化は、この正面で確認できます。
正面では鼻を細く見せることだけを目標にせず、鼻背の中心、鼻翼の左右差、あご先の中心、左右の下顎下縁を同時に見ます。あご先に投影を加えると正面の輪郭も変わるため、斜位で良く見えても正面で偏りや長さが強調される位置は避けます。
あご先の中心付近でも血管走行を確認する理由として、上行オトガイ動脈は正中から平均5.64mm外側、皮膚から平均4.15mmの筋層を通り、左右で優位側が異なったとの報告がありました(参考文献4)。
反対側の斜位で、二つの支点と左右差を見直します
反対側の斜位も左がBefore、右がAfterです。Afterでは鼻根から鼻背へ続く投影と、下唇の下からあご先へ続く輪郭の終点が明瞭になっています。一方の斜位だけで決めず、反対側でも鼻背の線とあご先の位置が自然につながるかを見ます。
正面と両側の斜位を組み合わせると、両斜位では鼻背とあご先の投影、正面では中心線と左右差を確認できます。この3方向を本症例の評価軸とし、横顔の一つの線だけでなく、顔立ち全体の骨格感を見ます。
注入後は腫れや圧痛が輪郭へ影響します。反応が落ち着いた後も同じ正面と両斜位で、鼻背の中心、あご先の左右差、二つの支点の強さを見直し、必要な場合だけ追加を検討します。
鼻とあご先では、安全確認の重点が異なります
鼻は眼動脈系へつながる血管があるため、鼻手術・外傷・既往注入を確認し、視力異常、強い痛み、皮膚の青白化などを施術中から確認します。ボラックスXCの電子添文には、鼻では正中線へ注入し、正中線以外や鼻先端、術後・外傷後の鼻では血管損傷へ特に注意するよう記載されています。
あご先では、正中に見える位置でも上行オトガイ動脈などの血管走行に左右差があります。正面であご先の中心を決めた後、触診と必要な解剖確認を行い、血管内注入と組織圧迫を避けながら輪郭を整えます。
注入後に通常と異なる強い痛み、白色・暗紫色や網目状の皮膚色変化、冷たさ、見え方の異常、まぶたが下がる、眼球を動かしにくいなどがあれば、予定日を待たず直ちにご連絡ください。
鼻の注入で視機能まで確認する理由として、ヒアルロン酸注入後の視力障害の報告では、ほぼすべてが片側かつ直後に発症し、鼻・眉間・前額が主な注入部位で、0.2mLでも永久的な完全視力障害を生じた例があったとの報告がありました(参考文献2)。
ジュビダームビスタ ボラックスXCは、成人の顔面におけるボリューム回復・増大を目的に、皮下または骨膜上深部へ注入する国内承認製品です。電子添文では鼻への使用時は正中線へ注入し、正中線以外や鼻先端、術後・外傷後の鼻では血管損傷へ特に注意するよう求めています(参考文献3)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- ホリを深く見せたいという希望を、鼻背の高さとあご先の投影へ分け、正面と両斜位でどちらの支点が不足して見えるかを確認します。
- 正面では鼻背とあご先の中心、左右の鼻翼・下顎輪郭を見て、あごの歪みが目立ちにくくなる位置を決めます。
- 両斜位では鼻根から鼻背へ続く線と、口元からあご先へ続く終点を比べ、合計1ccを二部位へ使うときの変化量を決めます。
- 治療後も同じ3方向で骨格感と左右差を見直し、鼻では視機能と皮膚血流、あごでは皮膚色と下顔面の動きを部位別に確認します。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ボラックスXC 1ccを鼻背とあご先へ使用する | 鼻背とあご先の投影をともに少量補い、正面と両斜位の骨格感を整えたい状態 | どちらか一方の投影がすでに十分な状態、鼻手術・外傷後の解剖変化がある状態、注入部に炎症・感染がある状態 | 通常1回。腫れが落ち着いた後、同じ3方向で再評価 | 発赤、腫れ、痛み、圧痛、内出血、硬さ・しこり、左右差。まれに血管閉塞、皮膚壊死、視力・視野障害 | 1本1cc 77,000円(税込) | ボラックスXCは成人顔面のボリューム回復・増大を目的とする国内承認品。鼻には固有の血管安全警告がある |
| 鼻背だけを段階的に調整する | あご先の投影は保たれ、鼻根から鼻背の高さ不足が主な状態 | 鼻先端の調整、鼻手術・外傷後、血管安全条件を満たせない状態 | 少量から1回。正面・両斜位で再評価 | 発赤、腫れ、痛み、内出血、左右差。まれに血管閉塞、皮膚壊死、視力・視野障害、脳卒中 | 1本1cc 77,000円(税込) | 国内承認品。電子添文は鼻では正中線への注入と鼻先端を避けることを求める |
| あご先だけを段階的に調整する | 鼻背の投影は保たれ、あご先の前方投影・左右差が主な状態 | 主因が咬合・顎変形、筋・脂肪・皮膚弛緩にある状態、注入部に炎症・感染がある状態 | 少量から1回。正面・両斜位で再評価 | 発赤、腫れ、痛み、内出血、硬さ・しこり、左右差。まれに血管閉塞、皮膚障害 | 1本1cc 77,000円(税込) | 国内承認品。承認時試験にあご先・下顎部が含まれる |
費用の目安
- ヒアルロン酸注入:1本1cc 77,000円(税込)
- カテラン針を使用する場合:11,000円(税込)追加
本症例の使用量は、鼻とあご先を合わせたボラックスXC 1ccです。カテラン針は使用する場合にのみ加算されます。すべて自由診療です。
リスク・副作用・注意点
- 発赤、腫れ、痛み、圧痛、内出血、硬さ・しこり、左右差、凹凸など
- アレルギー、感染、遅発性炎症、硬結、位置ずれなど
- まれに血管閉塞、皮膚障害・壊死、視力・視野障害、失明、脳卒中など。特に鼻は視機能障害へ注意が必要
- 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボラックスXCは、成人の顔面におけるボリューム回復・増大を目的に、皮下または骨膜上深部へ注入する国内承認医療機器です(承認番号30200BZX00254000)。あご先・下顎部は承認時試験の対象です。鼻への使用については電子添文に固有の警告があり、正中線へ注入し、正中線以外や鼻先端、術後・外傷後の鼻では血管損傷へ特に注意するよう求めています。口唇、眉間、眼窩周囲は承認範囲に含まれません。
通常と異なる強い痛み、白色・暗紫色や網目状の皮膚色変化、冷感、見え方の異常、眼瞼下垂、眼球運動障害は待たずに連絡が必要です。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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VYC-25L Is Safe and Effective for Enhancing the Chin and Jawline by Correcting Chin Retrusion in Chinese Adults
研究デザイン: 中国7施設で行われた前向き第3相・2対1無作為化・24週無処置対照試験。必要時は4週後の追加注入を認め、52週まで追跡した。 / 対象: 中等度から重度のあご後退がある中国人成人150人を無作為化し、修正ITT解析は治療群97人・対照群51人。平均年齢31.2歳、治療群の平均注入量は2.4mLだった。 / 結果: 24週時のG-Sn-Pog角変化は治療群2.97度、対照群0.09度。GAIS改善率は92.6%対4.2%で、改善は52週まで保たれた。 / 限界: 対象は中国人成人の中等度から重度のあご後退で、平均注入量は本症例の鼻・あご合計1ccより多い。鼻への注入、二部位への配分、個人の症例結果を検証していない。 / 利益相反: Allergan Aestheticsが研究設計、実施、解析、データ収集、解釈、論文確認を含めて資金提供し、著者に同社治験責任医師と社員を含む。
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Vision Loss Associated with Hyaluronic Acid Fillers: A Systematic Review of Literature
研究デザイン: PRISMAに沿って症例報告・症例集積を収集した系統的レビュー。 / 対象: 29論文60例を同定し、詳細が得られた26論文44例のヒアルロン酸注入後視力障害を解析した。 / 結果: ほぼ全例が片側かつ直後に発症し、鼻、眉間、前額が最も多かった。0.2mLでも永久的な完全視力障害例があり、眼動脈閉塞と中心網膜動脈閉塞は予後不良だった。 / 限界: 公表症例主体で発生率を算出できず、出版バイアスがある。特定の注入層、針・カニューレ、注入量による予防効果や、本症例の安全性を検証していない。 / 利益相反: PubMed書誌・抄録で利益相反記載を確認できず、原著全文の利益相反欄は未確認。
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ジュビダームビスタ ボラックスXC 電子添文
研究デザイン: PMDA公開の国内承認医療機器電子添文。欧州の前向き多施設単盲検無作為化・遅延治療対照試験の成績も収載している。 / 対象: 使用対象は成人で、顔面のボリューム回復・増大を目的とする。承認時試験はあご先・下顎部を治療した120人で、119人がボラックスXCを受けた。 / 結果: 顔面へ皮下または骨膜上深部に使用する国内承認製品で、口唇、眉間、眼窩周囲は適応外。鼻では正中線への注入、正中線以外・鼻先端・術後または外傷後の鼻への注意を求め、視力異常、皮膚青白化、異常な痛みがあれば直ちに中止するよう警告している。 / 限界: 電子添文は承認範囲と安全情報を示す資料で、鼻とあごへ合計1ccを配分した本症例の結果、部位別配分、施術順、撮影時期を検証していない。 / 利益相反: 製造販売業者アッヴィ合同会社の承認製品電子添文である。
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Implication of Location of the Ascending Mental Artery at the Chin Injection Point
研究デザイン: 三次元計測を用いた固定標本の解剖学的研究。 / 対象: 31顔のあご部を解剖し、上行オトガイ動脈の左右優位、正中からの距離、皮膚からの深さを測定した。 / 結果: 優位動脈は右19・左12で、正中から平均5.64mm外側、皮膚から平均4.15mmの筋層を通り、舌下動脈と吻合していた。 / 限界: 固定標本の解剖研究で、個々の患者の血管位置や、注入手技ごとの血管閉塞率、鼻とあごへ合計1ccを使用する安全性を示す臨床試験ではない。 / 利益相反: PubMed書誌・抄録では研究資金と利益相反の詳細を確認できず、原著全文は未確認。
よくあるご質問
Q. この症例では、どの製剤を何cc使いましたか?
ジュビダームビスタ ボラックスXCを、鼻とあご先を合わせて総量1cc使用しました。鼻とあご先への配分は、両部位で必要な変化量に合わせます。
Q. ヒアルロン酸1ccで鼻とあご先の両方を整えられますか?
この症例では合計1ccを二部位へ使用し、鼻背の投影とあご先の左右差を整えています。必要な変化量が大きい場合や、どちらか一方の支えが十分な場合は、同じ配分にはなりません。
Q. ボラックスXCの鼻とあごへの使用は国内承認範囲ですか?
ボラックスXCは、成人の顔面におけるボリューム回復・増大を目的に、皮下または骨膜上深部へ注入する国内承認製品です。あごは承認時試験の対象部位です。鼻については電子添文に固有の注意があり、正中線へ注入し、正中線以外や鼻先端、術後・外傷後の鼻では血管損傷へ特に注意するよう記載されています。
Q. ボラックスXC 1ccの料金はいくらですか?
現在の通常料金は1本1cc 77,000円(税込)です。カテラン針を使用する場合は11,000円(税込)が加わります。
Q. 注入後、すぐに連絡が必要な症状はありますか?
通常と異なる強い痛み、白色・暗紫色や網目状の皮膚色変化、冷たさ、見え方の異常、まぶたが下がる、眼球を動かしにくい症状があれば、予定日を待たず直ちにご連絡ください。
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