唇とあごをヒアルロン酸1.4ccで整えてEラインを調整する考え方
もともと整っていたEラインをさらに自然に見せるため、上唇へボルベラXC 0.4cc、あごへボリューマXC 1ccを使用したスタッフメンテナンス症例です。正面と左右の斜位で、上唇中央の立体感とあご先のシャープさを同時に確認します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2022年10月4日
- 実質更新日
- 2026年8月9日



Contents
目次
正面では、キューピッド弓とあご先の高点を確認します
この症例は、もともと整っていたEラインをよりきれいに見せたいというスタッフのメンテナンスです。ジュビダームビスタ ボリューマXC 1ccをあごへ、ジュビダームビスタ ボルベラXC 0.4ccを上唇へ使用し、合計1.4ccで口元と下顔面を整えました。
正面の治療後は、上唇中央とキューピッド弓の輪郭が立ち、光が当たる高点が明瞭に見えます。あご先は中央の光反射が高くなり、先端の横幅がすっきりしたことで、下顔面の終点がシャープに見えます。
正面では、上唇の中央と左右の山、安静時に口を閉じた形、あご先の幅と中心線を確認します。上唇とあごを別々に整えた後、鼻・口唇・あごが顔の中央で一続きに見えるかを再評価します。
片側の斜位では、上唇の前方投影とあご先の位置を見ます
片側の斜位では、治療後に上唇中央の丸みが前方へ出て、鼻下から赤唇へ移る角度がはっきりしています。あご先も前方の高点が明瞭になり、下唇下のくぼみからあごへ続く曲線がなだらかに見えます。
あご1ccは、横顔の基準線だけを合わせるのではなく、前方投影と縦の長さ、正面での先端幅を同時に確認して終了点を決めます。写真だけでなく、斜位から見た曲面と実際の立体感も合わせて再評価します。
正面・斜位・実際の立体感を合わせて評価する理由として、ボリューマXCと同系統のVYC-20Lをあごへ使用した後は、6か月時の顎後退尺度改善率が写真評価で56.3%、対面評価で91.8%となり、写真と診察で見え方が異なったとの報告がありました(参考文献1)。
反対側の斜位では、左右から見た唇とあごのつながりを比べます
反対側の斜位でも、上唇中央の高さと赤唇の前方投影、あご先の高点を確認します。片側だけでなく両方向から比べることで、上唇の山から口角へ続く曲線と、下唇からあごへ続く輪郭の左右差を把握できます。
ボルベラXC 0.4ccは、上唇全体を大きくするためではなく、上唇中央の立体感とキューピッド弓を整えるために使用しました。治療後は腫れが落ち着いてから、赤唇の高さ、口角までの曲線、安静時の閉じやすさを確認します。
ボルベラXCで上唇を整えた後は、赤唇の高さと口周囲を時間経過で確認します。口唇充足度の改善は3か月時80.3%で、1年まで60%を超え、口周囲の線も3か月時65.4%、1年時66.2%に改善がみられたとの報告がありました(参考文献2)。
2製剤の役割と、唇・あごの血管安全を分けて確認します
この症例では、ボリューマXC 1ccをあご先の支持、ボルベラXC 0.4ccを上唇中央の立体感へ使用しました。同じヒアルロン酸でも、あごと上唇では動きと求める形が異なるため、製剤の役割を分けます。
上唇には顔面動脈から分かれる上唇動脈が走るため、上唇中央と口角の形を確認しながら少量ずつ整えます。あごではオトガイ動脈・オトガイ下動脈などの走行と皮膚色を確認し、血管内注入を避けます。
この症例の案内では、注入部に1〜2か月ほどしこりを感じることがあります。通常と異なる強い痛み、皮膚や口唇の白色化・紫色または網目状の変化、見え方の異常がある場合は、予定日を待たずに連絡してください。
ボリューマXCは、成人の中顔面・下顎部・こめかみで減少したボリュームを増大する目的の国内承認製剤です(参考文献3)。
ボルベラXCは、成人の顔面のしわ・へこみ修正と口唇増大を目的とする国内承認製剤です(参考文献4)。
上唇の治療範囲には上唇動脈が走ります。上唇動脈の内径は口角で平均0.85mm、上唇中央で0.56mm、皮膚からの深さは最も浅い測定点で平均4.29mmだったとの報告がありました(参考文献5)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 正面では、上唇中央とキューピッド弓、口を閉じた形、あご先の幅と中心線を確認します。
- 左右の斜位では、鼻先から上唇、下唇、あご先へ続く前後関係と、上唇の山から口角へ続く曲線を比べます。
- もともとのEラインが整っている場合は、ボルベラXC 0.4ccで上唇中央、ボリューマXC 1ccであご先という役割を分け、合計1.4ccの変化を全顔の中で確認します。
- 腫れが落ち着いた再診で正面と両側の斜位を再撮影し、上唇の動き、あご先の投影、左右差を確認して終了点を決めます。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ボルベラXCで上唇中央を整える | 上唇中央の高さやキューピッド弓を整え、口元の立体感を補いたい状態 | 活動性の口唇ヘルペス・炎症・感染、前回注入後の強い腫れ・硬さが残る状態 | 通常1回後、腫れが落ち着いた時点で安静時と表情時を再評価。本症例は0.4cc | 腫れ、痛み、内出血、硬さ、左右差、しこり、口唇ヘルペス。まれに血管閉塞・組織壊死 | 1本1cc 77,000円+唇施術料11,000円 | 顔面のしわ・へこみ修正と口唇増大は国内承認。承認番号23000BZX00331000 |
| ボリューマXCであご先を整える | あご先の投影と先端幅を整え、下顔面の終点をシャープに見せたい状態 | あごを足すと縦の長さや突出が強くなる状態、活動性の炎症・感染、残る製剤で既に十分な状態 | 通常1回後、正面・左右の斜位と触診で再評価。本症例は1cc | 腫れ、痛み、内出血、硬さ・しこり、左右差。まれに血管閉塞、壊死、視覚障害、脳卒中 | 1本1cc 77,000円 | 下顎部を含む減少したボリューム増大は国内承認。承認番号22800BZX00338000 |
| 上唇とあごを同日に整える | 上唇中央の立体感とあご先の投影を同じ口元の輪郭として微調整したい状態 | どちらか一方の変化だけで希望するバランスが得られる状態、2部位の腫れを同時に避けたい場合 | 通常1回後、正面・左右の斜位で2部位を再評価。本症例は合計1.4cc | 上唇とあごそれぞれの腫れ、内出血、硬さ、左右差、しこり、血管障害 | 製剤2本154,000円+唇施術料11,000円=165,000円 | ボルベラXCの口唇、ボリューマXCの下顎部はいずれも国内承認目的に含まれる |
費用の目安
- ヒアルロン酸 1本1cc:77,000円(税込)
- 本症例と同じボリューマXC 1本+ボルベラXC 1本:154,000円(税込)
- 涙袋・唇施術料:11,000円(税込)
- 本症例と同じ製剤2本+唇施術料:165,000円(税込)
- カテラン針使用料:11,000円(税込、使用する場合)
本症例の合計使用量は1.4ccですが、ボリューマXC 1ccシリンジとボルベラXC 1ccシリンジを各1本使用します。現在料金は製剤2本154,000円と唇施術料11,000円の合計165,000円です。カテラン針を使用する場合は11,000円が加わります。
リスク・副作用・注意点
- ボリューマXC・ボルベラXCでは、発赤、腫れ、痛み、圧痛、内出血、硬さ、しこり、凹凸、左右差、感染、アレルギー、遅発性結節が生じることがあります。本症例の案内では、注入部に1〜2か月ほどしこりを感じることがあります。
- 唇では一時的な強い腫れ、硬さ、左右差、口唇ヘルペス、口を動かしたときの違和感が出ることがあります。
- 血管内への誤注入または血管・神経の圧迫により、血管閉塞、皮膚・口唇の壊死、視力・視野障害、失明、脳卒中が起こる可能性があります。
- 通常と異なる強い痛み、皮膚・口唇の白色化・紫色または網目状の変化、視力・視野の異常がある場合は、直ちに連絡してください。
- 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは、成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームを増大する目的で、皮下または骨膜上深部へ注入する国内承認品です(承認番号22800BZX00338000)。ジュビダームビスタ ボルベラXCは、成人の顔面のしわ・へこみ修正と口唇増大を目的とする国内承認品です(承認番号23000BZX00331000)。いずれも血管内注入は禁止されています。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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Safe and Effective Chin Augmentation With the Hyaluronic Acid Injectable Filler, VYC-20L
研究デザイン: 多施設・評価者盲検・無治療遅延対照の無作為化比較試験。14施設で3対1に割り付け、必要時は30日後の追加治療、治療群は12か月まで追跡した。 / 対象: 顎後退のある成人192人。初回治療群144人、6か月遅延治療対照群48人。 / 結果: 6か月時の1段階以上改善率は写真評価で治療群56.3%、対照群27.5%、対面評価で治療群91.8%、対照群23.3%。治療群の写真評価改善率は12か月時57.6%だった。 / 限界: 米国で行われ、初回注入量の平均は1.9mL、61.1%が30日後に追加治療を受け、初回と追加の平均総量は2.6mLで、本症例のあご1ccを直接検証しない。写真評価と対面評価で改善率に差があり、上唇へのボルベラXC 0.4ccやEラインを直接評価していない。
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Safety and Effectiveness of VYC-15L, a Hyaluronic Acid Filler for Lip and Perioral Enhancement: One-Year Results From a Randomized, Controlled Study
研究デザイン: VYC-15LとNASHA製剤を比較し、任意の追加治療後1年まで追跡した前向き多施設無作為化比較試験。 / 対象: 口唇のボリューム増大を希望する成人225人。口唇充足度が最小、軽度または中等度の人を対象とした。 / 結果: 3か月時の口唇充足度奏効率はVYC-15L 80.3%、対照70.8%で、VYC-15Lは1年まで60%を超えた。口周囲の線は3か月時65.4%、1年時66.2%に改善がみられた。 / 限界: 特定製剤と対照製剤の比較で、本症例のボルベラXC 0.4cc、キューピッド弓の変化、あごへのボリューマXC 1ccとの併用を個別に検証していない。PubMed抄録を確認し、原著全文は取得していない。
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ジュビダームビスタ ボリューマXC 電子添文
研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器電子添文。使用目的、警告、臨床成績、有害事象を収載。 / 対象: 承認目的は成人の中顔面・下顎部・こめかみにおける減少したボリュームの増大。 / 結果: 皮下または骨膜上深部への注入が承認され、血管内注入は禁止されている。眉間・眼窩周囲は適用部位に含まれない。 / 限界: 電子添文は個別症例の治療計画を示すものではなく、本症例のあご1ccの具体的な注入位置、層、器具、写真上の変化を検証していない。
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ジュビダームビスタ ボルベラXC 電子添文
研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器電子添文。使用目的、警告、臨床成績、有害事象を収載。 / 対象: 承認目的は成人の顔面のしわ・溝、陥凹の修正と口唇増大。 / 結果: 口唇への注入が承認され、血管内注入は禁止されている。眼瞼は適用部位に含まれない。 / 限界: 電子添文は個別症例の治療計画を示すものではなく、本症例の上唇0.4ccの注入範囲、層、器具、キューピッド弓の変化を検証していない。
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Lumen Diameter and Associated Anatomy of the Superior Labial Artery With a Clinical Application to Dermal Filler Injection
研究デザイン: 上唇動脈の内径、分岐、皮膚からの深さを複数の測定点で調べた献体解剖研究。 / 対象: 成人献体18体の上唇動脈。生体へのヒアルロン酸注入を追跡した研究ではない。 / 結果: 上唇動脈の内径は口角で平均0.85±0.34mm、正中で0.56±0.21mmだった。皮膚からの深さは顔面動脈との分岐で平均5.49±1.95mm、口角とキューピッド弓頂点の中間で4.29±1.54mmだった。 / 限界: 献体解剖で、個人の血管位置、器具・注入層別の閉塞率、ボルベラXC 0.4ccの安全性を示す臨床試験ではない。PubMed抄録を確認し、原著全文は取得していない。
よくあるご質問
Q. この症例では、どの製剤を何cc使いましたか?
あごへジュビダームビスタ ボリューマXC 1cc、上唇へジュビダームビスタ ボルベラXC 0.4ccを使用し、合計1.4ccです。
Q. もともとEラインが整っていても、唇とあごを一緒に治療する理由は何ですか?
上唇中央の高さとあご先の投影は、斜位で同じ口元の輪郭として見えます。この症例では上唇の立体感とあご先のシャープさを別々に整え、正面と左右の斜位で全体のつながりを確認しました。
Q. 合計1.4ccなら、ヒアルロン酸1本分の料金ですか?
いいえ。ボリューマXC 1ccとボルベラXC 0.4ccは別の1ccシリンジを使用するため、現在料金は2本分154,000円に唇施術料11,000円を加えた165,000円(税込)です。カテラン針を使用する場合は11,000円が加わります。
Q. 注入後のしこりは、どのくらい続くことがありますか?
この症例の案内では、注入部に1〜2か月ほどしこりを感じることがあります。通常と異なる強い痛み、皮膚や口唇の白色化・紫色または網目状の変化、視力・視野の異常がある場合は、直ちにご連絡ください。
Q. ボリューマXCとボルベラXCは国内承認品ですか?
はい。ボリューマXCは成人の下顎部を含む減少したボリューム増大、ボルベラXCは顔面のしわ・へこみ修正と口唇増大を目的とする国内承認品です。
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