医師解説しわ・たるみ

短時間の美容医療相談で確認したいこと|注入治療を決める前に

短時間の美容医療相談では、変えたい点と残したい表情、過去の治療歴を先に共有すると、相談の焦点が定まります。施術名だけで決めず、筋肉の動きと顔の支えを診察し、製剤名・承認範囲・費用・合併症を確認してから選びます。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2025年6月14日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. 地域の「美容のかかりつけ医」として、診断から相談を始めます
  2. 2025年3月30日の大阪イベントで示された、美容医療の始め方
  3. 短時間の相談では、優先する悩みと治療歴を最初に伝えます
  4. 筋肉の動きにはボトックス、支えの不足にはヒアルロン酸を検討します
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

地域の「美容のかかりつけ医」として、診断から相談を始めます

アラガン・エステティックスと『婦人画報』『25ans』による大阪の美容医療イベントに参加し、その取材記事が『婦人画報』2025年7月号に掲載されました。誌面では6人の医師が、それぞれの診療で大切にしている考え方を紹介しています。

当院は「個々に適した提案と治療を行う、地域の美容のかかりつけ医」として紹介されました。近隣の患者さまやご紹介、繰り返し通院される方を、形成外科専門医が保険診療と美容医療の両方の視点から診察し、その人の美しさを引き出す丁寧な提案と治療を心掛けています。

美容医療の相談でも、希望する施術名を最初の結論にはしません。気になる変化が病気によるものではないかを確認したうえで、変えたい部位と残したい表情を聞き、必要な治療の役割を一つずつ説明します。

2025年3月30日の大阪イベントで示された、美容医療の始め方

2025年3月30日、大阪で「美容医療セミナー&カウンセリング体験イベント〜ずっとキレイであるために〜」が開催されました。アラガン・エステティックスによる関西初開催の企画で、セミナー後には6人の医師が個別の相談ブースを担当しました。

誌面の「美容医療の始め方」では、1まずは信頼できるクリニックを訪問、2初回はカウンセリングだけでよい、3ドクターとの相性を確認する、4承認品か未承認品かを確認する、5治療内容は持ち帰って検討してよい、という5点が示されています。

短い相談では、この5点のうち「どこを相談したいか」と「次に何を確認するか」を明確にするだけでも前へ進めます。相談当日に施術を受ける必要はなく、提案された製剤名、量、費用、回復期間を書面で見直してから決められます。

短時間の相談では、優先する悩みと治療歴を最初に伝えます

まず、「眉間の険しい印象を和らげたい」「頬の影を浅くしたい」など、今回いちばん変えたい点を一つ決めます。同時に、自然な笑顔や今の輪郭など残したい要素も伝えると、治療目標と過剰に変えない範囲を共有できます。

次に、過去の注入治療の製剤名、部位、単位または本数、施術日、溶解歴、腫れや左右差が落ち着いた時期を確認します。お薬手帳、治療記録、以前の写真があれば持参すると、同じ部位へ重ねる量や治療間隔を判断しやすくなります。

既往歴、アレルギー、内服薬、妊娠・授乳、近い時期の歯科治療や手術予定も注入前に確認します。ヒアルロン酸は部位によって生じやすい反応が異なるため、気になる線だけでなく、実際に注入する候補部位まで診察して説明します。

注入候補の部位まで相談で確認する理由として、鼻唇溝と比べ、中顔面・口周囲・口唇では腫れ、しこり・凹凸、硬さの報告割合が高かったとの報告がありました(参考文献1)。

筋肉の動きにはボトックス、支えの不足にはヒアルロン酸を検討します

眉間、額、目尻など表情を作ったときに強くなるしわは、動かしている筋肉と、日常で残したい表情を確認してボトックスの部位と量を考えます。安静時の凹み、頬やこめかみのボリューム低下、輪郭の支持不足は、正面・斜位・側面で見てヒアルロン酸を置く層と量を考えます。

ボトックスビスタは、国内では65歳未満の成人における眉間の表情皺と目尻の表情皺が承認された目的です。その他の部位や目的、国内未承認のコアトックスを提案する場合は、承認範囲外または未承認であることを分けて説明します。

ジュビダームビスタ ボリューマXCは、成人の中顔面、下顎部、こめかみで減少したボリュームを増大する目的で、皮下または骨膜上深部への注入が国内承認されています。相談では、販売名だけでなく、使う部位と目的が承認範囲に含まれるかまで確認します。

最後に、提案する製剤名、注入部位、単位またはcc、期待する変化、費用、回復期間、合併症、代替治療を一枚の計画として確認します。内容を持ち帰った場合も、次回は同じ優先順位から相談を再開できます。

表情筋の動きと治療後の反応を施術前に共有する理由として、少なくとも一つの治療関連有害事象があった割合は18%で、主な報告は頭痛、疼痛、こわばり、眼症状だったとの報告がありました(参考文献2)。

ボトックスビスタの電子化された添付文書では、65歳未満の成人における眉間の表情皺と目尻の表情皺が効能・効果として記載されています(参考文献3)。

ジュビダームビスタ ボリューマXCの添付文書では、成人の中顔面、下顎部、こめかみで減少したボリュームを増大する目的と、皮下または骨膜上深部への注入が記載されています(参考文献4)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 最初に、今回いちばん変えたい一点と残したい表情を聞き、安静時・表情時の正面と斜位で、筋肉の動き、凹み、顔の支えを順に確認します。
  • 過去の製剤名、部位、単位または本数、施術日、溶解歴と経過を照合し、動きが主因ならボトックス、ボリュームや支持の不足が主因ならヒアルロン酸として治療目標を分けます。
  • 提案時は製剤名、承認範囲、注入部位、単位またはcc、費用、回復期間、合併症、代替治療を同じ計画書で説明し、当日施術と持ち帰りのどちらも選べるようにします。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
相談のみ 悩みの優先順位、過去の治療歴、製剤・費用・回復期間を比較してから決めたい場合 注入部位の感染や急な症状など、当日の医学的評価・処置を優先する状態 1回から。持ち帰り後の再相談も可能 なし 自費診療の初診・再診相談料 0円。相談のみを繰り返す場合は3,300円 施術なし
ボトックス 眉間・額・目尻など、表情筋の動きで強くなるしわ 凹みやボリューム低下、骨格支持の不足が主因の状態 通常1回。約2週で表情を再評価 注射痛、内出血、左右差、一時的な筋力低下 表情ジワ 1部位33,000円/2部位55,000円/3部位75,000円/4部位88,000円(税込) ボトックスビスタは眉間・目尻の表情皺が国内承認。その他の部位は承認範囲外。コアトックスは国内未承認
ヒアルロン酸 頬・こめかみ・下顎部などのボリューム低下や支持不足 表情筋の過緊張だけが主因、容量追加で重く見える状態、注入部位の感染 通常1回。腫れが落ち着いた後に再評価 腫れ、内出血、圧痛、硬さ・しこり。まれに血管閉塞 1本1cc 77,000円(税込)。カテラン針使用時11,000円(税込) 製剤ごとに承認された部位・注入層・目的を確認。承認範囲外の使用は別途説明

費用の目安

  • 自費診療の初診・再診相談料 0円。相談のみを繰り返す場合3,300円(税込)
  • ボトックス・ビスタ/コアトックス 表情ジワ 1部位33,000円〜4部位88,000円(税込)
  • ヒアルロン酸注入 1本1cc 77,000円(税込)
  • カテラン針使用料 11,000円(税込)

料金はローカル料金表(2026年7月20日現在)と各施術ページを照合した。

リスク・副作用・注意点

  • ボトックス:注射痛、内出血、腫れ、左右差、頭痛、一時的な筋力低下、眼瞼下垂など
  • ヒアルロン酸:注射痛、腫れ、内出血、圧痛、左右差、硬さ・しこり、感染、血管閉塞、皮膚壊死、視覚障害など
  • 国内承認・適応: ボトックスビスタは国内承認医薬品で、65歳未満の成人における眉間・目尻の表情皺が承認範囲です。その他の部位は承認範囲外です。コアトックスは国内未承認医薬品です。ジュビダームビスタ ボリューマXCは、成人の中顔面・下顎部・こめかみで減少したボリュームを増大する目的が国内承認されています。適応外・未承認使用では、公的な副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

注入前に部位別のリスクと緊急連絡が必要な症状を説明する。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Colon J, Mirkin S, Hardigan P, Elias MJ, Jacobs RJ. Adverse Events Reported From Hyaluronic Acid Dermal Filler Injections to the Facial Region: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cureus. 2023;15(4):e38286.

    Adverse Events Reported From Hyaluronic Acid Dermal Filler Injections to the Facial Region: A Systematic Review and Meta-Analysis

    研究デザイン: 2000〜2022年に米国またはカナダで実施された無作為化試験・臨床試験19研究のシステマティックレビュー・メタ解析 / 対象: 18歳以上の成人に美容目的で顔面ヒアルロン酸を注入した19研究。鼻唇溝と、中顔面・口周囲・口唇の有害事象を比較 / 結果: 鼻唇溝と比べ、中顔面・口周囲・口唇では、腫れ、しこり・凹凸、硬さの報告割合が有意に高かった。疼痛、紅斑、内出血、圧痛、かゆみ、皮膚変色には明確な部位差を認めなかった。 / 限界: 製剤、部位、注入量、追跡期間が不均一で、米国・カナダの臨床試験に限定される。症例報告を除外しているため、まれな血管閉塞や視覚障害の発生率は評価できない。PMC全文と訂正文の存在を確認した。

  2. Cruz VMS, Sousa-Neto SS, Pedroso CM, et al. Adverse Events in Nonsurgical Facial Aesthetic Procedures: A Systematic Review and Meta-Analysis. Oral Dis. 2026;32(2):384-394.

    Adverse Events in Nonsurgical Facial Aesthetic Procedures: A Systematic Review and Meta-Analysis

    研究デザイン: 42研究のシステマティックレビュー・割合メタ解析。このうち上顔面A型ボツリヌストキシンの有害事象は14研究を統合 / 対象: ヒアルロン酸、上顔面A型ボツリヌストキシン、吸収糸による美容治療を受けた計8,853人。上顔面A型ボツリヌストキシンは6,254人 / 結果: 上顔面A型ボツリヌストキシンで少なくとも一つの治療関連有害事象を経験した割合は統合18%で、主な報告は頭痛、疼痛、こわばり、眼症状だった。 / 限界: 有害事象の定義、重症度、発症・回復時期が統一されず、ボツリヌストキシン解析の異質性は高い。上顔面の研究であり、下顔面や承認範囲外の部位へ結果を一般化できない。PMC全文を確認した。

  3. PMDA. ボトックスビスタ注用50単位/100単位 電子化された添付文書.

    ボトックスビスタ注用50単位/100単位 電子化された添付文書

    研究デザイン: 国内承認医薬品の電子化された添付文書 / 対象: 65歳未満の成人。眉間の表情皺または目尻の表情皺 / 結果: 効能・効果は、65歳未満の成人における眉間の表情皺および目尻の表情皺。 / 限界: 承認範囲と使用上の注意を示す公的文書であり、その他の部位やコアトックスの有効性を示す比較研究ではない。2026年8月8日にPMDA公開情報を確認した。

  4. PMDA. ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書. 承認番号22800BZX00338000.

    ジュビダームビスタ ボリューマXC 添付文書

    研究デザイン: 国内承認医療機器の添付文書 / 対象: 成人。中顔面、下顎部、こめかみで減少したボリュームを増大する治療 / 結果: 使用目的は、成人の中顔面、下顎部、こめかみで減少したボリュームを増大するための皮下または骨膜上深部への注入。 / 限界: 承認された使用目的・注入層と使用上の注意を示す公的文書であり、個別患者の必要量や他製剤との比較優位は示さない。2026年8月8日にPMDA公開文書を確認した。

よくあるご質問

Q. 治療内容を決めていなくても相談できますか?

できます。まず、いちばん変えたい点と残したい表情を共有し、安静時と表情時を診察して、ボトックス、ヒアルロン酸、治療をしない選択肢を比較します。

Q. 過去の注入治療について何を持参すればよいですか?

製剤名、部位、単位または本数、施術日、溶解歴が分かる記録や写真、お薬手帳をご持参ください。分かる範囲だけでも、同じ部位へ重ねる量や間隔の判断に役立ちます。

Q. 相談した日に施術を受けなくてもよいですか?

はい。製剤名、量、承認範囲、費用、回復期間、合併症を持ち帰って検討し、別日に再相談できます。自費診療の初診・再診相談料は0円ですが、診察・相談だけを繰り返し、治療や化粧品購入がない場合は3,300円です。

Q. 承認品か未承認品かは、どこを確認しますか?

販売名だけでなく、国内で承認された部位と使用目的まで確認します。同じ製品でも、使う部位や目的が承認範囲外となることがあるため、提案時にPMDAの添付文書と照合して説明します。

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