レーザーとIPLの違いと選び方
レーザーは絞った波長でメラニン・ヘモグロビン・水などの標的を狙い、IPLは幅のある光をフィルターで選び、広い色むらや赤みを整えます。シミ、血管、脱毛では、病変の種類・深さ・分布から選ぶ順序が変わります。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2026年1月22日
- 実質更新日
- 2026年8月9日

Contents
目次
レーザーは絞った光、IPLは幅のある光を使います
図では、レーザーを『原因に対して狙い撃ちする治療』、IPLを『広く薄く整える治療』として比較しています。レーザーは機器ごとに波長が絞られた光を使い、メラニン、ヘモグロビン、水など、光を吸収する標的へエネルギーを集めます。標的と波長、照射時間が合えば、周囲への加熱を抑えながら境界の明瞭なシミ、血管、深さのある色素などを治療できます。
IPLは単一波長のレーザーではなく、複数の波長を含む非コヒーレント光です。フィルターで使う波長域を選び、広い照射面で、顔全体に散在する薄い色素と赤みを同じ治療計画へ組み込みます。光の幅が広いことを利用して面で整えるため、レーザーより弱いという意味ではなく、狙う範囲と標的の数が異なります。
境界と標的が明確な病変はレーザーで狙います
一つずつ境界が分かる褐色斑、線状に見える血管、真皮側に深さのある色素、組織中の水を加熱して削る病変では、標的に合うレーザーを選びます。照射径、パルス幅、冷却を病変の大きさと深さに合わせ、正常皮膚へ広げずに必要な範囲へ照射します。
同じ『シミ』でも、表皮性の老人性色素斑、肝斑、炎症後色素沈着、母斑では選ぶ光と強さが異なります。色、境界、左右差、隆起、経過を確認し、診断が定まった病変からレーザーの候補を決めます。
薄い色むらと赤みが広く混在するときはIPLで面を整えます
IPLは、頬全体に散在する薄い褐色斑、くすみ、びまん性の赤みなど、複数の浅い所見を一度に面で扱いたいときに使います。『全体の印象をマイルドに整える』『ダウンタイムを抑えて段階的に底上げする』役割の治療です。
広い変化が整った後に、残った濃い斑や明瞭な血管だけをレーザーで狙う順序もあります。IPLを同じ設定で繰り返して変化が頭打ちになった場合は、残っている所見の深さと標的を見直し、回数を増やすか、レーザーへ切り替えるかを決めます。
IPLを広い光老化所見へ複数回使う背景として、平均4.29回の治療後に毛細血管拡張、紅斑、日光黒子、色素沈着、キメ、毛穴、しわが改善したとの報告がありました(参考文献5)。
色素と血管を分けてIPLの条件を選ぶ根拠として、狭帯域IPL後の平均GAISは血管性病変8.02、色素性病変8.14で、一過性の副反応は2%だったとの報告がありました(参考文献1)。
シミは、境界・深さ・分布を見てスポットか面治療かを決めます
濃く境界が明瞭な孤立性の褐色斑は、病変へスポットでエネルギーを集めるレーザーが向きます。顔全体に薄い斑が散在し、赤みやくすみも重なる場合は、IPLで面を整えた後、残った斑へレーザーを追加します。
頬骨部に左右対称のもやっとした色素がある場合は、肝斑、炎症後色素沈着、光老化の色素斑を分けます。肝斑が活動性であれば、強いスポット照射を先に行わず、遮光・外用と炎症の安定化を優先してから光治療の範囲を決めます。
赤みは、線状血管と面状の紅斑を分けます
小鼻や頬に線として見える毛細血管拡張は、血管径と深さを見て血管を標的にするレーザーを選びます。頬全体のびまん性紅斑や、細かな血管と褐色斑が混在する場合は、フィルターで波長域を選ぶIPLを候補にします。
診察では、圧迫で薄くなるか、熱・飲酒・運動で変化するか、丘疹・膿疱を伴うかを確認します。炎症性の酒さと固定した毛細血管を分け、外用・内服で炎症を整える段階と、光で血管を治療する段階を組みます。
顔面毛細血管拡張へ血管レーザーとIPLのどちらも候補にできる根拠として、1か月間隔で最大2回治療した3か月後の毛細血管拡張改善スコアは両方とも平均3.3で差がなかったとの報告がありました(参考文献2)。
脱毛とニキビ・皮脂は、標的が異なるため別に選びます
脱毛は毛包のメラニンを標的にするため、毛の太さ・色・密度、毛根の深さ、肌色から波長域と照射時間を選びます。狭い波長で毛包へ集中的に照射するレーザーと、広い面を複数波長で照射するIPLのどちらも選択肢ですが、産毛、白髪、日焼け肌では光の吸収条件が変わります。
ニキビや皮脂では、炎症、面皰、赤み、瘢痕のどれを治療するかを先に決めます。血管、色素、水、ポルフィリン、皮脂腺など、標的は機器によって異なるため、『レーザー』または『IPL』という名称だけで一括りにせず、現在の病変に対応する機器を選びます。
診察は、病変を分け、深さを見て、治療範囲を決める順に進めます
最初に、褐色、赤色、隆起、毛、炎症のどれが主所見かを分けます。次に表皮か真皮か、線状か面状か、単発か多発かを記録し、標的を一つに絞れる病変はレーザー、浅い複数所見を広く扱う場合はIPLを候補にします。
治療後は、同じ照明と角度で色素の濃さ、血管の本数、紅斑の面積、毛密度を別々に評価します。面状の変化が残る間はIPLを重ね、病変が点や線として残った段階でレーザーへ切り替えるなど、残った標的に合わせて順序を更新します。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 最初に、褐色斑、線状血管、面状紅斑、毛、炎症を分け、表皮・真皮の深さと単発・多発の分布を同じ条件の写真で記録します。
- 標的が一つで境界が明瞭ならレーザー、薄い色素と赤みが広く混在するならIPLを選び、面を先に整えて残った点・線をレーザーで仕上げる順序も組みます。
- 各回で色素の濃さ、血管の本数、紅斑の面積、毛密度を別々に評価し、同じ照射を続けるか、標的に合う別の光へ切り替えるかを決めます。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 標的型レーザー(ルビー・ADVATx等) | 境界明瞭な色素、特定血管・赤みを波長別に狙う場合 | 肝斑面、日焼け、診断未確定病変、広い複合色むらへ単一標的だけを照射 | 1回〜複数回、病変と反応で決定 | 赤み、かさぶた、紫斑、PIH、色素脱失、熱傷等 | ルビースポット6,600円〜/ADVATx全顔30,000円 | 機器・波長・使用目的ごとに国内承認を確認 |
| IPL | 広い範囲の複数の表在性色素・細い血管をフィルター調整して治療 | 肝斑優位、濃い肌色・日焼け、深い単一病変、診断未確定 | 通常複数回、毎回反応を評価 | 赤み、腫れ、かさぶた、PIH、色素脱失、熱傷等 | 当院料金表にIPL掲載なし。提供状況・料金は要確認 | 機器・フィルター・目的ごとに承認確認 |
| 外用・遮光・経過観察 | 肝斑、PIH、炎症後の色調管理、治療前の安定化 | 単独で構造的血管や隆起病変の除去を期待 | 毎日・数か月ごとに見直し | 刺激、乾燥、かぶれ、色素変化等 | 製品・処方で異なる | 薬剤・化粧品区分と適応を確認 |
費用の目安
- Qスイッチルビースポット1cm²まで6,600円/ルビーフラクショナル全顔16,500円等。
- ADVATx全顔1回30,000円/5回139,000円。IPLは当院料金表に掲載なし。
リスク・副作用・注意点
- 赤み、熱感、腫れ、かさぶた、紫斑、疼痛が生じることがあります。
- PIH、色素脱失、熱傷、水疱、瘢痕、肝斑悪化が起こり得ます。
- 眼周囲では適切な眼球保護が必要です。
IPL一般研究をADVATxやQスイッチルビーの製品固有效果へ転用しません。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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狭帯域IPLによる色素・血管病変
研究デザイン: Advanced Fluorescence Technologyを用いた狭帯域IPLの診療データによる後ろ向き単群解析 / 対象: 色素性病変または血管性病変へ狭帯域IPLを受けた100人 / 結果: 平均GAISは血管性病変8.02±0.84、色素性病変8.14±0.90で、群間差はなかった。2人に一過性の副反応があり、疼痛の報告はなかった。 / 限界: 特定の狭帯域IPLによる単群・後ろ向き研究で、病変別人数、照射回数、フィルター、フルエンスの詳細はPubMed抄録にない。レーザーとの比較や一般的なIPL全体の成績を示さない。PubMed抄録を2026年8月8日に確認した。
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顔面毛細血管拡張へのPDLとIPL
研究デザイン: 単施設、左右比較、無作為化試験。独立した盲検評価者が3か月後に評価 / 対象: 顔面毛細血管拡張16人。左右へPDLまたはデュアルバンドIPLを割り付け、1か月間隔で最大2回治療 / 結果: 7段階のTelangiectasia Grading Scaleによる平均改善スコアはIPL 3.3(95%CI 2.8〜3.7)、PDL 3.3(95%CI 2.9〜3.8)で、群間差はなかった。副反応の発生率・重症度にも有意差はなかった。 / 限界: 16人の小規模研究で、PDLは595nm、IPLは500〜670nmおよび870〜1,200nmの特定ハンドピースを使用した。別の血管レーザー、通常のIPL、色素性病変、酒さ全体へ同じ結果を一般化できない。PubMed抄録を2026年8月8日に確認した。
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医療機器の承認審査
機器・波長・目的の承認確認先。
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IPL for dermatologic disease
疾患別の系統的レビュー。
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IPL for skin rejuvenation
研究デザイン: PRISMAに沿い、写真評価または自己評価を用いたIPLによる皮膚若返り研究を対象にした系統的レビュー / 対象: 16研究637人、21〜80歳、Fitzpatrick skin type I〜IV。治療は平均4.29回、範囲3〜7回 / 結果: 多くの研究で毛細血管拡張、しわ、毛穴、紅斑、キメ、日光黒子、色素沈着、光老化スコアの改善を報告した。 / 限界: 9研究は方法論的品質が低く、機器、フィルター、照射条件、併用治療、評価法が不均一。7研究では他治療または併用がIPL単独より優れており、最適設定の合意はない。PubMed抄録を2026年8月8日に確認した。
よくあるご質問
Q. シミにはレーザーとIPLのどちらが向きますか?
濃く境界が明瞭な単発の褐色斑はレーザー、薄い斑が顔全体に散在し、赤みやくすみも重なる場合はIPLが候補です。肝斑、炎症後色素沈着、母斑では順序が異なるため、色・境界・深さを診断してから選びます。
Q. 赤みにはレーザーとIPLのどちらが向きますか?
小鼻や頬に線として見える血管は血管レーザー、頬全体のびまん性紅斑や色素斑との混在はIPLを考えます。丘疹・膿疱を伴う酒さでは、光治療の前に炎症を整える治療を組みます。
Q. 脱毛ではレーザーとIPLに違いがありますか?
どちらも毛包のメラニンを利用しますが、レーザーは絞った波長、IPLは幅のある光をフィルターで選んで照射します。毛の太さ・色・密度、毛根の深さ、肌色に合う波長域と照射時間を選ぶことが重要です。
Q. 主な副作用とダウンタイムは何ですか?
赤み、熱感、腫れ、疼痛、かさぶた、紫斑が起こることがあります。設定や肌状態によっては、水疱、熱傷、炎症後色素沈着、色素脱失、瘢痕、肝斑悪化が生じます。眼周囲の照射では適切な眼球保護が必要です。
Q. 当院の料金と承認状況はどう確認しますか?
現在の料金表では、Qスイッチルビーのスポットは1cm2まで6,600円、ルビーフラクショナル全顔は16,500円、ADVATx全顔は1回30,000円・5回139,000円です。IPLは当院料金表に掲載がありません。承認状況は機器・ハンドピース・使用目的ごとに異なるため、販売名、承認番号、承認範囲をPMDA情報と現物表示で確認します。
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