医師解説

自然なボトックス治療のために確認する表情筋・まぶた・左右差

自然なボトックス治療では、しわの場所だけで注入部位を決めません。額を上げる、眉を寄せる、目を細める、笑う、食いしばる動きを見て、眉とまぶたの高さ、左右差、残したい表情に合わせて筋肉ごとの効かせ方を決めます。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2026年6月3日
実質更新日
2026年8月9日
おでこ・眉間・目尻・バニーライン・ガミースマイル・口角・エラ・顎・広頚筋のボトックス治療部位を示した顔の図解

Contents

目次

  1. どこへ打つかより、どの筋肉をどれくらい弱めるかを考えます
  2. 額・眉・上まぶたは一緒に動かして確認します
  3. 笑顔・咀嚼・首の動きを残して口元と輪郭を整えます
  4. 初回の反応を記録し、約2週間後の動きで次の設計を決めます
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

どこへ打つかより、どの筋肉をどれくらい弱めるかを考えます

ボツリヌストキシンは、神経から筋肉へ伝わる信号を一時的に抑え、強く動く筋肉の働きを調整する治療です。同じしわでも、動いたときだけ現れる線、力を抜いても残る線、周囲の筋肉で代償してできる線では、狙う筋肉と残す動きが異なります。

顔の上側では、おでこの横じわ、眉間の縦じわ、目尻のカラスの足跡、鼻根から鼻背に出るバニーラインを見ます。口元では、笑ったときの歯ぐきの見え方、下がる口角、顎の梅干しじわを確認し、輪郭と首では咬筋の張りと広頚筋の縦じわを動作ごとに見分けます。

上顔面ボツリヌストキシン治療で、しわ以外の変化も追う必要性を示す資料として、少なくとも1つの治療関連有害事象を経験した割合は統合18%で、主な事象は頭痛、疼痛、こわばり、眼症状だったとの報告がありました(参考文献1)。

額・眉・上まぶたは一緒に動かして確認します

額では、力を抜いた状態、眉を上げた状態、眉を寄せた状態、目を細めた状態を比べます。前頭筋は眉を持ち上げ、眉間の筋群は眉を内側・下方へ引くため、どちらをどの程度弱めるかで眉の高さと上まぶたの重さが変わります。

眉を上げないと目が開きにくい場合や、上まぶたの皮膚がかぶさる場合は、前頭筋を広く弱めると重さが目立つことがあります。注入前に眉の高さ、まぶたの開き、二重線、左右差を別々に記録し、額の動きをどこまで残すかを決めます。

まぶたの開き・左右差・輪郭を別々に記録する必要性を示す資料として、眼瞼下垂手術後の評価では、MRD1 2〜4mm、左右差0.5mm以内、良好な瞼縁形状を満たした割合が2点固定79.4%、3点固定73.1%で、両群に有意差はなかったとの報告がありました(参考文献2)。

笑顔・咀嚼・首の動きを残して口元と輪郭を整えます

バニーラインは鼻をすぼめる動き、ガミースマイルは笑ったときの上唇の上がり方、口角は口を横へ引く・下げる動き、顎は口を閉じたときの凹凸を見ます。左右の筋力と笑顔の形を比べ、弱めたい動きと残したい口元の動きを分けます。

エラでは奥歯を噛んだときの咬筋の厚みと左右差を触診し、骨格や皮下脂肪による張りと分けます。首では発声や口角を下げる動作で広頚筋の縦の索状収縮を見ます。口元の表情、噛む力、首の力へ影響するため、額や眉間と同じ量・深さを当てはめません。

初回の反応を記録し、約2週間後の動きで次の設計を決めます

初回は、残したい表情と避けたい変化を先に共有します。過去に効きすぎた部位、眉やまぶたの重さ、笑いにくさがあった場合は、製剤、部位、時期、変化が戻るまでの経過を次の注入設計に反映します。

変化は一般に数日から現れ、約2週間で左右の動きと表情を評価します。直後の見た目だけで追加せず、筋肉への作用がそろう時期に、しわの残り方、眉とまぶたの位置、笑顔、咀嚼や首の動きを確認します。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 額を上げる、眉を寄せる、目を細める、笑う、口を閉じる、食いしばる動きを同じ条件で記録し、左右の筋力と表情の癖を見ます。
  • 額では前頭筋がまぶたの開きを助けていないか、口元では笑顔をつくる筋肉まで弱めないか、咬筋と広頚筋では咀嚼・首の機能を保てるかを注入前に確認します。
  • 約2週間後に同じ表情を再評価し、最初からすべての動きを止めるのではなく、残った強い動きだけを次回の部位と量へ反映します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
上顔面の表情じわボトックス 額・眉間・目尻・鼻根の、表情を動かしたときに強く現れるしわ 前頭筋で目を開ける代償が強い、眉・上まぶたの重さが主、力を抜いても深く残る溝だけが主な状態 通常1回。数日から変化し、約2週間後に眉・まぶた・左右差を評価 痛み、赤み、腫れ、内出血、頭痛、左右差、眉・まぶたの下がり、表情の動かしにくさ 表情じわ1部位33,000円/2部位55,000円/3部位75,000円/4部位88,000円 要確認
口元の表情じわボトックス バニーライン、ガミースマイル、下がる口角、顎の梅干しじわなど、特定の表情筋の動きが主な状態 口唇・口角の筋力低下や明らかな左右差があり、対象筋を弱めると笑顔や発音へ影響しやすい状態 通常1回。約2週間後に笑顔、口角、口唇の動きと左右差を評価 痛み、赤み、腫れ、内出血、口元の左右差、笑いにくさ、発音・飲水時の違和感 表情じわ1部位33,000円/2部位55,000円/3部位75,000円/4部位88,000円 要確認
エラ・首のボトックス 噛んだときの咬筋の張り、広頚筋の強い縦じわ・索状収縮が主な状態 骨格・皮下脂肪・皮膚のゆるみが輪郭の主因、咀嚼や嚥下に関わる筋力低下がある状態 通常1回。咬筋の厚み、食いしばり、首の動きの経過を評価 痛み、赤み、腫れ、内出血、噛む力の低下、輪郭・口角の左右差、首の力の入りにくさ エラ/首 55,000円 要確認

費用の目安

  • ボトックスビスタ®/コアトックス®共通:表情じわ1部位33,000円、2部位55,000円、3部位75,000円、4部位88,000円
  • 対象となる表情じわ:額、眉間、目尻、鼻根、顎、口角、バニーライン、ガミースマイル
  • エラ/首 55,000円

表情じわの料金は部位数、エラ・首は各治療区分で算定します。

リスク・副作用・注意点

  • 注射部位の痛み、赤み、腫れ、内出血、頭痛、違和感、左右差、効き方の不足・過剰
  • 部位により、まぶた・眉の下がり、表情の動かしにくさ、口元の左右差、噛む力の低下、首の力の入りにくさ
  • 当日は注入部位を強く揉まず、激しい運動、飲酒、長時間の入浴・サウナを避けます。息苦しさ、飲み込みにくさ、全身の強い筋力低下、強いアレルギー症状があれば、すぐに医療機関へ連絡してください。
  • 国内承認・適応: ボトックスビスタ®は国内で65歳未満の成人における眉間・目尻の表情じわについて承認されています。額、鼻根、バニーライン、ガミースマイル、口角、顎、エラ、首などは承認範囲外の使用を含みます。コアトックス®は国内未承認医薬品で、医師の責任のもと適法な輸入手続きにより入手します。国内未承認医薬品の使用による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

妊娠中・授乳中、神経筋疾患、使用薬剤へのアレルギー歴がある場合などは治療を受けられないことがあります。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Cruz VMS, Sousa-Neto SS, Pedroso CM, et al. Oral Dis. Published online October 5, 2025. doi:10.1111/odi.70109.

    Adverse Events in Nonsurgical Facial Aesthetic Procedures: A Systematic Review and Meta-Analysis

    研究デザイン: 非手術的顔面美容治療42研究を対象にしたシステマティックレビュー・メタ解析。上顔面ボツリヌストキシンは13研究で、安全性の統合解析は14研究 / 対象: 全体8,853人。上顔面ボツリヌストキシン群は6,254人で、21〜86歳、女性89.3% / 結果: 上顔面ボツリヌストキシンで少なくとも1つの治療関連有害事象を経験した割合は18%(95%信頼区間10〜32%)で、報告数の多い事象は頭痛、疼痛、こわばり、眼症状、内出血だったとの報告がありました。 / 限界: 上顔面解析の異質性はI2=96.9%と高く、製剤、用量、注入部位、有害事象の定義・重症度・発症時期・追跡期間が研究間で統一されていない。18%は本記事の個別部位や製剤の発生率を示さない。原著全文を2026年8月8日に確認した。

  2. Kim YS, Yoon JS, Jang SY. Eye (Lond). 2015;29(9):1181-1185. doi:10.1038/eye.2015.107.

    Comparison of two- and three-point sutures for advancing the levator aponeurosis in Asian eyelids

    研究デザイン: アジア人の挙筋腱膜前転術で2点固定と3点固定を比較した単施設・単一術者の後ろ向き研究 / 対象: 60人87眼。2点固定34人46眼、3点固定26人41眼を3か月以上追跡 / 結果: MRD1 2〜4mm、左右差0.5mm以内、良好な瞼縁形状を満たした割合は2点固定79.4%、3点固定73.1%で、有意差はなかったとの報告がありました。 / 限界: 眼瞼下垂手術の評価研究であり、ボツリヌストキシンの注入部位・量・効果を直接検討した研究ではない。手術時間の記録がなく、他術式との比較ではなく、追跡は最低3か月である。眼瞼形状を複数の軸で記録する間接資料として用いた。原著全文を2026年8月8日に確認した。

  3. PMDA

    医療機器の承認審査に関する情報

    販売名、承認番号、承認範囲を確認する公的情報です。

  4. 厚生労働省

    医療広告ガイドライン

    自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。

よくあるご質問

Q. ボトックスで表情が固まるのはなぜですか?

しわのある場所だけを見て対象筋を広く・強く弱めると、残したい表情まで動かしにくくなることがあります。額、眉間、目尻、口元、咬筋、広頚筋の動きを別々に見て、弱めたい動きと残したい機能を決めます。

Q. まぶたが重い場合も、おでこへ注射できますか?

眉を上げて目を開ける癖がある場合、前頭筋を弱めると眉や上まぶたの重さが目立つことがあります。力を抜いた状態と眉を上げた状態で、眉の高さ、まぶたの開き、皮膚のかぶさり、左右差を比べて額の動きを残す範囲を考えます。

Q. 左右でボトックスの量を変えることはありますか?

左右で筋肉の強さや眉・口角の動きが異なる場合は、同じ量を機械的に打ち分けず、動きに合わせて部位と量を変えることがあります。注入前と約2週間後を同じ表情で比べ、次回の設計へ反映します。

Q. 効果はいつ現れ、いつ仕上がりを確認しますか?

一般に数日後から変化が現れ、約2週間で左右の動きと表情を評価します。持続は3〜4か月程度が目安ですが、部位、製剤、投与量、筋力によって異なります。

Q. ボトックスビスタとコアトックスの承認状況は?

ボトックスビスタ®は国内で65歳未満の成人の眉間・目尻の表情じわに承認されています。その他の部位・目的は承認範囲外を含みます。コアトックス®は国内未承認医薬品で、未承認医薬品による健康被害は副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

ご予約・ご相談はこちら

気になる症状や治療方法について、初診予約・再診予約・お問い合わせからご相談いただけます。