ボトックスで表情じわをどう整えるか
ボトックスは、笑う・眉を寄せる・額を上げるときに働く筋肉を一時的にゆるめ、表情じわを寄りにくくする治療です。動作時のしわ、眉・まぶたの位置、左右差、残したい表情を見て対象筋を選び、約2週間後の動きと数か月後の戻り方を確認します。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2026年6月4日
- 実質更新日
- 2026年8月9日

Contents
目次
ボトックスは筋肉や汗腺の働きを一時的にゆるめます
表情じわは、笑う、眉を寄せる、目を細める、額を上げるといった動作で同じ皮膚が繰り返し折れ、徐々に線が残りやすくなります。ボツリヌストキシンは神経から筋肉へ伝わる収縮の合図を弱め、対象筋がつくる折れ目を寄りにくくします。
治療の対象は大きく3つあります。表情じわではおでこ・眉間・目尻・バニーライン、輪郭・口元ではエラ・ガミースマイル・口角・顎・広頚筋、汗のお悩みでは脇・手・額です。しわ、輪郭、口元、発汗では残すべき機能が異なるため、同じ『ボトックス』でも治療の目標を分けます。
表情を動かしたときに現れる線へ早い段階から筋活動を調整すると、安静時にも深く残る折れ目を増やしにくくする考え方につながります。すでに真顔でも残る線は、動作時の深さと皮膚表面の溝を別々に記録し、筋肉の治療後に残る質感を再評価します。
表情じわは部位名ではなく、線をつくる筋肉から考えます
おでこの横じわは眉を上げる前頭筋、眉間の縦じわは眉を内下方へ寄せる皺眉筋と鼻根筋、目尻は笑顔や閉瞼で働く眼輪筋、バニーラインは鼻をすぼめる動きで強くなる鼻筋の収縮を見ます。真顔と最大表情を同じ角度で比べると、どの筋肉が線の主因かが分かります。
額では前頭筋が眉を持ち上げて目を開ける動作も担います。眉を上げないと上まぶたが開きにくい場合は、額の横じわだけでなく、力を抜いたときの眉の高さ、瞼縁の位置、上まぶたの皮膚のかぶさりを記録し、開瞼に必要な動きを残します。
眉間の原因筋を弱める治療を選ぶ根拠として、20単位投与後の医師評価による改善率は対照より高く、相対リスク33.54、安静時の改善も相対リスク5.88だったとの報告がありました(参考文献2)。
自然な表情は眉・まぶた・口元の動きを残してつくります
自然な仕上がりでは、しわを寄せる筋肉を弱める範囲と、眉を上げる・目を閉じる・笑う機能を残す範囲を先に決めます。
口元では、笑ったときの上唇の上がり方、口角の高さ、口を閉じたときの顎の凹凸を見ます。エラでは奥歯を噛んだときの咬筋の厚みと左右差、首では発声や口角を下げる動作で広頚筋の縦の索を触診し、笑顔・発音・咀嚼・首の動きへ必要な筋力を残します。
左右差があるときは、真顔、最大収縮、自然な笑顔を左右同じ角度で記録します。しわの左右差と、眉・口角そのものの高さの差を分け、弱めたい動きだけを次の量と位置へ反映します。
眉間への治療だけでも眉の外側、中央、内側の高さが時間とともに変化したとの報告があり、注入前後で眉と上まぶたの位置を同じ条件で比べる理由になります(参考文献4)。
数日後からの変化を見て、約2週間後と数か月後に再評価します
変化は一般に注射後数日から現れ、約2週間で表情の動きがそろいます。この時点で、動作時のしわ、眉とまぶたの位置、笑顔、左右差、効き方の不足・過剰を治療前と同じ表情で比べます。
繰り返す治療では、毎回の製剤名、部位、単位、効き始め、約2週間後の表情、戻り始めた時期を残します。前回の反応を次回の量と位置へ引き継ぎます。
効果が薄れる時期に次回を考える根拠として、眉間治療の反応者では効果の中央値が動作時120日、安静時131日で、半数を超える反応者が約4か月の効果を維持したとの報告がありました(参考文献1)。
上顔面への反復治療では、治療量・間隔・満足度が期間中に安定し、累積的な有害事象の増加を認めなかったとの報告がありました(参考文献5)。
輪郭・口元・汗のお悩みは目的と安全確認を分けます
エラの張りと食いしばりでは咬筋、ガミースマイルでは笑ったときの上唇、下がる口角や顎の梅干しじわでは口周りの筋、首の緊張では広頚筋の動きを対象にします。骨格・脂肪・皮膚のゆるみが輪郭の主因の場合は、筋肉を弱めた後にどの変化が得られるかを部位ごとに見積もります。
脇汗・手汗・額の汗では、汗が出る範囲と日常生活で困る場面を記録し、筋肉ではなく汗腺へ届く神経の合図を弱めます。顔面の表情筋、咬筋、広頚筋、発汗部位では使用範囲と国内承認状況が異なるため、製剤と治療目的を分けて説明します。
国内承認の部位と治療間隔を分ける根拠として、ボトックスビスタは65歳未満の成人の眉間・目尻を承認適応とし、3か月以内の再投与を避けると電子添文に記載されています(参考文献3)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 真顔、額を上げる、眉を寄せる、目を細める、自然に笑う表情を同じ角度で記録し、線が現れる動作と左右の筋力を対応させます。
- 額・眉間では前頭筋が開瞼を助けている範囲、目尻では閉瞼に必要な眼輪筋、口元では笑顔・発音・飲水に必要な動きを残す位置と量を決めます。
- 約2週間後に治療前と同じ表情を再現し、しわの残り方、眉・まぶた・口角の高さ、咀嚼や首の動きを比べます。
- 次回は製剤、部位、単位、効き始め、戻り始めの記録を基に、よく効いた範囲と動きを残したい範囲を更新します。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 眉間・目尻の表情じわ | 眉を寄せる、笑う動作で深くなり、対象筋が明確なしわ | 眉・まぶたの重さを支える筋力低下が強い状態、皮膚表面の固定した溝だけが主な状態 | 1回後、約2週間で表情と左右差を確認。国内承認では3か月以内の再投与を避ける | 痛み、赤み、腫れ、内出血、頭痛、左右差、眼瞼下垂、閉瞼への影響 | 表情じわ1部位33,000円/2部位55,000円/3部位75,000円/4部位88,000円 | ボトックスビスタは65歳未満の成人の眉間・目尻に国内承認 |
| 額・バニーライン・口角・顎・ガミースマイル | 特定の表情で深くなる額・鼻・口元のしわや、上唇・口角・顎の筋活動が主な状態 | 開瞼・閉瞼・笑顔・発音に必要な筋力を保つ必要が高い状態 | 1回後、約2週間で眉・まぶた・笑顔・口角・顎の動きを確認 | 痛み、内出血、眉・まぶたの重さ、口元の左右差、笑いにくさ、発音・飲水時の違和感 | 表情じわ1部位33,000円/2部位55,000円/3部位75,000円/4部位88,000円 | ボトックスビスタでは国内適応外を含む。コアトックスは国内未承認 |
| エラ・広頚筋 | 噛んだときの咬筋の張り、食いしばり、首の縦の索状収縮が主な状態 | 骨格・脂肪・皮膚のゆるみが輪郭の主因、咀嚼・嚥下・呼吸に関わる筋力低下がある状態 | 1回後、咬筋の厚み・噛む力・首と口角の動きを経過確認 | 痛み、内出血、噛む力の低下、頬こけ、口角の左右差、首の力の入りにくさ、嚥下への影響 | エラ/首 55,000円 | ボトックスビスタでは国内適応外。コアトックスは国内未承認 |
| 汗のお悩み | 脇・手・額など、発汗範囲が明確で生活上の支障がある状態 | 発熱・甲状腺疾患・薬剤など全身性の発汗原因が優先される状態 | 1回後、汗が減った範囲と残る範囲を確認 | 痛み、内出血、腫れ、部位により握力・表情筋への影響、代償性発汗 | 多汗症(わき、コアトックス)66,000円 | 当院の自費診療で用いるコアトックスは国内未承認 |
費用の目安
- ボトックスビスタ/コアトックス共通:表情じわ1部位33,000円、2部位55,000円、3部位75,000円、4部位88,000円
- 対象となる表情じわ:額、眉間、目尻、鼻根、顎、口角、バニーライン、ガミースマイル
- エラ/首:55,000円
- 多汗症(わき、コアトックス):66,000円
すべて自由診療・税込です。表情じわは部位数、エラ・首・多汗症は治療区分で算定します。
リスク・副作用・注意点
- 注射部位の痛み、赤み、腫れ、内出血、頭痛、違和感、左右差、効き方の不足・過剰
- 部位により、眼瞼下垂、眉の下がり、閉瞼不全、複視、口角下垂、笑顔・発音・飲水・咀嚼・首の動かしにくさ
- 投与筋以外への作用により、まれに嚥下障害、呼吸障害、全身の筋力低下、重いアレルギー反応が生じることがあります。
- 妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中の方、全身性の神経筋接合部疾患がある方、他のボツリヌス毒素製剤で治療中の方にはボトックスビスタを投与しません。
- 国内承認・適応: ボトックスビスタは国内承認医薬品(承認番号22100AMX00398000)で、承認適応は65歳未満の成人における眉間・目尻の表情じわです。眉間は合計10〜20単位、目尻は合計12〜24単位が承認用量で、3か月以内の再投与を避けます。額、バニーライン、ガミースマイル、口角、顎、エラ、首、発汗部位への美容目的使用は適応外を含みます。コアトックスは国内未承認医薬品で、医師の責任のもと適法な輸入手続きにより入手します。適応外・未承認使用による健康被害は医薬品副作用被害救済制度等の対象外となる場合があります。ボツリヌストキシンの力価単位は製剤固有で、異なる製剤間で換算しません。
飲み込みにくさ、声質の変化、息苦しさ、全身の強い脱力、視力低下・複視、強いアレルギー症状があれば直ちに医療機関へ連絡してください。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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OnabotulinumtoxinA: a meta-analysis of duration of effect in the treatment of glabellar lines
研究デザイン: 類似設計の第III相試験4件を統合したメタ解析 / 対象: 眉間へonabotulinumtoxinA 20単位を投与された621人。30日後の最大収縮時に523人が反応者 / 結果: 30日後反応者の効果中央値は、最大収縮時120日、安静時131日でした。反応者の半数を超えて約4か月の臨床効果が続きました。 / 限界: 眉間、onabotulinumtoxinA 20単位、30日後反応者に限った解析で、額・目尻・口元・咬筋・首、他製剤、非反応者へ同じ持続期間を適用できません。単位は製剤間で換算できません。PubMed抄録と出版社の利益相反表示を2026年8月9日に確認しました。 / 利益相反: Allergan, Inc.が解析を資金提供。複数著者が同社の従業員・株主で、他の著者にもコンサルタント等の関係が開示されています。
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Efficacy and Safety of Botulinum Toxin Type A in the Treatment of Glabellar Lines: A Meta-Analysis of Randomized, Placebo-Controlled, Double-Blind Trials
研究デザイン: 無作為化二重盲検プラセボ対照試験7件を統合したメタ解析 / 対象: 眉間へA型ボツリヌストキシン20単位を投与した試験の計1,474人 / 結果: 医師評価による改善率は対照より高く、相対リスク33.54(95%信頼区間18.65〜60.33)でした。安静時の改善は相対リスク5.88(同3.49〜9.91)で、有害事象頻度に有意差を認めませんでした。 / 限界: 眉間20単位に限る統合で、製剤、評価基準、追跡期間の違いを含みます。額・目尻・口元・咬筋・広頚筋・発汗部位、他製剤の単位やまれな重篤事象を直接評価する根拠ではありません。PubMed書誌・抄録を2026年8月9日に確認し、原著全文にはアクセスできませんでした。 / 利益相反: PubMed抄録に利益相反の記載はありません。研究支援種別はResearch Support, Non-U.S. Gov'tと索引されています。
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ボトックスビスタ注用50単位 電子化された添付文書
研究デザイン: PMDAが公開する国内承認医薬品の電子添文 / 対象: 65歳未満の成人における眉間又は目尻の表情じわ / 結果: 眉間は合計10〜20単位、目尻は合計12〜24単位を承認用量とし、いずれも3か月以内の再投与を避けます。力価単位は製剤固有で、他のボツリヌス毒素製剤と換算できません。 / 限界: ボトックスビスタの承認情報であり、コアトックス、額・バニーライン・ガミースマイル・口角・顎・エラ・首・発汗部位の効果や用量を承認する資料ではありません。PMDA電子添文を2026年8月9日に確認しました。 / 利益相反: 医薬品電子添文のため該当しません。
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Eyebrow height after botulinum toxin type A to the glabella
研究デザイン: 単施設の用量範囲・並行群・二重盲検無作為化試験で撮影された写真を後ろ向きに解析 / 対象: 最大収縮時に中等度〜重度の眉間じわがある女性79人。眉間7点へ10、20、30、40単位を投与し、20週まで2週ごとに撮影 / 結果: 20〜40単位では眉外側の挙上に続いて中央・内側の挙上がみられ、12週で最大となりました。10単位では初期に軽い眉下垂と最も小さい反応がみられました。 / 限界: 女性の眉間単独治療を写真で後ろ向き解析した古い試験で、現在のボトックスビスタ電子添文と注入点・用量が異なります。額・目尻・口元・咬筋・首の治療や、個別の自然さを比較した研究ではありません。PubMed書誌・抄録を2026年8月9日に確認し、原著全文にはアクセスできませんでした。 / 利益相反: PubMed抄録に資金提供・利益相反の記載はありません。
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Repeated botulinum toxin A injections for the treatment of lines in the upper face: a retrospective study of 4,103 treatments in 945 patients
研究デザイン: 3回以上の連続治療を受けた診療録を横断的に後ろ向きレビュー / 対象: 945人の上顔面4,103治療。眉間治療93.9%、複数部位81.5%、他の美容治療併用57.5% / 結果: 治療量、間隔、満足度は反復期間中に安定し、累積的な有害事象の増加を認めませんでした。主な有害事象は局所の内出血と眼瞼下垂で、いずれも軽度または中等度でした。 / 限界: abobotulinumtoxinA(Dysport)を用いた後ろ向き診療録研究で、対照群がなく、治療部位・併用治療が混在します。現在のボトックスビスタ、他製剤、下顔面・頸部・発汗部位、まれな重篤事象へ直接一般化できません。PubMed書誌・抄録を2026年8月9日に確認し、原著全文にはアクセスできませんでした。 / 利益相反: PubMed抄録に資金提供・利益相反の記載はありません。
よくあるご質問
Q. ボトックスはヒアルロン酸のようにしわを埋めますか?
ボツリヌストキシンは表情筋の収縮を一時的に弱め、動作でできる折れ目を寄りにくくします。ヒアルロン酸は容量や支持を補う治療です。真顔でも深く残る溝は、筋肉の動きを整えた後に皮膚表面と支持の状態を再評価します。
Q. いつから効き、どのくらい続きますか?
一般に数日後から変化が現れ、約2週間で表情と左右差を評価します。ボトックスビスタの電子添文では効果は通常3〜4か月で消失すると説明され、国内承認部位では3か月以内の再投与を避けます。
Q. 自然な表情を残すために何を確認しますか?
真顔だけでなく、額を上げる、眉を寄せる、目を細める、笑う動作を見ます。眉・まぶた・口角の高さと左右差を記録し、弱めたい筋肉と残したい表情を分け、約2週間後に同じ動作で比べます。
Q. 国内で承認されている部位と製剤の単位について教えてください。
ボトックスビスタは65歳未満の成人の眉間・目尻の表情じわに国内承認されています。額・バニーライン・口角・顎・ガミースマイル・エラ・首などは適応外を含み、コアトックスは国内未承認です。力価単位は製剤固有で、製剤間を同じ数字で換算しません。
Q. 治療後にすぐ連絡した方がよい症状はありますか?
飲み込みにくさ、声質の変化、息苦しさ、全身の強い脱力、視力低下・複視、強いアレルギー症状があれば、直ちに医療機関へ連絡してください。
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