クマとり後に涙溝が残るときの追加治療の考え方
CO2レーザーを用いた経結膜脱脂の術前と1か月後を、正面・両斜位で比べた症例です。目の下のふくらみはほぼ目立たなくなり、内側の涙溝と青みは残りました。脱脂後の凹みは経過を見て、ご本人が必要と感じる場合に追加治療を選びます。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2022年2月22日
- 実質更新日
- 2026年8月9日



Contents
目次
正面の1か月後では、減ったふくらみと残る涙溝を見ます
正面写真は上段が施術前、下段が術後1ヶ月です。CO2レーザーを用いて下まぶたの結膜側から眼窩脂肪を切除し、施術前に見られた目の下のふくらみは、1ヶ月後にはほぼ分からない程度になっています。
内側の涙溝には浅い凹みが残り、その部分にやや青みが見えます。経結膜脱脂は前方へ突出する脂肪を減らす手術で、涙溝を充填する操作ではないため、術後写真ではふくらみと凹みを別々に見ます。
この時点では、下眼瞼の位置、左右差、脂肪の残り方、取りすぎによる凹み、軽い凹凸も正面で確認します。内出血は1週間程度、内出血がある場合の腫れは1ヶ月程度続くことがあるため、その変化も形の左右差と分けて追います。
脱脂後に凹みと下眼瞼位置を追う理由として、眼周囲の凹み・陥凹は0〜9.8%、下眼瞼外反は0〜11.3%、下眼瞼後退は0〜4.3%との報告がありました(参考文献2)。
一方向の斜位で、涙溝から頬へ続く段差を確認します
一方向目の斜位も上段が施術前、下段が術後1か月です。横から見た眼窩脂肪のふくらみは小さくなり、下眼瞼から頬へ続く線がなだらかになっています。一方、目頭側の涙溝と青みは術後にも見えます。
斜位では、残る影が涙溝だけに限られるのか、頬の内側まで凹みが続くのかを見ます。涙溝が局所的に残る場合はヒアルロン酸、頬まで広く容量が不足する場合は脂肪注入、皮膚の質感や色調も整えたい場合はPRPを追加治療の候補にします。
ヒアルロン酸を選ぶときは、1ヶ月後の腫れが落ち着いてから凹みの範囲を測り、薄い下眼瞼へ一度に量を集めず少量ずつ補います。注入後は、凹みの変化とともに、腫れ、内出血、凹凸、青みを追います。
脱脂後に残る涙溝へ少量ずつヒアルロン酸を補う判断の参考として、全員が改善を自覚し、4週時点で75%が結果に満足した一方、2週時点で軽い腫れ6人、中等度の腫れ1人、内出血2人との報告がありました(参考文献1)。
反対の斜位まで比べ、追加治療を必要な方だけ選びます
反対方向の斜位も上段が施術前、下段が術後1か月です。こちら側でもふくらみが減り、内側の涙溝は残っています。両斜位をそろえることで、片側だけ脂肪が残っていないか、涙溝や頬の凹みに左右差がないかを確認できます。
当院では、1回目は脂肪切除だけを行い、術後経過を見てから涙溝や頬の凹みへの追加治療を考えます。脱脂だけでふくらみが改善し、残る涙溝を気にされない方も多いためです。この症例の方も、ふくらみがなくなったことを喜ばれ、ヒアルロン酸、PRP、脂肪注入の追加を希望されませんでした。
頬まで続く広い凹みに自己脂肪を使う場合は、補える範囲に加えて、腫れ、凹凸、しこり、脂肪壊死、定着量のばらつきも含めて選びます。局所的な涙溝だけを少量補いたい場合と、頬まで面で補いたい場合で治療を分けます。
頬まで続く広い凹みに脂肪注入を選ぶ際に効果と合併症を一緒に考える根拠として、満足率90.9%、全合併症率7.9%で、主な合併症は腫れ、結膜浮腫、凹凸だったとの報告がありました(参考文献3)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 術後1か月に正面と左右斜位を撮影し、眼窩脂肪の残り方、内側の涙溝、頬へ続く凹み、青み、下眼瞼の位置を順に見ます。
- ふくらみの改善に満足されていれば追加施術は行いません。残る凹みが気になる場合は、局所的な涙溝にはヒアルロン酸、頬まで広い容量不足には脂肪注入、皮膚の質感や色調にはPRPを候補にします。
- 術後の腫れが落ち着いた状態で追加量と範囲を決め、治療後は正面・両斜位を同じ条件で撮影して、凹みの改善、むくみ、凹凸、左右差を追います。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 追加治療なし・経過観察 | ふくらみの改善に満足し、残る涙溝や青みを気にされない状態 | 残る凹みが正面・斜位で影を作り、ご本人が改善を希望する状態 | 術後1か月を目安に再評価 | 追加施術によるダウンタイムなし | 追加施術費なし | 要確認 |
| ヒアルロン酸 | 脱脂後に局所的な涙溝の凹みが残る状態 | 眼窩脂肪のふくらみや浮腫が主で、容量を足すと重く見える状態 | 通常1回。腫れが落ち着いてから再評価 | 腫れ、内出血、凹凸、青み、しこり。まれに血管閉塞や視覚障害 | 1本1cc 77,000円、カテラン針11,000円(税込) | 要確認 |
| 脂肪注入 | 涙溝から頬へ広く容量不足が続き、自己組織で補うことを希望する状態 | 局所的な浅い涙溝だけを少量補いたい状態、長い腫れを避けたい場合 | 通常1回。定着量により追加を検討 | 腫れ、内出血、凹凸、しこり、感染、脂肪壊死、定着量のばらつき | 現行総合料金表に目周り単独の料金掲載なし | 要確認 |
費用の目安
- 経結膜脱脂術 189,000円(税込)
- ヒアルロン酸注入 1本1cc 77,000円(税込)
- カテラン針使用料 11,000円(税込)
症例で実施したのは経結膜脱脂です。ヒアルロン酸は術後に残る涙溝へ追加する場合の料金です。脂肪注入と目周りPRPの単独料金は現行総合料金表に掲載されていません。
リスク・副作用・注意点
- 経結膜脱脂:痛み、腫れ、内出血、血腫、感染、左右差、凹凸、脂肪の残存・取りすぎ、下眼瞼外反、結膜浮腫、流涙、ドライアイ、複視など
- ヒアルロン酸:腫れ、内出血、むくみ、凹凸、しこり、感染、血管閉塞、皮膚壊死、視覚障害など
- 脂肪注入:腫れ、内出血、左右差、凹凸、しこり、感染、脂肪壊死、定着量のばらつきなど
- 国内承認・適応: 経結膜脱脂は手術手技です。使用するCO2レーザー機器の承認状況は機種と使用目的により異なります。涙溝へヒアルロン酸を直接注入する場合は、製剤と注入部位により国内承認範囲外となることがあり、公的な副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
原症例の説明にある約1週間の内出血、内出血を伴う場合の約1か月の腫れ、軽度の下眼瞼外反、左右差、軽度の凹凸の残存を保持し、現行クマ治療ページの手術リスクを補った。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
-
A Prospective Study on Safety, Complications and Satisfaction Analysis for Tear Trough Rejuvenation Using Hyaluronic Acid Dermal Fillers
研究デザイン: カニューレで骨膜上へヒアルロン酸を注入した単群前向き症例集積。2週と一部4週に追跡 / 対象: 24人・48涙溝(女性22人、男性2人)。4人の医師がTeosyal Redensity 2を使用し、平均注入量は片側0.43mL / 結果: 全員が改善を自覚し、4週時点で18人(75%)が満足した。2週時点で軽い腫れ6人、中等度の腫れ1人、内出血2人、4週時点で腫れ2人・内出血0人だった。 / 限界: 対照群がなく24人と小規模で、追跡は最長4週。製剤、注入層、施術者が本症例の術後追加治療と同じではなく、長期浮腫、まれな血管障害、脱脂後涙溝への効果を評価していない。PMC全文を確認した。
-
Safety and Complications in Lower Eyelid Blepharoplasty: A Systematic Review
研究デザイン: 下眼瞼形成術36研究のシステマティックレビュー。研究間の異質性が大きいためメタ解析は行っていない / 対象: 34件の観察研究と2件の前向き臨床試験。原則50人以上かつ1年以上追跡した研究を収載 / 結果: 報告範囲は眼周囲の凹み・陥凹0〜9.8%、下眼瞼外反0〜11.3%、下眼瞼後退0〜4.3%だった。 / 限界: 術式、切開法、対象、評価法、追跡期間が混在し、発生率を統合していない。CO2レーザーを用いた経結膜脱脂だけの発生率や、本症例に合併症があることを示す資料ではない。PMC全文を確認した。
-
Efficacy, safety and complications of autologous fat grafting to the eyelids and periorbital area: A systematic review and meta-analysis
研究デザイン: 眼瞼・眼周囲への自家脂肪移植39研究のシステマティックレビュー・割合メタ解析 / 対象: 3件のコホート研究と36件の症例集積、計4,046例。美容・再建目的、上眼瞼・下眼瞼・眼周囲を含む / 結果: 統合満足率は90.9%(95%CI 86.4〜94.0%)、全合併症率は7.9%(95%CI 4.8〜12.8%)で、主な合併症は腫れ、結膜浮腫、凹凸だった。 / 限界: 多くが症例集積で比較対照は少なく、適応、脂肪の採取・処理・注入法、追跡期間が不均一だった。脱脂後涙溝だけの結果や、ヒアルロン酸との直接比較、個人の定着量は示さない。PMC全文を確認した。
-
医療広告ガイドライン
自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。
よくあるご質問
Q. この症例では何を行い、いつ撮影していますか?
CO2レーザーを用いた経結膜脱脂を行い、施術前と術後1か月を正面・左右斜位で比較しています。
Q. クマとり後に涙溝が残るのは治療不足ですか?
経結膜脱脂は眼窩脂肪のふくらみを減らす手術です。涙溝は凹みなので、ふくらみが改善した後にも残ることがあります。ご本人が残る影を気にされなければ、追加治療は必要ありません。
Q. なぜ脱脂とヒアルロン酸や脂肪注入を同時に行わないのですか?
脱脂だけで満足される方が多く、術後の腫れが落ち着いてから残る凹みの範囲を見た方が、必要な部位と量を絞れるためです。この症例でも追加施術は希望されませんでした。
Q. 残る涙溝にはどの追加治療を選びますか?
局所的な涙溝にはヒアルロン酸、頬まで広い容量不足には脂肪注入、皮膚の質感や色調も整えたい場合はPRPを候補にします。凹みの範囲、むくみ、皮膚の薄さ、希望するダウンタイムを合わせて選びます。
Q. 術後に早く連絡した方がよい症状はありますか?
急に強くなる痛み、片側だけ増える腫れ、出血、視力や見え方の変化、眼球運動の異常があれば早めに連絡してください。ヒアルロン酸を追加した後の皮膚の青白化、網目状変色、強い痛み、視覚異常も緊急対応が必要です。
ご予約・ご相談はこちら
気になる症状や治療方法について、初診予約・再診予約・お問い合わせからご相談いただけます。