医師解説しわ・たるみ

首の縦じわ・広頸筋バンドへボトックスを使う考え方

首の縦じわのうち、力を入れたときに浮く広頸筋バンドはボトックスの対象です。この症例ではフェイスラインから上頸部へのマイクロ注射と、縦バンドへのスポット注射を組み合わせ、注射直後と2週間後を左右から比較。縦の筋張りと顎下輪郭の変化を確認しました。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2022年7月3日
実質更新日
2026年8月9日
首筋ボトックスとボトックスリフトによる注射直後と2週間後の左右斜位比較

Contents

目次

  1. 2週間後は左右の縦バンドと顎下輪郭を比べます
  2. マイクロ注射とスポット注射の役割を分けます
  3. 横じわ・皮膚弛緩・顎下脂肪は別の層として見ます
  4. 2週間後に筋力・口元・嚥下まで再評価します
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

2週間後は左右の縦バンドと顎下輪郭を比べます

症例写真は、上段が注射直後、下段が2週間後です。各段の左側に左斜位、右側に右斜位を並べ、首の中央から顎下へ伸びる縦の筋張りと、顎先から首へ移る輪郭を左右から比較しています。

2週間後は、両側の縦バンドが注射直後より目立ちにくくなり、顎下から首へ続く線がなだらかに見えます。この変化は、広頸筋の下向きの収縮を弱めたことで生じる輪郭変化として評価し、顎下脂肪が減った変化とは分けます。

首筋ボトックスとボトックスリフトの主な標的は、会話、笑顔、口角を横へ引く動作などで浮く広頸筋です。診察では安静時と収縮時を左右同じ角度で記録し、縦バンドが何本浮くか、顎下から下顎縁へどこまで続くかを見ます。

2週間後に縦バンドと顎下輪郭を再評価する理由として、広頸筋治療後14日には、顎線のたるみが軽度以下となった割合は49.8%対15.9%、縦バンドが気にならない・少し気になるまで改善した割合は47.8%対11.9%だったとの報告がありました。設定された表在性筋内注射では、嚥下障害や頸部筋力低下の報告はありませんでした(参考文献1)。

マイクロ注射とスポット注射の役割を分けます

この症例では、フェイスラインから上頸部へ細かく分けるマイクロ注射と、収縮時に連続して浮く縦バンドを狙うスポット注射を組み合わせました。前者は下顎縁を下へ引く広い筋活動、後者は目立つ筋束を左右別に調整する役割です。

注入範囲は、安静時の正面・左右斜位を見たあと、口角を横へ引いて広頸筋を収縮させ、下顎縁に沿う筋活動と首の縦バンドを別々に印づけて決めます。口角や下唇の左右差も記録し、首前面の深い筋へ薬液を広げない範囲で治療します。

フェイスラインと顎下の注入範囲を分け、口角・下唇も確認する理由として、顔面部の広頸筋は主に顔面神経下顎縁枝、顎下部は第一頸枝から分節性に神経支配を受けるとの報告がありました(参考文献3)。

横じわ・皮膚弛緩・顎下脂肪は別の層として見ます

安静時にも残る横じわは皮膚の折れ目、つまむと余る皮膚は弛緩、顎下で厚みとして触れる組織は脂肪として評価します。広頸筋の収縮が横じわを深くしている場合はボトックスで動的成分を和らげますが、皮膚表面の溝そのものを埋める治療ではありません。

皮膚のゆるみが主ならRFによる引き締め、顎下脂肪の厚みが主ならHIFUリニアなど、標的となる層を変えます。縦バンドと皮膚弛緩、顎下脂肪が重なる場合は、まず動作時と安静時の写真を分け、どの変化から整えるかを決めます。

2週間後に筋力・口元・嚥下まで再評価します

2週間後は、安静時と広頸筋を収縮させた正面・左右斜位を撮影し、縦バンド、下顎縁、口角・下唇の動きを見直します。左右差や首の力の入りにくさに加え、飲み込み、声、息苦しさの変化がないかも確認します。

注射後の赤み、痛み、内出血は通常の経過でみられます。飲み込みにくさ、むせ、声の出しにくさ、息苦しさ、全身の筋力低下が現れた場合は、次回予約日を待たずにご連絡ください。

注射部位以外の症状も経過確認へ含める理由として、顔面上部へのボツリヌストキシン治療で少なくとも一つの治療関連有害事象を経験した割合は18%で、主な報告は頭痛、疼痛、こわばり、眼症状だったとの報告がありました(参考文献2)。

ボトックスビスタの国内承認は65歳未満の成人の眉間・目尻の表情じわで、首への使用は承認範囲外です。製品の単位は他のボツリヌス毒素製剤の単位へ換算できません(参考文献4)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • まず安静時の正面・左右斜位で横じわ、皮膚の余り、顎下脂肪を確認し、口角を横へ引いたときに浮く縦バンドを重ねて記録します。
  • 下顎縁を下へ引く広い広頸筋活動はマイクロ注射、連続して浮く筋束はスポット注射の候補とし、左右の本数と範囲を別々に決めます。
  • 治療前に嚥下、発声、頸部手術歴、神経筋疾患、口角・下唇の左右差を確認し、首前面の深い筋へ広がらない範囲で注入します。
  • 2週間後は同じ動作と撮影方向で、縦バンド、顎下輪郭、口元の動き、首の筋力、嚥下・発声を再評価します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
首・広頸筋ボトックス 収縮時に浮く縦の広頸筋バンドと、広頸筋が下顎縁を下へ引く状態 安静時横じわ、強い皮膚弛緩、顎下脂肪の厚みが主、嚥下・発声障害がある状態 通常1回。約2週間で安静時・収縮時を再評価 赤み、痛み、内出血、左右差、口元の動きの変化、首の筋力低下など。まれに嚥下・発声・呼吸への影響 首 55,000円 ボトックスビスタを使用する場合、首は国内承認適応外。コアトックスは国内未承認
HIFUリニア(顎下) 顎下脂肪の厚みがあり、安静時にももたつきが残る状態 縦の広頸筋バンドが主、脂肪が少なく皮膚が薄い状態 2〜4週間間隔で3回が目安 赤み、熱感、腫れ、圧痛、一時的なしびれなど。まれに熱傷、神経症状、脂肪萎縮 顎下 1回33,000円、3回99,000円 ウルトラセルZiは国内未承認医療機器
オールタイト 皮膚のゆるみ、ハリ低下、輪郭の支持低下が主な状態 縦バンドだけが主、顎下脂肪の厚みだけを減らしたい状態 1回または3回コース。皮膚の反応を見て再評価 赤み、熱感、腫れ、圧痛、乾燥など。まれに熱傷、色素変化、神経症状 300ショット 1回55,000円、3回139,000円 国内未承認医療機器

費用の目安

  • 首ボトックス:55,000円
  • HIFUリニア 顎下:1回33,000円。3回の場合99,000円
  • オールタイト:300ショット1回55,000円、3回139,000円

すべて税込・自由診療です。当院の現行料金表ではボトックスビスタとコアトックスは共通料金です。

リスク・副作用・注意点

  • 首ボトックス:赤み、痛み、腫れ、内出血、左右差、口角・下唇の動きの変化、首の力の入りにくさなど
  • 首ボトックスのまれな重い副作用:嚥下障害、誤嚥、発声障害、呼吸障害、全身性筋力低下、過敏症など
  • HIFUリニア:赤み、熱感、腫れ、圧痛、しびれ、知覚変化など。まれに熱傷、神経症状、脂肪萎縮
  • オールタイト:赤み、熱感、腫れ、圧痛、乾燥など。まれに熱傷、色素変化、神経症状
  • 国内承認・適応: ボトックスビスタは国内承認医薬品ですが、承認適応は65歳未満の成人における眉間・目尻の表情じわで、首・広頸筋への美容使用は適応外です(承認番号22100AMX00398000)。コアトックスは国内未承認医薬品です。ウルトラセルZiとオールタイトは国内未承認医療機器です。未承認の医薬品・医療機器は医師の責任で適法な輸入手続きを経て使用し、国内の医薬品副作用被害救済制度等の対象外となる場合があります。

飲み込みにくさ、むせ、声の出しにくさ、息苦しさ、全身の強い筋力低下は直ちに確認が必要です。熱治療後の強い痛み、水疱、皮膚色変化、持続するしびれも早めにご連絡ください。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Shridharani SM, Ogilvie P, Couvillion M, et al. Improving Neck and Jawline Aesthetics With OnabotulinumtoxinA by Minimizing Platysma Muscle Contraction Effects: Efficacy and Safety Results in a Phase 3 Randomized, Placebo-Controlled Study. Aesthet Surg J. 2025;45(2):194-201. doi:10.1093/asj/sjae220. PMID:39475141; PMCID:PMC11736717.

    Improving Neck and Jawline Aesthetics With OnabotulinumtoxinA by Minimizing Platysma Muscle Contraction Effects: Efficacy and Safety Results in a Phase 3 Randomized, Placebo-Controlled Study

    研究デザイン: 多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照第III相試験。単回治療後120日まで追跡 / 対象: 最大収縮時に左右とも中等度〜重度の広頸筋突出がある成人381人をonabotulinumtoxinA群186人、プラセボ群195人へ割付。安全性集団は424人 / 結果: 14日後、顎線のたるみが軽度以下となった割合は49.8%対15.9%、縦バンドが気にならない・少し気になるまで改善した割合は47.8%対11.9%。治療関連有害事象は3.8%対3.2%で、嚥下障害・頸部筋力低下の報告はなかった。 / 限界: BMI 18〜30で中等度〜重度の動的広頸筋突出を対象とし、強い皮膚弛緩、顎下脂肪、jowlを除外。onabotulinumtoxinA 26・31・36単位の特定手技であり、本症例の製剤・単位・マイクロ注射法、静的横じわへ一般化できない。Allergan Aesthetics/AbbVieが資金提供し、設計、研究、解析、データ収集・解釈、出版承認に関与。複数著者が同社の研究者・社員である。PMC全文を2026年8月9日に再確認した。

  2. Cruz VMS, Sousa-Neto SS, Pedroso CM, et al. Adverse Events in Nonsurgical Facial Aesthetic Procedures: A Systematic Review and Meta-Analysis. Oral Dis. 2026;32(2):384-405. doi:10.1111/odi.70109. PMID:41047572; PMCID:PMC13077022.

    Adverse Events in Nonsurgical Facial Aesthetic Procedures: A Systematic Review and Meta-Analysis

    研究デザイン: 非外科的顔面美容治療42研究のシステマティックレビュー・メタ解析 / 対象: 計8,853人。上顔面ボツリヌストキシンは14研究6,254人 / 結果: 上顔面ボツリヌストキシンで少なくとも一つの治療関連有害事象を経験した割合は18%。主な報告は頭痛、疼痛、こわばり、眼症状だった。 / 限界: 研究間異質性はI2=96.9%と高く、有害事象の定義、重症度、発症・回復時期が統一されていない。上顔面の結果で首、嚥下障害、広頸筋治療の発生率を示さない。著者は利益相反なしと申告。PMC全文を2026年8月9日に再確認した。

  3. Minelli L, Wilson JL, Bravo FG, et al. The Functional Anatomy and Innervation of the Platysma is Segmental: Implications for Lower Lip Dysfunction, Recurrent Platysmal Bands, and Surgical Rejuvenation. Aesthet Surg J. 2023;43(10):1091-1105. doi:10.1093/asj/sjad148. PMID:37186556; PMCID:PMC10702465.

    The Functional Anatomy and Innervation of the Platysma is Segmental: Implications for Lower Lip Dysfunction, Recurrent Platysmal Bands, and Surgical Rejuvenation

    研究デザイン: 層別解剖、組織学、シートプラスティネーションを組み合わせた解剖学研究 / 対象: 献体頭部55体。固定献体16体、新鮮献体39体、平均年齢75歳 / 結果: 顔面部広頸筋は主に顔面神経下顎縁枝、顎下部広頸筋は第一頸枝から分節性に神経支配を受け、下唇機能に関わる神経危険域を示した。 / 限界: 献体解剖であり、生体でのボツリヌストキシン拡散、注入点・単位、安全性、治療効果を検証していない。神経機能と長期変化の推論にはin vivo検証が必要。著者は利益相反なし、資金援助なしと申告。PMC全文を2026年8月9日に再確認した。

  4. アッヴィ合同会社. ボトックスビスタ注用50単位 電子添文. 2025年3月改訂(第3版). 承認番号22100AMX00398000.

    ボトックスビスタ注用50単位 電子添文

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療用医薬品電子添文 / 対象: 国内承認の適用対象は65歳未満の成人における眉間または目尻の表情じわ / 結果: 首の美容治療は承認適応に含まれず、製剤単位は他のボツリヌス毒素製剤へ換算できない。嚥下障害、呼吸障害、全身性筋力低下等への警告・注意が示されている。 / 限界: 電子添文は首の美容治療の有効性、注入範囲、単位、マイクロ注射とスポット注射の組み合わせを示す臨床研究ではない。PMDA製品情報と電子添文を2026年8月9日に再確認した。

よくあるご質問

Q. 症例写真では何が変わっていますか?

注射直後と2週間後を左右斜位で比べると、首の縦バンドが目立ちにくくなり、顎下から首へ続く輪郭がなだらかに見えます。顎下脂肪が減った変化ではなく、広頸筋の収縮を弱めた輪郭変化として評価します。

Q. 首の横じわにも同じボトックスが向きますか?

広頸筋の動きで深くなる横じわには動的成分を和らげる目的で用いることがあります。安静時にも残る皮膚の溝、皮膚弛緩、顎下脂肪が主な場合は、RF、HIFUリニア、皮膚治療など別の標的を比較します。

Q. 効果はいつ確認し、どのくらい続きますか?

この症例は2週間後に評価しました。広頸筋治療の変化は約2週間で確認しやすくなり、文献では3〜4か月かけて徐々に戻る経過が報告されています。次回時期は縦バンドの戻りと嚥下・発声を確認して決めます。

Q. 首ボトックスの料金と国内承認状況を教えてください。

首ボトックスは55,000円(税込・自由診療)です。当院ではボトックスビスタまたはコアトックスを用います。ボトックスビスタの国内承認は65歳未満の成人の眉間・目尻の表情じわで、首は承認範囲外です。コアトックスは国内未承認医薬品です。

Q. 施術後にすぐ連絡した方がよい症状はありますか?

飲み込みにくさ、むせ、声の出しにくさ、息苦しさ、首や全身の強い筋力低下が現れた場合は、直ちにご連絡ください。強いアレルギー症状や急速に広がる腫れも緊急の確認が必要です。

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