表情を保ちながらしわへボトックスを行う考え方
スタッフのボトックス症例では、笑顔を保ちながら、おでこ・目尻のしわ、ガミースマイル、ほうれい線の見え方を同時に整えました。最大笑顔と安静時を分け、上顔面は眉・まぶた、口元は歯肉露出と口角の左右差を基準に、筋肉ごとの量と位置を決めます。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2023年5月4日
- 実質更新日
- 2026年8月9日

Contents
目次
最大笑顔で、おでこ・目尻・ガミー・ほうれい線を比べます
スタッフのメンテナンス症例です。左の治療前と右の治療後を、どちらも歯を見せた最大笑顔で比較しています。おでこ、目尻、ガミースマイル、ほうれい線の4項目を治療しています。
治療後は、笑ったときのおでこの横じわと目尻から外側へ伸びる放射状のしわが減り、上唇の上に見える歯ぐきの幅も小さくなっています。鼻翼横から口角へ続くほうれい線の影は軽く見えますが、上の歯と口角の上がり方は保たれ、『しわ感のない自然で美しい笑顔』につながる変化です。
この写真は表情時の比較です。診察では同じ照明と正面位置で安静時も撮り、動きを弱めると薄くなるしわと、皮膚の折れとして残る線を別々に記録します。
おでこと目尻は、眉・まぶたの動きを残して配置します
おでこでは前頭筋を収縮させて横じわと眉の高さを見ます。上まぶたを開けるために眉を持ち上げている側は、前頭筋を広く止めると眉が重くなるため、左右の筋力と眉の位置に合わせて量と高さを変えます。
目尻では最大笑顔で眼輪筋外側の放射状じわを見て、目の下と頬へ効き過ぎない範囲へ配置します。国内承認品のボトックスビスタでは、65歳未満の成人の目尻へ左右の眼輪筋外側3か所ずつ、合計12〜24単位が承認用量です。
額は、国内添付文書上の眉間とは別部位です。ボトックスビスタの国内承認は眉間と目尻で、額、ガミースマイル、ほうれい線は承認範囲外です。症例固有の投与量は、使用製剤と部位ごとの筋力に合わせて決めます。
上顔面で表情と眉・まぶたの動きを追う理由として、眉間・額への美容目的A型ボツリヌストキシン注射後の合併症率は16%で、主な内容は頭痛、局所皮膚反応、顔面の神経筋症状だったとの報告がありました(参考文献2)。
目尻の単位と配置を決める基準として、ボトックスビスタの国内添付文書では、65歳未満の成人へ左右の眼輪筋外側3か所ずつ、合計12〜24単位を注入し、3か月以内の再投与を避けると記載されています(参考文献3)。
ガミースマイルは、歯肉露出を減らしながら口角の動きを残します
ガミースマイルでは、最大笑顔で中央と左右の歯肉露出を測り、上唇挙筋群の左右差を見ます。少量から左右対称に始め、上の歯が隠れ過ぎないこと、口角が上がること、飲水・発音に違和感がないことを治療の終点にします。
治療後写真では、歯肉露出が減った一方、上の歯と笑顔は保たれています。ガミースマイルを弱めると鼻翼横から口角へ向かう折れ込みも軽く見えることがあるため、ほうれい線は線へ直接打った結果ではなく、笑顔を作る筋肉の変化としても評価します。
口元は数単位の違いで笑い方が変わるため、研究用量をそのまま症例へ移さず、前回の部位・単位と2週後の歯肉露出、口角の高さを一組で記録します。
歯肉露出を減らしながら笑顔を保つ量と位置を考える参考として、3mm以上の歯肉露出へA型ボツリヌストキシン合計6単位を左右2か所へ注入すると、前方・後方の歯肉露出が4・12・24週に減り、48週には治療前へ戻ったとの報告がありました(参考文献5)。
安静時と最大笑顔を2週後に撮り直し、3か月以内は重ねません
注射前と約2週後に、安静、眉上げ、強い閉眼、最大笑顔を同じ順序で撮ります。おでこの横じわ、目尻の放射状じわ、歯肉露出、ほうれい線、眉と口角の左右差を並べ、表情を残せたかを確認してから追加の要否を決めます。
安静時の線だけが残っていても、表情筋が十分弱くなっていれば追加注射は行いません。皮膚に固定した折れには、ヒアルロン酸、肌治療、外用など別の方法を選び、効き過ぎを避けます。
ボトックスビスタは、症状が戻っても3か月以内の再投与を避ける用法です。前回の製剤名、各部位の単位、効き始め、最大効果、動きが戻った日を記録し、次回はカレンダーではなく実際の持続を基準にします。
前回の効き方が戻る時期を次回治療へ反映する理由として、眉間へonabotulinumtoxinA 20単位を注射し30日目に反応がみられた場合、効果持続中央値は最大収縮時120日、安静時131日だったとの報告がありました(参考文献1)。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 最初に安静、眉上げ、強い閉眼、最大笑顔を順に撮り、おでこの横じわ、目尻の放射状じわ、歯肉露出、ほうれい線と左右差を一枚ずつ記録します。
- 前頭筋は眉を支える動きを残し、眼輪筋外側は頬や下眼瞼へ効き過ぎない位置へ、上唇挙筋群は上の歯と口角の動きを保てる少量から配置します。
- 約2週後に同じ表情を撮り直し、安静時の折れが残っていても筋力が十分弱ければ追加せず、3か月以内の反復を避けて次回の部位・単位へ反映します。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ボトックスビスタ | 眉間・目尻など動きで深くなる表情じわ | 静的じわだけが主体、禁忌該当、完全無表情を希望 | 通常1回、約2週で評価 | 内出血、頭痛、左右差、眼瞼・眉下垂、表情変化 | 1部位33,000円/2部位55,000円/3部位75,000円/4部位88,000円 | 国内承認品。部位・用法を添付文書で確認 |
| HA・レーザー・外用 | 安静時に残る溝、皮膚質・光老化が主体 | 筋収縮だけを弱めたい場合 | 治療ごとに設定 | 注入・照射・外用固有の副反応 | 治療ごとに異なる | 製剤・機器・目的ごとに承認確認 |
| 経過観察 | 軽いしわ、表情変化を望まない、診断を優先 | 短期改善を希望 | 必要時 | 施術由来なし | 診察料等を確認 | 該当なし |
費用の目安
- ボトックスビスタ 表情じわ1部位33,000円/2部位55,000円/3部位75,000円/4部位88,000円。
- エラ・首55,000円。
筋肉の強さと治療部位で総額が変わります。
リスク・副作用・注意点
- 赤み、腫れ、内出血、痛み、頭痛が生じることがあります。
- 額・眉間では眉やまぶたの重さ、眼瞼下垂、左右差が起こることがあります。
- 目尻・口周りでは笑い方、発音、飲水、口唇運動に違和感が出ることがあります。
24研究の統合合併症率16%は製剤・部位が混在し、個人の率ではありません。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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眉間の表情じわに対するオンボツリヌストキシンAの持続
研究デザイン: 類似設計の第III相試験4件の個別データ統合解析 / 対象: 眉間へonabotulinumtoxinA 20単位を投与された621人。30日時点の最大収縮時反応者523人 / 結果: 30日時点の反応者で、効果持続中央値は最大収縮時120日、安静時131日だった。 / 限界: onabotulinumtoxinAの眉間20単位に限る解析であり、画像の額・目尻・ガミースマイル・ほうれい線、他製剤、異なる単位へ持続日数を直接適用できない。
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美容目的A型ボツリヌストキシン注射の合併症
研究デザイン: 美容目的の眉間・額A型ボツリヌストキシン注射を扱った系統的レビュー・メタ解析 / 対象: 24研究、A型ボツリヌストキシン4,268注射セッション、プラセボ1,234セッション / 結果: A型ボツリヌストキシン群の統合合併症率は16%で、頭痛、局所皮膚反応、顔面神経筋症状が多く、報告された合併症の多くは軽度かつ一過性だった。 / 限界: 製剤、部位、用量、合併症定義が不均一で、目尻、ガミースマイル、ほうれい線や特定製剤の発生率を示さない。70%の研究で施術者の訓練状況が記載されていない。
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ボトックスビスタ注用50単位 添付文書
研究デザイン: PMDA公開の国内医療用医薬品添付文書 / 対象: 65歳未満の成人における眉間または目尻の表情皺 / 結果: 眉間は皺眉筋4か所と鼻根筋1か所へ合計10〜20単位、目尻は左右の眼輪筋外側3か所ずつへ合計12〜24単位を投与し、いずれも3か月以内の再投与を避ける。眉間と目尻の同時治療は合計最大44単位である。 / 限界: 添付文書上の国内承認部位は眉間と目尻であり、額、ガミースマイル、ほうれい線への有効性・安全性と用量を示すものではない。症例画像の製剤名と単位も確定できない。
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未承認医薬品等の情報提供
国内未承認製剤の入手経路・代替・救済制度表示の公的資料。
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Coretox for poststroke upper limb spasticity
研究デザイン: 単施設二重盲検無作為化比較試験 / 対象: 最大笑顔で前歯部の歯肉露出が3.0mm以上ある健康な49人。Yonsei pointまたは上唇鼻翼挙筋へ左右各3単位、合計6単位を注入 / 結果: 両群とも前方と左右後方の歯肉露出が4、12、24週に減り、48週には治療前へ戻った。群間差はなく、満足度は有意に上昇し、有害事象は少数だった。 / 限界: 単施設49人の研究で、使用製剤の単位を他製剤へ換算できない。画像症例の製剤・単位、ほうれい線の変化、発音・飲水などの詳細な機能評価を示す研究ではない。
よくあるご質問
Q. この症例写真では、どこが変わっていますか?
最大笑顔で比べると、治療後はおでこの横じわ、目尻の放射状じわ、歯肉露出、ほうれい線の影が軽く見えます。上の歯と口角の上がり方は保たれています。
Q. ボトックスで表情がなくなりませんか?
前頭筋では眉を支える動き、目尻では頬と下眼瞼、口元では上の歯と口角の動きを残す量と位置にします。約2週後に同じ表情を再撮影し、左右差を確認します。
Q. この症例の製剤名と単位は何ですか?
国内承認品のボトックスビスタでは、眉間10〜20単位、目尻12〜24単位が承認用量です。額・ガミースマイル・ほうれい線は国内承認範囲外で、使用製剤と部位ごとの筋力に合わせて投与量を決めます。
Q. ガミースマイルとほうれい線は同時に変わりますか?
上唇を引き上げる筋肉の働きを弱めると、歯肉露出と鼻翼横の折れ込みが一緒に軽く見えることがあります。口角や発音へ効き過ぎない少量から始めます。
Q. 追加注射と次回治療はいつ判断しますか?
効き方が安定する約2週後に左右差を評価します。ボトックスビスタは3か月以内の再投与を避ける用法で、前回の動きが戻った時期を次回設計へ反映します。
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