医師解説

ヒアルロン酸治療で適応を見極めるときの考え方

中年男性の頬外側の凹みへボリューマ2本(計2cc)を注入した直後の経過です。半顔・頬拡大・全顔で、頬の支えとフェイスラインの変化を比べ、口元と顎は次の治療候補として分けました。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2024年11月28日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. 半顔で、頬の支えとフェイスラインの連続を比べます
  2. 頬の拡大写真で、凹みへ置いたボリューマの変化を見ます
  3. 全顔では、注入部位より顔全体の重心を見ます
  4. 口元と顎は、頬の変化を見てから次の段階へ進めます
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

半顔で、頬の支えとフェイスラインの連続を比べます

年齢とともに頬のたるみが気になっていた中年男性へ、副院長がヒアルロン酸を注入した症例です。施術直前と直後を同じ半顔で比較し、点線に沿って頬外側からフェイスラインへ続く輪郭を確認します。

直後は頬外側の支えが加わり、フェイスラインが上方へ連続して見えました。局所の線を直接埋めるのではなく、横顔と斜位で凹みの位置を定め、そこから下顔面がどう見えるかを確認した変化です。

頬の拡大写真で、凹みへ置いたボリューマの変化を見ます

頬の拡大写真では、白い円で示した頬外側の凹みを注入部位としています。ジュビダームビスタ ボリューマ XCを2本、計2cc使用し、直後は凹みが浅くなって、頬の外側の輪郭がなだらかにつながっています。

使用量を線ごとに足すのではなく、頬の支えとして計2ccを配分し、口元と顎は同日に追加しませんでした。まず頬の変化を正面と斜位で確認し、腫れが落ち着いた後に下顔面へ必要な量を決める順序です。

この症例のように中顔面へヒアルロン酸を注入した後、腫れ、凹凸、硬さを部位別に確認する根拠として、鼻唇溝と比べて中顔面・口周囲・口唇でこれらの反応の報告割合が高かったとの報告がありました(参考文献1)。

全顔では、注入部位より顔全体の重心を見ます

全顔写真まで引くと、注入した一点を強く目立たせず、頬からフェイスラインまでの立体感が変わって見えます。矢印に沿って、右側の頬から下顔面へ続く輪郭の見え方を確認します。

診察では目元・鼻・口角などの基準線をそろえ、中顔面の立体感を前後で比べます。ヒアルロン酸は施術直後から形の変化を確認でき、内出血がなければ見た目のダウンタイムは少なく、この症例で使用したボリューマは持続の目安を約1年半として説明しています。直後の形を一度記録し、腫れが落ち着いた時点で左右差と輪郭を再評価します。

口元と顎は、頬の変化を見てから次の段階へ進めます

この症例では、次の治療候補を口元と顎に置きました。頬を支えた直後に下顔面まで一度に足さず、頬の腫れが落ち着いてから、口角横の影と顎先の輪郭がどこまで残るかを見ます。

頬、口元、顎では血管の走行と必要な注入層が異なります。正面・斜位・横顔を再撮影し、追加するなら目的と総量を部位ごとに決め、頬の支持を損なわない順で進めます。

部位が変わるたびに血管走行と注入層を確認する理由として、非永久性フィラーの合併症436件中273件が一過性、163件が重度または永続性に分類され、重い合併症は鼻・眉間・前額で多かったとの報告がありました(参考文献2)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • 正面・左右斜位・横顔で、頬外側の凹みと、その下のフェイスラインへ続く影を同じ位置から確認します。
  • この症例では、頬の凹みを支えるためにボリューマ2本(計2cc)を先に配分し、口元と顎は同日に追加しませんでした。
  • 直後の形と腫れが落ち着いた後の形を分けて記録し、残る口元の影と顎先の輪郭にだけ次の治療量を設定します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
ヒアルロン酸による頬外側の支持 頬外側の凹みと支持低下がフェイスラインの影へ続く状態 強い皮膚余剰、活動性の炎症・感染、容量追加で頬が重く見える状態 通常1回。腫れが落ち着いた後に左右差と残る凹みを再評価 痛み、赤み、腫れ、圧痛、内出血、左右差、凹凸、しこり 1本1cc 77,000円。本症例の2本は154,000円 要確認
口元・顎への段階的な追加注入 頬を支えた後にも口角横の影や顎先の輪郭不足が残る状態 頬の直後反応が残り、下顔面へ必要な量を判定しにくい時期 頬の経過確認後に1回。必要部位だけを追加 痛み、赤み、腫れ、圧痛、内出血、左右差、凹凸、しこり 1本1cc 77,000円。使用量に応じて算定 要確認
ヒアルロニダーゼによる溶解 ヒアルロン酸の過剰、位置ずれ、しこり、血流障害が疑われる状態 ヒアルロン酸以外の製剤による凹凸、原因が確定していない腫れ 反応を見て1回または追加 痛み、赤み、腫れ、内出血、アレルギー、元の凹みの再出現 ヒレネックス100単位 44,000円 要確認

費用の目安

  • ヒアルロン酸 1本1cc 77,000円
  • 本症例はボリューマ2本(計2cc)を使用し、現在の料金では154,000円
  • ヒアルロニダーゼ ヒレネックス100単位 44,000円

表示価格は自由診療・税込です。口元・顎への追加注入は本症例では行っておらず、追加時は使用本数に応じて算定します。

リスク・副作用・注意点

  • 痛み、赤み、腫れ、圧痛、内出血、左右差、凹凸、違和感、アレルギー、感染、しこり
  • 血管への誤注入や圧迫による血管閉塞、皮膚障害・壊死、視力障害、失明、脳梗塞
  • 強い痛み、皮膚の白色・紫色変化、網目状の変色、見え方の異常、強い頭痛は緊急連絡が必要な症状
  • 国内承認・適応: 本症例で使用したジュビダームビスタ ボリューマ XCは国内承認品(承認番号22800BZX00338000)です。承認された使用目的は、成人の中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリュームを増大するため、皮下または骨膜上深部へ注入することです。血管内への注入は禁止されています。

注入当日は飲酒、激しい運動、長時間の入浴を避け、注入部位を強く圧迫したり揉んだりしないでください。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Colon J, Mirkin S, Hardigan P, Elias MJ, Jacobs RJ. Cureus. 2023;15(4):e38286. doi:10.7759/cureus.38286.

    Adverse Events Reported From Hyaluronic Acid Dermal Filler Injections to the Facial Region: A Systematic Review and Meta-Analysis

    研究デザイン: 顔面ヒアルロン酸注入を評価した無作為化試験・臨床試験19件のシステマティックレビュー・メタ解析 / 対象: 成人の顔面ヒアルロン酸注入を評価した19研究 / 結果: 鼻唇溝と比べ、中顔面、口周囲、口唇では腫れ、しこり・凹凸、硬さの報告割合が高く、疼痛、紅斑、内出血、圧痛、掻痒、変色には明確な部位差がなかったとの報告がありました。 / 限界: 製剤、部位、針・カニューレ、注入量が不均一で、臨床試験を中心にした解析のため、まれな血管閉塞の発生率は評価できない。ボリューマ2ccを頬へ注入した本症例の最終結果や、段階的注入と同日注入の優劣を直接評価した研究ではない。原著全文を2026年8月8日に確認した。

  2. Oranges CM, Brucato D, Schaefer DJ, Kalbermatten DF, Harder Y. Plast Reconstr Surg Glob Open. 2021;9(10):e3851. doi:10.1097/GOX.0000000000003851.

    Complications of Nonpermanent Facial Fillers: A Systematic Review

    研究デザイン: 症例報告37件と後ろ向き研究9件をまとめたシステマティックレビュー / 対象: 46報・164人に生じた436件の非永久性フィラー合併症 / 結果: 436件中273件が一過性、163件が重度または永続性に分類され、重い合併症は鼻、眉間、前額で多く報告されたとの報告がありました。 / 限界: 合併症が起きた症例だけを集めた症例報告・後ろ向き研究で、全注入患者を分母とする発生率は算出できない。頬、口元、顎を段階的に治療する方法の効果を比較した研究ではなく、重い合併症が他部位で起きないことも示さない。原著全文を2026年8月8日に確認した。

  3. PMDA

    医療機器の承認審査に関する情報

    販売名、承認番号、承認範囲を確認する公的情報です。

  4. 厚生労働省

    医療広告ガイドライン

    自由診療の費用、主なリスク・副作用、未承認機器等の表示を確認する公的資料です。

よくあるご質問

Q. この症例では、どこへ何をどれくらい注入しましたか?

頬外側の凹みを中心に、ジュビダームビスタ ボリューマ XCを2本、計2cc使用しました。画像は施術直前と直後の比較です。

Q. なぜ口元と顎を同時に治療しなかったのですか?

頬の支えを先に作ると、口元の影とフェイスラインの見え方も変わるためです。頬の腫れが落ち着いた後に、残る口元の影と顎先の輪郭を見て追加量を決めます。

Q. 変化はいつ分かり、どのくらい続きますか?

形の変化は施術直後から確認できますが、腫れが落ち着いた後に最終的な輪郭を再評価します。この症例で使用したボリューマは、持続の目安を約1年半として説明しています。

Q. ダウンタイムと緊急連絡が必要な症状を教えてください。

痛み、赤み、腫れ、圧痛、内出血、左右差、凹凸、しこりなどが起こることがあります。強い痛み、皮膚の白色・紫色変化、網目状の変色、見え方の異常、強い頭痛がある場合はすぐに当院へ連絡してください。

Q. この症例の料金とボリューマの国内承認状況を教えてください。

ヒアルロン酸は1本1cc 77,000円で、本症例の2本は現在の料金では154,000円です。ボリューマ XCは国内承認品で、成人の中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリュームを増大する目的で承認されています。

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