医師解説

メイクの陰影から考える中顔面の加齢変化とヒアルロン酸注入

メイクでは、こめかみ・頬・ほうれい線へハイライトを置き、5年前の頬の高さをイメージしてシェーディングを約1cm高く入れます。当院では、この陰影を希望する立体感の共有に使い、下眼瞼境界、ゴルゴ線、頬前方、鼻唇溝の支持を順に診ます。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2025年3月30日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. 加齢の仕組みとメイクを同じ場で伝えたイベント
  2. ハイライトとシェーディングで、希望する顔の重心を表します
  3. 1人8分の相談で、気になる影と希望する立体感を聞きました
  4. メイクの位置を、四つの診察所見へ置き換えます
  5. 下眼瞼境界から頬・鼻唇溝へ、支持を上から順に再評価します
  6. 腫れが落ち着いた後、同じ照明と角度で陰影を見直します
  7. 診療で確認するポイント
  8. 治療選択の比較
  9. 費用の目安
  10. リスク・副作用・注意点
  11. 関連記事
  12. 関連施術・関連症状のご案内
  13. 執筆・監修
  14. 参考にした一次情報・ガイドライン
  15. よくあるご質問

加齢の仕組みとメイクを同じ場で伝えたイベント

雑誌『婦人画報』『25ans』と、ヒアルロン酸・ボツリヌストキシン製剤メーカーのAllergan Aestheticsが開催したイベントに、相談を担当する医師として参加しました。

加齢によって顔の陰影が変わる仕組みを学び、メイクの実演で希望する立体感を言葉にする構成です。メイクと美容医療に共通する『どこを明るく見せ、顔の重心をどこへ置くか』という視点を、治療相談へつなげます。

ハイライトとシェーディングで、希望する顔の重心を表します

実演では、こめかみの凹み、頬、ほうれい線へハイライトを置きました。影が深く見える場所を明るくすることで、顔の面が前へ出たように見せる方法です。

シェーディングは、5年前の頬の高さをイメージし、普段より約1cm高い位置へ入れました。頬の頂点を高く見せると、下眼瞼から頬へ続く境界や鼻唇溝の陰影も変わるため、どの高さを希望しているかを共有できます。

1人8分の相談で、気になる影と希望する立体感を聞きました

参加者一人ひとりに約8分、全体で2時間弱のカウンセリングを行いました。当院の診療では、気になる場所に加え、正面・斜位・表情を動かしたときの見え方と、どのような印象へ近づけたいかを確認します。

メイクで明るくしたい場所は希望する印象として記録し、安静時にも残る凹みは正面・斜位の観察と触診へ進めます。美容医療の相談では、希望する陰影を解剖学的な所見へ置き換えて治療順序を決めます。

メイクの位置を、四つの診察所見へ置き換えます

こめかみのハイライトでは側頭部の凹み、頬のハイライトと約1cm高いシェーディングでは頬前方の投影、ほうれい線のハイライトでは鼻唇溝の影を見ます。メイクは完成後に希望する光の位置を示し、診察ではその光をつくる骨格、脂肪、皮膚の支持を確認します。

下眼瞼境界では眼窩脂肪のふくらみ、涙溝、頬上部の支持を見ます。ゴルゴ線では頬の前内側へ斜めに入る溝と頬脂肪の位置、鼻唇溝では小鼻の基部と頬の重みを分け、正面と斜位で影が深くなる方向を記録します。

頬前方の支持不足がはっきりする場合に中顔面へヒアルロン酸を用いる理由として、Juvéderm Volumaで治療した人の中顔面ボリューム不足は8週で96.0%、78週で81.7%に改善が認められたとの報告がありました(参考文献1)。

下眼瞼境界から頬・鼻唇溝へ、支持を上から順に再評価します

正面では下眼瞼から頬への連続性と左右差、斜位では頬の頂点とゴルゴ線、側面では頬前方の投影を見ます。触診では骨格支持、脂肪の移動性、浮腫を確認し、どの面を先に支えると陰影が変わるかを決めます。

頬前方または外側の支持不足が主な場合は中顔面から整え、その後に下眼瞼境界と鼻唇溝を見直します。脂肪突出、浮腫、皮膚色が主な下眼瞼は、それぞれに合う治療経路へ分けます。

ヒアルロン酸注入では、過去の注入歴と血管走行を確認し、少量ずつ輪郭を見直します。通常と異なる強い痛み、皮膚の青白化、視覚異常が生じた場合は、血流障害を疑って直ちに対応します。

頬を約1cm高く見せるシェーディングは、希望する顔の重心を共有する手がかりです。顔型と治療前の特徴に応じて介入を変え、個別の治療計画を作るとの報告がありました(参考文献2)。

下眼瞼境界では、凹みの位置と眼窩下動脈の走行を重ねて注入計画を立てます。眼窩下動脈は一般的な中顔面注入範囲を走り、滑車上動脈・鼻背動脈・角動脈へつながる枝が確認されたとの報告がありました(参考文献3)。

当院で中顔面の支持に用いる選択肢の一つ、ボリューマXCは、国内電子添文では成人の中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリュームを増大する製剤と記載されています(参考文献4)。眼窩周囲は注入しないよう警告されているため、下眼瞼境界の影は中顔面の支持から順に評価します。

腫れが落ち着いた後、同じ照明と角度で陰影を見直します

治療直後は頬の高さと下眼瞼から頬へのつながりを確認し、腫れが落ち着いた再診時に同じ照明、表情、正面・左右斜位で撮影します。

再診では、頬の頂点が希望する高さにあるか、ゴルゴ線と鼻唇溝の影がどこに残るかを確認します。追加する場合は、残る支持不足を示す範囲へ絞り、顔全体の重心を見ながら決めます。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • こめかみ・頬・ほうれい線へ置くハイライトと、約1cm高く入れるシェーディングを、希望する光の位置と顔の重心を共有する地図として使います。
  • 下眼瞼境界、ゴルゴ線、頬前方、鼻唇溝を正面・斜位・側面で見て、骨格支持、脂肪の位置、皮膚のゆるみ、浮腫を分けます。
  • 頬の支持不足が主なら中顔面から整え、下眼瞼境界と鼻唇溝の変化を再評価して次の治療範囲を決めます。
  • 少量ずつ輪郭を確認し、腫れが落ち着いた再診で同じ照明と角度を比較して、追加の必要性を判断します。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
メイクのハイライト・シェーディング こめかみ、頬、鼻唇溝の陰影を変え、希望する光の位置や顔の重心を確かめたい状態 骨格支持や脂肪の位置そのものを変えたい状態 毎回調整できる なし。皮膚に合わない化粧品では刺激が起こることがある 使用する化粧品による 医療行為ではない
中顔面ヒアルロン酸 頬前方または外側の支持不足があり、下眼瞼境界・ゴルゴ線・鼻唇溝へ続く影が深い状態 浮腫、皮膚色、脂肪突出が主で、ボリューム追加が陰影の改善につながりにくい状態 1回後に腫れが落ち着いた時点で再評価 痛み、赤み、腫れ、内出血、左右差、凹凸・しこり。まれに血管閉塞・視覚障害 1本1cc 77,000円。使用量に応じる ボリューマXCは中顔面への使用が国内承認。承認番号22800BZX00338000
こめかみヒアルロン酸 側頭部の凹みが主で、頬上部へ続く外側輪郭の影が強い状態 頬前方の支持不足だけが主な状態、活動性の炎症・感染がある状態 1回後に正面・左右斜位で再評価 痛み、赤み、腫れ、内出血、左右差、凹凸・しこり。まれに血管閉塞・視覚障害 1本1cc 77,000円。使用量に応じる ボリューマXCはこめかみへの使用が国内承認。承認番号22800BZX00338000

費用の目安

  • ヒアルロン酸 1本1cc:77,000円(税込)
  • カテラン針を使用する場合:11,000円(税込)
  • 残注入1回:3,800円(税込)。残った製剤は6か月後に破棄

使用量とカテラン針の使用有無により総額が変わります。

リスク・副作用・注意点

  • 痛み、赤み、腫れ、内出血、圧痛、左右差、凹凸、硬結・しこり、感染、遅発性の炎症が起こることがあります。
  • 血管内への誤注入または血管・神経の圧迫により、血管閉塞、皮膚壊死、視力障害・失明、脳卒中が起こる可能性があります。
  • 通常と異なる強い痛み、皮膚の青白化・紫色または網目状の変化、視覚異常がある場合は、直ちに注入を止めて緊急対応します。
  • 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは、成人の中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリュームを増大する目的で国内承認されています(承認番号22800BZX00338000)。電子添文では眼窩周囲へ注入しないよう警告されています。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Callan P, Goodman GJ, Carlisle I, et al. Efficacy and safety of a hyaluronic acid filler in subjects treated for correction of midface volume deficiency: a 24 month study. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2013;6:81-89. doi:10.2147/CCID.S40581. PMID:23687448; PMCID:PMC3610404.

    Efficacy and safety of a hyaluronic acid filler in subjects treated for correction of midface volume deficiency: a 24 month study

    研究デザイン: オーストラリア6施設で行われた、対照群のない前向き多施設観察研究。初回治療後24か月まで追跡した。 / 対象: 30〜60歳の中顔面ボリューム不足103人。平均47歳、81%が女性で、初回4週間までの総注入量は平均5.1mLだった。 / 結果: MFVDSによる改善は8週96.0%、78週81.7%だった。24か月時点で再治療を受けていない完了者45人のうち43人が改善を維持した。初回治療後の主な有害事象は内出血40.8%、腫脹14.6%、痛み・圧痛7.8%だった。 / 限界: 対照群がなく、24か月まで再治療なしで完了したのは45人で、特定製剤と中顔面領域の結果である。下眼瞼、ゴルゴ線、鼻唇溝への直接注入や、メイクで示した位置の効果を検証していない。

  2. Chao YY, Chhabra C, Corduff N, et al. Pan-Asian Consensus—Key Recommendations for Adapting the World Congress of Dermatology Consensus on Combination Treatment With Injectable Fillers, Toxins, and Ultrasound Devices in Asian Patients. J Clin Aesthet Dermatol. 2017;10(8):16-27. PMID:28979659; PMCID:PMC5605210.

    Pan-Asian Consensus—Key Recommendations for Adapting the World Congress of Dermatology Consensus on Combination Treatment With Injectable Fillers, Toxins, and Ultrasound Devices in Asian Patients

    研究デザイン: アジア人の顔面美容治療に関する11人の専門家によるコンセンサス。合意度70〜90%を中等度、90%超を強い合意とした。 / 対象: アジアの複数地域で診療する専門家11人による推奨で、患者を追跡した臨床試験ではない。 / 結果: 顔型と治療前の特徴に応じて個別の治療計画を立てることに全員が合意し、中顔面のボリューム不足を前内側、頬下、頬骨下などに分けて評価することを推奨した。 / 限界: 専門家合意で患者の比較成績はなく、メイクの位置、特定製剤、注入量、長期合併症率を検証していない。複数著者がAllergan、Merz、Galdermaなどとの講演・顧問・研究関係を開示している。

  3. Hufschmidt K, Bronsard N, Foissac R, et al. The infraorbital artery: Clinical relevance in esthetic medicine and identification of danger zones of the midface. J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2019;72(1):131-136. doi:10.1016/j.bjps.2018.09.010. PMID:30327185.

    The infraorbital artery: Clinical relevance in esthetic medicine and identification of danger zones of the midface

    研究デザイン: 新鮮献体18体で眼窩下動脈を解剖し、着色したヒアルロン酸の模擬注入で危険範囲を検討した解剖研究。 / 対象: 新鮮献体18体の中顔面。生体患者への注入成績を追跡した研究ではない。 / 結果: 眼窩下動脈の枝は一般的な中顔面注入範囲を走り、滑車上動脈、鼻背動脈、角動脈へつながる吻合を確認した。頬中央の浅い層と眼窩下溝の骨膜上を危険範囲として示した。 / 限界: 献体解剖と模擬注入の研究で、実際の患者における閉塞率、最も安全な注入器具・量、特定製剤の治療成績を比較していない。

  4. アラガン・ジャパン株式会社. ジュビダームビスタ ボリューマXC 電子添文. 2023年8月(第1版). 医療機器承認番号22800BZX00338000.

    ジュビダームビスタ ボリューマXC 電子添文

    研究デザイン: PMDA公開の国内医療機器電子添文 / 対象: 中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリュームを増大する治療を受ける成人 / 結果: 成人の中顔面・下顎部・こめかみで減少したボリュームを増大する目的で、皮下または骨膜上深部へ注入する。血管内注入と眼窩周囲への注入を禁じ、視力異常、皮膚の青白化、異常な痛みがあれば直ちに注入を止めるよう警告している。 / 限界: 電子添文はメイクで示した位置、個別の注入量・配分、イベント参加者の治療成績を評価した臨床研究ではない。

よくあるご質問

Q. メイクのハイライトは、ヒアルロン酸を入れる位置と同じですか?

ハイライトは、明るく見せたい面と希望する立体感を共有する手がかりです。注入範囲は、正面・斜位・側面で骨格、脂肪、皮膚の支持、血管走行を確認して決めます。

Q. 頬を約1cm高く見せるシェーディングは、どの所見に対応しますか?

希望する頬の頂点を示します。診察では、下眼瞼から頬への境界、頬前方の投影、ゴルゴ線、鼻唇溝の影を見て、実際に支える範囲と順序を決めます。

Q. 下眼瞼境界とほうれい線を一緒に見るのはなぜですか?

頬の位置と支持が変わると、上側の下眼瞼境界と下側の鼻唇溝の陰影がともに変わるためです。まず頬を再評価し、残る所見に合う治療を選びます。

Q. 中顔面に使うヒアルロン酸の承認状況を教えてください。

当院で選択肢となるジュビダームビスタ ボリューマXCは、成人の中顔面・下顎部・こめかみの減少したボリュームを増大する目的で国内承認されています。眼窩周囲は注入しないよう電子添文で警告されています。

Q. 料金と、施術後すぐに連絡が必要な症状を教えてください。

ヒアルロン酸は1本1cc 77,000円です。カテラン針を使用する場合は11,000円が加わります。通常と異なる強い痛み、皮膚の青白化・紫色または網目状の変化、視力や見え方の異常がある場合は、直ちにご連絡ください。

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