医師解説しわ・たるみ

フェイスライン治療でエラボトックスとヒアルロン酸を組み合わせる考え方

エラボトックスで咬筋の張りを弱め、ジュビダームビスタ ボリューマXC 1ccであごのラインを補った症例です。治療前と1ヶ月後を正面・両斜位で比べ、下顔面の横幅を作る筋肉と、顎先から下顎縁を形作る支えを別々に調整します。

Medical Information

この記事について

監修日
2026年8月9日
公開日
2022年5月2日
実質更新日
2026年8月9日

Contents

目次

  1. 正面では、咬筋の幅と顎先へ続く輪郭を一緒に見ます
  2. 斜位では、顎先の前方投影と下顎縁のつながりを確認します
  3. 反対側の斜位で、咬筋の張りと顎ラインの左右差を見直します
  4. 食いしばりの背景を確認し、輪郭と咀嚼機能を一緒に追います
  5. 診療で確認するポイント
  6. 治療選択の比較
  7. 費用の目安
  8. リスク・副作用・注意点
  9. 関連記事
  10. 関連施術・関連症状のご案内
  11. 執筆・監修
  12. 参考にした一次情報・ガイドライン
  13. よくあるご質問

正面では、咬筋の幅と顎先へ続く輪郭を一緒に見ます

正面写真は左が治療前、右が治療1ヶ月後です。エラボトックスとヒアルロン酸を組み合わせ、ヒアルロン酸はジュビダームビスタ ボリューマXCを1cc使用しました。

正面写真では、治療後に下顔面の横幅がすっきりし、口角の外側から顎先へ向かう輪郭がなだらかに見えます。咬筋の張りを弱める役割と、顎のラインを補う役割を分けているため、片方の治療だけで全てを変えようとせず、筋肉と形の両方を同じ写真で評価します。

診察では、安静時と強く噛み締めたときの咬筋の張りを触診し、その後に口を力ませない状態で顎先の前方投影、下顎縁の連続、左右差を確認します。咬筋内へ注入する範囲と、1ccのヒアルロン酸を置く範囲を先に別々に描いてから治療します。

咬筋の張りと顎の支えを別の治療へ割り当てる理由として、顔の部位と加齢変化に応じてボツリヌストキシンとフィラーなどを組み合わせることに合意が得られたとの報告がありました(参考文献1)。

斜位では、顎先の前方投影と下顎縁のつながりを確認します

一方向目の斜位でも、左が治療前、右が1ヶ月後です。治療後は顎先から下顎縁へ続く線が見えやすくなり、正面だけでは分かりにくい前後方向の輪郭変化を確認できます。

この症例で使ったボリューマXCは、成人の下顎部などで減少したボリュームを増大するため、皮下または骨膜上深部へ注入する国内承認製剤です。顎先の高さだけでなく、正面と斜位で下顎縁へ自然につながる位置へ1ccを配分します。

1ccという量はこの症例で使った合計量です。顎先だけを前へ出すのか、下顎縁との段差も補うのかは、治療前の骨格と軟部組織を見て決めます。

顎先の前方投影をヒアルロン酸で補い、斜位でも下顎縁とのつながりを評価する根拠として、ボリューマXC注入後は12か月の顔面角が平均1.83度改善し、下顔面と顎ラインの満足度も全評価時点で治療前より高かったとの報告がありました(参考文献4)。

反対側の斜位で、咬筋の張りと顎ラインの左右差を見直します

反対方向の斜位も、左が治療前、右が1ヶ月後です。両側を並べると、耳前から下顎角にかけての厚み、顎先までの線、片側だけが細く見えていないかを確認できます。

エラボトックスは、強く噛んだときに咬筋が外側へ張り出し、下顔面の幅へ影響している場合に使います。注射点は咬筋の境界内へ置き、口角を外側へ引く筋肉へ広がらないよう、左右の厚みと筋力に合わせて範囲を決めます。

咬筋へのA型ボツリヌストキシンは注射直後に輪郭を変える治療ではありません。1ヶ月写真では途中経過を確認し、噛み締め時の筋力、笑顔の左右差、下顎角の張りを追いながら、約3か月までの変化を見ます。

1ヶ月写真の後も咬筋と輪郭を追う理由として、1回のA型ボツリヌストキシン注射後、3か月のCTで咬筋体積が平均約30%減り、輪郭変化は3〜6か月に明瞭だったとの報告がありました(参考文献3)。

食いしばりの背景を確認し、輪郭と咀嚼機能を一緒に追います

固い物をよく噛む、歯を食いしばる癖がある、夜の歯ぎしりが強い、歯科でマウスピースを勧められたことがある、朝にエラや首が凝る、エラの張りが気になる――この6項目は、エラボトックスを考える手掛かりです。

食いしばりによる咬筋の過緊張が強いときは、噛む力を一時的に弱め、歯や顎関節へかかる負担を軽くする目的も含めて治療します。歯の摩耗、顎関節痛、マウスピースの要否は歯科で評価し、輪郭写真と歯科所見を併せて治療計画を立てます。

経過では、約2週から1ヶ月に咬む疲れ、口角の動き、内出血、ヒアルロン酸部の硬さを確認します。ボリューマXC注入後は、1〜2か月ほど注入部にしこりを感じることがあります。皮膚の青白化や網目状変色、強い痛み、視覚異常は通常の硬さとは分け、直ちに血管閉塞への対応を行います。

1ヶ月後に筋肉の動きとヒアルロン酸部の反応を別々に確認する理由として、下顔面などへのヒアルロン酸注入では治療関連反応が統合63.0%、主な内容は腫れ22.4%と痛み19.0%だったとの報告がありました(参考文献2)。

Clinical View

診療で確認するポイント

  • まず安静時と噛み締め時の正面・両斜位を撮り、咬筋の外側への張り、下顎角の骨格、顎先の前方投影、下顎縁の左右差を順に確認します。
  • 咬筋内の注入範囲を決めた後、力を抜いた状態で顎先から下顎縁の不足部位を描き、ボリューマXC 1ccを輪郭へ配分します。筋肉を弱める治療と支えを補う治療を、別の目標で同日に設計します。
  • 約2週から1ヶ月に咀嚼時の疲れ、笑顔の左右差、顎ライン、注入部の硬さを確認し、エラボトックスは約3か月までの輪郭変化も追って次回量を決めます。

Comparison

治療選択の比較

治療・対応 向く状態 向かない/慎重な状態 回数の目安 ダウンタイム 費用(税込) 承認状況
エラボトックス 噛み締め時に咬筋が外側へ張り、下顔面の横幅へ影響している状態 下顎角の骨格、顎先の後退、脂肪・皮膚のゆるみが主因の状態 通常1回。約2週〜3か月の変化を見て次回を検討 注射痛、内出血、咀嚼時の疲れ、左右差、まれに口角の動きの変化 エラ/首 55,000円(税込) 要確認
ヒアルロン酸(ボリューマXC) 顎先から下顎縁の前方投影・支えを補う必要がある状態 咬筋肥大だけが主因、容量を足すと下顔面が重く見える状態 通常1回。腫れと硬さが落ち着いた後に再評価 腫れ、内出血、圧痛、硬さ・しこり。まれに血管閉塞 1本1cc 77,000円(税込) 要確認
エラボトックス+ヒアルロン酸1cc 咬筋の張りと顎ラインの支え不足が同時にある状態 筋肉または支えの一方だけを治療すれば輪郭が整う状態 同日に設計可能。1ヶ月後の正面・両斜位と、約3か月までの咬筋変化を確認 両施術の内出血・腫れ・左右差。ボトックスの咀嚼疲労とフィラーの血管障害に注意 合計132,000円(税込。エラ55,000円+ヒアルロン酸1cc 77,000円) 要確認

費用の目安

  • ボトックス・ビスタ/コアトックス エラ・首 55,000円(税込)
  • ヒアルロン酸注入 1本1cc 77,000円(税込)
  • 2施術の合計 132,000円(税込)

症例ではボリューマXC 1ccを使用しています。料金は現行料金表のエラボトックスとヒアルロン酸1ccを表示しています。

リスク・副作用・注意点

  • エラボトックス:内出血、咀嚼時の疲れ、左右差、口角の動きの変化など
  • ヒアルロン酸:腫れ、内出血、硬さ・しこり、感染、血管閉塞、皮膚壊死、視覚障害など
  • 国内承認・適応: ジュビダームビスタ ボリューマXCは国内承認医療機器で、成人の中顔面・下顎部・こめかみで減少したボリュームを増大する目的が承認されています。ボトックスビスタは国内承認医薬品ですが、承認部位は65歳未満の成人の眉間・目尻であり、エラへの使用は承認範囲外です。コアトックスは国内未承認医薬品です。自由診療の適応外・未承認使用は公的な副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。

ヒアルロン酸注入後の皮膚青白化、網目状変色、強い痛み、視覚異常は緊急評価の対象です。

Doctor Review

執筆・監修

執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)

References

参考にした一次情報・ガイドライン

  1. Chao YY, Chhabra C, Corduff N, et al. PAN-ASIAN CONSENSUS—Key Recommendations for Adapting the World Congress of Dermatology Consensus on Combination Treatment with Injectable Fillers, Toxins, and Ultrasound Devices in Asian Patients. J Clin Aesthet Dermatol. 2017;10(8):16-27.

    PAN-ASIAN CONSENSUS—Key Recommendations for Adapting the World Congress of Dermatology Consensus on Combination Treatment with Injectable Fillers, Toxins, and Ultrasound Devices in Asian Patients

    研究デザイン: アジア人の顔面美容治療に関する専門家コンセンサス / 対象: アジア各地域の専門医11人。賛同70〜90%を中等度、90%以上を強い合意と定義 / 結果: 顔の部位と加齢変化に応じて、ボツリヌストキシン、ヒアルロン酸フィラー、マイクロフォーカス超音波などの役割を分け、必要に応じて組み合わせることへ合意が得られた。 / 限界: 患者を割り付けた比較試験ではなく専門家合意で、症例のボリューマXC 1cc、エラボトックスの製剤・単位、併用による効果量を示さない。著者には企業との利益相反がある。全文を確認した。

  2. Cruz VMS, Sousa-Neto SS, Pedroso CM, et al. Adverse Events in Nonsurgical Facial Aesthetic Procedures: A Systematic Review and Meta-Analysis. Oral Dis. 2026;32(2):384-394.

    Adverse Events in Nonsurgical Facial Aesthetic Procedures: A Systematic Review and Meta-Analysis

    研究デザイン: 42研究のシステマティックレビュー・割合メタ解析 / 対象: ヒアルロン酸、上顔面ボツリヌストキシン、吸収糸の美容治療を受けた計8,853人。ヒアルロン酸は下顔面・口唇・ほうれい線などを対象 / 結果: ヒアルロン酸注入の治療関連有害事象の統合割合は63.0%(95%CI 35〜84%)で、主な内容は腫れ22.4%と痛み19.0%だった。 / 限界: 軽い予測可能な注入反応も有害事象に含み、研究間異質性が高い。製剤、部位、報告方法、追跡期間が不均一で、ボリューマXC 1ccの発生率や血管閉塞率は示さない。PMC全文を確認した。

  3. Yu CC, Chen PK, Chen YR. Botulinum toxin A for lower facial contouring: a prospective study. Aesthetic Plast Surg. 2007;31(5):445-451; discussion 452-453.

    Botulinum toxin A for lower facial contouring: a prospective study

    研究デザイン: 単群前向き研究。写真、本人評価、咬合力を最長1年追跡し、治療前と3か月の3次元CTで咀嚼筋体積を比較 / 対象: 咬筋肥大の女性ボランティア10人。咬筋へA型ボツリヌストキシンを1回筋注 / 結果: 3か月のCTで咬筋体積が平均約30%減少し、写真と本人評価による輪郭変化は3〜6か月に明瞭だった。咬合力は注射翌日から低下したが3週から回復し、3か月で治療前へ戻った。 / 限界: 10人の非対照研究で、使用製剤・用量を他製剤へ換算できず、本症例の1ヶ月変化のうちボトックス単独の寄与や、歯の保護・顎関節症への長期効果は示さない。PubMed抄録で書誌と結果を再確認し、原著全文にはアクセスしていない。

  4. Beer K, Stonehouse A, Dunn M. Hyaluronic Acid Soft Tissue Filler for the Treatment of the Hypoplastic Chin: An Observational Study. Dermatol Surg. 2020;46(8):1092-1101.

    Hyaluronic Acid Soft Tissue Filler for the Treatment of the Hypoplastic Chin: An Observational Study

    研究デザイン: 単施設・非盲検・単群の1年観察研究 / 対象: 顎の低形成がある30人へJUVÉDERM Voluma XCを注入。24人(80%)が1年追跡を完了 / 結果: 顔面角は全時点で治療前より改善し、12か月の平均変化は1.83度(95%CI 0.91〜2.75)。下顔面・顎ラインのFACE-Q満足度も全評価時点で有意に上昇した。 / 限界: 対照群のない30人の単施設研究で、顎低形成が対象である。本症例のボリューマXC 1ccの配分、咬筋ボトックスとの併用効果、日本人での最適量は示さない。PubMed抄録で書誌と結果を再確認し、原著全文にはアクセスしていない。

よくあるご質問

Q. この症例では何を行い、いつ撮影していますか?

エラボトックスとジュビダームビスタ ボリューマXC 1ccを組み合わせ、治療前と1ヶ月後を正面・両斜位で比較しています。

Q. エラボトックスとヒアルロン酸を組み合わせる理由は何ですか?

エラボトックスは咬筋の張りによる下顔面の横幅を、ヒアルロン酸は顎先から下顎縁の支えを調整します。筋肉と輪郭の不足が同時にある場合に、異なる役割を組み合わせます。

Q. エラボトックスの変化は1ヶ月で完成しますか?

1か月は経過を確認する時期です。咬筋ボトックス後は2週から変化がみられ、3か月に最大となったとの報告がありました。当院でも噛み締め時の筋力と輪郭を約3か月まで追います。

Q. 治療後にすぐ連絡が必要な症状はありますか?

強い咀嚼困難、口角の明らかな左右差、息苦しさ・飲み込みにくさ、ヒアルロン酸注入部の青白化や網目状変色、強い痛み、見え方の異常がある場合は、すぐに医療機関へ連絡してください。

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