シミ取りは、強く焼けばいいわけではありません
境界のはっきりした日光黒子にはスポット照射が向きますが、白く強く反応させるほど除去率が上がるとは限らず、炎症後色素沈着(PIH)が増えることがあります。当院では照射終点と周囲の炎症を見ながら、スポットは通常1回後に評価し、多発する薄いシミはルビーフラクショナルを2〜3週間ごとに5回進めます。
Medical Information
この記事について
- 執筆医・監修医
- 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
- 監修日
- 2026年8月9日
- 公開日
- 2026年4月26日
- 実質更新日
- 2026年8月9日

Contents
目次
一点への強い熱は、シミの後ろに黒ずみを残すことがあります
スポット照射の熱が一点へ集中して強い炎症が起こると、その後に炎症後色素沈着(PIH)が生じることがあります。病変の色素が取れても、炎症で新しく生じたメラニンが重なると、治療前とは別の黒ずみが残って見えます。
Qスイッチルビースポットでは、照射直後にシミが白くなる反応を終点の目安にします。強く白くなるまで出力を上げるのではなく、病変全体に軽い白化が得られた時点で止め、周囲の赤みと熱反応を確認します。
照射終点を強くしすぎない理由として、4週後の除去率に差がない一方、QスイッチルビーのPIHは明瞭な白化を求めた強い照射で33.33%、軽い白化を終点にした照射で7.47%だったとの報告がありました(参考文献1)。
境界のはっきりしたシミと、肝斑・PIHを先に分けます
平らで境界がはっきりした茶色い日光黒子は、スポット照射の候補です。頬骨部へ左右に面状に広がる肝斑、ニキビや施術後に残ったPIHは、同じ褐色に見えても強いスポット照射の対象にせず、分布と発症時期を写真で確認します。
診察では、色が均一か、輪郭が規則的か、盛り上がりや鱗屑がないかも見ます。色や形が不規則な病変、触れる病変、急に変化した病変は、拡大鏡所見や病理診断を優先し、美容レーザーの出力調整で扱いません。
日光黒子と判断した後も、一個の濃い病変を狙うスポット照射と、多発する細かなシミを点状に分けて照射するルビーフラクショナルでは、熱の入れ方と必要回数を分けます。
日光黒子でも治療法を一つに固定しない理由として、Qスイッチレーザーの成功率は36.36〜76.6%、ピコ秒レーザーは67.9〜93.02%で、多くの副反応は軽度かつ一過性だったとの報告がありました(参考文献2)。
光老化と慢性炎症がある肌は、照射後の色調を長く追います
画像中央では、紫外線ダメージと慢性炎症が重なった肌を、バリア機能とターンオーバーが低下し、刺激に反応してメラニンが作られやすい状態として説明しています。メラニンが表皮から真皮浅層まで残ると、表面のシミが取れた後も黒ずみがゆっくり薄くなる経過があります。
照射後は、赤み、熱感、腫れ、かさぶた、PIH、白く抜ける低色素斑を同じ部位で確認します。かさぶたをはがさず、保湿と遮光を続け、黒ずみが濃くなる時期と薄くなり始める時期を写真で比べます。
スポットは1回後に評価し、フラクショナルは2〜3週間ごとに5回進めます
境界明瞭な日光黒子へスポット照射を行う場合は、通常1回照射して、かさぶたが取れた後の病変とPIHを評価します。すぐに同じ場所へ追加照射せず、元のシミが残っているのか、炎症による黒ずみなのかを分けてから次の治療を決めます。
多発する薄いシミや全顔の色むらには、熱を細かな点へ分散するルビーフラクショナルを用い、初期は2〜3週間に1回、5回を1クールとします。各回で赤み、微細なかさぶた、色調を確認し、炎症やPIHが残るときは次回を延ばします。
スポットは一つの病変を1回で大きく反応させやすく、フラクショナルは一度の反応を小さく分けて複数回積み重ねる治療です。当院では、シミを取る速さだけでなく、治療後の黒ずみを増やさないことまで含めて照射方法を選びます。
Clinical View
診療で確認するポイント
- 初診では、境界明瞭な日光黒子、左右に面状に広がる肝斑、炎症後のPIHを写真上で色分けし、盛り上がりや不規則な病変は拡大鏡所見と病理診断の要否を先に判断します。
- スポット照射では軽い白化を終点として周囲の炎症を見直し、多発する薄いシミでは熱を分散するルビーフラクショナルを選びます。
- スポットは通常1回後に病変とPIHを再評価し、ルビーフラクショナルは2〜3週間ごとに5回を基本に、赤み・かさぶた・黒ずみが残る場合は次回を延ばします。
Comparison
治療選択の比較
| 治療・対応 | 向く状態 | 向かない/慎重な状態 | 回数の目安 | ダウンタイム | 費用(税込) | 承認状況 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Qスイッチルビースポット | 境界明瞭な日光黒子など | 肝斑面、診断未確定病変 | 通常1回後に評価 | かさぶた、赤み、PIH、低色素斑 | 1cm²まで6,600円/以後1cm²ごと4,400円 | 機器・使用目的ごとに承認確認 |
| ルビーフラクショナル | 多発する表在性色素・色むらの一部 | 活動性肝斑、炎症、低色素斑 | 複数回 | 赤み、乾燥、微細なかさぶた、PIH | 全顔1回16,500円/初回5回66,000円 | 機器・照射法・目的ごとに承認確認 |
| 外用・遮光・経過観察 | PIH、肝斑、照射後管理、診断保留 | 孤立病変を即時除去したい場合 | 毎日・数か月評価 | 外用刺激、かぶれ | 製品・処方により異なる | 薬剤・製品区分を確認 |
費用の目安
- Qスイッチルビースポット 1cm²まで6,600円/以後1cm²ごと4,400円。
- ルビーフラクショナル全顔1回16,500円/初回5回66,000円/継続5回55,000円/医師施術1回27,500円。
診断と範囲で治療法・総額が変わります。
リスク・副作用・注意点
- かさぶた、赤み、腫れ、PIH、低色素斑、色むら、まれに瘢痕があります。
- PIHが3か月以上続く場合があります。
- 肝斑や診断未確定病変への強い照射で悪化することがあります。
強い照射終点は除去率を上げずPIHを増やした報告があります。
Doctor Review
執筆・監修
執筆医・監修医: 形成外科専門医 乜 也(にえ いえ)
References
参考にした一次情報・ガイドライン
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アジア人の日光黒子に対する照射強度とPIHの比較
研究デザイン: 日光黒子を4群へ無作為化した単回照射の比較試験 / 対象: Fitzpatrick皮膚型III〜Vのアジア人193例、日光黒子355病変 / 結果: 4群間の除去率に有意差はなかった。PIHは、Qスイッチルビーの強い照射33.33%、穏やかな照射7.47%、Qスイッチ周波数倍加Nd:YAGの強い照射23.18%、穏やかな照射8.47%だった。 / 限界: 日光黒子への単回照射を4週後に評価した研究で、肝斑、PIHそのもの、ルビーフラクショナルの複数回治療を直接比較していない。
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日光黒子治療の系統的レビュー
研究デザイン: 2023年12月7日までの日光黒子治療を扱った臨床試験の系統的レビュー / 対象: 41試験、3,234人、24〜92歳 / 結果: 報告された成功率は、Qスイッチレーザー36.36〜76.6%、ピコ秒レーザー67.9〜93.02%、IPL 74.6〜90%などで、多くの有害事象は軽度かつ一過性だった。 / 限界: 成功の定義、治療法、部位、肌タイプ、追跡期間が研究間で異なり、数値を単純に機器間の優劣として比較できない。本記事の2〜3週間ごと5回という院内プロトコルを直接検証したレビューではない。
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医療機器の承認審査
レーザー機器・使用目的の確認先。
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PIH treatment in skin of colour
48研究1,356人。
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PIH prevention after laser treatment
14 RCTの系統的レビュー。
よくあるご質問
Q. どのシミがスポット照射に向いていますか?
平らで境界がはっきりした日光黒子が候補です。頬へ面状に広がる肝斑、炎症後のPIH、不規則な色や盛り上がりがある病変は、先に別の診断を行います。
Q. 照射直後にシミが白くなるほど効果が高いですか?
白化は照射終点の目安ですが、強い白化を追うほど除去率が上がるとは限りません。病変全体の軽い白化と周囲の赤みを見て止めます。
Q. シミ取り後に黒く見えるのはなぜですか?
かさぶたのほか、照射後の炎症で生じるPIHが重なって黒く見えることがあります。元のシミとの位置、発症時期、色の変化を写真で比べます。
Q. スポット照射とルビーフラクショナルは何回受けますか?
スポット照射は通常1回後に評価します。ルビーフラクショナルは初期2〜3週間に1回、5回を1クールとし、炎症やPIHが残る場合は間隔を延ばします。
Q. 肝斑やPIHがある場所も強く照射できますか?
強いスポット照射は避け、肝斑とPIHの範囲を先に記録します。遮光、摩擦を避けるケア、外用、必要に応じた低刺激の機器治療へ役割を分けます。
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